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- 集中治療超音波画像診断テキスト
商品情報
内容
ベッドサイドで医師自らが施行する point-of-care ultrasonography(POCUS)は重症患者をICU外へ移動させる必要がなく,集中治療領域でもその有用性が高まっている.本書は集中治療の現場で必要な知識や技術の習得のため,総論では超音波の基礎,各論では心・肺・血管・腹部・脳神経など全身をカバーし,小児エコーとともにショック状態のエコー診断を主要テーマとし解説した教科書である.
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序文
序 文
集中治療領域におけるpoint-of-care としての超音波診断(point-of-care ultrasonography :POCUS)は,従来,心エコーを中心に行われてきたが,近年,肺をはじめ全身に広がり応用されるようになってきている.重症患者の集中治療室外への移動は危険を伴い,多くの準備とマンパワーを要する.その意味でもベッドサイドで施行可能なエコーを活用することは,集中治療の領域では非常に親和性が高く,いたって自然な流れであると言える.近年その有用性が広く認められるようになり,転帰にも影響する可能性が示されてきている.欧米では既にこの領域の資格制度が確立して運用されている.
日本集中治療医学会では,2017年より積極的にセミナー等を開き活動をしてきたが,私が理事長を仰せつかった2020年,超音波画像診断認定制度設立のためのワーキンググループを立ち上げ,本書をまとめて頂いた野村先生を中心に設立準備をして頂いている.おりしも,COVID-19パンデミックにより集中治療の現場は混乱を極める時期であったが,感染対策の観点からもPOCUSが有用であることが実感できた.既に試行としての試験も終え,現在,正式な認定試験に向けて準備を行っているところである.本テキストは,その教科書としての位置づけでもある.幅広く全身をカバーするとともに,集中治療の現場で必要な知識・技術が習得できるように細部にわたって工夫がされている素晴らしい内容となっている.執筆・編集をして頂いた先生方はどなたも集中治療の臨床現場の第一線でご活躍の方々であり,COVID-19対応で極めて多忙な中での作業をして頂いた.この場を借りて,ワーキンググループ並びに関係各位のご尽力に心より敬意と感謝の意を表したい.
日本集中治療医学会は,まもなく創立50周年を迎える.コロナ禍での集中治療科医の活躍もあり,昨年には,「集中治療科」の専門医機構サブスペシャルティ領域の認定,さらには,長年の悲願であった「医師届出票」への追加がなされるなど,「集中治療」の社会におけるプレゼンスはここにきて確実に向上してきている.一方で,本学会が社会的責務を果たす重要性も増してきているということでもあり,質の高い集中治療を提供できる集中治療科専門医を世に送り出すことは学会としての使命である.集中治療科専門医の存在意義の確立と差別化に繋げるためにも,POCUSの知識と技術を身に着けて頂くことは重要と考える.
本書が,広く国民の皆様が質の高い集中治療を享受できる一助となることを期待するとともに,平穏で安寧な日々が一刻も早く訪れることを願ってやまない.
2023年1月吉日
一般社団法人日本集中治療医学会 理事長
西田 修
発刊にあたって
集中治療領域にもpoint-of-care ultrasonography(POCUS)の概念がひろまり,日常診療において医師が自らベッドサイドで超音波診断装置を用いて,早期診断,治療計画の補助およびその治療の適切性の評価を行っている.疾病発症から治療開始まで短時間での対応が必要な部門では医師が自らおこなうPOCUSは有用となる.一般社団法人日本集中治療医学会においては集中治療領域における超音波診断の必要性を重んじ,2017年より年2回集中治療エコーハンズオンセミナーを開催してきた.セミナーはこのテキストに含まれている幅広い超音波診断領域の習得を目的に,各領域診断に秀でている医師が講師となり開催した.残念なことに2020年春の第7回セミナーからCOVID-19蔓延により開催が延期されている.また同時期に年1回行ってきた,⼩児新⽣児集中治療エコーハンズオンセミナーも2020年より開催が延期されている.
超音波診断の教育はCOVID-19により妨げられた反面,実臨床においてはその利用を飛躍的に増加させた.その誘引として超音波診断の侵襲性の低さがあげられる.基礎知識を学ぶことなく,実践でエコー技術が上達した医療者も多いと考える.特に肺エコーは多く活用され,胸部レントゲン写真を毎日撮影することは減少した.実際,COVID-19の蔓延に並行して,多くの肺エコーの研究が発表されている.また,心エコーや血管エコーも活用されている.
このように利用頻度が増えた超音波診断であるが,曖昧な知識で診断を行っている集中治療医も多いと想像する.定性的評価を第一にするPOCUSであるがゆえ,正常と異常が正確に判別できない医師の診断は,逆に治療の妨げになる.そこで本学会では,最低限の超音波の基礎知識と各領域診断の正確性の担保を目的に,集中治療超音波画像診断認定制度を発足させる.セミナー講師を主軸に2020年よりワーキンググループを立ち上げ,集中治療医に必要とされる超音波診断の知識と技術を検討し,このテキストを作成した.内容は集中治療医に求められる超音波の基礎,経胸壁心エコー,気道肺胸郭エコー,血管エコー,腹部エコー,脳神経エコー,小児エコーとともに,即座の判断が必要なショック状態のエコー診断を主要テーマとしている.各領域では,知識技術の習得を目的に,到達目標を掲げ,その目標を達成するための学習内容,そして超音波診断技術認定のための評価項目の順に,認定の学習ガイドとなるよう記述されている.執筆者名にあるように,超音波診断に卓越した集中治療医が長時間費やして作成したテキストであり,ぜひ手にとって超音波画像診断技術向上にむかって学習していただきたい.
2023年1月吉日
一般社団法人日本集中治療医学会 超音波画像診断認定制度設立WG 委員長
野村岳志
目次
Ⅰ 総 論
1 超音波診断(検査)の基礎〈亀田 徹 小林忠宏 長谷川大祐〉
・到達目標
1 超音波診断の基礎を学ぶ意義
2 音響工学の知識
・学習項目
・学習内容
a.音波と超音波
b.パルス波と連続波
c.周波数とパルス繰返し周波数(PRF)
d.空間分解能
e.周波数と分解能および減衰との関係
f.音響インピーダンスと反射
・評価項目
3 プローブとオリエンテーション
・学習項目
・学習内容
a.プローブの特性と選択
b.画像の表示
c.プローブマーカーとスクリーンマーカー
d.プローブ操作法
・評価項目
4 超音波装置の取り扱い
・学習項目
・学習内容
a.検査モード
b.B モード画像の最適化
・評価項目
5 アーチファクト
・学習項目
・学習内容
a.Mirror image
b.多重反射(reverberation)
c.Ring-down artifact
d.音響陰影
e.Twinkling artifact
・評価項目
6 超音波診断と医療安全
・学習項目
・学習内容
a.音響安全について(超音波が生体に与える影響)
b.超音波装置の管理
c.感染対策
・評価項目
Ⅱ 各 論
1 経胸壁心エコー〈山本 剛 野木一孝 時田祐吉 吉田拓生〉
・到達目標
1 経胸壁心エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.左室
b.右室
c.心嚢
d.下大静脈
e.高度の左心系弁逆流
・評価項目
2 描出方法
・学習項目
・学習内容
a.準備
b.基本描出とアプローチ
c.傍胸骨長軸像
d.傍胸骨短軸像(乳頭筋レベル)
e.心尖部四腔像
f.心窩部四腔像
g.心窩部下大静脈長軸像
・評価項目
3 ICU 心エコーにおける各エコー所見から想定できる重要な病態
・学習項目
・学習内容
a.左室過収縮
b.左室収縮能低下
c.右室拡大
d.心膜液貯留,心タンポナーデ
e.下大静脈径
・評価項目
4 ICU 心エコーで推定できる重要な臨床病態とエコー所見
・学習項目
・学習内容
a.高度脱水
b.左室不全
c.右室不全
d.心タンポナーデ
e.急性高度左心系弁逆流
f.心停止蘇生中,蘇生後の原因疾患鑑別
・評価項目
● アドバンスレベル: 心拍出量測定
2 肺エコー〈鈴木昭広 二階哲朗 谷口隼人〉
・到達目標
1 肺エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.肺エコーに必要な超音波の基礎
b.プローブ選択とスキャンゾーン,画像保存方法
c.代表的な画像所見およびサイン
d.健常肺の画像
・評価項目
2 肺エコー各論
● 気胸
・学習項目
a.気胸診断のフローチャートを実行できる
b.POCUS で気胸と間違いやすい病態を理解する
c.気胸検索のフローチャートが適応できない場合を理解する
d.気胸の重症度評価/ ドレーン管理について理解する
・評価項目
● 肋骨・胸骨骨折
・学習項目
a.超音波での肋骨・胸骨骨折評価を実行できる
b.肋骨・胸骨骨折評価時の注意点
・評価項目
● 胸水
・学習項目
・学習内容
・評価項目
● 無気肺
・学習項目
・学習内容
・評価項目
● Sonographic interstitial syndrome(SIS)
・学習項目
・学習内容
・評価項目
3 横隔膜エコー〈鈴木昭広 二階哲朗〉
・到達目標
1 横隔膜エコー総論
2 横隔膜エコー各論
● 横隔膜機能異常
・学習項目
・学習内容
・評価項目
4 気道エコー〈鈴木昭広〉
・到達目標
1 気道エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.気道エコーに必要な超音波の基礎
b.気道エコーにおけるプローブ選択,超音波機器基本設定と基本描出像,画像保存
c.正常な気道の画像所見と構造物
・評価項目
2 気道エコー各論
・学習項目
a.気管挿管の確認
b.反回神経麻痺
c.声門浮腫・気道浮腫
d.超音波ガイド下気道穿刺の利点欠点を理解する
・評価項目
5 胃エコー〈鈴木昭広〉
・到達目標
1 胃エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.胃エコーに必要な超音波の基礎を理解する
b.胃エコーに必要な解剖と超音波の特徴を理解する
c.胃エコーに使用するプローブと特性を理解する
d.矢状断における胃の幽門側の描出像を理解する
e.超音波画像における定性的な胃内容の性状とリスク評価を理解する
f.超音波での液状成分の定量的ボリューム評価法を理解する
・評価項目
6 頸動脈エコー〈渡邊 至〉
・到達目標
1 頸動脈エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.頸動脈と頸静脈の解剖
b.頸動脈エコーの適応と実際
・評価項目
2 頸動脈エコー各論
・学習項目
・学習内容
a.頸動脈の異常所見
b.頸静脈の異常所見
・評価項目
7 腹部・消化器エコー〈真弓俊彦 小淵岳恒 竹井寛和 藤田健亮〉
・到達目標
1 腹部・消化器エコー総論
a.腹腔内出血,腹水貯留
b.腸管麻痺
c.胆嚢炎・胆管拡張
d.腹部大動脈瘤・大動脈解離
2 腹腔内出血,腹水貯留
・学習項目
・学習内容
・評価方法
・診断手順
・評価項目
FAST(focused assessment with sonography for trauma)
3 腸管麻痺
・学習項目
・学習内容
・評価方法
・診断手順
4 胆嚢炎・胆管拡張
・学習項目
・学習内容
・評価方法
・評価項目
5 水腎症
・学習項目
・学習内容
・診断手順
・評価項目
6 腹部大動脈瘤・大動脈解離
・学習項目
・学習内容
・評価方法
・診断手順
・評価項目
8 脳神経エコー TC-CFI〈則末泰博 藤本佳久 星山栄成 堅 良太〉
・到達目標
1 脳神経エコー総論
・学習項目
・学習内容
a.脳神経エコーの臨床応用
b.エコー特性の総論
c.解剖の総論
・評価項目
2 TC-CFI のエコーウインドウと描出方法
・学習項目
・学習内容
a.中脳レベルの描出(側頭骨ウインドウ)
b.Willis 動脈輪の描出(側頭骨ウインドウ)
c.脳底・椎骨動脈の描出(大後頭孔ウインドウ)
d.内頸動脈の描出(下顎角ウインドウ)
e.各血管の血流速度とPI の測定
f.視神経鞘(optic nerve sheath diameter: ONSD)の測定
・評価項目
3 脳神経エコーの実臨床への応用,得られた画像と計測値の解釈(MCA-MFV とLR)
・学習項目
・学習内容
a.解説と測定値の解釈の仕方
・評価項目(MCA-MFV とLR)
4 脳神経エコーの実臨床への応用,得られた画像と計測値の解釈(PI とONSD)
・学習項目
・学習内容
a.解説と測定値の解釈の仕方
・評価項目(ICP 上昇)
9 下肢血管エコー〈方波見謙一〉
・到達目標
1 下肢深部静脈血栓の評価
・学習項目
・学習内容
a.下肢深部静脈血栓における超音波検査の意義
b.下肢深部静脈血栓における超音波検査の適応
c.下肢深部静脈血栓評価に必要な下肢静脈の解剖の理解
d.下肢静脈描出の実際
e.急性血栓と慢性血栓の特徴
f.深部静脈血栓評価のピットフォール
g.COVID-19 における深部静脈血栓症評価の意義
・評価項目
10 ショック〈松本 敬 方波見謙一 笹野幹雄 瀬良 誠〉
・到達目標
1 閉塞性ショック
・学習項目
・学習内容
a.心タンポナーデの評価
b.下大静脈の評価
c.肺塞栓の評価
d.緊張性気胸の評価
・評価項目
2 循環血漿量減少性ショック
・学習項目
・学習内容
a.心収縮の評価
b.下大静脈の評価
c.腹部大動脈の評価
d.胸腹腔内液体貯留の評価
・評価項目
3 心原性ショック
・学習項目
a.心収縮の評価
b.下大静脈の評価
c.肺の評価
・評価項目
4 血液分布異常性ショック
・学習項目
a.心収縮の評価
b.下大静脈の評価
c.肺の評価
・評価項目
5 輸液反応性【アドバンス領域】
・到達目標
・学習項目
・学習内容
a.LVOT-VTI を用いた心拍出量の測定
b.前負荷の変化に応じた心拍出の変化率の算出
・評価項目
11 小児エコー〈黒澤寛史 本村 誠 舩越 拓 竹井寛和〉
1 小児エコー総論
2 心エコー
・到達目標
・学習項目
a.準備
b.注意点
c.基本描出とアプローチ
d.傍胸骨長軸像
e.傍胸骨短軸像
f.心尖部四腔像
g.心窩部下大静脈長軸像
・評価項目
・Advance-1: 動脈管の描出
胸骨上窩長軸像
・Advance-2: 動脈管の描出
傍胸骨短軸像
3 声帯エコー
・到達目標
・学習項目
・評価の基本
・手技および病態評価
・評価項目
4 肺エコー
・到達目標
・学習項目
・評価の基本
・手技および病態評価
・評価項目
5 横隔膜エコー
・到達目標
・学習項目
・評価の基本
・手技および病態評価
・評価項目
6 ショック
・到達目標
・学習項目
・評価の基本
・手技および病態評価
・評価項目
7 神経超音波
・到達目標
・学習項目
・評価の基本
・手技および病態評価
・評価項目
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書籍情報
- ISBN:9784498166509
- ページ数:138頁
- 書籍発行日:2023年3月
- 電子版発売日:2023年5月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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