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商品情報
内容
評価・診断の基本から,各種外用薬,生物学的製剤など最新の治療まで網羅. 保湿剤の使い分け,寛解導入時と寛解維持期 それぞれの薬物療法,「ステロイド外用薬を塗るのをやめるとすぐに再燃する,ステロイドが効かなくなったときにどうするか」,合併症・感染症の見極めと対応など臨床で出会う疑問や困りごとに答えるコツが満載.
序文
序文
アトピー性皮膚炎の診断や治療薬の選択はそれほど難しくないと思います.アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは定期的に改定されており,その中には標準的な治療方針が提案されています.しかし,多くの皮膚科医や小児科医にとって,アトピー性皮膚炎の診療はまだまだ簡単なものではないのかもしれません.これまで全国でアトピー性皮膚炎に関する講演をしていると,「どうやったら患者さんが外用薬を塗ってくれて,アトピー性皮膚炎の治療が上手くいくのだろうか」,「たくさんある治療選択肢をどうやって患者さんに提案したらいいのだろうか」という医師,看護師,薬剤師の声をもらいます.ガイドラインには正しいことが書いてありますが,エビデンス・ベイスドということもあって実臨床で実践するためのコツについては十分に記載されているとは言えません.例えば,ガイドラインには外用治療の重要性は記載してあっても,外用指導のコツについては記載されていません.プロアクティブ療法についての記載はあっても,具体的にどうやって実践すればよいのかについては記載されていません.外用剤は塗布方法によって効果の差が出やすい治療法なので,外用指導のやり方が治療の成否を分けます.FTUに基づいて塗れば良い,ティッシュペーパーがつくほど塗れば良いという説明では不十分です.プロアクティブ療法では皮疹が無い状態を維持しながら外用薬の塗布回数を減らしていきますが,再燃したときはどう対応するのが良いでしょうか.
本書は,外来の限られた診察時間の中で,アトピー性皮膚炎診療を上手く実践するコツや患者の治療モチベーションを上げるコツについて記載しています.エキスパートの経験を中心に記載していますので,すべての人に当てはまるというわけではないかもしれませんが,診療のヒントが多く記載されています.本書を通して,執筆を担当した全国のアトピー性皮膚炎診療のエキスパートの情熱を感じながら,明日からの診療にお役立ていただけましたら幸いです.
2023年 夏
広島大学病院皮膚科 教授
田中暁生
目次
1章 概要
1アトピー性皮膚炎の病態 〈末廣昌敬 田中暁生〉
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎の炎症の特徴
皮膚の乾燥とバリア機能の低下
痒み
2アトピー性皮膚炎の治療ゴール 〈田中暁生〉
患者が目指しているゴールは?
アトピー性皮膚炎の治療ゴールは「潜在的な炎症がなくなり,再燃をしにくくなった状態」
短期的なゴールと長期的なゴールを設定し,患者と共有する
3乳児,小児,思春期以降におけるアトピー性皮膚炎の違い 〈馬場直子〉
新生児・乳幼児の皮膚の特徴と環境の特殊性
乳児期の症状の特徴
小児期の症状の特徴
思春期以降,青年期の症状の特徴
COLUMN 乳児期の湿疹に対する家族への説明のこつ 〈福家辰樹〉
COLUMN 皮膚洗浄について 〈渡邉 遥〉
2章 診断と評価
1病勢・皮疹の評価 〈片岡葉子〉
病勢・皮疹評価の意義
アトピー性皮膚炎の病勢を構成する要素
病勢評価における注意点
的確な病勢把握に役立つ皮疹のみかた
2寛解の評価 〈片岡葉子〉
アトピー性皮膚炎における寛解とは
治療戦略における寛解の意義
筆者の考える寛解の評価基準とその理由
寛解導入から寛解維持への移行
分子標的治療薬時代における寛解評価:残された課題
3アトピー性皮膚炎診療におけるPRO評価ツールの使い方 〈中原剛士〉
アトピー性皮膚炎をどのように評価するか?
知っておきたいアトピー性皮膚炎のPRO評価スケール
どのように実臨床で使用するか?
3章 治療
A.治療方針
1治療方針を患者と共有するときのコツ 〈田中暁生〉
診療ガイドラインが示すアトピー性皮膚炎の治療方針
初診時に患者と共有するべき最低限の治療方針 ─速やかな寛解導入と寛解維持─
経口JAK阻害薬や抗体医薬について
COLUMN アトピー性皮膚炎患者の通院の間隔について 〈田中稔彦〉
2外用治療の方針 寛解導入期編 〈加納宏行〉
寛解導入=first goal
なぜ,寛解導入をする?
寛解導入の実際
3外用治療の方針 寛解維持期編 〈小澤麻紀〉
重症度に応じた寛解維持期の外用療法
軽症患者の場合
中等症〜重症患者の場合
4検査値を治療に活用しよう 〈福家辰樹〉
アトピー性皮膚炎のバイオマーカー
血清TARC値
血清SCCA2値
アトピー性皮膚炎の長期寛解維持におけるバイオマーカーの活用
B.外用療法
5図解 効果的な外用方法 〈稲葉 豊 村岡響子〉
外用量
外用方向
外用方法
密封療法(occlusive dressing technique:ODT)
教育
6重症度別外用薬の選択 〈益田浩司〉
ステロイド外用薬の使用法
外用部位の注意
ステロイド外用薬以外の選択
7年齢別の外用薬の選択 〈馬場直子〉
外用療法の基本
小児の皮膚の特徴と外用薬の選択
外用薬処方例
COLUMN 人生の転機・ステージのかわりめでのアトピーとの付き合い方 〈村上洋子〉
8ステロイド以外の抗炎症外用薬の特徴 〈末廣昌敬〉
ステロイド以外の抗炎症外用薬の特徴
タクロリムス軟膏の作用機序と開発の経緯
タクロリムス軟膏の特徴
デルゴシチニブ軟膏の作用機序と開発の経緯
デルゴシチニブの特徴
ジファミラスト軟膏の作用機序と開発の経緯
ジファミラスト軟膏の特徴
9タクロリムス外用薬の刺激感に対する対処法 〈田中暁生〉
タクロリムス外用薬とは
タクロリムス外用薬の刺激感の特徴
刺激感の理由
刺激感に対する具体的な対処法
10アトピー性皮膚炎診療における保湿外用剤の種類と使い分け 〈中原剛士〉
アトピー性皮膚炎治療における保湿スキンケアの意義
保湿外用剤の種類と特徴
保湿スキンケアの実際:どのように保湿剤を選択するか?
COLUMN 外用薬の混合,保湿剤の重ね塗りの是非について 〈亀頭晶子〉
11頭部湿疹の対処法 〈武藤 潤〉
ステロイドローション外用方法のコツ
頭部の難治性湿疹への対策
コムクロⓇシャンプーとは
感染症
C.新規全身療法の使い方
12デュピルマブ(デュピクセントⓇ)
a.導入のタイミング 〈村上絵美〉
デュピルマブ導入の基準
デュピルマブ導入前に確認すべき点
b.投与終了の方法とタイミング 〈亀頭晶子〉
デュピルマブの投与終了のために必要なこと
デュピルマブの投与継続について
デュピルマブの投与中止・再開について
c.効きやすい症状,効きにくい症状 〈石氏陽三〉
デュピルマブ(デュピクセントⓇ)の効きやすい症状
デュピルマブの効きにくい症状
13ネモリズマブ(ミチーガⓇ) 〈石氏陽三〉
IL-31の作用
ネモリズマブとは
ネモリズマブの効果
14アトピー性皮膚炎治療におけるJAK阻害薬 〈常深祐一郎〉
JAK-STATシグナル伝達経路
アトピー性皮膚炎治療に使用される経口JAK阻害薬
臨床活用に際しての種々の情報
15デュピルマブ(デュピクセントⓇ)や内服JAK阻害薬の投与目的で紹介されたときの対応〈武藤 潤〉
デュピルマブ(デュピクセントⓇ)とは
内服JAK阻害薬とは
デュピルマブ(デュピクセントⓇ)や内服JAK阻害薬の投与目的で紹介されたときの対応
16デュピルマブ(デュピクセントⓇ)と内服JAK阻害薬の使い分け〈三井 浩〉
両薬剤の共通点
デュピルマブ(デュピクセントⓇ)の特徴
内服JAK阻害薬の特徴
両者の使い分け
17デュピルマブ(デュピクセントⓇ)や内服JAK阻害薬の導入時のコツ〈青木奈津子〉
具体的な治療期間の見通しと,寛解維持の状態を患者に伝える
実際に治療を受けた他患者の体験談を伝える
薬価に見合うだけの価値があることを伝える
D.その他の治療法
18その他の治療 〈青木奈津子〉
免疫抑制剤
紫外線療法
漢方薬
19抗ヒスタミン薬の内服という選択肢〈益田浩司〉
抗ヒスタミン薬とは
アトピー性皮膚炎の痒み
アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬のエビデンス
どのような時に内服するか
使い分けやコツについて
20ステロイド内服の是非 〈鷲尾 健〉
ステロイド内服療法に潜むリスクと対処法
ステロイド-第一世代鎮静性抗ヒスタミン薬合剤の危険性
ステロイド内服療法はどの期間内に収めるのがよいか
各国のガイドラインにみる推奨
なぜ重症例においてはステロイド内服療法を行っても奏効しにくいのか
ステロイド内服療法が必要となる背景を考えてみよう
4章 合併症─感染症の見極めと対処法
1丹毒,蜂窩織炎 〈出来尾 格〉
アトピー性皮膚炎患者における丹毒・蜂窩織炎の特徴
症状
検査
治療方針
2膿痂疹 〈出来尾 格〉
アトピー性皮膚炎患者における膿痂疹の特徴
検査
治療方針
3アトピー性皮膚炎に合併するカポジ水痘様発疹症(ヘルペス性湿疹)〈今福信一〉
カポジ水痘様発疹症とバリア異常
アトピー性皮膚炎に伴うKVEの特徴
アトピー性皮膚炎患者にカポジ水痘様発疹症を疑ったら
単純ヘルペスを同定する検査
アトピー性皮膚炎患者のカポジ水痘様発疹症:治療の考え方
アトピー性皮膚炎患者のカポジ水痘様発疹症:治療の実際
4真菌〈三原祥嗣〉
アトピー性皮膚炎と真菌の関係
体部白癬とは
治療中に生じる体部白癬
体部白癬を疑うポイント
体部白癬の治療
5痤瘡,毛包炎〈古谷喜義〉
毛包炎について
尋常性痤瘡について
マラセチア毛包炎について
具体例提示
6眼の合併症の見極めと対処法 〈天野博雄〉
アトピー性皮膚炎における眼の合併症とは
アトピー眼症(アトピー性眼瞼炎)の臨床
アトピー眼症(アトピー性眼瞼炎)の治療
シクロスポリン(ネオーラルⓇ)内服療法
COLUMN 苔癬化に対する説明と治療 〈田中暁生〉
5章 こんなときどうする
1ステロイド外用薬を塗るのをやめるとすぐに再燃する 〈岸本和裕〉
ステロイド外用薬を塗るのをやめるとすぐに再燃するのはなぜか?
再燃することなく長期的に安定した状態を保つためにはどのように すればよいのか?
2ステロイド外用薬が効かない/効かなくなった 〈加納宏行〉
診断が違う
不十分な悪化因子対策
不適切な治療
不十分なコミュニケーション:塗っていない
本当に薬効が低下した:タキフィラキシー
3寛解維持中につまづいたとき(1) 〈小澤麻紀〉
ステロイド漸減開始が早すぎた患者
ステロイド漸減中にかゆみが再燃してしまった患者
何でもなさそうなところに薬を塗るのは怖いという患者
悪化するのが怖くて薬を塗ってしまう患者
タクロリムス(プロトピックⓇ)軟膏で寛解維持をしたいが,伸びないので塗りにくいという患者
ステロイド軟膏からタクロリムス(プロトピックⓇ)軟膏に切り替えようとしたら痒くなってしまった患者
順調に寛解維持をしていたが急性増悪した患者
4寛解維持中につまづいたとき(2) 〈波多野 豊〉
診断の見直し
外用療法の見直し
増悪因子の検討
全身療法の導入
入院治療
5寛解導入後に出てくる皮疹 〈村上絵美〉
マラセチア毛包炎,痤瘡
汗疱
6それ,本当にアトピー性皮膚炎ですか?
アトピー性皮膚炎にみえてそうでない疾患に注意 〈高萩俊輔〉
アトピー性皮膚炎の鑑別疾患
アトピー性皮膚炎と皮膚T細胞性リンパ腫の類似性
アトピー性皮膚炎と皮膚T細胞性リンパ腫の鑑別の着眼点
皮膚リンパ腫におけるIL-4/IL-13,JAK/STAT経路
どのような患者で皮膚T細胞性リンパ腫を疑うか?
COLUMN ステロイド外用薬と抗菌薬の混合について〈田中稔彦〉
6章 患者とのかかわり 患者教育,不安と思い
1学校,幼稚園,保育所と連携するメリット〈大川 司〉
学校,幼稚園,保育所との連携の重要性
見逃されているアトピー性皮膚炎
学校生活におけるアトピー性皮膚炎の特徴
学校生活におけるさまざまな悪化要因
学校,幼稚園,保育所との連携の実際
2不安や思いに寄り添うコツ 〈堀 仁子〉
アトピー性皮膚炎患者の不安
皮膚科心身症とは
皮膚科心身医学的アプローチとは
不安や思いに寄り添う具体的な方法
3ステロイド忌避,脱ステロイドって? 〈大矢幸弘〉
ステロイド忌避,脱ステロイドとは
アトピー性皮膚炎と気管支喘息におけるステロイド忌避の違い
気管支喘息ではなぜステロイド忌避が克服できたか
アトピー性皮膚炎と身長抑制
脱ステロイドの副作用の怖さを知るべき
重症患者に弱いステロイド外用薬を処方するとステロイド忌避をもたらす
TOPICOPについて
4ステロイド外用薬ってこわい薬? 〈水野隼登〉
ステロイド外用薬のこれまで
ステロイド外用薬による注意すべき副作用
ステロイド外用薬による副作用のよくある誤解
ステロイド外用薬を安全に,効果的に使用するために
COLUMN 色素沈着に対する説明と指導 〈村上絵美〉
5民間療法の実際,民間療法について聞かれたら? 〈大矢幸弘〉
なぜ民間療法について聞くのか
アトピービジネスが多い
漢方薬は民間療法ではないが
鍼灸と整体
その他の東洋医学的治療
温泉療法
海洋深層水,海水浴療法
水素水
中国製の成分不明の外用剤
6遺伝する? 遺伝しない? 家族への説明のコツ 〈村上洋子〉
遺伝的要素
外的要素
7スキンケアのポイント 〈波多野 豊〉
角層の健康を維持することの重要性について
スキンケアの考え方
スキンケアの位置づけ
スキンケアの実際
COLUMN 脱毛,剃毛について 〈渡邉 遥〉
8悪化因子とのかかわり方
(汗,ほこり,ストレス,ペット:食物を除く)〈三井 浩〉
アトピー性皮膚炎悪化因子の検索
各悪化因子に対する具体的な対処法
COLUMN 衣服の素材と洗濯について 〈亀頭晶子〉
9食物アレルギーとアトピー性皮膚炎 〈松尾佳美〉
小児の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎
成人の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎
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書籍情報
- ISBN:9784498063860
- ページ数:232頁
- 書籍発行日:2023年9月
- 電子版発売日:2023年9月21日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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