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- 写真でみる乳幼児健診の神経学的チェック法 改訂10版
商品情報
内容
豊富な写真を多用して,乳幼児の神経学的発達の診かたや評価方法をわかりやすく解説した本書は,乳幼児健診の実践書として,また大学・専門学校の教科書としてロングセラーとなっている.各月齢ごとに,何をポイントとして,どのように診て評価すればよいのか,各所見の写真とともに具体的に説明している.これらを理解するために必要な新生児・乳幼児の神経の発達に関する基礎知識,さらに近年の乳幼児健診の大きな目的となっている「子育て支援」や「発達障害児の早期発見・支援」に役立つ知識も網羅している.改訂10版では,改訂版身体診察マニュアルの解説など,乳幼児健診の場で必須となる最新情報を盛り込んだ.
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序文
改訂10版の序
本書は1979年1月に初版本が発刊されている.当時,私は医学部の1年生であった.それ以来,今日で43年もの年月が経ったことになるが,本書は改訂10版を刊行する運びとなった.そして私はもうすぐ定年退職を迎える.つまり本書は一人の医師人生よりも長きにわたって,多くの読者にご利用いただいていることになる.
凄いことである.
研修医の頃に本書をむさぼり読んだ記憶がある.子どもたちの所見をどのように取ったらよいか,手探りで研鑽を進める中で,本書に出会った.ページを開くと,ふんだんに赤ちゃんや幼児の写真が載せてある.イメージがつかみやすくて,それが実に役に立った.当時も今も,これだけ多くの写真を掲載して解説してある本は少ない.
改訂7版から私も執筆を担当している.初版本の頃にはなかった発達障害という概念が登場し,乳幼児健診に新たな役割が加わった.これについては,順次,「発達障害の診かた」,「5歳児健診の実際」を加筆した.
現在の乳幼児健診の目的の一つは育児支援である.子育て支援を行うには子どもがどのようにして育つかを知り,月齢に応じて適切な支援を行うことが必要である.そのために必要な知識として情緒の発達(Bridgesの説),心理社会的発達(Eriksonの説),欲求5段階説(Maslowの説)など主な理論を前川喜平先生が改訂9版で記載された.
改訂10版では,厚生労働省の研究班で作成された「乳幼児健康診査改訂版身体診察マニュアル」の解説を加えた.今後は医療情報のデジタル化が進むものと思われ,ビッグデータ化して活用するための規格の統一が求められるようになっていく.各自治体で工夫を重ねてこられた乳幼児健診であるが,コアになる部分の診察項目は統一して,全国での動向を経年的に把握できるようにしておくことが,健康格差を是正するためにも必須となってきている.
また,最近では視覚や聴覚についても,新しい医療機器の導入が始まろうとしている.子どもたちに負担をかけることなく短時間で正確な検査結果が得られるようになってきた.こうした進歩によって医師は所見を取ることに時間をかけるのではなく,丁寧な説明に時間を使うことができるようになる.これも子育て支援の一つであろう.
本書が常に進歩する乳幼児健診の子育て支援と発達障害児の早期発見・支援に役立つことを願ってやまない.
最後に,本書についてお気づきの点があればご指摘いただければ幸いである.
2022年8月
小枝達也
目次
第1部 これからの乳幼児健診に必要な知識・技能
I.これからの乳幼児健診
1 母子保健施策の理念と「健やか親子21」
2 子育て支援の中心的役割
3 乳幼児健診の質の向上とチームアプローチ
4 施行者からみたこれからの乳幼児健診
5 受ける側からみたこれからの乳幼児健診
6 低経済成長時代の乳幼児健診
7 公的乳幼児健診の意義の自覚
8 子どもはどのようにして育つか:子どもの発育に必要なふれあいと関係性
9 「健やか親子21(第2次)」における重点課題
10 乳幼児健康診査における今後の変更点
11 改訂版身体診察マニュアル
II.子どもの発育を理解するために必要な理論
1 心理社会的発達理論(エリクソンの説)
2 情緒の発達(ブリッジスの説)
3 マズローの欲求5段階説
III.健康指向の健診の実際
1 身体発育の解釈
2 発達の解釈
3 境界児の解釈
4 機能訓練,療育の考え方の再考
5 生活のリズム
IV.要支援家庭の早期発見と対応
1 要支援家庭とは
2 不適切養育(虐待)の早期発見と対応
V.育児支援の実際
1 育児支援とは
2 育児支援効率化のための階層化
3 支援に必要なコミュニケーション技法と態度
4 育児相談
5 育児不安への対応
6 発達に問題がある児の家族への対応
7 新生児訪問と「こんにちは赤ちゃん」事業による家庭訪問
8 医療・福祉,NPOとの連携
VI.心の健康のチェックと対応
1 乳幼児の発達過程
2 乳幼児の心の発達の概要
3 乳幼児の心の発達チェックと対応
4 対 応
5 心の発達と社会性・耐性の発達の評価
第2部 乳幼児健診に必要な医学的知識
I.配偶子病(染色体異常)
II.遺伝病
III.胎児に影響を及ぼす因子
1 感染症
2 薬物および化学物質
3 母親の疾病と栄養障害
4 放射線
5 重症妊娠高血圧症候群
6 喫煙,アルコール
7 臍帯,胎盤の異常
IV.低酸素性虚血性脳症
V.低出生体重児と子宮内発育遅滞
VI.アプガースコアとその意味
VII.脳障害のときにみられやすい新生児期の症状
VIII.無症状性神経学的異常の診断
1 在胎週数の評価
2 新生児の行動および反応による評価
3 泣き声
4 哺乳力
5 微細発作
IX.新生児期における神経学的異常と予後
1 脳障害の可能性のある因子あるいはハイリスク因子
2 脳障害のときにみられやすい症候および症状
3 神経学的異常所見
4 脳性麻痺と新生児期の頭部エコー所見
第3部 乳幼児健診に必要な発達神経学的知識
I.神経の発達
1 脳の構造のあらまし
2 神経の発達
3 脳の発達,その可塑性と敏感期
4 発達における神経細胞・シナプスの過剰産生,消失とその意義
5 子どもの発達に影響を与える因子
II.姿勢の発達
1 腹臥位
2 這い這い
3 仰臥位
4 座 位
5 水平抱き
6 立 位
III.反射の発達
1 脊髄反射
1)把握反射
2)magnet reaction
3)逃避反射
4)交差性伸展反射
5)踏み直り反射
6)歩行反射
2 脊髄・橋レベルの反射
1)Moro反射
2)対称性および非対称性緊張性頸反射
3)緊張性迷路反射
3 その他の原始反射
1)乳探索反射
2)吸引反射
4 中脳レベルの反射
1)頸の立ち直り反射
2)視性立ち直り反射
3)迷路性立ち直り反射
4)頭への身体の立ち直り反射
5)身体の立ち直り反射
6)Landau反射
7)パラシュート反射
5 皮質レベルの反応
1)傾斜反応
2)四つ這い平衡反応
3)座位の平衡反応
4)ホッピング反応
IV.神経の発達と行動発達
1 行動発達
2 乳幼児の心の発達
第4部 神経学的発達チェック法
I.基本事項
1 乳幼児健診の目的と意義
2 正常発達の評価
3 乳幼児健診におけるkey ageの条件とその設定
4 乳幼児健診におけるローリスク児とハイリスク児にみられやすい疾患
5 各月齢別チェックリストの作成
6 母子手帳の利用の仕方
II.各月齢別のチェックポイント
1 1か月児のチェックポイント
2 2か月児のチェックポイント
3 3~4か月児のチェックポイント
4 5か月児のチェックポイント
5 6~7か月児のチェックポイント
6 8か月児のチェックポイント
7 9~10か月児のチェックポイント
8 11か月児のチェックポイント
9 12か月児のチェックポイント
10 1歳3か月児のチェックポイント
11 1歳6か月児のチェックポイント
12 3歳児のチェックポイント
13 就学児のチェックポイント
III.正常発達の個人差と種々のパターン
1 正常発達の個人差
2 個人差の診断
3 正常な個人差と境界児との相違
4 発達における個人差の幅
5 発達の個人差のいろいろ
第5部 発達の遅れの原因と診断
I.乳児期における脳障害の早期診断
1 脳障害児の概念とその臨床症状
2 脳性麻痺的脳障害児と知的障害的脳障害児
3 脳性麻痺的脳障害児の診断(ZKS)
4 知的障害的脳障害児の早期診断
5 重症心身障害児の早期診断
II.脳性麻痺(CP)の診断
1 姿勢の異常
2 反射の異常
3 筋トーヌスの異常
4 Vojta法
5 CP診断の時期
III.知的障害の診断
1 周囲に対する関心が鈍い
2 手を伸ばして物をつかまない
3 運動発達の遅れと反射の成熟の遅れ
4 幼児期
IV.フロッピーインファントの診断
1 筋トーヌスの診かた
2 症 例
3 フロッピーインファントの特徴
4 フロッピーインファントの原因と分類
V.言葉の遅れ
1 言葉の獲得
2 言葉の遅れの原因
3 言葉の遅れの鑑別
4 言葉の遅れへの対応
VI.発達障害の診かた
1 発達障害とは何を指すのか?
2 自閉スペクトラム症の診かた
3 注意欠如・多動症(ADHD)の診かた
4 限局性学習障害の診かた
VII.視力障害,聴力障害の診かた
1 視覚スクリーニング
Column:フォトスクリーナーの登場
2 難聴のスクリーニング
Column:新生児聴覚検査の導入とあゆみ
第6部 5歳児健診の実際
I.5歳児健診の実際
1 5歳児の診察
2 インタビューについて
3 5歳児健診の実施体制
4 5歳児発達相談
5 ちょっと気になる子へのアドバイス
II.5歳児健診から学校保健への橋渡し
1 事後相談体制
2 学校保健における発達障害
III.就学時健康診断マニュアル
1 就学時健康診断マニュアル(平成29年度改訂)について
IV.神経学的微徴候の診かた
1 神経学的微徴候の検査法
2 随意運動発達検査
第7部 事後措置
I.乳幼児健診のシステム
1 健診の時期
2 一次健診の流れ
3 健診の判定結果
II.事後措置
1 フォローアップの大切さ
2 事後措置の流れ
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書籍情報
- ISBN:9784525288501
- ページ数:346頁
- 書籍発行日:2022年10月
- 電子版発売日:2022年9月30日
- 判:四六変判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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