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- 「こころ」や「精神」を医学する「精神医学」とは何か?―精神科医になることを迷っている人,なったばかりの人,興味がある人のために―
商品情報
内容
「先生はなぜ精神科医になったのですか?」「精神科ではどんなことをしますか?」教科書では学べない,精神科医の楽しさや大変さ,診療の時の心持ちや姿勢を知り,精神科医への道を歩むのか別の道を選ぶのか,自身のなぜ?に答えを見つけるための1冊.入局する医局選びのポイントや開業医,大学病院,精神科専門病院,児童施設など卒後の様々なキャリアなど他にない情報が満載!
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序文
はじめに
巷に精神医学の教科書は溢れている.その多くは精神医学とはどういった学問なのかを説明し,また現在の精神医学の到達点について記載している.無論,こういった情報は重要である.そして本書のタイトルも一見そのような内容になっている.しかし,教科書には載っていない大切な情報も多い.例えば,私たちの精神科教室に見学にくる学生や研修医によく尋ねられる質問として,「どうして精神科医になったのですか?」がある.つまり,何(what? 精神医学では何を学ぶか?)や,どうやって(how? 精神科医にはどうすればなれるのか?)ではなく,なぜ(why? なぜ精神科医になったのか? なぜ精神医学を選んだのか?)への回答である.これらの質問に対しては正解がなく,また個々の精神科医が感じていることも三者三様である.一方で,この,「なぜ」を知ることで精神医学の本当の魅力や価値に近づけるのではないだろうか.そして,こういった情報を提供している書籍はあまりないなと,そんなことを考えているときに本書の出版の提案をいただいた.自分の周囲を見渡して,「なぜ自分が精神科医になったのか?」「なぜこの領域を専門にしているのか?」についての明確な動機をもち,自身の意思や価値観に自覚的な医師は総じて誠実であり,また魅力的である.これは精神科医に限ったことではないが,こういったタイプの医師は使命感が行動に現れるので日々のふるまいをみているとよくわかるのである.目的とする意識が高いので,それを実現するために,頭の中で考えているだけではなく,必ず行動として表現しているからであろう.また,なぜ精神科医になったかを意識している医師は,誰にいわれなくても自身で学び続ける.医師は一生学び続けることが必然であるので,これは思った以上に大切である.
このようなよくある疑問(なぜ精神科医になったのか?)に対して少しでも参考になる情報が提供できないかという思いから本書は生まれた.本書に含まれている項目の多くは,見学にきた若い人たちから寄せられた素朴な質問そのものである.冒頭でも書いたように精神医学に関する書籍であるので,当初は病態や治療に関する最新のエビデンスを含めるべきではないかとも思った.しかし,これらエビデンスは日々刻刻と変化するため,最新の知見を身につけるためには,良質で最先端の情報を自分が操れるようになること,つまり洪水のように膨大な情報から真に重要な情報を選択できるようになるリテラシーを身につけることが重要である.実際,巷のテキストや一般的な書籍に掲載されている情報はおそらく3〜5年ぐらいで古いものになってしまうのではないだろうか.
本書は,教科書には載っていない,精神科医になりたいと思っている人,迷っている人,精神医学に興味を持っている人,なったばかりの人に対して「普段あまり人に話すことのない思い」に近い内容を提供したいという願いから生まれた.執筆者の多くは,普段から一緒に仕事をしている仲間たちである.内容を考え,多くの若い同僚にも原稿を頼むことにした.手前味噌だが,類書のない興味深い書籍に仕上がったのではないかと自負している.
タイトルにあるとおり,精神科医になることを迷っている人,なったばかりの人,精神医学に興味がある方にぜひ手に取っていただきたい.そして,自身のなぜ?に答えを見つけていただきたい.精神科医への道を歩むのか,別の道を選ぶのか,という悩みを解決する一助になれば幸いである.もちろん,その後にどのような道を歩むのかはみなさんの自由である.
2023年6月
名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野 教授 明智龍男
目次
第1章 精神科医キャリアとプロフェッショナリズム
1.精神科医としてのプロフェッショナリズムとは何か?〈明智龍男〉
2.精神科医になってよかった?〈鈴木祐一郎〉
3.精神科医になる人の気が知れないね〈古水克明〉
4.精神科医になった経緯(1):Knows nothing, does nothing〈加藤雄亮〉
5.精神科医になった経緯(2):私は他学部を卒業して精神科医になりました〈勝又隆太〉
6.私は精神科医にならなくてよかった(1)〈川口毅恒〉
7.私は精神科医にならなくてよかった(2)〈市橋 拓〉
8.こんな精神科医になってほしい〈明智龍男〉
9.こんな精神科医であってほしい(1)〈立松理恵〉
10.こんな精神科医であってほしい(2)〈石川貴康〉
第2章 精神科医のこころ
1.精神科医の楽しさ,大変さ・困難さ〈中野有美〉
2.「らしさ」の覚知:精神科医は,何を感じ,考えるのか〈熊木徹夫〉
3.総合病院精神科が果たせる診療以外の役割〈竹内 浩〉
4.処方するときの心構え〈渡辺孝文〉
第3章 精神療法とは何か?
1.精神療法の基本:ケース・フォーミュレーション〈近藤真前〉
2.支持的精神療法〈明智龍男〉
3.認知行動療法(CBT)〈中野有美〉
4.対人関係療法(IPT)〈利重裕子〉
5.曝露反応妨害(ERP)〈橋本伸彦〉
6.アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)〈渡辺孝文〉
7.家族療法(FBT)〈小川晴香,白石 直〉
8.EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)〈中口智博〉
第4章 診療のコツ・面接するときの心構え
1.面接,コミュニケーションはなぜ重要か?〈橋本伸彦〉
2.児童を診るときのコツ〈山田敦朗〉
3.高齢者を診るときのコツ〈仲秋秀太郎〉
4.女性を診るときのコツ〈内田 恵〉
5.大人の発達障害を診るときのコツ〈山田敦朗〉
6.精神科コンサルテーション(身体疾患を有する患者を診るとき)のコツ〈奥山 徹〉
7.家族への配慮の大切さ〈香月富士日〉
8.入院治療を検討するにあたって〈山田敦朗〉
9.10分の外来診療をもっとも効果的にするための私の工夫(1)〈明智龍男〉
10.10分の外来診療をもっとも効果的にするための私の工夫(2)〈山田敦朗〉
11.薬物療法はまず基本をおさえる〈渡辺孝文〉
12.チームアプローチの難しさ 多職種との関わり方〈内田 恵〉
13.2.5人称の臨床〈明智龍男〉
第5章 精神科EBMのすすめ
1.精神科エビデンスの賢いコンシューマーになるために〈古川壽亮〉
2.精神病理学のすすめ〈生田 孝〉
3.研究をすることと大学院進学のすすめ〈今井文信〉
4.製薬会社の薬剤プロモーションを批判的に理解する力を養う〈明智龍男〉
5.文献検索の方法〈白石 直〉
6.文献の批判的吟味〈白石 直〉
第6章 精神科専攻医のための必須知識
1.専門医試験に合格するためのコツ〈鈴木絵梨奈〉
2.燃え尽きないためのセルフケア〈渡辺孝文〉
3.専攻医プログラムを選ぶポイント:置かれた場所では咲けないこともある〈永田浩貴〉
4.入局する際に医局を選ぶ時のポイント〈小川晴香〉
第7章 精神科医のキャリア:実例の紹介
1.精神科専攻医として〈金山千琴〉
2.専攻医を終えて:精神科医5年目〈小川晴香〉
3.大学院生の一日〈今井文信〉
4.結婚,出産と仕事の両立〈松永由美子〉
第8章 卒後キャリアのいろいろ
1.他科から転科して(1)〈夏目弓子〉
2.他科から転科して(2)〈野木村 茜〉
3.大学病院スタッフ〈山田敦朗〉
4.総合病院部長・科長・医長(1)〈竹内 浩〉
5.総合病院部長・科長・医長(2)〈河邊眞好〉
6.緩和ケアチーム(精神腫瘍医)〈内田 恵〉
7.クリニック開業医〈船山 正〉
8.単科精神科病院勤務医〈田伏晶〉
9.精神保健の行政機関〈安井 禎〉
10.児童専門施設〈大槻一行〉
11.心理学部教員〈小川 成〉
12.大学保健管理センター〈中野有美〉
13.産業医〈古澤隆太朗〉
14.あえて精神科医として後悔を語る:若い時にこうしておけばよかった〈橋本伸彦〉
15.精神科医の未来を予測する:精神科医になることを迷っている人への道しるべ〈神庭重信〉
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書籍情報
- ISBN:9784498229488
- ページ数:302頁
- 書籍発行日:2023年6月
- 電子版発売日:2023年6月12日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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