introduction

最近の人工股関節全置換術（total hip arthroplasty；THA）の分野では，摩耗を低減したカップや最小侵襲手術（minimally invasive surgery；MIS）に関する報告からアプローチに関しての工夫，手術を安全かつ正確に実施できる機器の開発，新たなインプラントの登場など話題に事欠きません。2017年の本誌11月号（Vol.36　No.11）では「アプローチと最新の機器のトレンド」を取り上げ，その後さらに進化を遂げています。本号では，股関節分野のなかでも特にTHAに興味をもちエキスパートを目指す若手整形外科医のために必要な基礎的な知識から最新の話題を概説することを目的に，「人工股関節置換術のエキスパートを目指そう」をテーマとしました。

現在，臨床の最前線で活躍されている指導医の先生方に執筆をお願いし，THAに関する基礎的事項からインプラント選択やアプローチ，さらに手技でのコツとピットフォールについて重要事項を中心にワンポイントアドバイスとしてまとめていただきました。

また，機器などの概説に加え，特徴と有用な点に焦点を当てることで，新たなアプローチや手術法を検討している読者にとって，コンパクトで有用な特集となるよう編集しました。

項目として，セメント使用の有無，体位・アプローチとインプラントのトレンドと選択，レッグポジショナーの使用の有無など各アプローチの特徴とポイントをまとめており，コンピュータ支援技術としては，ナビゲーションとロボット支援のトピックスについて記載いただきました。さらに，エキスパートになると必ず遭遇する最近増加しているインプラント周囲骨折や再置換術（寛骨臼側・大腿骨側）に関する話題も取り上げています。

新たな人工関節置換術を実施する際に必要な手技などは，各稿を熟読することで診療の一助となるものと考えています。また，イラストや写真を多用した大変わかりやすい内容になっています。ただし，誌面の都合上，合併症としての脱臼，感染などについて取り上げることができなかったことをご容赦ください。

本号は股関節外科医のみならず，人工股関節に興味・関心のある医師・メディカルスタッフを含めたすべての医療関係者にとって意義のある1冊になったものと考えています。

最後に，ご多忙のなかご執筆いただきました先生方に深謝するとともに，本号が人工股関節置換術をする際に傍らに置かれ，読者の皆様方のお役に立つことを祈念し序文の挨拶と致します。

宮崎大学医学部整形外科
帖佐悦男