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これからのバイオエンジニアリング~機械・電気・計測・情報を学ぶ人のための生命科学入門
東京大学バイオエンジニアリング教科書編集委員会 (編) / 羊土社
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内容
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序文
序文
バイオエンジニアリングの重要性は近年ますます拡大しています.なぜならば,それは生命の原理という大きな謎を解き明かす学問であると同時に,長寿高齢社会の諸問題の解決や,生活の質いわゆるQuality of Life(QOL)の向上,環境や食料などの地球的課題の緩和に直結するものだからです.そしてその学習は,小中学校の理科の中で最初のステップが始まり,高校,大学・大学院へと展開されています.しかしこの分野を,暗記が多い,細分化されている,考え方の道筋がわかりにくい,と感じる学生も少なからずいるようです.また,数学や物理学の方がすっきりなじみやすく感じる,と話す学生もいます.
本書は,バイオエンジニアリングの基盤を,その基礎が数学や物理学にあることを意識しながら説明してゆく教科書です.脳の研究で顕著な成果を上げた,イェール大学のネーア(Erwin Neher)は,次のように述べています.「生物学の世界で何が起こっているのかを深く理解しようと思うなら,物理学や化学は知っておかなければなりません.…(中略)…生化学や分子生物学は学校で習う化学とはまるで違います.生化学や分子生物学は固有のテクニックやルールから成り立っています.それらは,数学的テクニックや物理学的アプローチなしでは理解できません.生化学や分子生物学は,今も数学や物理学や化学を基礎に発展しているからです.」(日生誌,66, 3 (2004) 92-95)
現代のこの分野の進展は爆発的です.しかし特に大きなジャンプを伴う発見・発明の基盤は,常に数学や物理学に根差した深い洞察です.暗記ではありません.電気電子情報工学や機械工学などを含めた数学や物理学,特にそれらが用いる論理展開方法や数式がもつ予言能力が果たす役割は絶大です.生命はとても複雑ですが,その複雑な現象の中から重要なポイントを吟味して抽出し,すなわちモデル化して,複雑な対象の本質を理解したり使ったりしてゆくことが大切です.それが新たな発見や発明につながるのです.
本書は,東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の物理系の教員が分担して執筆しました.「機械」「電気・電子」「計測」「ニューラルネットワーク」の4 つの大テーマに沿った構成をとっています.以下の「」は各章で扱う内容です.第1章「軟骨や血管を再生する」は,血管や骨・軟骨などの生体組織の力学的特性に焦点を当て,これらを定量的に解析することの重要性と方法を説明します.第2章「人体をモデル化する,とは?」は,骨格系や血管網といった構造を階層的にとらえながらモデル化して行う,生体力学シミュレーションを取り上げます.第3章「医療ロボットと産業用ロボットの違い」は,医療分野におけるロボット技術を構成するための重要技術とその性能評価の要点を説明するとともに,利用の現状を概観します.
第4章「バイオエレクトロニクスとは?」は,生体および生体関連物質が,電気的にどのような性質を持つか取り上げ,特に電磁波にどう応答するかを考えます.第5章「生体の電気信号を計測する原理」では,細胞膜の電気的特性を理解します.これは神経細胞の活動の基礎にもなるものです.第6章「心電図の原理とは?」では,心臓でどのように電気信号が発生するのか,またそれをどのように計測するのかを理解します.
第7章「超音波イメージングの原理とは?」は,超音波でなぜ体内を見ることができるのか,また何を見ているのか,その原理を理解します.第8章「CT の原理とは?」は,X 線CT などさまざまな生体情報の画像化に広く使われているコンピュータトモグラフィ(CT)の原理と考え方を,超音波CT を例に説明します.第9章「放射線イメージングの原理とは?」は,量子放射線を使う生体イメージングの原理とそこで使われているさまざまな検出器を取り上げます.第10 章「MRI や脳波の計測原理とは?」は,磁気共鳴画像(MRI),脳波,脳磁図を中心に,脳の活動を可視化する方法を説明するとともに,磁気で脳に刺激を与える方法を取り上げます.
第11 章「脳とは何か:モノとしての側面」は,脳細胞の基本的な活動の様子を歴史も顧みながら取り上げ,また実体としての脳の特徴を説明します.第12 章「脳とは何か:コトとしての側面」は,脳の中の神経細胞が作っているネットワーク,すなわちニューラルネットワークの,情報処理機能の例とその基本的な特徴を説明するとともに,お手元のパソコンでシミュレーションしていただきその動作を体感します.
読者の皆さんが,本書によってバイオエンジニアリングの基盤が実は数学や物理学によって成り立っていることを,実感していただければ幸いです.そして,もしかすると苦手意識を感じているかもしれない方々も,本書をきっかけにこの分野に興味と親しみを感じて一緒にこれを開拓してくだされば,望外の喜びです.
2022年8月
著者を代表して
廣瀬 明
目次
第Ⅰ部 バイオメカニクスの基礎
第1章 生体組織のメカニクス【古川克子】
軟骨や血管を再生する
1 生体組織の構成要素とバイオメカニクス
2 生体組織の静的な力学特性の評価
3 生体組織の動的な力学特性評価
4 生体組織の力学特性の非侵襲計測
まとめ
章末問題
第2章 人体の力学モデルと数値解析【高木 周】
人体をモデル化する,とは?
1 階層性をもつ生体の力学
2 生体力学とコンピュータシミュレーション
3 医療機器設計と治療法の検討
4 循環器系のモデリング
5 脳神経系のシミュレーションに向けて
まとめ
章末問題
FDTD 法
第3章 医療ロボティクス【原田香奈子】
医療ロボットと産業用ロボットの違い
1 ロボットに求められること
2 医療ロボットとは
3 医療機器としてのロボット
4 手術支援ロボット
5 リハビリテーション支援ロボット
6 ロボット技術概論
まとめ
章末問題
第Ⅱ部 バイオエレクトロニクスの基礎
第4章 生体およびバイオ関連物質の電気的性質,電磁波と応答【田畑 仁】
バイオエレクトロニクスとは?
1 バイオ “を” 学ぶためのエレクトロニクスとバイオ “に” 学んだエレクトロニクス
2 基礎物性:電気的性質,磁気的性質
3 生体電気信号(膜電位)の発生と等価回路
4 誘電緩和応答
まとめ
章末問題
体脂肪計の原理
第5章 生体系固液界面エレクトロニクス【田畑 仁】
生体の電気信号を計測する原理
1 固体-液体界面現象(固液界面現象)
2 電気二重層(静的固液界面の性質)
3 電解質溶液論(デバイ長の算出)
4 界面導電現象(動的固液界面の性質)
まとめ
章末問題
イオン感応型電界効果トランジスタ(is-FET)を用いたDNA センサ
第6章 心電図と心電図計測【佐久間一郎】
心電図の原理とは?
1 細胞膜電位と活動電位
2 活動電位の伝播
3 体表面電位の計測
4 心電図計測
5 心電計測の応用
まとめ
章末問題
心臓の解剖構造とポンプ機能
第Ⅲ部 バイオイメージングの基礎
第7章 超音波によるイメージング【東 隆,高木 周,廣瀬 明】
超音波イメージングの原理とは?
1 イメージングに用いられる超音波の周波数
2 超音波の伝搬
3 超音波の散乱
4 パルスエコー法による超音波イメージング
5 アーチファクト
6 超音波撮像による血流計測
まとめ
章末問題
第8章 撮像行列を用いた断層撮像法(CT)【東 隆,高木 周,廣瀬 明】
CT の原理とは?
1 散乱波を用いた断層撮像の原理
2 撮像行列で再構成を行うときに前提となる近似
3 リングエコーと従来型超音波エコー法の比較
4 超音波CT のさまざまな撮像モード
まとめ
章末問題
検診における撮像装置の役割分担
検診と精度管
第9章 量子イメージング【高橋浩之】
放射線イメージングの原理とは?
1 量子放射線の性質
2 量子放射線の医療への応用
3 量子イメージングの原理
4 量子イメージングにおける検出器の特性
5 半導体検出器
6 ガス検出器
7 真空中での電子増倍を利用する検出器
8 イメージングスペクトロスコピー用検出器
まとめ
章末問題
第10章 脳機能計測とイメージング【関野正樹】
MRI や脳波の計測原理とは?
1 脳機能計測装置の開発
2 MRI
3 脳波
4 脳磁図
5 近赤外分光法(NIRS)
6 磁気刺激
まとめ
章末問題
第Ⅳ部 ニューラルネットワークの基礎
第11章 脳とニューロン【廣瀬 明】
脳とは何か:モノとしての側面
1 脳とコンピュータの外見的・機能的な違い
2 ニューロン
3 ネットワーク,層構造,コラム構造
4 トポグラフィック・マッピング
5 信号は何か
6 ホジキン・ハクスレー方程式
まとめ
章末問題
第12章 パターン情報表現とパターン情報処理【廣瀬 明】
脳とは何か:コトとしての側面
1 モデル化と形式ニューロン
2 可塑性とヘブ則
3 連想記憶
4 自己組織化マップ
まとめ
章末問題
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書籍情報
- ISBN:9784758121224
- ページ数:237頁
- 書籍発行日:2022年10月
- 電子版発売日:2022年10月21日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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