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臨牀消化器内科 2023 Vol.38 No.2 膵癌の早期診断-診療ガイドラインの改訂を踏まえて

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2023年1月
  • 電子版発売日 : 2023年1月16日
3,300
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商品情報

内容

特集「膵癌の早期診断-診療ガイドラインの改訂を踏まえて」

膵癌の予後は依然として不良である.現在,膵癌の相対5 年生存率は10%前後と報告されている.地域医療圏では“膵癌と診断され5 年生存した患者”を経験している臨床医は少数であり,“膵癌は早期診断できないもの”とその壁の高さを嘆く声を耳にしてきた.

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序文

巻頭言


膵癌の予後は依然として不良である.この事実は私が医師になった1988年当時と現在で大きく変わってはいない.現在,膵癌の相対5年生存率は10%前後と報告されている.一方で,私は2007年から危険因子に着目した『膵癌早期診断プロジェクト(尾道方式)』に関する講演を,全国47都道府県すべてでお話しする機会をいただいたが,地域医療圏では“膵癌と診断され5年生存した患者”を経験している臨床医は少数であり,“膵癌は早期診断できないもの”とその壁の高さを嘆く声を耳にしてきた.

膵癌の予後改善に向けて,化学療法,放射線療法,緩和支持療法など集学的治療の進歩は目覚ましく,近年では遺伝子パネル検査の所見を踏まえた新規治療法の有用性に関する臨床試験も数多く行われており,膵癌の大半を占める進行癌に関する治療成績には一定の改善がみられる.しかし,進行癌における5年生存の壁は依然として非常に高い.癌抑制遺伝子p53を発見したJohns Hopkins大学のBert Vogelstein博士は,最近「最新の膵癌の治療薬ですらほとんどの場合,予後を数週間程度延長することしかできないのが現状である.臨床現場に潜んでいる膵癌の5分の1でも手術可能な段階で発見できれば,どのような新薬よりも膵癌克服に対する貢献は大きい」と述べており,膵癌の真の予後改善には早期診断は必要不可欠と示唆している.

2007年から尾道方式に取り組みはじめて数年後,ある1本の論文が私の目にとまった.2010年10月28日号のNatureに谷内田真一先生(現:大阪大学がんゲノム情報学)が発表された論文1)である.多くの進行癌しか経験していなかった私は,膵癌が正常膵管上皮から非常に短期間に浸潤転移するものと認識していたが,“正常膵管上皮から腫瘍細胞への変化の開始(発癌イニシエーション)から転移能を獲得した悪性化まで,約15年かかると推測される”との内容に大きな衝撃を受けるとともに,発癌初期の臨床徴候(血液・画像・病理学的特徴)を多角的に分析し臨床の現場で共有すれば膵癌の早期診断への体制構築は可能ではないか,と大きな希望を感じたことを記憶している.当時確たる根拠はなかったものの,危険因子を保有する患者には,発癌イニシエーションがみられているのではないか.そう信じて尾道方式を粘り強く継続する決意を固めたことをよく覚えている.

尾道方式と同様に各地で取り組みが始まった膵癌早期診断プロジェクトは,Stage 0およびⅠ膵癌診断症例の増加,外科的切除率の改善,一部では5年相対生存率の改善という成果を生んでいる.早期の診断症例が増加するにつれ,血液・画像・病理学的所見の特徴に関する医療スタッフ間の共有が得られはじめ,2014年には膵癌早期診断研究会(JEDPAC)が発足し,私が医師になった30年前には考えもしなかった“膵癌早期診断を討論する研究会”で熱い議論が交わされている.近年では,膵癌早期診断に興味を抱く若手医師が増加し,Webを使用した勉強会や症例検討も活発に行われている.各地で早期診断された多くの貴重な症例の血液検体,CT,MRI,EUSなどの画像,病理標本は発癌初期の遺伝子変化,画像所見の特徴,病理学的変化の過程を詳細に検討する機会を生み,新規の膵癌早期診断マーカーの開発にも繫がり始めている.

今回の特集では,国内で膵癌早期診断に熱意をもって取り組んでおられる気鋭の先生方にそれぞれの立場から膵癌の早期診断に関する話題を,2022年7月に改訂された「膵癌診療ガイドライン」の内容も踏まえて解説いただいた.本号の内容が臨床に潜在する早期診断例の増加に繫がり,膵癌5年生存率の改善に少しでも寄与することを祈念している.


花田 敬士
JA尾道総合病院消化器内科


【文献】

1)Yachida S, Jones S, Bozic I, et al:Distant metastasis occurs late during the genetic evolution of pancreatic cancer. Nature 467;1114‒1117, 2010

目次

【特集目次】 「膵癌の早期診断-診療ガイドラインの改訂を踏まえて」

巻頭言 /花田 敬士

1.膵癌の早期診断はなぜ必要か/花田 敬士

2.膵癌早期診断のために知っておきたい病理学的知見/大森 優子 他

3.膵癌早期診断のアルゴリズム-「膵癌診療ガイドライン」2022を踏まえて/蘆田 玲子 他

4.膵癌スクリーニングの可能性-早期診断に向けて

(1)リスク因子による絞り込み/佐上 亮太 他

(2)膵癌の早期診断を目指した十二指腸液中バイオマーカー探索/井手野 昇 他

(3)地域発の膵癌早期診断プロジェクト/清水 晃典 他

5.Stage 0,ⅠA膵癌の診断と治療

(1)臨床徴候・画像所見の特徴-多施設共同研究の成績から/菅野 敦 他

(2)USの役割/高山 敬子 他

(3)EUSの有用性/吉田 晃浩,鎌田 研 他

(4)CT,MRIの役割/井上 大 他

(5)ERCPおよび膵液細胞診の役割/芹川 正浩 他

(6)外科的治療を含めた集学的治療/大目 祐介,本田 五郎 他

(7)術後経過観察と長期予後/蔵原 弘,大塚 隆生 他

【コラム】

膵癌早期診断に向けた患者会の活動/眞島 喜幸

【連載】

「胃炎の京都分類」の使い方 第8回 腸上皮化生の内視鏡診断(NBI)/金光 高雄,上堂 文也 他

大腸ポリープに挑む 第9回 大腸鋸歯状病変のマネジメント/佐野 亙 他

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書籍情報

  • ISBN:9784004003802
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2023年1月
  • 電子版発売日:2023年1月16日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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