基礎から学ぶ免疫学

  • ページ数 : 289頁
  • 書籍発行日 : 2023年10月
  • 電子版発売日 : 2023年10月27日
4,400
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商品情報

内容

全体像がわかる,本質がつかめる,初学者目線の教科書!
初学者目線の教科書,登場!全体を俯瞰してから各論に進む構成なので,情報の海におぼれません.免疫学の本質が伝わるよう精選された内容とフルカラーの豊富な図表が理解を助けます.免疫学に興味をもつ全ての人に

序文


免疫学は,さまざまな分野の新しい技術,考え方を取り入れながら,この30年で急速に発展してきたため,学生に教えるべき内容が毎年増加し,5年未満という単位で教科書も改訂を繰り返しています.免疫学のように内容が年々変化する基礎教育科目は,ほかには見当たりません.一方で,医学部や薬学部,医療系学部では臨床実習や臨地実習に割く時間が増加したこともあり,免疫学をはじめとした基礎科目の講義時間はほとんど増えていないか,むしろ減少傾向にあります.そのため,限られた講義時間内で,年々増え続ける新しい知見と長年にわたり蓄積されてきた知識をいかにしてバランスよく学生に教えるかということについて,免疫学講義を担当されている多くの先生が,悩みながらさまざまな工夫を凝らして講義を行っておられます.しかし,残念ながら免疫学は複雑で難しいと,苦手意識をもつ学生がたいへん多くいるというのが現状だと思います.また,長年,免疫学講義は医学部が中心となって実施されていましたが,現在では,薬学部や医療系学部においても免疫学講義が多く開講されています.そのため,より入門的要素の強い教科書が必要になっているとも聞いております.確かに,既存の教科書はたいへんすばらしいものが多いのですが,初心者が免疫学の全体像を体系的に学ぶための入門書としては少し難しいものが多いように感じます.そこで今回,僭越ながら,はじめて免疫学を学ぶ医学部,薬学部や医療系学部の学生が容易に通読でき,基礎固めにもなり,免疫学の本質とおもしろさが伝わるようなわかりやすい教科書の作成に挑戦しました.医学部,薬学部,医療系学部をはじめとした多くの学生にとって,本書が免疫学への興味の入り口となることを期待しています.

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がきっかけの一つとなり,いまや免疫やワクチンという言葉を耳にしない日はありません.また,最近は,アレルギーや自己免疫疾患,感染症,がんだけでなく,認知症や循環器疾患などの加齢性疾患の発症,そして,個体の老化と免疫系が密接に関係していることが報告されています.さらに,免疫と予防医学や未病医学,栄養学,環境科学の関係も注目されています.ぜひ,医学部,薬学部や医療系学部の学生だけでなく,農学部や獣医学部,栄養学部の学生,農畜産業や食品産業,健康関連産業などの幅広い分野の方々にも本書を手にとっていただき,免疫学に対する理解を深め,さらに興味をもつきっかけとしていただければ幸いです.


2023年10月

山下政克

目次


序[山下政克]

略語一覧

1章 イントロダクション1 免疫系についてのオーバービュー[山下政克]

1-1 免疫応答の分類

1自然免疫と獲得免疫 2)能動免疫と受動免疫

1-2 免疫系を構成する細胞

1獲得免疫にかかわる細胞 2)自然免疫にかかわる細胞

1-3 免疫系の組織

1一次リンパ器官 2)二次リンパ器官

1-4 抗原受容体の多様性を生み出すメカニズム

1抗原受容体の多様性とは 2)抗原受容体の構造 3)抗原受容体の遺伝子構造

4多様性を生む遺伝子再構成

1-5 サイトカインの概要

1サイトカインの一般的な特徴 2)サイトカインの種類 3)サイトカイン受容体とシグナル伝達分子

1-6 リンパ球トラフィッキングの分子機構

1免疫系の接着分子 2)ナイーブリンパ球の血液からリンパ節への移動 3)炎症部位へのT細胞移動に関与する接着分子

章末問題

2章 イントロダクション2 生体防御における免疫系の役割[山田武司]

2-1 免疫記憶とワクチン

1免疫記憶の特徴としくみ 2)T細胞の免疫記憶 3)B細胞の免疫記憶 4)ワクチンのしくみと効果 5)ワクチンの種類

2-2 感染免疫

1感染免疫とその種類 2)細菌感染 3)ウイルス感染 4)真菌感染 5)寄生虫感染

2-3 炎症

1さまざまな炎症 2)炎症の要因 3)炎症のメカニズム 4)炎症による疾患とその治療

2-4 がん免疫と免疫療法

1腫瘍の発生と腫瘍抗原 2)がん免疫 3)免疫療法

2-5 移植免疫

1移植免疫の歴史 2)さまざまな移植 3)移植免疫のしくみ 4)移植のための免疫抑制

2-6 免疫系の疲弊,老化

1疲弊と老化 2)疲弊のメカニズム 3)疲弊の解除 4)免疫老化

章末問題

3章 自然免疫[髙岡晃教]

3-1 自然免疫系を構成する因子

1細胞性因子 2)液性因子

3-2 自然免疫系の病原体認識とシグナル伝達

1病原体を認識するパターン認識受容体 2)パターン認識受容体の種類と細胞内シグナル伝達経路 3)自己由来の分子を認識するパターン認識受容体と疾患病態との関連

3-3 自然免疫応答

1感染免疫 2)炎症 3)がん免疫

3-4 自然免疫系から獲得免疫系への橋渡し

章末問題

4章 獲得免疫

4-1 T細胞の抗原認識と主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子による抗原提示[木村元子]

1MHC発見の歴史 2)MHC分子の構造とT細胞による抗原認識 3)MHCクラスⅠ分子によって提示される抗原 4)MHCクラスⅡ分子によって提示される抗原 5)クロスプレゼンテーションとは 6)特殊なMHC分子 7)MHC分子の多型性の生物的な意味

4-2 T細胞の胸腺内分化機構[木村元子]

1胸腺内分化機構の概要 2)胸腺内分化機構の各論 3)胸腺内で自己抗原はどうやって提示されるのか? 4)T細胞受容体(TCR)の遺伝子再構成と多様性獲得メカニズム

4-3 さまざまなT細胞[木村元子]

1制御性T細胞(Treg細胞) 2)ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞) 3)MAIT細胞 4)γδT細胞

4-4 T細胞のシグナル伝達[木村元子]

1T細胞のシグナル伝達経路 2)共刺激分子と抑制性受容体 3)免疫シナプス

4-5 T細胞のエフェクター機能[山下政克]

1T細胞のエフェクター機能獲得のメカニズム 2)ヘルパーT細胞(Th細胞)サブセット 3)細胞傷害性T細胞 4)特殊なCD8 陽性T細胞

4-6 T細胞の局所への遊走[木村元子]

1T細胞は体内を循環する 2)組織に常在するT細胞

4-7 免疫寛容のメカニズム[木村元子]

1中枢性寛容 2)末梢性寛容 3)制御性T細胞(Treg細胞)による免疫抑制機構 4)「疲弊」による免疫抑制 5)生体内で成立するさまざまな免疫寛容のかたち

4-8 B細胞の初期分化とB細胞受容体(BCR)の多様性獲得[常世田好司]

1骨髄におけるB細胞初期分化 2)多様性を生むIg遺伝子の再構成 3)末梢におけるB細胞分化

4-9 特殊なB細胞[常世田好司]

1B-1細胞 2)B-2細胞 3)生体での役割

4-10 B細胞活性化における細胞内シグナル伝達[常世田好司]

1B細胞の抗原認識 2)B細胞のシグナル伝達経路 3)B細胞活性化の多様性

4-11 B細胞のエフェクター機能[常世田好司]

1抗原提示細胞としてのB細胞 2)病原体を効率的に除去するためのクラススイッチ 3)抗体の親和性成熟 4)B細胞による免疫寛容 5)B細胞としての免疫記憶

4-12 形質細胞としてのエフェクター機能[常世田好司]

1T細胞非依存的な形質細胞の分化 2)T細胞依存的な形質細胞の分化 3)長寿命形質細胞 4)形質細胞の細胞内構造 5)抗体としての機能

4-13 B細胞エフェクター機能におけるT細胞の役割[常世田好司]

1ヘルパーT細胞によるB細胞の初期活性化 2)ヘルパーT細胞によるB細胞のクラススイッチや親和性成熟 3)ヘルパーT細胞による形質細胞への分化

章末問題

5章 免疫系の恒常性破綻と疾患,検査,治療

5-1 アレルギー,過敏症[小久保幸太,平原 潔]

1アレルギー疾患の種類と衛生仮説 2)アレルギー反応の4分類 3)アレルギーの治療法・予防法

5-2 自己免疫疾患[木内政宏,平原 潔]

1自己免疫疾患の分類 2)自己免疫疾患の発症メカニズム 3)自己免疫疾患における組織障害メカニズム 4)自己免疫疾患の発症要因と治療

5-3 免疫不全症[岩村千秋,平原 潔]

1先天性免疫不全症 2)後天性免疫不全症 3)免疫不全症の解明に向けて

5-4 免疫疾患検査法[山田武司]

1アレルギー疾患の検査 2)自己免疫疾患の検査 3)免疫不全症の検査

5-5 免疫関連医薬品[小野寺 淳,平原 潔]

1免疫関連医薬品の分類 2)抗炎症作用をもつ医薬品 3)アレルギー疾患の医薬品 4)免疫機能を調節するそのほかの医薬品 5)抗体医薬品 6)細胞療法

章末問題

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書籍情報

  • ISBN:9784758121682
  • ページ数:289頁
  • 書籍発行日:2023年10月
  • 電子版発売日:2023年10月27日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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