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- 現場がエキスパートに聞きたいベーチェット病
商品情報
内容
◆「原因不明の難病」であるベーチェット病。徐々に診療面での知見は集まっているとはいえ,日常診療での悩みどころも多いものです。
◆本書は,ベーチェット病の基礎から最新知見,執筆者たちの経験を丁寧に解説しています。
◆ベーチェット病診療をする上での疑問を解決するための1冊です。
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序文
はじめに
本書は,実際にベーチェット病診療に関わり,もう少し深く学びたいという医師を対象として執筆された。執筆者は,わたし自身が研究代表者を務める厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)ベーチェット病に関する調査研究の研究班員を中心に構成されている。内容は「ベーチェット病診療ガイドライン2020」1)の内容を補足する副読本として,あるいはこの分野の研究の最近のトピックスの理解を深めることを目的として企画されている。
1972年,ベーチェット病はわが国で最初に難病に指定された4疾患のうちの1つで,以来,厚生省(その後の厚生労働省)の事業として「ベーチェット病研究班」において研究が継続され,今年(2022年)で50年目の節目の年を迎えている。難病に関する法改正後,臨床研究がその中心となったが,長きにわたり日本のベーチェット病の診療および研究をリードしてきた組織であり,その成果の一部は世界的にもインパクトを与えてきた。
ベーチェット病においては,いまだに「原因不明の難病」という表現をはずすことができていないが,診療面は整備されつつある。2020年時点での診療に関する治験の集大成として,水木前班長が中心となり,“all in one”をコンセプトに「ベーチェット病診療ガイドライン2020」が発表された。残念ながら,ベーチェット病においては治療推奨やガイドラインの根幹をなすべきエビデンスレベルの高い報告が十分にはそろっていない。ほぼ必発である口腔内潰瘍への有効性を主要評価項目としたアプレミラストのRELIEF試験でさえ,国際共同無作為ランダム化試験として行われたが,有効性を期待できるエントリー基準に適合する患者の組み入れは容易ではなかった2)。さらに頻度の低い難治性病態,特に特殊病型においては,その活動性や許容併用薬の制限も加わると,エビデンスレベルの高い試験実施は困難となる。実際,眼病変や特殊病型に対するTNF阻害薬はsingle armのオープン試験を経て,オーファンドラッグとして保険承認されている3~5)。したがって,ガイドライン作成過程においてはエビデンスを重視しつつも,そのエビデンスレベルの低さを補完すべく,各病変のエキスパートの同意度も勘案して作成された。また,ガイドラインの原案の作成が開始された当時の石ヶ坪元班長の“practical for Japanese patients”というもうひとつのコンセプトもあり,完成したものを見ると,2018年のヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の治療推奨改訂版とも少なからず相違点も存在する6)。特に,眼病変や神経病変では大きな違いが見られる。ベーチェット病は多様な疾患であり,EULARの治療推奨の包括的原則にも示されるように,その治療は画一的でなく,病型や重症度に応じて個別化した対応を行うことも重要である。場合によっては,ガイドラインの標準治療から,もうひと工夫ということもあるかと思われる。
一方,病因,病態の基礎的な面では,従来のHLA-B51に加え,ここ十数年,多くの疾患感受性遺伝子が同定されてきたが,その業績の多くに日本の研究者が関わってきた。2010年,日本とアメリカ・トルコのグループの2つのゲノムワイド関連解析研究(GWAS)により,IL-10,IL-12RB2/IL-23R遺伝子領域に疾患感受性アレルが同定されたのを皮切りに,自然免疫系および獲得免疫系にまたがり,次々と疾患感受性遺伝子が同定されるに至った7~11)。これらの成績は病態に自己免疫と自己炎症の要素の双方が関わっていることを支持している。さらに,他疾患との疾患感受性遺伝子の類似性から,MHC-I-opathy12)やBehçet’s spectrum disorder13)などの概念が提唱されるに至り,さらに深く病態が研究されている。本書では,これらのトピックスについても解説を加えている。
本書を読むことで,日頃のベーチェット病診療上の疑問が少しでも解け,また,最近のトピックスを理解することにより,さらに新たな研究の発想につながることを期待したい。
2023年1月
兵庫医科大学病院脳神経外科主任教授 吉村紳一
【文献】
1) 日本ベーチェット病学会, 監, 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)ベーチェット病に関する調査研究班, 他編: ベーチェット病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2020.
2) Hatemi G, et al:N Engl J Med. 2019; 381(20) : 1918-28.
3) Ohno S, et al:J Rheumatol. 2004; 31(7) : 1362-8.
4) Tanida S, et al:Clin Gastroenterol Hepatol. 2015; 13(5) : 940-8.e3.
5) Hibi T, et al:Medicine(Baltimore).2016; 95(24) :e3863.
6) Hatemi G, et al:Ann Rheum Dis. 2018; 77(6) : 808-18.
7) Mizuki N, et al:Nat Genet. 2010; 42(8) : 703-6.
8) Remmers EF, et al:Nat Genet. 2010; 42(8) : 698-702.
9) Kirino Y, et al:Nat Genet. 2013; 45(2) : 202-7.
10) Kirino Y, et al:Proc Natl Acad Sci USA. 2013; 110(20) : 8134-9.
11) Takeuchi M, et al:Nat Genet. 2017; 49(3) : 438-43.
12) McGonagle D, et al:Nat Rev Rheumatol. 2015; 11(12) : 731-40.
13) Manthiram K, et al:Proc Natl Acad Sci USA. 2020; 117(25): 14405-11.
目次
1章 ベーチェット病の臨床
1 はじめに
2 日本における近年の疫学動向
3 粘膜病変(口腔内アフタ,外陰部潰瘍)
4 皮膚病変
5 眼症状
6 関節炎
7 精巣上体炎
8 腸管病変
9 血管病変
10 神経病変
2章 ベーチェット病治療薬を使いこなすには
1 コルヒチン
2 アザチオプリン
3 シクロスポリン
4 TNF阻害薬
5 アプレミラスト
3章 エキスパートに聞きたい
1 Nature vs Nurture
2 自己免疫 vs 自己炎症
3 HLA-B51の診断的意義(ASとの比較から)
4 臨床症状における人種差
5 TNF阻害薬の中止は可能か
6 眼科手術の変遷
7 腸管型におけるTNF阻害薬と副腎皮質ステロイドの使い分け
8 MDS合併腸管型ベーチェット病の治療
9 腸管手術の留意点
10 血管病変に対する抗凝固療法
11 血管病変:手術 vs 血管内治療
12 CPNBのバイオマーカーとしてのIL-6について
13 分子標的薬の可能性(TNF阻害薬,PDE4阻害薬以外)
14 ベーチェット病と妊娠
15 小児ベーチェット病の特徴は
16 ベーチェット病におけるTreat-to-target(T2T)は可能か
17 precision medicineに向けて
18 ベーチェット病と感染症 COVID-19の経験から
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書籍情報
- ISBN:9784784913978
- ページ数:180頁
- 書籍発行日:2023年2月
- 電子版発売日:2023年2月3日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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