Oncologic Emergency A to Z;―腫瘍緊急を知る―

  • ページ数 : 152頁
  • 書籍発行日 : 2023年9月
  • 電子版発売日 : 2023年9月22日
5,500
(税込)
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商品情報

内容

がん診療に携わるすべての医療者たちに捧ぐ本邦初の“腫瘍緊急”本
がんとその治療にかかわる症状と病態――“腫瘍緊急(oncologic emergency)”に焦点を当てた、本邦初の“腫瘍緊急”本がついに完成。分野を横断した医療者たちの知見が集約され、これまで分野別に切り離されて示されることの多かった腫瘍緊急が、初めてその全体像を表す。「2人に1人ががんに罹患する」といわれている本邦において、腫瘍緊急対応は喫緊の課題である。がん診療に携わるすべての医療者の皆様の役に立つ、今まさに必要な一冊。

序文

監修にあたって


がん治療は驚くべき速度で変化し,開発中の治療が治療現場において加速度的に実現される時代を迎えている。そのような時代背景と治療方法の変遷に伴い,治療により出現する有害事象もまた大きく変化している。

腫瘍緊急(oncologic emergency;OE)の領域は救急専門医のみならず,各科専門医がかかわる一般救急医療において重要な位置づけにある。しかし,主治医として診療に携わっているのは腫瘍に関連する各診療科の専門医であり,症状によっては消化器外科,脳神経外科,呼吸器外科,腫瘍内科,一般内科などの専門医による緊急的な処置や手術が必要となる。また,悪性疾患(がん)に罹患する年齢を考慮すると高齢者医療としても重要である。高齢者を中心に在宅でがん治療を行うケースも多くみられ,在宅診療において出現する症状のなかではその緊急対応がきわめて重要である。在宅診療でのがん診療は近年増加しており,緩和ケアや終末期ケアにかかわる内容がとくに多くなっている。ここでは緩和ケア医や訪問診療医がかかわり,その緊急状態に対応する処置には,そこで本人や家族の希望を取り入れながら,社会的な状況も考慮した適切な治療方針の選択が求められる。

このように,腫瘍緊急においては,通常の医療とは少し状況を異にする特別な対応なども配慮されるべきと考えられる。そこで本書では,多くの異なる領域の先生方に腫瘍学(oncology)に特化した救急医療の現実をご執筆いただいた。消化管,肝・胆・膵,呼吸器,脳神経それぞれの専門の外科医,また薬物療法や血液腫瘍,がん免疫療法,泌尿器科の専門医からは専門的な詳説をしていただき,さらに救急医,緩和ケアや在宅治療を専門とする医師,緊急処置として手術にかかわる麻酔科の専門医にもそれぞれの立場でご執筆いただいた。異なる立場で腫瘍緊急の現状と特殊性を解説していただくことにより,それぞれの立場の考え方や適切な対応を知ることができ,さらには患者の家族的・社会的な背景を考慮した治療方針の決定ができると考える。

本書をとおして,腫瘍緊急にかかわるすべての領域の先生方に,通常の個々の診療では気づかない部分の診療にふれていただけるであろう。本書が,がん診療や救急医療にかかわるすべての医療関係者に少しでも役に立つことを心から願っている。


2023年9月吉日

福島県立医科大学医学部地域包括的癌診療研究講座 教授
同消化管外科学講座 教授
会津中央病院がん治療センター 所長
柴田 昌彦



編集にあたって


「なんてこった。ついに,腫瘍緊急の成書を読んだぞ。」

編集を行う人間の特典はその本の最初の読者になり得ることです。この本のすべての原稿が出そろい,活字となって提出された最終原稿を手渡されたあと,私は夢中で全文を読みました。気づいたら4時間がたっていて,私の心に残ったのが文頭の言葉です。

私事で恐縮ですが,以前より腫瘍緊急(oncologic emergency;OE)に興味をもち,発表をし,小文を書かせていただくこともありました。なぜ私にそのようなチャンスがあったかというと,本邦には腫瘍緊急の専門書がなかったからにほかなりません。しかし,ここに完成したのです。私の編集の最後の仕事は,読者としてのこの感動を,これから読者となる皆様にお伝えすることだと考えます。

まず,本書には専門に特化して分野ごと(消化器,呼吸器,脳神経,血液,泌尿器)の腫瘍学に人生をかけてきた医師・研究者の「臨床に基づく知見と科学的洞察」「読者に対するメッセージ」があふれています。それらは,読者に新しい発見と明日の臨床へと向かう勇気を与えてくれるでしょう。それだけでも素晴らしいのですが,本書はそれだけでは終わりません。

分野を横断した医療者の視点(薬理,腫瘍免疫,緩和医療,救急医療,在宅医療,麻酔)が,テキストの半分を占めていることがこの本の特徴です。これにより,分野別で短冊状に切り離されて示されることの多かった腫瘍緊急が,初めてその全体像を読者の前に表すことに成功していると思います。その結果,「なぜ,今,私たちは腫瘍緊急を知らなくてはいけないのか」「腫瘍緊急が社会に及ぼしている意味」「日常診療に潜む腫瘍緊急のサイン」というようなことに関しても,読者は自然と考えが及ぶことでしょう。

この企画を生み出し,素晴らしい執筆者を集めた柴田昌彦先生に最大限の敬意を表さずにはいられません。また,本書は膨大な原稿を整理し,同じ内容や図表が繰り返し出てこないように一冊の本として統一されています。これは,へるす出版編集部の皆さんの本書に対する理解とprofessionalismの賜物です。本当に素晴らしい。

最後に,この本の制作にかかわらせていただいたことを誇りに感じるとともに,深く感謝いたします。


2023年9月吉日

医療法人社団青燈会小豆畑病院 理事長・病院長
日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 臨床教授
小豆畑丈夫

目次

第1章 総 論

はじめに/腫瘍緊急(OE)とは/病態と分類/代表的な腫瘍緊急(OE)/おわりに

第2章 消化器腫瘍外科の立場から

1上部・下部消化管

はじめに/食道疾患/胃疾患/大腸疾患/おわりに

2肝・胆・膵

はじめに/肝細胞がん(HCC)破裂の概要/肝細胞がん(HCC)破裂の治療/おわりに

第3章 呼吸器腫瘍外科の立場から

はじめに/気道狭窄/上大静脈症候群(SVCS)/喀血/がん性胸膜炎/がん性心膜炎/おわりに

第4章 薬物療法専門医の立場から

薬物療法専門医の立場からみた腫瘍緊急(OE)/上大静脈症候群(SVCS)/気道狭窄/電解質異常/脊髄圧迫/消化器系の腫瘍緊急(OE)/泌尿器系の腫瘍緊急(OE)/腫瘍崩壊症候群(TLS)/発熱性好中球減少症(FN)/静脈血栓塞栓症(VTE)/播種性血管内凝固症候群(DIC)/おわりに

第5章 脳神経外科の立場から

はじめに/頭蓋内圧亢進/脳ヘルニア/脳腫瘍に関連した腫瘤効果(mass effect)/血管に関連する合併症/腫瘍性てんかん/てんかん重積状態/内分泌関連合併症/髄膜がん腫症(LM)/治療関連合併症/おわりに

第6章 血液腫瘍科の立場から

はじめに/血球増多による腫瘍緊急(OE)/血球減少による腫瘍緊急(OE)/凝固異常による腫瘍緊急(OE)/その他の造血器腫瘍による腫瘍緊急(OE)/

第7章 泌尿器科の立場から

はじめに/尿路出血/尿路閉塞/おわりに

第8章がん免疫療法の立場から

はじめに/免疫関連有害事象(irAE)/マネジメント/サイトカイン放出症候群(CRS)/急速な腫瘍増大(HPD)の概要/おわりに

第9章 緩和ケアの立場から

はじめに/緩和ケアの概念,歴史的変遷/腫瘍緊急(OE)と緩和ケアの接点/人生会議(ACP)/DNRの概念/“ボタンの掛け違い”の防止対策/緩和ケアチームが遭遇する腫瘍緊急(OE)/生命予後の予測/緩和ケアにおける鎮静/おわりに

第10章 救急医の立場から

はじめに/今後,腫瘍緊急(OE)に向き合う救急シーンが激増する/悪性腫瘍(がん)そのものによって引き起こされる緊急病態/がん治療によって引き起こされる緊急病態/急性疼痛クライシス/救急診療で直面するend–of–life care/おわりに

第11章 在宅医療の立場から

社会の高齢化;本邦の医療の特殊性/本邦の在宅医療/がんと在宅医療/在宅医療における腫瘍緊急(OE)の課題と現状/症例/おわりに

第12章 麻酔科の立場から

はじめに/がんの再発・増殖と周術期管理/腫瘍随伴症候群に対する麻酔の対応/がんによる構造的なものや化学療法,放射線療法(RT)による合併症/分子標的療法と麻酔管理/おわりに

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書籍情報

  • ISBN:9784867190753
  • ページ数:152頁
  • 書籍発行日:2023年9月
  • 電子版発売日:2023年9月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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