序文

今月号の特集は清潔間欠導尿（clean intermittent catheterization：CIC）です。泌尿器外科の特集としては変化球かも知れません。

CICは，泌尿器科医であれば頻繁に選択する尿路管理法であると思われます。しかし，泌尿器科系の雑誌や書籍でCICが詳しく解説されているものは少なく，卒後教育プログラムを含む各種の講演会でも，CICのみが取り上げられる機会は非常に少ないと思います。このため，CICの導入を決定し経過観察を行う泌尿器科医，実際の指導や経過観察を行う看護師に，「これを読んでおけば一通りのことが書いてあります」とお薦めできるものが無いのが悩みの種でした。そこで，昨年12月の泌尿器外科の編集会議で，恐る恐る当企画のプレゼンテーションを行ったところ，編集幹事の先生方・泌尿器外科編集部の方々のご理解が得られ特集として採択されました。まずこのことに心より御礼申し上げます。

本特集では，まず，「清潔間欠導尿の適応」，「清潔間欠導尿の合併症の予防・合併症への対処」の2章で実臨床に役立つCICのオーバビューをしていただきました。

CICにはいくつかの種類のカテーテルが用いられます。本特集では，「再利用型シリコン製カテーテル」，「ディスポーザブルポリ塩化ビニル製カテーテル」，「ディスポーザブル親水性コーティングカテーテル」，「再利用型間欠式バルーンカテーテル」を個別に取り上げて解説していただきました。カテーテルの種類別の詳細な解説を目にする機会は少ないと思いますので，それぞれのカテーテルの利点・欠点の実践的な理解につながると思います。なお，再利用型シリコン製カテーテルと再利用型間欠式バルーンカテーテルが普及しているのは先進国では日本のみです。このため，これらのカテーテルの記載は欧米の論文・教科書をいくら探しても出てきません。その意味においても貴重な総説です。

私は縁あって，ストーマ排泄リハビリテーション学会と創傷・オストミー・失禁管理学会に関与しておりますが，両学会とも災害対策の委員会があり活発に活動しています。これに触発されて，本特集でも「災害時の間欠導尿」をTopics 1として解説していただきました。先述の通り，この特集が企画されたのは昨年12月ですが，まさか今年の1月1日に北陸地方で大災害が起きようとは夢にも思っておりませんでした。被災されたすべての方々に心よりお見舞い申し上げますとともに1日も早い復興を祈念しております。自然災害の多い日本における災害時のCICの問題は非常に重要であると再認識致しました。

導尿路の確保の観点から，CICに伴う尿道合併症は可及的に避けたい合併症です。CICの尿道への負担はかなりあると思いますが，尿道合併症に関して詳しく記載されている総説は不思議なほど少ないのが実情です。私自身も困っている患者さんを複数抱えているといった理由もあり，Topicsの2つ目として，「間欠導尿中の尿道合併症への対処」の総説をお願いしました。

執筆期間が短い中，実践的な内容に富む玉稿をお寄せいただいた先生方に深謝申し上げます。

さて，本特集は泌尿器科医のみならず，CICの指導や経過観察に携わられている看護師の皆様にとっても有益な内容であると思います。是非ともご施設の看護師の方々に本書をお薦めいただければ幸甚です。

東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科 関戸　哲利