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商品情報
内容
序文
序文
「三尖弁閉鎖不全症」─ 一度は“forgotten valve”とまでよばれた三尖弁ですが,経カテーテル的治療の革新的な開発により,この領域は心臓弁膜症治療の最先端として注目を集めています。わが国でも,経カテーテル的治療の到来はすぐそこに迫っており,これからの展開に大いに期待が寄せられています。
2010年代に欧米で始まった経カテーテル的治療は,経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の成功,複雑な形態をもつ三尖弁の適切な画像化,そして経カテーテル的治療器具の大幅な改良という3つの要素に,新たな経験の集積が結実し飛躍的な進歩を遂げました。そして,これからの数年で,その効果と限界がさらに明確に浮かび上がることでしょう。もちろんその背景には,心臓血管外科のたゆまぬ努力があり,その成果が活かされていることはいうまでもありません。
しかし,この古くて新しい領域に関する情報は,論文や学会だけでは十分に網羅できず,包括的な参考資料の不足を感じていました。そこで現在のターニングポイントに立つハートチームの皆さまに向けて,三尖弁閉鎖不全症の全貌から診断,そして治療までの最先端の知見を網羅的に整理した「知識の地図」を作ることにいたしました。この出版の必要性に気付かせてくれたのはUniversity Hospital Bonnの杉浦淳史 先生の情熱であり,東京ハートラボで繰り返した多様な参加者との対話だったことを申し添えます。
多世代の先達の知恵と経験を詰め込んだ本書が,新世代のハートチームへの道標となり,共有の知識としての基盤を築く助けとなること,そしてそれが最適な治療選択へと導く一助となることを心から願っています。
2023年8月
東京ベイ・浦安市川医療センター センター長
東京ハートラボ 代表
渡辺弘之
はじめに
本書を手に取っていただいたかたのなかには,忙しい毎日の診療のなかでたびたび出会う三尖弁閉鎖不全症を目の前にして,「重症度をどう評価すればよいのか」,「この右心機能はどう解釈できるのか」,「エコー以外の検査はなにをすればよいのか」と悩まれているかたが多いのではないのでしょうか。
それもそのはず,三尖弁閉鎖不全症はこれまで「忘れられてきた」弁膜症なのです。ほんの10年前を思い出してみれば,ほとんど注目されていなかった,というのが実際かと思います。研修医時代,大学病院の病棟カンファレンスで,上級医が「三尖弁圧較差(TRPG)の数値=三尖弁閉鎖不全症の重症度」という間違った解釈をしていることも少なくありませんでした。それほどに,三尖弁閉鎖不全症の診断に関する情報と関心は乏しかったのです。
また,治療選択肢も非常に限られていました。内科治療は利尿薬のみ,外科治療は周術期死亡率が高く手が出しにくい,というのが三尖弁閉鎖不全症の特徴です。本書を手に取られた皆さんは「治療方針をいつ,どうすればよいのか」,「今後登場する経カテーテル的治療に向けて,なにを評価しておけばよいのか」と考えていることかと思います。
本書のタイトルはそこからきており,「三尖弁閉鎖不全症の治療をみすえ,なにを評価していけばよいのか?」を主にレジデント(研修医)・循環器内科専門医・心エコー技師,そして今日も三尖弁閉鎖不全症による心不全患者の診療に携わるすべてのかたを対象に解説した書籍です。
本書では,以下の点を意識しています。
1つ目は,三尖弁閉鎖不全症を知るための基礎知識です。近年新たに提唱された重症度や原因の分類について学ぶことができます。
2つ目は,常に議論になる右室機能や肺高血圧症についてです。最近の研究で明らかになってきたことを踏まえた横断的な知識を得ることができます。いまだ解決されていないことばかりのこの領域ですが,今後の臨床研究の鍵となる知見などもまとめてあります。 3つ目に,本書の最大の特徴ですが,経カテーテル的三尖弁治療を成功に導くための基礎知識・術前評価・治療戦略をまとめています。経カテーテル的治療の経験と研究が蓄積され,ほかの経カテーテル的治療デバイスや外科治療の必要性がみえてきます。
本書を通読することで,近年発展の目覚ましい三尖弁閉鎖不全症治療の最前線の景色がみられるような,そんな体感を得ることができるかと思います。あるいは,本書が日常診療の一助になれば幸いです。
本書を企画したのは,2022年の春でした。新型コロナウイルス感染症の影響でまだオンラインが盛んだったころ,まさに本書の内容をテーマにしたWebinar(Episode Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)をドイツ・ボンから企画して実施寸前だったのですが,とある事情で白紙となり,途方に暮れていました。そのとき,東京ハートラボの渡辺弘之 先生が救いあげてくれ,さらにそこからさまざまな御縁があり,多くの素晴らしい先生達のご協力を得ることができ,本書を完成することができました。
本書をきっかけに,少しでも三尖弁閉鎖不全症に対する知識と関心が深まり,今後の診療と研究がさらに発展していってくれたら嬉しく思います。
2023年8月
University Hospital Bonn, 指導上級医
杉浦淳史
目次
序章 なぜ今,三尖弁閉鎖不全症なのか? [杉浦淳史]
Ⅰ章 三尖弁閉鎖不全症診療の現在・過去・未来
1 日常診療での内科医の葛藤 [阿部幸雄]
孤立性三尖弁閉鎖不全症(TR)の予後
孤立性TRに対する外科手術
内科医の葛藤
2 外科手術の歴史 [植木 力・田端 実]
三尖弁形成術
三尖弁置換術
三尖弁閉鎖不全症(TR)に対する外科手術はなぜ実施されにくいのか?
3 三尖弁閉鎖不全症治療の未来 [林田健太郎]
はじめに
経カテーテル的三尖弁治療デバイスの概略
今後克服されるべき課題
今後の展望
Ⅱ章 三尖弁閉鎖不全症の診断
1 三尖弁閉鎖不全症を知る① Etiology分類 [泉 知里]
三尖弁閉鎖不全症(TR)の分類と問題点
治療をみすえたTRの分類
診断の手順と問題点
心房性機能性TR
心室性機能性TR
一次性TR
CIED関連TR
2 三尖弁閉鎖不全症を知る② 画像診断と評価 [泉 知里]
なにを評価するか
三尖弁閉鎖不全症(TR)の重症度評価とピットフォール
心エコー図による三尖弁の形態,解剖評価
三尖弁輪の評価
心エコー図以外の画像診断の役割
おわりに
3 三尖弁閉鎖不全症を知る③ 新しい重症度分類 massive/torrential TR [泉 知里]
従来の重症度分類
新しい重症度分類:なぜ出てきたか?
新しい重症度分類と予後
新しい重症度分類と経カテーテル的治療の効果判定
本当にsevereを3つ(severe,massive,torrential)に分ける必要があるか?
Ⅲ章 三尖弁閉鎖不全症の併存症
1 右室機能の評価 [田中 徹]
三尖弁閉鎖不全症(TR)と右室機能
右室機能低下を伴うTRの予後
経カテーテル的三尖弁治療(TTVI)における右心機能とその評価方法
右室(RV)-肺動脈(PA)カップリング
TTVI後の右室機能
2 肺高血圧症の評価 [田中 徹]
三尖弁閉鎖不全症(TR)における肺高血圧症
肺高血圧症の評価・診断
TR患者における肺高血圧症評価の実際
3 肝腎不全の合併と予後との関連 [田中 徹]
三尖弁閉鎖不全症(TR)に伴う臓器障害
TRによる臓器障害のメカニズム
三尖弁外科手術における肝腎不全
経カテーテル的三尖弁治療(TTVI)における肝腎不全
Ⅳ章 三尖弁閉鎖不全症治療の必須基礎知識
1 わが国と欧米のガイドライン 三尖弁閉鎖不全症の治療適応 [宇都宮裕人]
三尖弁閉鎖不全症(TR)に対する包括的評価の重要性
ガイドラインから学ぶTRの治療適応
各ガイドラインで経カテーテル的三尖弁治療(TTVI)の適応はどう記載されているか
2 外科手術の治療適応,介入タイミング,成績 [伊藤丈二]
ガイドラインからみた外科手術の治療適応
現時点での手術適応における問題点
右心不全による臓器障害を考慮した手術介入のタイミング
3 経カテーテル的治療が示すその安全性と有効性 [宇都宮裕人]
経カテーテル的三尖弁治療(TTVI)デバイス
TriClipを用いた三尖弁TEER
TTVIの予後改善効果
4 TriClipの実際:手技の進め方とゴール設定 [宇都宮裕人]
TriClipの基本事項とその解剖学的適応
TriClip手技の進め方:術中経食道心エコー図による治療ガイダンス
術中エンドポイントの設定と術後フォローアップ
Ⅴ章 経カテーテル的治療を成功に導く術前評価と治療戦略
1 術前画像評価ではここをみる 三尖弁形態の評価 [福井美保]
適切な経食道心エコー図検査(TEE)像と画質
三尖弁閉鎖不全症(TR)の重症度,TRジェット部位
TRの原因,メカニズム
三尖弁の形態
右心系機能:右室,右房,肺循環
2 患者選択と治療方針決定の実際 [福井美保]
症例1
症例2
3 治療中のトラブルシューティング ──心エコー図での描出が悪い,leaflet insertion評価,残存TR [福井美保]
術中
術後画像評価
Ⅵ章 三尖弁閉鎖不全症治療を再考する――病態に合わせた治療オプション
1 三尖弁外科手術の最前線 [江石惇一郎,尾長谷喜久子,江石清行,三浦 崇]
三尖弁閉鎖不全症(TR)治療の流れ
三尖弁外科手術の適応
通常のTRには三尖弁輪形成術
テザリングをきたす末期的重症TRには追加手技が必要
重症TRの術前・術後管理
2 経カテーテル的治療で治す三尖弁閉鎖不全症 [桒田真吾]
はじめに
三尖弁閉鎖不全症(TR)の自然歴と予後
TRの治療
弁尖修復術
弁輪形成術
三尖弁置換術
異所性弁置換術
TTVI技術をどう使い分けるか
おわりに
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書籍情報
- ISBN:9784758322058
- ページ数:192頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2023年9月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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