序文

前立腺癌が，2015年に男性における部位別癌予測罹患数の1位となって以降，前立腺癌罹患者数は高い水準を維持しているが，全前立腺癌患者の約4分の3が限局性であり，生存率もほぼ100％であることが知られています。一方で，限局性前立腺癌に対し多くの治療法が存在し，かつ今後も増えていく可能性が高いことが予想されます。実臨床の現場では目の前の患者さんに対し，最善の治療法をどのような基準で選択すればよいのか，迷われている先生方も多いのではないかと思われます。また，インターネットで様々な治療法を検索し，希望する治療法を初診時から提示してくる患者さんも増えてきているかと思います。しかし，果たしてその治療法がその患者さんにとって本当に有益なのか，違う治療法を勧めるべきなのか，またその根拠を自信をもって提示できるのかなど，限られた診察時間の中で難しい選択をしていかなければいけないことも多いかと思います。そこで本企画では，「今だからこそ考える限局性前立腺癌に対する治療」と題し，原点に立ち返ってそれぞれの治療法を今一度考えてみたいと思います。

国際医療福祉大学の小野澤先生には，前立腺癌治療の基本である内分泌療法について解説いただき，令和時代における内分泌療法の位置づけについて解説いただきます。香川大学の土肥先生には，低リスク前立腺癌の第一選択になりつつある監視療法について解説いただき，定期的に生検を受けていただくにはどのようにすればよいのか，どのタイミングで治療介入すべきなのかなどについて解説いただきます。岐阜大学の中根先生には，現在最も多く選択されているであろうロボット手術に関して，限局性のみならず救済手術に関しても症例提示をしていただきます。東京医療センター放射線科の萬先生には，小線源治療について解説いただき，単独治療の適応や外照射併用症例の基準，有害事象についてもご紹介いただきます。国立がん研究センター東病院の秋元先生にはIMRTと陽子線治療，群馬大学腫瘍放射線学の河村先生には，重粒子線治療について解説をいただきます。特に後者の2治療は，2018年4月に新たに保険収載となった治療法で，読者の先生方も非常に興味を持たれるのではないかと思われます。それぞれの治療の特性や適応などについて，解説いただきます。

以上の治療について，それぞれの治療の特性や対象患者などを再確認することで，明日からの臨床にぜひお役立ていただきたいと考えております。

岐阜大学大学院医学系研究科病態制御学講座泌尿器科学分野
古家　琢也