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- 臨床画像 2023年11月号 特集1:放射線科医がもっているべき 超音波検査の知識/特集2:放射線科医が触れる死後画像(突然死)
商品情報
序文
序説1
日常的に超音波検査に携わる放射線診断医は少数派であろう。しかし,超音波検査は正真正銘,画像診断のモダリティの1つである。MRIには携わるがCTにはまったく触れることがないという放射線診断医はいないと思うが,専門分野にかかわらず,放射線診断医が超音波検査にまったくかかわることがないというのはどうかと思う。
超音波検査は,プローブをあてればとにかく画像は表示されるためか,誰にでもできる簡便な検査法であるとの誤解が多い。かつては「聴診器代わり」などといわれたが,これはまったくの企業のセールストークである。聴診に十分な熟練が必要であるのと同様に,超音波検査は実に術者依存(operator–dependent)の検査法であり,十分な基礎的知識とともに,なによりも鍛錬が必要である。CTやMRIなどでは,まずは写真を撮ってじっくり考えるといったことが可能だが,超音波検査ではリアルタイムで観察しつつ診断し,必要であればキー画像を得るという手法で行われる(極論すれば,診断が確定したのであれば,写真はいらないとすらいえる)。従って,検査が終了した時点で画像診断報告書はすでに頭のなかにできあがっていることになる。このような手法の違いは理解しておくべきである。
また,超音波検査はアーチファクトとの戦いであり,ときに診断に有用でもある。これはMRIに似ている。化学シフトアーチファクトを理解し,逆手にとって利用するためには,物理学的原理を十分に理解しておくことが不可欠であるのと同様に,超音波検査を使いこなそうと思えば,基礎を十分に学ぶことである。幸いなことに最低限の基礎的原理を学ぶことは,MRIよりはやさしく,高校物理の範囲内になんとか収まっている。原理を知らずに検査に携わることの危険性は,MRIを扱うものからすれば容易に理解できると思う。
ほかのモダリティの技術進歩と同様に,超音波検査の進歩にも目を見張るものがある。造影検査の画質向上は実にありがたいし,エラストグラフィは日常的に利用可能となっている。また,整形外科領域への応用は広がる一方であり,まず単純X線写真,次にCT,MRIといった流れであったものが,まず超音波検査となる疾患がすでに少なくない。放射線診断医もぜひこのような進歩についていってほしい。
今回の特集では,対象臓器として最も需要が多いと思われる肝胆膵,乳腺,甲状腺・副甲状腺についての解説,ますます一般化しつつある整形外科領域の総論,IVRistのための利用方法など,それぞれの分野のエキスパートに執筆をお願いした。腹部領域については,特に新技術について解説いただき,造影超音波についてその実際を特に詳しく解説していただくこととした。循環器領域や小児についても機会があればと思っている。この特集を日々の診療に生かしていただければ幸いであり,また,超音波検査に携わる放射線診断医が増えることを期待する。
対馬義人
序説2
厚生労働省の「平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況1)」によると,2018年末時点で医療施設に従事する医師総数は311,963人であり,このうち放射線科医は6,813人,わずか2.2%という。2018年の報告では,放射線診断医1人当たりの潜在的業務量は日本が8,137件と調査対象国のなかで最多であり,米国の2.7倍,世界平均の3.2倍であった2)。これほどに業務過多な放射線診断医に,保険診療業務外である死後画像について負担を強いるのは酷,というのは無理のない話であり,ここ数年の日本医学放射線学会総会(春の総会)で死後画像に関する研究が(少)ないことも納得いく話ではある。
死後画像診断の領域は学術的に未解決の諸問題が今なお散積しており,放射線/法医関連学会では,エビデンスに基づく死後画像診断の確立が喫緊の課題と考えられている。今回,この特集について編集部からお話をいただいたとき,研究テーマがたくさん残されている領域であることを紹介するよい機会と感じられる一方,はたして死後画像診断が放射線診断医にとって今後も必要な学術的領域なのか,あるいは,一時期のブームとしてとらえたほうがよいのか,自問自答せざるをえなかった。
今回4名の先生にお願いし,「放射線科医が触れる死後画像(突然死)」をテーマとして,「死後画像の特徴」,「現状どこまで死後画像診断が進んでいるのか?」,「中枢神経系領域の死後画像診断」,「症例から学ぶ死後画像」を上梓いただいた。各項では,科学的知見に基づいた死後画像の読み方が記されており,たくさんの事例画像をご提供いただいた。その診断の根拠となるエビデンスの多くは日本の研究者から発表された内容であり,これは日本の死後画像の“起源”が海外と異なり特殊であるためと考えられる。海外の研究者が,もっぱら法医学領域の死亡事例に対する研究に取り組んでいるのに対して,日本の死後画像が救急搬送患者の死因究明を目的としたところから発生しているという特徴である。日本の,特に放射線診断医は入院~死後の画像を比較検討できるという,世界のなかでも特殊(特別)な存在であり,院内~死亡に至るプロセスを研究できたと考えられる。今日に至っても,院内死亡に関する死後画像診断で科学的なエビデンスを提示できるのは日本の放射線診断医以外にはおらず,死後画像診断は,日本の放射線診断医が果たさなければならない学問領域の1つと考えることができる。
今回,各先生には傍大な内容をコンパクトに読みやすくまとめていただいたため,いい尽くされていない点もあることにお気付きの先生もいらっしゃると思われる。ぜひご自身でも論文などにあたっていただき,死後画像診断が本当に奥深い領域であることを再確認していただきたい。また,本特集を1つの機会ととらえていただき,読者の先生のsubsupecialityの1つとして加えていただきたい。そして,もし本特集を機に,死後画像に関する研究を始めていただけるとしたなら,今回の特集にかかわった1人として望外の喜びである。
最後に,ご執筆くださいました,髙橋直也先生,石田尚利先生,池辺洋平先生ら,福本 航先生らに,この場をお借りして深謝いたします。
1) 厚生労働省:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/dl/gaikyo.pdf
2) Kumamaru K, et al:Global and Japanese regional variations in radiologist potential workload for computed tomography and magnetic resonance imaging examinations. Jpn J Radiol, 36:273–281, 2018.
兵頭秀樹
目次
特集1:放射線科医がもっているべき 超音波検査の知識 企画編集:対馬義人
序説 対馬義人
肝胆膵領域の超音波検査 太地良佑ほか
乳腺 藤岡友之ほか
甲状腺と副甲状腺 佐竹弘子
造影超音波検査 勝又奈津美ほか
整形外科領域における超音波検査 羽鳥悠平
IVRistのための超音波検査 渋谷 圭
特集2:放射線科医が触れる死後画像(突然死) 企画編集:兵頭秀樹
序説 兵頭秀樹
死後画像の特徴−生前画像と異なる死後変化や心肺蘇生術後変化など− 髙橋直也
現状どこまで死後画像診断が進んでいるのか? 石田尚利
中枢神経系領域の死後画像診断−Case review− 池辺洋平ほか
症例から学ぶ死後画像−死後CTが死因究明に有用であった症例− 福本 航ほか
連載
・何としても読んでもらいたい あの論文,この論文
[第16回]
マリファナの大規模・他施設共同研究の先駆けとして評価される論文 松岡 伸
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書籍情報
- ISBN:9784008004311
- ページ数:108頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2023年10月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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