医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)

  • ページ数 : 184頁
  • 書籍発行日 : 2023年4月
  • 電子版発売日 : 2023年4月14日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

研修医・指導医にとって、医療現場のバーンアウトに対する理解が深まり、バーンアウトへの向き合い方がわかる。

以前より医療現場の働き方改革についても、活発に議論が行われています。本書は「医師のバーンアウト」問題を広く社会に認知させ、バーンアウトを防ぎ、バーンアウトから立ち直るきっかけとなるよう、米国内科学会(American College of Physicians:ACP)日本支部「Physicians’Well-Being Committee(PWC)」の活動をもとに企画されました。

第1章「医師のバーンアウト」、第2章「バーンアウトのリスク」、第3章「バーンアウトに陥らないために」の3つの章を軸に、医師のバーンアウトについて、その症状はどのようなものか、医師のバーンアウトの実態はどうか、リスク要因には何があるのか、バーンアウトに陥らないためにできることは何か、を丁寧にまとめています。

また、どこから読んでも理解いただけるように、各章ともに項目をできるだけ細分化して解説しています。若手医師はもちろん、指導医レベルの医師、そして職場のバーンアウトを防ごうと思っている方のための内容となっています。

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序文

はじめに


『西部戦線異状なし』という古い映画をご存じでしょうか.ドイツ人作家による同名のベストセラー小説を原作とし1930年に米国で製作され第3回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しています.1979年にはリメイク版が製作され,こちらも1980年のゴールデングローブ賞を受賞しているそうです.私は,確か小学生か中学生の頃,金曜ロードショーのような番組でリメイク版を家族と観た記憶があります.第一次世界大戦中,愛国論を語る老教師の言葉に感化され志願兵として入隊し,凄惨極まる西部戦線に送られたドイツ人の若者の目を通じて戦争の悲惨さを描いた作品です.

この第一次世界大戦(1914~1918年)の最中に発生したのが「スペイン風邪」(H1N1亜型インフルエンザ)です.1918年に突如出現し,瞬く間に全世界にパンデミックを引き起こしました.塹壕の中の兵士たちもその多くが感染し,命を落としました.第一次大戦では約1,000万人の戦死者が出たと推計されていますが,スペイン風邪はわずか3年で3,000万~5,000万人もの命を奪ったと言われています.

それから100年.2019年に中国の武漢で発生した新型コロナウイルス(SARSCoV-2)はこれまでに6億人に感染し,600万人以上の命を奪い,そして今なおその収束は見通せません.日本語で「コロナ禍」と表現されるこのパンデミックは,医師にとってもまさに大きな「禍(わざわい)」となりました.自身や家族への感染リスクとそれに伴う自己隔離,またタクシーの乗車拒否や子息の通園拒否などに代表される地域住民からのスティグマ注)は,医師に身体的・精神的に多大な傷跡を残しました.そして新型コロナウイルス以外にも,過重労働やdificult patientへの対応など医師を取り巻く環境は常に過酷であり,誰がいつバーンアウトしてもおかしくない状況にあると言えます.『西部戦線異状なし』のラストシーン.珍しく静かな雨上がりの戦場,塹壕で息を潜める主人公の近くに蝶が舞い降ります.それをスケッチしようと少し身を乗り出した主人公の頭部を敵狙撃兵の弾丸が貫きます.同日の軍司令部への報告,「西部戦線異状なし,報告すべき件なし」と打電されるところで映画は終わります.

本書は米国内科学会(American College of Physicians:ACP)日本支部Physicians’Well-Being Committee(PWC)の活動をもとに企画されました.執筆者の多くはPWCのメンバーですが,いくつかの項目については専門家の先生に執筆をいただきました.すべての執筆者は医療の現場に身を置く医師です.本書により「医師のバーンアウト」問題が広く社会に認識されること,そして本書のメッセージが,医療現場という名の塹壕の中で震えながら身を潜めている医師のもとに届き,彼ら彼女らがバーンアウトから立ちなおり,また,バーンアウトを防ぐきっかけになることが,執筆者全員の願いです.


2023年3月

執筆者を代表して 牧石徹也

目次

序章 Be a well-being champion

ケース提示

第1章 医師のバーンアウト

1 バーンアウトとは何か?

1)バーンアウトの定義

バーンアウトの歴史と概念

バーンアウトの分類

我が国におけるバーンアウトのとらえ方

バーンアウトの科学と現実

2)バーンアウトの症状

バーンアウトと医師の健康

COVID-19パンデミックとバーンアウト

バーンアウトの尺度

2 データで見る医師のバーンアウトの実態

1)バーンアウトの疫学

医師はどれくらいバーンアウトしているのか?

医師の2人に1人がバーンアウト!?

2)国内外の状況

研究のトピックの変遷

社会的孤立とワークライフインテグレーション

我が国におけるバーンアウトの研究成果

3 医師のバーンアウトがもたらすもの

1)医師自身の人生に関わること

Well-beingやQOLの低下

生き方(キャリア形成)への影響

2)患者安全に関わること

バーンアウトから患者安全を考える

患者安全からバーンアウトを考える

3)組織に関わること

医師の離職と生産性の低下

コスト面から見たバーンアウト

第2章 バーンアウトのリスク

医師にとってのwell-beingの決定要因

1)医師のwell-beingの決定要因

Well-beingとは

Well-beingの決定要因

PERMA理論とは

医師にとってのwell-beingの決定要因

最後に

2)職場環境とバーンアウト

職場環境とバーンアウト

ジョブ・デマンド(仕事の要求)

ジョブ・リソース(仕事の資源)

バランスが重要

3)研修医とバーンアウト

理想の医師像とのギャップ

研修医におけるバーンアウトの蔓延

職場環境と研修医のバーンアウト

職場がとり得る対策

4)Difficult patient encounterとバーンアウト

Difficult patient encounterがもたらす問題 —医師のバーンアウト—

Difficult Patientの要因分析と対応方法

Difficult patient encounterへの対応スキルを獲得するために

5)職場におけるハラスメント

ハラスメントの定義と法制

ハラスメントの実態とバーンアウト

ハラスメントの対策とグレーゾーン

ハラスメント防止のための取り組み—心理的安全性のある職場の文化を育てる

6)医師であること

医師という職業に伴う先入観=期待される倫理観

「医師なのに」というディスコース

「医師だから」というディスコース

医師という仕事自体のストレス

7)日常のルーティン

ルーティンとは

業務の中でのルーティン

プライベートでのルーティン

8)うつ病や不安障害

うつ病

不安障害

9)女性医師とバーンアウト

女性医師のバーンアウト

マイノリティである我が国の女性医師

「家庭と仕事の両立」は女性の課題になりがちである

10)コロナ禍の医師のバーンアウト

はじめに

コロナ禍での医師のバーンアウト要因

時期・集団・個人によりリスク要因は変化する

コロナ禍の影響はすぐに現われるとは限らない —PTSSとPTSD

今後の見通し

第3章 バーンアウトに陥らないために

1 職場に求められること

1)ワークエンゲージメントの重要性

はじめに

ワークエンゲージメントとは何か? —バーンアウトとの関連—

ワークエンゲージメントを高める要因

仕事の資源と個人の資源

エンゲージメントを高めるために —チームの重要性—

おわりに

2)医師の働き方改革

はじめに

我が国における医師の労働時間制限

労働時間制限はバーンアウトを減らすのか?

労働圧縮という新たな問題

おわりに:医師の働き方改革はどこへ向かうのか?

2 自らを守る ~ストレスマネジメントとは~

1)ストレスにどう対処するか?

生理学的ストレス反応

ストレスに向かい合う意義

ストレスにどう対処するか?

おわりに

2)レジリエンスとSense of Coherence(SOC)

レジリエンスとは

Sense of Coherence(SOC)とは?

レジリエンスとSOCとバーンアウト

3)セルフケアの方法

セルフケアとは?

セルフケア……、その前に

様々なセルフケア

セルフケアを行うにあたり、気をつけるべきこと

3 コーチングとバーンアウト

1)なぜバーンアウトにコーチングが必要か?

はじめに ワークエンゲージメントとバーンアウト

バーンアウトに対するコーチング

コーチングはレジリエンスを高める可能性

コーチングはモチベーションを高める可能性

コーチングは基本的な心理療法としての側面を有する

おわりに

2)コーチングの実際

コーチングとは

Level 1 3分間のコーチング

Level 2 基本的なコーチング

事例

おわりに

3)価値観にふれる(目標設定のヒント)

はじめに

価値から目標設定へ

事例

おわりに

4)セルフ・コーチング

はじめに

人生の価値観とミッション

セルフ・コーチング

強み

時間管理

おわりに

5)コーチングQ&A

Q1 コーチングとカウンセリングは、どう違いますか?

Q2 コーチングは無理やりに相手の考えを引き出すイメージですが、どうでしょうか?

Q3 コーチングは型にはまった質問をするので、ぎくしゃくするような感じがします.

Q4 コーチングを行ってはいけない人はいますか?

Q5 コーチングをやっていて、しんどくないですか?

Q6 患者満足度は上がりますか?

Q7 ナラティブ・アプローチとの関連は?

Q8 動機づけ面接を学んでいますが、コーチングを行っても問題ないでしょうか?

Q9 コーチングと治療的自己の関係は?

Q10 コーチング・セミナーやワークショップはありませんか?

Q11 コーチングではもの足りなくなってきました.次に学んだら良い心理療法を教えてください.

Q12 コーチングのエビデンスはありますか?

4 援助希求力

1)援助希求

援助希求とは

医師における自殺リスクと援助希求行動

援助希求を阻害する因子

最後に

終章 バーンアウトかも、と思ったら

あなたへの手紙

COLUMN

1 医療職の職種別バーンアウトの実態

2 ボアアウト(boreout)

3 自分や同僚が診断エラーに遭遇した時

4 上司とソリが合わない~ボス・マネジメントとは

5 効率的なメールの書き方

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書籍情報

  • ISBN:9784765319553
  • ページ数:184頁
  • 書籍発行日:2023年4月
  • 電子版発売日:2023年4月14日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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