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- 基礎から学ぶ統計学
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序文
序
本書は、統計学の入門書です。本書が仮定する予備知識は、主に高校1 ~ 2年で学ぶ数学の基礎です。
著者は、北海道大学農学部で20年間、学部2 ~ 3年生を対象に、統計学の入門レベルの講義を担当してきました。この教育現場での試行錯誤から、著者の講義は、3つの特色を持つようになりました。
特色の1つめは「図を多用する」です。統計学の学習では、計算の意味を見失うことが多いです。図は、学習する上で、大きな助けとなります。そして時には、図は、学習を楽しいものにしてくれます。この講義は「可能な限り図に語らせる」という方針を土台にしています。
特色の2つめは「実践的な手法を中心に学ぶ」です。通常、統計学の入門課程では、その理論的な基礎を中心に教えます。このスタイルは、非の打ち所がない王道です。しかし実際には「数学が難しい」と「何の役に立つのか?実感できない」という理由から、学習者が挫折しやすい欠点があります。この講義では「統計学は道具として役に立つ」と実感できる基本的手法を中心に、その計算の原理を学びます。このスタイルの学習を通して、統計学の基礎に対する、理解とセンスを身につけます。
特色の3つめは「数学のハードルを下げる」です。この講義では、高校1 ~ 2年で学ぶ数学で理解できる学習内容は、数学として理解することを目指します。一方、それ以上のレベルの内容は「知識として身につける」という方針に切り替え、定性的な理解だけを目指します。
現在、著者の講義は、北大農学部の名物講義の1つとなっています。授業アンケートでは「一学期で一番楽しかった」「数学は苦手だけど理解できた」「学生の立場に立って、難しい統計学を一番分かりやすい説明で教えてくれた」「これまで受けた講義の中でダントツの満足度だった」といった評価を、受けています(「履修者の声」参照)。
こうした手応えを得て、この3つの特色を土台にした、入門書の執筆に取り組んできました。目指したのは「独習が可能な1冊」となることです。原稿を少しずつ作っては、教科書代わりの配布資料として、印刷したプリントを配ってきました。学生たちの意見や感想、不満、質問やリクエストを土台に、原稿の改善を続けてきました。地道で長い作業でした。結局、10年かかって、ようやく、完成しました。それが本書です。
本書が、1人でも多くの、「統計学の基礎を身につけたい」と考える方々の学習の手助けになることを、祈っています。
2022年8月
中原 治
目次
本書の使い方
統計学を学ぶ心がけ/予備知識/本書の学び方/のんびり取り組む/本書の難所/練習問題を解く/数学が得意なら/ご協力ください
序章 はじめに
1.統計学の必要性
2.散らばり(バラツキ)
3.基本的な用語と概念
①観測値と標本 ②母集団 ③統計学の目的 ④統計学の理論を支える土台 ⑤単純無作為標本
4.本書の2本柱
①平均の比較 ②2変数の関係
5.検定統計量
【第Ⅰ部 統計的仮説検定の論理】
【第Ⅰ部 統計的仮説検定の論理】
1章 検定の論理(二項検定を教材として)
1.例題1:B薬はA薬より有効か?
①例題1.1:18人に効果がある場合 ②例題1.2:14人に効果がある場合 ③例題の解答
2.二項分布
①二項係数 nCx ②コブ斜面を降りる ③ゴール2へ降りる確率 ④二項分布 ⑤二項分布の応用
3.期待値 E[X]
4.練習問題 A
5.二項検定
①STEP1:帰無仮説H0と対立仮説HA ②STEP2:検定統計量 ③STEP3:帰無分布 ④二項分布の特徴 ⑤STEP4:棄却域と有意水準 ⑥STEP5:有意差の有無の判断
6.検定の論理(まとめ)
7.練習問題 B
2章 検定統計量(Wilcoxon-Mann-Whitney検定を教材として)
1.例題2:肥料Aと肥料Bの収量に差はあるか?
①栽培実験 ②基本的な用語と記号
2.WMW検定の目的
①2つの母集団 ②2つの標本 ③2つの可能性
3.検定統計量
4.WMW検定の手順
①帰無仮説H0と対立仮説HA ②ノンパラメトリック統計 ③WMW検定の手順 ④STEP1:検定統計量Uの計算 ⑤Uの定義 ⑥STEP 2:Uの臨界値U0.05 ⑦STEP3:有意差の有無の判断
5.練習問題 C
6.数学者たちに感謝
7.WMW検定の定性的理解
①可能な結果の全て ②検定統計量Uの性質 ③帰無分布 ④棄却域
8.WMW検定の実践的な技術
①標本サイズnが大きい場合のU1とU2の計算 ②タイ(等しい値)がある場合のUの計算
9.WMW検定を発明した自然科学者たち
①Frank Wilcoxon ②Henry Berthold Mann と Donald Ransom Whitney
10.統計学を学ぶための心がけ
11.WMW検定の手順(まとめ)
12.練習問題 D
3章 第1種の過誤と第2種の過誤
1.検定の論理の復習
①二項検定の復習 ②説明のスタイル
2.4つの可能性
3.第1種の過誤
①帰無仮説H0が間違っているとき ②帰無仮説H0が正しいときの「有意差なし」 ③帰無仮説H0が正しいときの「有意差あり(P<0.05)」 ④「有意差あり(P<0.05)」の意味
4.第2種の過誤
①帰無仮説H0が正しいとき ②帰無仮説H0が間違っているときの「有意差あり(P<0.05)」 ③帰無仮説H0が間違っているときの「有意差なし」 ④第1種の過誤と第2種の過誤の性質の違い ⑤「有意差なし」は帰無仮説H0の証明ではない
5.データの解釈と言葉遣いに、気をつける
①「有意差あり(P<0.05)」のとき ②「有意差なし」のとき
【第Ⅱ部 統計学の理論的基礎】
【第Ⅱ部 統計学の理論的基礎】
4章 平均・分散・標準偏差・自由度
1.例題4:3つの観測値
2.母集団と標本
3.平均
①母平均μ(算術平均) ②母平均μ(期待値) ③標本平均x ④不偏推定量
4.分散と標準偏差の基礎
①μが既知だと仮定する ②偏差 ③平均偏差(偏差を絶対値で正にする) ④分散(偏差を2乗で正にする) ⑤標準偏差
5.母分散σ 2と母標準偏差σ
①偏差と偏差平方和SS ②母分散σ 2(算術平均) ③母分散σ 2(期待値) ④母標準偏差σ
6.標本分散s2と標本標準偏差s
①偏差の起点に代役を使う ②偏差平方和SSと自由度df
7.母数と統計量
①母数 ②統計量
8.自由度dfの概念を確立してきた自然科学者たち
①Friedrich Bessel ②Ronald Aylmer Fisher
9.自由度df
①制約条件と自由度 ②偏差に課された制約条件 ③統計学における自由度の意味
10.標本分散s2 の計算の手順(まとめ)
11.練習問題 E
5章 正規分布と統計理論の初歩
1.正規分布
①二項分布から正規分布へ ②確率密度 ③母数(パラメータ) ④±σ・± 2 σ・± 3 σの範囲
2.標準正規分布
①μ =0 でσ =1 の正規分布 ②標準正規分布表 ③臨界値 z0.05
3.練習問題 F
4.標準化
①標準化の簡単な例題 ②標準化の視覚的な理解 ③標準化して得たzが従う確率分布
5.練習問題 G
6.定理1:標本平均が従う確率分布
①標本平均は散らばりが小さい ②散らばりが小さくなる理由 ③標本平均xが従う確率分布 ④大数の法則 ⑤標本分布と標準誤差
7.練習問題 H
8.定理2:中心極限定理
9.定理3:正規分布の再生性
10.練習問題 I
11.定理4:2つの標本平均の差が従う確率分布
12.練習問題 J
13.定理(まとめ)
6章 t分布と母平均μの95% 信頼区間
1.例題6:7つの観測値の背後にいる母平均μは?
2.母標準偏差σが既知の場合の95% 信頼区間
①前提条件 ②標本平均の確率分布 ③標本平均の標準化 ④σが既知の95% 信頼区間 ⑤例題の解答(σが既知の場合)
3.練習問題 K
4.σをsで代用してみる
①σはsで代用するしかないが ②σをsで代用した標準化
5.Gosset が発明したt分布
①Karl Pearson ②William Sealy Gosset
6.標準化とStudent 化(まとめ)
7.t分布の定性的理解
①t分布は背が低くて幅が広い ②t分布は標本サイズnによって形が少しずつ変化する ③母数(パラメータ)は自由度df ④臨界値 t0.05(df)
8.母標準偏差σが未知の場合の95% 信頼区間
①公式の導出 ②例題の解答(σが未知の場合)
9.95% 信頼区間の「95%」の意味
10.母平均μの95% 信頼区間の手順(まとめ)
11.練習問題 L
【第Ⅲ部 母平均μに対する統計解析】
【第Ⅲ部 母平均μに対する統計解析】
7章 関連2群のt検定(対応のあるt検定)
1.関連2群(対応のあるデータ)の特徴
①例題7.1:サプリメントの効果 ②例題7.2:肥料の効果
2.対応する2つの観測値の差d
①観測値の差に注目 ②2つの可能性
3.帰無仮説H0と対立仮説HA
①前提条件 ②帰無仮説H0と対立仮説HA
4.σ dが既知の場合
①検定統計量と帰無分布 ②例題の解答(σ dが既知の場合)
5.練習問題 M
6.σ dが未知の場合
①検定統計量tと帰無分布 ②関連2群のt検定の手順(まとめ) ③例題の解答(σ dが未知の場合)
7.練習問題 N
8.検定統計量tの定性的理解(3つの判断基準)
①差dの標本平均の効果 ②差dの標本標準偏差の効果 ③標本サイズの効果
9.検定統計量tの性質(まとめ)
8章 独立2群のt検定(対応のないt検定)
1.独立2群(対応のないデータ)の特徴
①例題8.1:サプリメントの効果 ②例題8.2:精神障害
2.標本平均の差
①2つの可能性 ②独立2群のt検定の前提条件 ③標本平均の差の確率分布
3.帰無仮説H0と対立仮説HA
4.σが既知の場合
①検定統計量zと帰無分布 ②例題の解答(σが既知の場合)
5.練習問題 O
6.σが未知の場合
①σの推定(その1):2つの標本標準偏差 ②σの推定(その2):合算標準偏差sp ③検定統計量tと帰無分布 ④独立2群のt検定の手順(まとめ) ⑤例題の解答(σが未知の場合)
7.練習問題 P
8.検定統計量tは煩雑
9.練習問題 Q:Studentのtをシンプルにする
10.検定統計量tの定性的理解(3つの判断基準)
①標本平均の差 ②標本標準偏差 ③標本サイズ
11.検定統計量tの性質(まとめ)
9章 P値
1.検定の枠組み
2.2 択だけの判断は不十分
①有意差がない場合 ②有意差がある場合
3.P値
①P値の定義 ②P値を得たら、まず0.05と比較する ③例題8.1の場合 ④「有意差あり」の表記法 ⑤「有意差なし」の表記法
10章 一元配置分散分析
1.一元配置分散分析のデータの特徴
①例題10.1:サプリメントの効果 ②例題10.2:ニジマスに与える餌
2.2つの可能性
3.一元配置分散分析の前提条件
4.帰無仮説H0と対立仮説HA
5.新しい記号:k, N, x
①標本の数(群)k ②観測値の総数Nと総平均x
6.一元配置分散分析の大まかな流れ
①誤差平均平方(群内分散)MSwithin ②処理平均平方(群間分散)MSbetween ③全平均平方MStotal ④分散分析表 ⑤検定統計量F
7.誤差平均平方(群内分散)MSwithin
①偏差平方和 SSwithin ②自由度 dfwithin ③誤差平均平方(群内分散)MSwithin
8.練習問題 R
9.処理平均平方(群間分散)MSbetween
①予備知識の復習 ②母分散σ 2の推定 ③処理平均平方(群間分散)MSbetween ④偏差平方和SSbetweenと自由度dfbetween
10.練習問題 S
11.全平均平方 MStotal
12.練習問題 T
13.分散分析表と検定統計量F
14.検定統計量Fの定性的理解
①分母のMSwithin の役割 ②分子のMSbetween の役割 ③例題10.1の場合 ④F分布と臨界値F0.05
15.一元配置分散分析の手順(まとめ)
16.練習問題 U
17.標本サイズが不揃いのときの計算
11章 多重比較(Bonferroni 補正とTukey-Kramer 法)
1.多重比較のデータの特徴
①例題11.1:サプリメントの効果 ②例題:11.2.ニジマスに与える餌
2.アルファベットを使った結果の表示
3.多重比較の出発点
4.多重性という課題
①帰無仮説H0が正しいとき ②第1種の過誤と有意水準α ③FWER(全体としての有意水準) ④ライフルで的を狙う ⑤多重性(まとめ)
5.Bonferroni 補正
①Bonferroni補正の方法 ②多重比較の欠点
6.Tukey-Kramer法
①Tukey-Kramer法の前提条件 ②帰無仮説H0と対立仮説HA ③検定統計量q
7.Tukey–Kramer法の計算
①対戦表 ②検定統計量qの分子 ③検定統計量qの分母 ④検定統計量q ⑤臨界値q0.05(k,dfwithin)
8.Tukey–Kramer法の手順(まとめ)
9.アルファベットの割り当て
①割り当ての方法 ②アルファベットの役割(まとめ)
10.練習問題 V
【第Ⅳ部 2 つの変数x とy の間の関係】
【第Ⅳ部 2 つの変数x とy の間の関係】
12章 相関分析
1.例題12:2 つの変数の関係は?
①例題12.1:かき氷の売上と気温 ②例題12.2:ホタルと農薬
2.新しい記号:(xi, yi)
3.正の相関と負の相関
4.強い相関と弱い相関
5.相関係数rの性質
6.標本共分散sxy
①偏差の積 ②偏差の積の和 ③自由度 ④共分散の性質(その1):無相関のとき ⑤共分散の性質(その2):正の相関があるとき ⑥共分散の性質(その3):負の相関があるとき
7.相関係数r
①共分散sxyは単位に依存する ②sxyを標準偏差sxとsyで割る理由
8.相関係数rの計算
9.練習問題W
10.相関の検定
①相関分析の前提条件 ②母相関係数ρ ③帰無仮説H0と対立仮説HA ④検定統計量tと帰無分布 ⑤例題12.1 の解答
11.より簡便な検定方法
12.練習問題 X
13.線形 vs. 非線形(相関係数rの苦手な状況)
14.対数変換
①実例(その1):北海道の湖沼 ②実例(その2):ガラパゴス諸島
15.Spearman の順位相関係数
①順位で散布図を描く ②順位相関係数rsの計算
16.相関は因果関係の証明にはならない
13章 単回帰分析
1.例題13:他の変数から予測できるか?
①例題13.1:かき氷の売上と気温 ②例題13.2:定量実験における基本的な作業
2.単回帰分析の前提条件
3.最小2乗法
4.回帰直線の性質
①回帰直線が通る点 ②回帰直線の傾き
5.xとyを逆にしない
6.y-切片aと傾きbの計算
7.内挿と外挿
8.決定係数 r2
①全平方和 SStotal ②残差平方和 SSresidual ③回帰平方和 SSregression ④回帰の恒等式 ⑤決定係数(その1):一般的な定義 ⑥決定係数(その2):もう1つの定義 ⑦決定係数(その3):実際の計算方法
9.練習問題 Y
10.単回帰分析における検定と推定
①計算に必要な2つの統計量SSxとMSresidual ②傾きbの必要性を確認する検定 ③母回帰係数βの95% 信頼区間 ④条件付き期待値E[y|x] の95% 信頼区間(信頼帯) ⑤観測値y の95% 予測区間(予測帯)
付録 解答と付表
解答
付表
索引
Column
片側検定は要注意!
レポートや学術論文、研究につなぐ
期待値を使った母平均μをもう少し詳しく
「不偏分散」という隠語
離散型と連続型の母平均μと母分数σ2の定義
別々の偏差平方和を計算する理由
合算標準偏差spのもう1つの定義式
SSwithinの実際の計算
SSbetweenの実際の計算
SStotalの実際の計算
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- 一部対応
- 未対応
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書籍情報
- ISBN:9784758121217
- ページ数:335頁
- 書籍発行日:2022年9月
- 電子版発売日:2022年9月21日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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