カルニチンのすべて~カルニチン欠乏症を起こさないために~

  • ページ数 : 658頁
  • 書籍発行日 : 2023年6月
  • 電子版発売日 : 2023年6月28日
¥6,600(税込)
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商品情報

内容

カルニチンに関わるすべての医療従者必携書!
カルニチンの発見、基礎から臨床までのすべてをこの一冊にまとめた大全。
知っているようで知らなかった、カルニチンとは何なのか、、、。
是非、ご一読ください!

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序文

刊行にあたって


カルニチンは肉類や乳製品に多く含まれ,生体内で生合成もされる栄養素である。カルニチンは長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への運搬に必須の分子であり,エネルギー産生に極めて重要である。またカルニチンはさまざまな病態でミトコンドリア内に蓄積した有害なアシル基をミトコンドリアの外に排出し,ミトコンドリアの機能を正常に保つ緩衝作用も持っている。さらに最近の研究により,カルニチンには抗炎症作用・抗酸化作用・抗アポトーシス作用などの脂肪酸代謝とは関連しない新しい作用があることがわかってきた。

カルニチンは通常は欠乏することはないが,さまざまな先天代謝異常症,腎臓疾患,肝臓疾患,心臓疾患,消化器疾患などでカルニチン欠乏症が発症することがある。また重症心身障がい児(者)や手術後の患者において,長期間カルニチンを含まない経管栄養剤や中心静脈栄養剤などで栄養管理されている患者ではカルニチン欠乏症が起こりやすい。さらに小児神経領域でのてんかん治療や精神科での気分安定剤として汎用されるバルプロ酸ナトリウムによる高アンモニア血症や肝毒性,ピボキシル基含有抗菌薬による低血糖発作など薬剤性カルニチン欠乏症も多数報告されている。

カルニチンにはエネルギー代謝にかかわる重要な生化学的・生理学的作用があることから,カルニチン欠乏症に陥ると筋力低下,筋けいれん(こむら返り),倦怠感,発育不全などの症状があらわれることがあり,重篤な場合は低血糖発作,高アンモニア血症,心不全や心肥大など生命にかかわる病態を発症することがある。

わが国では医薬品としてのL-カルニチン製剤は,1990年にメチルマロン酸血症およびプロピオン酸血症によるカルニチン欠乏症に対してのみ承認されていた。それら以外の先天代謝異常症や透析,薬剤などさまざまな原因によるカルニチン欠乏症に対しては,わが国では適応外で使用できない状態であった。関連学会からこうしたドラッグラグの解消の要望があり,「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請を受けて公知申請を行い,2011年3月に適応症が「カルニチン欠乏症」に変更された。これにより,幅広いカルニチン欠乏症に使用できるようになった。その後,急性期の患者や透析患者に使いやすい静注製剤や小児が服薬しやすい内用液剤なども開発された。

筆者は2007年から10年間にわたり,こうしたカルニチン欠乏症への適応拡大,新しい剤型開発,カルニチン欠乏症の診断薬の開発と保険適用などに中心となって取り組んできた。また適応拡大後は延べ500回を超える講演会,説明会,学会などでさまざまな分野の医療関係者と交流してカルニチン欠乏症の概念の普及に努めてきた。そうした活動のなかで強く感じたことは,ごく一部の先天代謝異常症の専門医を除いては,多くの臨床医はカルニチンやカルニチン欠乏症についての理解が十分とはいえず,また「ビタミンみたいなものだろう」とか「サプリメントもあるのになぜ医薬品のカルニチン製剤が必要なのだ」など,誤解されていることも多かった。臨床医とともに患者の治療に深くかかわる看護師,臨床工学技士,栄養士,臨床検査技師,薬剤師,理学療法士などにおいても「カルニチンやカルニチン欠乏症とは何なのか,よくわからない」という意見が圧倒的に多かった。カルニチン欠乏症については『カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018』が日本小児科学会から公表されており,そのなかにカルニチンの働きやカルニチン欠乏症の考え方のエッセンスがまとめられている。しかし,『診断・治療指針』としてコンパクトにまとめる必要があり,カルニチン研究の歴史やカルニチン欠乏症に関する詳細な考え方,なぜ欠乏するとこうしたさまざまな臨床症状が発症しやすいのか,どのような症例報告や臨床研究があるのか,などについての科学的・医学的な解説は物足りなさがある。カルニチンは生命の基本であるエネルギー代謝に深くかかわるため,カルニチンの働きやカルニチン欠乏症の考え方を深く理解することは,極めて重要である。しかし,さまざまな分野の医療関係者が,いざカルニチン欠乏症について深く理解しようとしても,特定の分野の簡単な解説や総説はあるが,カルニチン欠乏症やカルニチンに関して基礎から臨床まで幅広くさまざまな分野を網羅し,わかりやすく解説した書物は存在しない。筆者は,これまでのカルニチン製剤に関する取り組みのなかで,日本先天代謝異常学会,日本重症心身障害学会,日本小児神経学会,日本透析医学会,日本腎臓学会,日本肝臓学会,日本循環器学会,日本臨床栄養学会,日本臨床薬理学会,日本精神神経学会などさまざまな学会で中心的に活躍されている非常に多くの先生方からご指導・ご教示いただき,関連する分野のカルニチン欠乏症の実際の症例における診断・治療やカルニチンの投与法などについて学ぶことができた。また,大塚製薬株式会社が原薬を導入しているイタリアのシグマ・タウ社主催のカルニチン欠乏症に関する研究会などで,海外のカルニチン欠乏症の研究者とも交流する機会が数多くあり,多くのことを学ぶことができた。こうした背景から,筆者は医師ではなく臨床経験もないが,これまでの活動のなかで膨大な参考文献などから得たカルニチンに関する科学的・医学的・薬学的知識や,開発過程における貴重な経験などを整理して,わかりやすく1冊の本にまとめることが必要だと考えた次第である。本書を通じて,臨床医をはじめ多くの医療関係者が,カルニチンの働きとカルニチン欠乏症とは何かを深く理解し,ご自身の患者がカルニチン欠乏症を起こさないように配慮していただけると幸いである。またカルニチンの研究史は,エネルギー代謝に深くかかわるこの栄養素についての多くの研究者や臨床医の探求心,熱意と情熱の歴史でもある。本書を通じて,カルニチンという一つの単純な栄養素に関する研究の面白さも感じていただけたら幸いである。

本書をまとめるにあたり,これまでにご指導・ご教示いただいた多くの先生方に感謝の意を表したい。


2023年6月 中山夏樹

目次

第1章 カルニチンの発見

Ⅰ 筋肉抽出物からのカルニチンの発見

Ⅱ カルニチンの化学構造の決定

Ⅲ その後のカルニチンの生理学的作用の研究

Ⅳ 昆虫栄養学におけるカルニチンの生理学的作用の発見

第2章 カルニチン回路の確立

Ⅰ カルニチン回路とは

Ⅱ CPTの発見

Ⅲ カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)の発見

Ⅳ カルニチントランスポーターの発見

第3章 カルニチンとは何か

Ⅰ はじめに

Ⅱ カルニチンの化学構造

Ⅲ カルニチン製剤の塩

Ⅳ カルニチンの物性

Ⅴ カルニチンについての誤解─アミノ酸? ビタミンB類?─

Ⅵ カルニチンが運ぶアシル基とは何か

Ⅶ コエンザイムA(CoA)とは

Ⅷ カルニチンの生化学的・生理学的作用

Ⅸ 遊離カルニチンとアシルカルニチン

Ⅹ 長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への輸送

Ⅺ 有害なアシル化合物の排出とアシルCoA/遊離CoA比率の調節

Ⅻ 医薬品とサプリメントのL-カルニチン

ⅩⅢ アセチル-L-カルニチンとプロピオニル-L-カルニチンについて

第4章 カルニチンのホメオスタシス

Ⅰ はじめに

Ⅱ カルニチンの体内分布とホメオスタシスの全体像

Ⅲ カルニチンの組織含量

Ⅳ カルニチンの食事からの摂取

Ⅴ カルニチンの生合成

Ⅵ 腎臓からのカルニチンの排泄と再吸収

Ⅶ 種々の疾患におけるカルニチンのホメオスタシスの破綻

第5章 カルニチン欠乏症とは何か

Ⅰ カルニチン欠乏症の定義

Ⅱ 二つのタイプのカルニチン欠乏症

Ⅲ カルニチン補充療法の意義

Ⅳ 病因論によるカルニチン欠乏症の分類

Ⅴ カルニチン欠乏症の臨床症状

Ⅵ カルニチン欠乏症の動物モデル

第6章 カルニチンの食欲増進・消化酵素分泌促進作用

Ⅰ はじめに

Ⅱ DL-カルニチン製剤(ビカルネシン)の消化液分泌促進作用

Ⅲ ビカルネシンの食欲増進・体重増加作用

Ⅳ ビカルネシン,D-カルニチンおよびL-カルニチンの消化液分泌促進作用

Ⅴ 日本国内のDL-塩化カルニチン製剤

Ⅵ 消化管運動機能低下・便秘とカルニチン欠乏

Ⅶ オレキシンとカルニチン

Ⅷ カルニチンの食欲増進・消化酵素分泌促進作用に残された課題

第7章 カルニチンの抗炎症作用・抗酸化作用・抗アポトーシス作用

Ⅰ はじめに

Ⅱ 炎症反応における転写因子NF-κBの役割

Ⅲ ストレス応答反応とNrf2-Keap1系

Ⅳ カルニチンの抗炎症作用・抗酸化作用・抗アポトーシス作用

Ⅴ まとめ

第8章 カルニチンの定量法と薬物動態学

Ⅰ はじめに

Ⅱ 古いカルニチンの分析測定法の概説

Ⅲ 現在使われているカルニチン測定法

Ⅳ 経口投与されたカルニチンの吸収と生物学的利用率

Ⅴ カルニチンの体内分布

Ⅵ カルニチンの代謝

Ⅶ カルニチンの排泄

第9章 カルニチンの安全性

Ⅰ はじめに

Ⅱ 食品としてのカルニチンの1日摂取量

Ⅲ カルニチンのリスクアセスメント

Ⅳ カルニチンと魚臭症

Ⅴ カルニチンと動脈硬化

Ⅵ その他のカルニチンの安全性に関する留意事項

第10章 先天代謝異常症におけるカルニチン欠乏症

Ⅰ はじめに

Ⅱ 有機酸血症におけるカルニチン欠乏症の成因と病態

Ⅲ 脂肪酸β酸化の概要とその異常症

Ⅳ 尿素サイクル異常症とカルニチン欠乏症

Ⅴ 先天代謝異常症に対するカルニチンの用法・用量

Ⅵ ミトコンドリア病

Ⅶ その他の先天代謝異常症とカルニチン

第11章 経管栄養・TPN・特殊ミルクとカルニチン欠乏症

Ⅰ 経管栄養・TPN・特殊ミルクとカルニチン

Ⅱ 経腸栄養剤の種類とカルニチン含量

Ⅲ 経管栄養施行中の重症心身障がい児(者)のカルニチン欠乏症の報告

Ⅳ 静脈栄養におけるカルニチン欠乏症

Ⅴ TPNによる肝障害

Ⅵ セリアック病と心筋症

Ⅶ 特殊ミルクによるカルニチン欠乏症

Ⅷ 経管栄養で栄養管理されている患者のカルニチン欠乏症のモニタリング

第12章 バルプロ酸ナトリウムによるカルニチン欠乏症

Ⅰ バルプロ酸ナトリウムの概略

Ⅱ  バルプロ酸による致死性肝毒性(valproate-induced hepatotoxicity:VHT)

Ⅲ  バルプロ酸による高アンモニア性脳症(valproate-induced hyperammonaemic encephalopathy:VHE)

Ⅳ VHTおよびVHEの疫学研究

Ⅴ VHTおよびVHEの発症原因の研究の概観

Ⅵ カルニチン補充療法

Ⅶ 小児てんかん患者へのカルニチン補充療法の推奨

Ⅷ バルプロ酸による無症候性高アンモニア血症

Ⅸ 精神科におけるバルプロ酸による高アンモニア性脳症

Ⅹ アンモニアの中枢毒性

Ⅺ バルプロ酸中毒とカルニチン補充療法

Ⅻ VHTやVHEの発症メカニズム

ⅩⅢ まとめ

第13章 ピボキシル基含有抗菌薬によるカルニチン欠乏症

Ⅰ ピボキシル基含有抗菌薬とは

Ⅱ ピバリン酸の代謝

Ⅲ ピボキシル基含有抗菌薬によるカルニチン欠乏の臨床薬理学的研究

Ⅳ 国内のピボキシル基含有抗菌薬によるカルニチン欠乏症の症例報告

Ⅴ  タンデムマス分析例におけるピボキシル基含有抗菌薬によるカルニチン欠乏症の検討

Ⅵ レギュラトリーサイエンスの観点からの課題

Ⅶ まとめ

第14章 腎不全患者とカルニチン欠乏症

Ⅰ はじめに

Ⅱ 保存期腎不全患者のカルニチン動態

Ⅲ 透析患者のカルニチン動態

Ⅳ 透析患者のカルニチン欠乏症の臨床症状とカルニチン補充療法

Ⅴ 透析患者の入院とカルニチン

Ⅵ 世界における透析患者に対するカルニチン補充療法の状況

Ⅶ わが国の透析治療におけるカルニチン補充の役割

第15章 肝臓疾患とカルニチン欠乏症

Ⅰ はじめに

Ⅱ 肝疾患におけるカルニチン動態

Ⅲ 肝硬変患者の肝性脳症・高アンモニア血症

Ⅳ 肝硬変患者の重度の筋けいれん(こむら返り)へのカルニチンの効果

Ⅴ 肝硬変患者のエネルギー代謝異常とカルニチン投与の効果

Ⅵ  肝硬変患者の栄養状態,QOLおよびサルコペニアへのカルニチン投与の効果

Ⅶ 肝硬変患者の診療におけるカルニチン補充療法の位置付け

Ⅷ NASH,NAFLDとカルニチン

Ⅸ 膵臓がんやNASH/NAFLD関連肝細胞がんとカルニチン動態

Ⅹ まとめ

第16章 循環器疾患とカルニチン欠乏症

Ⅰ はじめに

Ⅱ 虚血性心疾患とカルニチン

Ⅲ 不整脈とカルニチン

Ⅳ 虚血性心疾患におけるカルニチン投与試験のメタアナリシス

Ⅴ 心不全とカルニチン

Ⅵ 末梢動脈疾患とカルニチン

第17章 その他の疾患とカルニチン

Ⅰ はじめに

Ⅱ インフルエンザ脳症とカルニチン

Ⅲ ALSとカルニチン

Ⅳ 慢性疲労症候群とカルニチン

Ⅴ 炎症性腸疾患とカルニチン

Ⅵ アルコール依存症とカルニチン

Ⅶ ADHD/自閉症とカルニチン

Ⅷ 不妊症とカルニチン

第18章 カルニチン欠乏症の診断・治療指針

Ⅰ はじめに

Ⅱ カルニチン欠乏症の診断薬の必要性と診断薬保険適用の経緯

Ⅲ カルニチン欠乏症の診断に適した血中カルニチン分画測定法

Ⅳ 血中カルニチン2分画検査の実際

Ⅴ 酵素サイクリング法を用いたカルニチン2分画検査の保険適用

Ⅵ カルニチン欠乏症の診断・治療の概要

第19章 カルニチンに関する臨床薬理学的課題

Ⅰ はじめに

Ⅱ 医薬品としてのカルニチンの開発史

Ⅲ ドラッグラグ解消の流れとエルカルチンの適応拡大

Ⅳ 小児に使用される医薬品の開発について

Ⅴ カルニチン欠乏症の診断薬の保険適用

Ⅵ まとめ

あとがき

略語一覧

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784865175332
  • ページ数:658頁
  • 書籍発行日:2023年6月
  • 電子版発売日:2023年6月28日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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