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- 「寄り道」呼吸器診療―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス
商品情報
内容
<例>
気管支鏡時の抗菌薬にエビデンスはあるのか?
気管支鏡の前投薬・鎮静薬は何をどのように使えばよいか?
酸素療法に対する患者さんの羞恥心を軽減する方法は?
癌以外の呼吸困難感にモルヒネを使用してよいか?
鎮咳薬で最も効果的なものは?"
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序文
はじめに
「呼吸器内科医」(http://pulmonary.exblog.jp/)というブログを始めたきっかけは、初期研修医の頃に出会ったある患者さんの存在があったからでした。彼は、喀痰から大量のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されている急性呼吸促迫症候群(ARDS)の状態でした。最大限の治療をさせていただきましたが、それでも重症疾患に勝つことはできず、1 か月近くに及ぶ闘病生活の末に逝去されました。彼は私の手を握り、「同じように苦しむ人たちを救ってあげてほしい」とおっしゃいました。
その言葉の後押しがあって、私は呼吸器内科医になりました。彼に恥じぬよう日々勉強しなければならないと決意し、私はブログで自分の勉強した足跡を残すことを思いつきました。それを見ることで他の医師が知識をシェアできるのではないかという思いもありました。何よりそれが最終的に患者さんの幸せにつながるのであれば、私にとって本望でした。ブログを更新するたびに兜の緒を締めるために、ブログのトップページにはいつもその患者さんが闘病した証である胸部CT写真を掲載しています。本書の表紙は、実はその写真をモチーフにしたものです。
本を執筆してみないかと提案されときは、7 年目の医師である自分が何を世に送り出せるのか、非常に戸惑いました。しかし、私のブログで反響が大きかったのは、臨床で悩むジレンマであることに気付きました。長く医療の世界に足を踏み入れていると、ふと気付くことがあります。それは、悩むことに慣れてしまう医療従事者が多いことです。悩まなくなってしまうと、患者さんへの医療はその温度を失ってしまいます。この本は、色々な悩みにぶつかっているであろう呼吸器科医に向けて書いたものです。ひいてはこの本が苦しむ患者さんへの一助となれば心よりうれしく思います。なお、議論が分かれるような内容に言及している項目が少なからずあります。あくまで筆者の一意見としてご笑覧いただければ幸いです。
この本を執筆するにあたり、私のブログに共感し出版まで尽力いただいたシーニュ社の藤本浩喜様に心から御礼申し上げます。そして、医学的な助言をいただいた感染症科医の羽田野義郎先生、産婦人科医の羽田野悠子さん、恩師である西
山明秀先生に心より感謝申し上げます。
2013年2月
倉原 優
目次
A 気管支鏡
1 気管支鏡時の抗菌薬にエビデンスはあるのか?
2 サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管所見の意義とは?
3 気管支鏡時のリドカインのエビデンスは?
4 気管支肺胞洗浄の方法は?
5 経気管支肺生検の方法は?
6 気管支鏡の前投薬・鎮静薬は何をどのように使えばよいか?
7 気管支鏡時の出血の対処法にエビデンスはあるのか?
B 酸素療法 ・人工呼吸
8 労作時のみの低酸素血症に在宅酸素療法は導入すべきか?
9 酸素療法に対する患者さんの羞恥心を軽減する方法は?
10 呼吸困難感の評価スケールはどれを使えばよいのか?
11 鼻腔高流量酸素療法(ハイフローセラピー)のエビデンスは?
12 非侵襲性陽圧換気(NPPV)にウィーニングプロトコールはあるのか?
13 高CO2 血症の患者さんへの酸素投与はなぜよくないのか?
C 感染性肺疾患
14 結核患者さんの入院期間はなぜ「2 か月」なのか?
15 結核患者さんとどのくらい接触したら自分にも感染してしまうのか?
16 非結核性抗酸菌症の治療は本当にやめてもよいのか?
17 抗酸菌の名前の由来は?
18 肺化膿症の抗菌薬の選択と治療期間のエビデンスは?
19 カンジダ肺炎は鑑別に挙げるべきか?
20 市中肺炎にステロイドは使用すべきか?
D 閉塞性肺疾患
21 気管支喘息に対する吸入ステロイド薬はどれを使用したらよいのか?
22 気管支喘息に対する吸入ステロイド薬はいつまで続けたらよいのか?
23 妊婦・授乳婦の気管支喘息治療のエビデンスは?
24 気管支喘息発作に対する全身性ステロイドの最適量は?
25 気管支喘息発作に対するアミノフィリンの点滴は危険なのか?
26 患者さんへの吸入手技の指導はどのようにするのか?
27 吸入補助器具(スペーサー、チャンバー)はどれを使用したらよいのか?
28 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪に対する全身性ステロイドの最適量と治療期間は?
29 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪に対する
抗菌薬のエビデンスは?
E 間質性肺疾患
30 慢性間質性肺疾患の患者さんに外科的肺生検は必要か?
31 特発性間質性肺炎やサルコイドーシスで特定疾患申請する意味は?
32 ばち指で知っておくべきことは何か?
33 胸部CT における蜂巣肺の定義とは?
34 関節リウマチによる慢性間質性肺疾患とメトトレキサートによる薬剤性肺障害は鑑別可能か?
F アレルギー性肺疾患
35 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断基準の歴史とは?
36 ア レルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療におけるステロイドの量や治療期間のエビデンスは?
37 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療で抗真菌薬やオマリズマブの位置付けは?
38 亜急性過敏性肺炎に対するステロイド治療は妥当か?
39 慢性過敏性肺炎の治療にエビデンスはあるか?
G 塵肺
40 石綿健康被害に対する各種救済制度への申請はどうしたらよいのか?
41 じん肺の大陰影と肺癌を区別できるか?
H 胸膜疾患
42 胸腔ドレーンを固定する際はどのように縫合するのがベストか?
43 胸腔ドレーン抜去は深吸気時? あるいは深呼気時?
44 胸腔ドレーン抜去前のクランプテストにエビデンスはあるのか?
45 自然気胸に対する胸腔ドレナージの最適な持続吸引圧は?
46 胸膜癒着術の方法は?
47 再膨張性肺水腫を予防するためのエビデンスはあるのか?
I 肺癌
48 肺癌の検査をしたあとに治療をしないことは妥当か?
49 肺結節影を患者さんにどう説明するべきか?
50 抗癌剤による脱毛を理解しているか?
51 癌患者さんに余命を伝えるべきか?
52 癌患者さんの気道狭窄にステントはいつ入れるべきか?
53 抗癌剤の血管外漏出による皮膚障害に対する治療のエビデンスは?
54 胸水中の腫瘍マーカーを測定する意味はあるのか?
55 放射線肺炎に対するステロイド治療のエビデンスは?
J 高齢者・終末期
56 誤嚥リスクのある患者さんの食事の可否をどう判断するか?
57 終末期の患者さんの人工呼吸器は取り外せるか?
58 癌以外の呼吸困難感にモルヒネを使用してよいか?
59 死前期の患者さんに大量の酸素投与は必要か?
K その他
60 鎮咳薬で最も効果的なものは?
61 去痰薬の使い分けは?
62 喀痰の色は重要か?
63 喀痰検査をしたくても喀痰が採取できないときは?
64 喀血時に冷罨法は効くのか?
65 肺超音波検査の正常所見は?
66 肺超音波検査で使用する専門用語は何を押さえておくべきか?
67 気胸の肺超音波所見は?
68 間質性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息の肺超音波所見は?
69 呼吸器感染症の肺超音波所見は?
70 急性呼吸促迫症候群(ARDS)の肺超音波所見は?
71 打診に本当に意味はあるのか?
72 聴診所見の国際的分類や定義はあるのか?
73 過換気症候群にペーパーバッグ療法はだめなのか?
74 吃逆の治療のエビデンスは?
75 医学論文を継続的に読む方法は?
76 呼吸器内科医が読むべき医学雑誌は?
77 なぜ「寄り道」呼吸器診療なのか?
Tips(コラム)
Gram 染色の考案者─ Hans Christian Joachim Gram
Clara 細胞の発見者─ Max Clara
Saccomanno 法の考案者─ Geno Saccomanno
Pancoast 腫瘍の提唱者─ Henry Khunrath Pancoast
Hoover 徴候の提唱者─ Charles Franklin Hoover
Charcot-Leyden 結晶の提唱者─
Jean-Martin Charcot & Ernst Victor von Leyden
Curschmann らせん体の提唱者─ Heinrich Curschmann
Masson 小体の提唱者─ Claude L. Pierre Masson
Mendelson 症候群の提唱者─ Curtis Lester Mendelson
Wegener 肉芽腫症の提唱者─ Friedrich Wegener
付録
吸入薬一覧
・吸入ステロイド薬
・吸入β2刺激薬
・吸入ステロイド薬/β2刺激薬配合薬
・吸入抗コリン薬
吸入補助器具一覧
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書籍情報
- ISBN:9784990301491
- ページ数:415頁
- 書籍発行日:2013年5月
- 電子版発売日:2022年9月30日
- 判:単行本
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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