羅針盤
皮膚科の指導箋100　日常診療の一助に！

皮膚科開業医の外来診療では，患者さん一人あたりの診察時間が5 分程度しかとれないことが多いと思います．そんななかでどうしたら中身の濃い診療ができるのか？　患者さんに満足してもらえるのか？　そんなことを模索しながら，私は患者さんに選んでもらえる医院を目指して30 年間やってきました．

私が開業した時，友人から皮膚疾患別の1 枚刷りのリーフレット（指導箋）を多数もらいました．彼は開業医の息子さんなので，代々工夫した秘伝（？）の指導箋があったわけです．私はそれらを自分の医院仕様にアレンジし，患者指導箋として使ってきました．本誌では，新知見を取り入れ，教科書なども参考にその指導箋を加筆修正し，大学時代から撮りためてきた画像を加えて1 疾患を1 ページにまとめ，皮膚科の基本的な100 疾患の指導箋を掲載しています．とてもポピュラーな疾患から，稀ではあるが写真を使って説明したいような疾患まで，100 の疾患を厳選しました．

本誌は，「皮膚科の指導箋」と「ダーモスコピーのみかた・判定のポイント38」の2 部構成になっています．

「皮膚科の指導箋」では患者さんに説明する各疾患について，1）疾患の概要，2）疾患のポイント，3）生活上のポイント，4）症状がでやすいところ，5）治療法，6）ナースやドクターのワンポイントアドバイス，7）症例写真やイラスト，の7 項目にまとめました．

治療法については，先生方それぞれの疾患に対する考えや治療方針があると思います．そのため，あえて項目の列挙に留めました．患者さんに説明する時に各医院における治療方針を付け加えていただければと思います．

また，症例写真にはとくにこだわりました．3 ～ 4 枚の臨床画像を基本として，部位であれば頭部から足先へ，症状であれば軽症から重度の病態へ，時間経過がある場合には初期から後期になるように上から下に向けて配列してあります．写真で説明しにくい疾患についてはイラストを作成し，なるべく病態の見える化に注力しました．

さらに，診療中にすぐに本誌の該当ページを開けられるように，各疾患を病名の「あいうえお順」に並べ，右ページ端に辞書のようにインデックスをつけました．巻末には索引も掲載してあります．

「ダーモスコピーのみかた・判定のポイント38」では典型的所見を掲載しました．腫瘍病変はもちろんですが，患者さんから質問を受けることが多い皮膚疾患についても取り上げています．ダーモスコピー検査後の画像と本誌とを対比して説明できるように，疾患の特徴をイラストで示すとともに典型的ダーモスコピー画像をアトラスとして掲載しました．

患者さんは医者の話をよく聴いているようにみえても実際に理解できているのは話した内容の1/3 程度と言われています．診察結果を，疾患の要点や生活の仕方，治療法とその見通しなどが記載された指導箋を一緒にみながら説明すれば，患者さんは目と耳の両方から情報が入るので，理解しやすいと思います．下線を引いたり，〇で囲んだりしながら説明していただくことも想定しています．まだ指導箋を作成されていない先生方には，本書をぜひ参照にしていただけたらと思います．また，プライマリケア医の先生方には，本誌をパラパラとめくって見ていただくことで，皮膚科で診察する疾患の概要を把握できると思います．

本誌は医学書であることから，プライベートパーツであっても，あえて隠すことなくそのままの写真を掲載しました．どの臨床写真も個人の特定ができないように十分に配慮していますが，本誌をご使用になられる先生方もご注意のほど，よろしくお願いいたします．

最後に，私の企画を温め編集委員会に推薦してくださった編集部の宇喜多具家氏，企画構成の段階から何度も何度も校正に付き合ってくださった松塚 愛氏，他の編集部の方々に感謝申し上げます．さらに，本誌を完成させるにあたり本誌編集委員長の大原國章先生には多大なるご助言・ご指導をいただき，また，多数の貴重な症例写真をお借りいたしました．それにより患者指導箋100 を完成することができました．大原先生のご厚意に深甚なる感謝を申し上げます．

本誌が皮膚疾患を診察されるすべての先生方の日常診療の一助になれば幸いです．

佐藤　俊次
さとう皮膚科 院長
Visual Dermatology 編集協力者