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- 臨床画像 2024年1月号 特集1:photon-counting detector CT最新症例集/特集2:IVRにおけるAIおよびロボット手術
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内容
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序文
特集1 photon–counting detector CT最新症例集
2000年代に開発が始まったphoton–counting detector CT(PCD–CT)は,2021年にシーメンスヘルスケア社が他社に先駆けて世界で初の実用機をリリースした。日本では,2022年6月に東海大学医学部附属病院で導入されたのを皮切りに,現在では8台以上のPCD–CTの実用機が稼働していると聞く。一方,今年に入って,キヤノンメディカルシステムズ社は国立がん研究センター東病院で,富士フイルムメディカル社は千葉大学で,プロトタイプのPCD–CTによる臨床研究を開始した1,2)。海外では,GEヘルスケア社,フィリップス社もPCD–CTの臨床研究をすでに開始している3,4)。
PCD–CTは,従来のエネルギー積分型検出器CT(energy–integrating detector CT;EID–CT)に代わる次世代CTのプラットフォームと位置付けられるが,その臨床的有用性はどの程度か,画質は改善しているのか,X線被ばくは減るのかなど,PCD–CTを保有していない施設の放射線科医師,診療放射線技師の多くは思っているのではないだろうか。本特集では,わが国で先行してPCD–CTを導入した施設の先生方にお願いして,各領域においてPCD–CTで撮像した症例を提示していただき,どのような点が臨床において有用であったかを解説していただいた。理論的には,PCD–CTはEID–CTよりも空間分解能は向上しX線被ばくを低減することが示されていたが,まさにいずれの論文においてもこれを実際に示す結果となっている。高精細CTは従来のEID–CTのなかでは究極の分解能をもつが,PCD–CTはそれと同等以上の空間分解能をもつにもかかわらずノイズは少ないようである(小林達伺先生)。また,エネルギー分離がよく画像ノイズ特性もよいことから,仮想非石灰化画像(virtual non–calcium image),仮想単色光画像(virtual monochromaticimage;VMI)などの物質弁別(material decomposition)を使った手法においても,EID–CTによる二重エネルギーCT(dual energy CT;DECT)よりも画質が改善していることが示されている。さらに,X線被ばくについては,領域によって30〜80%以上減らせることが述べられている(橋本 順先生,北山貴裕先生)。一方では,臨床における撮像条件,スライス厚,再構成カーネル,VMIにおけるエネルギーレベルの選択などは,各施設で十分な検討が必要なことも示されている(橋本 順先生,菊地紀子先生,北山貴裕先生)。なお,k–edge imagingについては,今回,取り上げた施設はなく,新たな造影剤を使用したイメージングなどは,まだ時間がかかりそうである。読者の方々には,本特集をとおしてPCD–CTの“今”を体感していただければ幸いである。
最後になりましたが,今回,お忙しいなか,ご執筆いただき,インパクトのある症例を提示していただいた先生方に厚くお礼を申し上げます。
企画・編集:粟井和夫 広島大学大学院医系科学研究科 放射線診断学研究室
【文献】
1)https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0411/index.html
2)https://www.fujifilm.com/fhc/ja/news/73
3)https://www.gehealthcare.co.jp/event-and-news/news-and-initiatives/2022/press15
4) Si–Mohamed SA, et al:First Experience With a Whole-Body Spectral Photon–Counting CT Clinical Prototype. Invest Radiol, 58:459–471, 2023.
特集2 IVRにおけるAIおよびロボット手術
画像誘導下治療(interventional radiology;IVR)は,X線やCT,MRIなどの画像をリアルタイムにみながら,低侵襲的に病変までカテーテルで到達し,治療を行う手技である。近年,IVRの分野でも人工知能(artificial intelligence;AI)やロボット技術の応用が活発に進められている。
AIは大量の画像データから特徴を学習することで,病変の自動検出や領域抽出といった画像診断の精度向上に貢献できる。また,カテーテル操作の自動化や,個々の患者に最適化した治療戦略の提案など,IVR手技そのものの支援にも有用性が期待される。一方,ロボット技術は低侵襲性と精密性を向上させ,放射線被ばくの大幅な軽減や人為的ミスの防止にもつながるメリットがある。
日本では岡山大学を中心にCTガイド下IVR用ロボット「ZerobotⓇ」の研究開発が精力的に進められている。動物実験や臨床試験で有用性と安全性が確認されており,今後,がんなどの治療領域での実用化が期待される。一方で海外では,CTガイド下穿刺を支援するIVR用ロボットがこれまでにも多数開発されてきた歴史があり,機能面での競争も依然激しいのが実情である。
こうしたAIやロボット技術を取り入れることで,IVRはより精密で安全な低侵襲治療へと進化していく可能性が期待できる。しかし他方で,高額なシステム導入コストの問題や,過剰な技術依存ではないかといった倫理的課題もある。本特集では,IVRでのAIとロボットの実際の利用シーンを解説するとともに,その将来的可能性と克服すべき限界についても言及している。
低侵襲医療への社会的要請が高まる現代において,IVRが最新技術を取り入れながら,よりよい医療を患者に提供していけるかどうか。その課題と展望を考えることこそが,本特集の主眼であると考えられる。技術革新と人間性のバランスをどうとらえるか。高度医療であるIVRが目指すべき方向性を示唆しているといえよう。
具体的には,コンピュータ流体力学(computational fluid dynamics;CFD)を活用した血流解析や,深層学習を用いた画像診断支援など,IVRにおけるAI技術の最新動向が紹介されている。また,世界的に開発が進むIVR用ロボットについても,国内外の事例や可能性が論じられている。一方で,技術の制約や過信のリスクについても警鐘が鳴らされており,単なる機械への過度の依存を戒める視点が示されているのも興味深い。
しかし,高額なシステム構築コストの問題や,技術偏重・機械依存への流れを生みやすいという倫理的な課題も内在している。本特集では,こうした応用事例とともに,将来的可能性と克服すべき限界点についても,多角的視点から論じられているのが特徴である。
こうしたさまざまな要素を踏まえつつ,IVR領域において最新技術がどのように医療の向上や発展に資することができるのか。本特集は1つの手がかりを提供しているといえよう。AIやロボットを含む高度医工学と,人間性を失わない医療のあり方とを両立させることが,今後のIVR分野に求められているのではないだろうか。
企画・編集:馬場康貴 埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科
目次
創刊40周年記念特別企画
特集1:photon-counting detector CT最新症例集 企画・編集:粟井和夫
序説 粟井和夫
心大血管領域 橋本 順ほか
胸部領域におけるphoton–counting detector CTの症例集 菊地紀子ほか
腹部・骨盤領域 北山貴裕ほか
oncology領域 小林達伺ほか
側頭骨(耳小骨)領域におけるphoton–counting detector CTの有用性 檜垣文代ほか
特集2:IVRにおけるAIおよびロボット手術 企画・編集:馬場康貴
序説 馬場康貴
AIとIVRの現状−実際どのように活用しているか− 馬場康貴
イメージングDX−画像処理により「みえないものを視る」− 横田秀夫ほか
ロボットを活用したCTガイド下IVR 平木隆夫ほか
ロボット支援システムを使用した定位的脳手術 井内俊彦
ロボットPCIの現状と課題 肥田頼彦ほか
緊急企画
・画像診断医が知っておくべき抗アミロイド抗体疾患修飾薬「レカネマブ(レケンビ®)」にまつわるABC 櫻井圭太ほか
連載
・何としても読んでもらいたい あの論文,この論文[第18回]
予後予測に関するRadiomics解析の初期研究 桐生 茂
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書籍情報
- ISBN:9784008004401
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2023年12月
- 電子版発売日:2023年12月20日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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