最新言語聴覚学講座 言語発達障害学

  • ページ数 : 272頁
  • 書籍発行日 : 2023年12月
  • 電子版発売日 : 2023年12月14日
4,950
(税込)
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商品情報

内容

言語聴覚士を目指す学生のための新しいテキスト
●標準的言語発達,言語発達障害の必要知識を図表を多用し,わかりやすくまとめた.
●言語聴覚士という専門職に必要な視点や心構え,多職種連携・地域連携のなかでのあり方を育むテキスト.
●章ごとに「学習のねらい」「章の概要」「確認Check!」を収載し,学習ポイントを意識づけできる,全体像を整理できる,学習の定着を確認できる1冊.
●言語聴覚士国家試験出題基準に準拠.

序文

序文

本書は,小児の言語発達障害について,専門的知識と最新の知見や情報を皆さんにお伝えするために企画されました.小児領域の言語聴覚学の礎を築かれた先輩言語聴覚士の先生方の「言語聴覚士が言語発達障害について理解し,言語発達障害をもつ子どもたちに適切な支援が行えるようになってほしい」という思いを受け継ぎ,図や表を多用して知識の整理を助け,「見て理解できる」教科書を目指しました.この約15 年の間にDSM はDSM-Ⅳ-TR からDSM-5 を経てDSM-5-TR へと改訂され,ICD もICD-10 からICD-11 になりました.発達期の障害の概念は変容するとともに,日常生活を送る上での困難さにより重きがおかれるようになりました.言語聴覚士も,子どもたちの生活の場に近い,児童発達支援事業や放課後等デイサービスといった福祉サービスのほか,教育機関での活躍が期待されています.時代とともに変わるニーズと役割を理解し,社会に貢献する力が求められているといえるでしょう.以上を踏まえた本書のポイントは以下の通りです.

■ 障害の概念,有病率・原因,症状,評価,指導・支援の基礎知識を障害ごとにまとめ,卒業ならびに国家試験までに求められる必要な知識を提供する.

■ 言語聴覚士という専門職に必要な視点や心構え,多職種連携の中でのあり方を伝える.

■ 生涯支援という観点に立って,小児期以降のライフステージを通した支援の重要性と,地域連携の中での多岐にわたる活動を紹介する.

■ 医療,福祉,教育にまたがる活躍が可能になる多角的な思考を育む.

さらに最近は情報端末デバイスの普及により,様々な障害を知る機会が増えた一方で,障害の情報や特徴だけが独り歩きし,ともすれば保護者の子どもの発達への不安が助長されることも少なくないように思います.障害や特性を多様性と捉えて尊重し合う共生社会を目指している今,言語聴覚士自身が,十人十色の子どもの発達をどのように捉えているのか,「障害がある」ということをどのように捉えているのか,いま一度振り返ることが必要なのではないでしょうか.それは,子どもの豊かな育ちを支援するための出発点であり帰点でもあり,支援者として大切なプロセスに思えてなりません.

本書を手にしているあなたは,将来言語聴覚士になって支援を必要としている人の役に立ちたいと考えていらっしゃる学生でしょうか.あるいは言語聴覚障害に関心のある方でしょうか.本書は単なる指導・支援のマニュアルではなく,「根拠(エビデンス)に基づいて指導・支援する知識や判断力をもち,言語やコミュニケーションに困難さを抱える方に寄り添える言語聴覚士に育ってほしい」「言語・コミュニケーションのその人なりのあり方を,共感をもって正しく理解してほしい」という編集者や執筆者の願いが込められています.どちらの方にとっても,本書が未来への道しるべになれば幸いです.

最後に,執筆者の皆さまと,本書の企画・編集と刊行にご尽力くださいました医歯薬出版編集部の茂野靖子氏とご関係の皆さまに,心から感謝申し上げます.


2023年11月

石坂郁代 水戸陽子

目次

第1章 標準的言語発達

(井﨑基博)

1.言語発達の基盤

 1)生理学的基盤の発達

 2)社会的相互交渉の基盤の発達

 3)認知的基盤の発達

2.前言語期の発達

 1)言語発達の目安

 2)言語発達を促す要因

3.幼児前期の発達

 1)言語発達の目安

 2)言語発達を促す要因

4.幼児後期の発達

 1)言語発達の目安

 2)言語発達を促す要因

5.学童期の発達

 1)言語発達の目安

 2)言語発達を促す要因

 3)文字言語

確認Check!

第2章 言語発達障害とは

1.言語発達障害の定義(石坂郁代)

2.言語発達障害の分類(石坂郁代)

 1)言語発達の基盤や言語発達障害の要因をもとにした分類

 2)DSM-5-TRの「言語症(language disorder)」

 3)ICD-10およびICD-11の「発達性発話または言語症群(developmental speech or language disorders)」

 4)言語聴覚士としての考え方

3.言語発達障害の臨床の枠組み(過程)(熊田広樹)

 1)いつ,どこで言語聴覚士と出会うか

 2)臨床の流れ

4.カウンセリングマインド(熊田広樹)

 1)カウンセリングマインドと対人援助

 2)カウンセリングマインドと臨床の実際

 3)地域連携におけるカウンセリングマインド

確認Check!

第3章 発達の生理学と病理学

(野々田 豊)

1.発達の生理学

 1)神経系の発生と成長

 2)シナプスの形成と髄鞘(シナプス)化

 3)運動発達

 4)視覚・聴覚と社会性の発達

2.発達の病理学

 1)遺伝子病

 2)染色体異常症

 3)胎児病

 4)周産期脳障害

 5)出生後障害(後天性疾患)

確認Check!

第4章 評価

1.評価とは(弓削明子)

 1)評価の目的

 2)評価

 3)評価のまとめ

 4)指導・支援

 5)再評価

2.基本的情報の収集と基礎的検査(弓削明子)

 1)基本情報の収集

 2)基礎的検査

3.発達検査(小杉裕子)

 1)新版K式発達検査2020(Kyoto Scale of Psychological Development 2020)

 2)遠城寺式乳幼児分析的発達検査法

 3)乳幼児精神発達診断法(津守・稲毛式)

 4)KIDS乳幼児発達スケール(KINDER INFANT DEVELOPMENT SCALE)

 5)DENVERII(デンバー発達判定法)

4.知能検査(小杉裕子)

a.知能検査

 1)田中ビネー知能検査V

 2)ウェクスラー式知能検査

  1)WISC-V

  2)WISC-IV

  3)WPPSI-III

b.その他の検査

 1)レーヴン色彩マトリックス検査(Raven's Colored Progressive Matrices:RCPM)

 2)グッドイナフ人物画知能検査 新版(Draw A Man:DAM)

5.言語検査

a.言語発達検査(岩﨑淳也)

 1)言語・コミュニケーション発達スケール 改訂版(Language Communication Developmental Scale-Revised:LC-R)

 2)学齢版 言語・コミュニケーション発達スケール(LC scale for School Age children:LCSA)

 3)国リハ式〈S-S法〉言語発達遅滞検査

 4)絵画語い発達検査(Picture Vocabulary Test-Revised:PVT-R)

 5)日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙

 6)標準抽象語理解力検査(SCTAW)

 7)J.COSS日本語理解テスト

 8)新版構文検査-小児版-(Syntactic Processing Test for Children-Revised:STC)

 9)質問-応答関係検査

 10)CCC-2子どものコミュニケーション・チェックリスト

 11)Reyの聴覚的言語性学習検査(Rey's Auditory Verbal Learning Test:AVLT)小児版

 12)新版構音検査

b.読み書き検査(佐々木香緒里)

 1)特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン

 2)改訂版 標準読み書きスクリーニング検査〔Standardized Test for Assessing the Reading and Writing(Spelling) Attainment of Japanese Children and Adolescents:Accuracy and Fluency:STRAW-R〕

 3)包括的領域別読み能力検査(Comprehensive Assessment of Reading Domains:CARD)

 4)ひらがな文字検査(HIRAGANA test for Children Based on Sign-Significate Relations:HITSS)

 5)小中学生の読み書きの理解(Understanding Reading and Writing Skills of Schoolchildren II:URAWSS-II)

 6)中学生の英単語の読み書きの理解(Understanding Reading and Writing Skills of Schoolchildren-English Vocabulary:URAWSS-English)

 7)教研式Reading-Test読書力診断検査

6.学習・認知検査(佐々木香緒里)

a.学習・認知の包括的検査

 1)日本版KABC-II(Kaufman Assessment Battery for Children Second Edition)

 2)DN-CAS(Das-Naglieri Cognitive Assessment System)

b.視知覚認知検査

 1)フロスティッグ(Frostig)視知覚発達検査(Developmental Test of Visual Perception:DTVP)

 2)WAVES(Wide-range Assessment of Visual-related Essential Skills)

 3)Reyの複雑図形テスト(Rey-Osterrieth Complex Figure Test:ROCFT)

7.コミュニケーション検査(佐々木香緒里)

a.乳幼児期の評価

 1)ASC(乳幼児のコミュニケーション発達アセスメント,Assessment Scale of Communication)

 2)M-CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト修正版,Modified Checklist for Autism in Toddlers)

 3)FOSCOM(対人コミュニケーション行動観察フォーマット,Format of Observation for Social Communication)

b.自閉スペクトラム症(ASD)の評価

 1)CARS2日本語版(小児自閉症評定尺度 第2版,Childhood Autism Rating Scale Second Edition)

 2)PARS-TR(親面接式自閉スペクトラム症評定尺度テキスト 改訂版,Parent-interview ASD Rating Scale-Text Revision)

 3)ADI-R(自閉症診断面接 改訂版,Autism Diagnostic Interview-Revised)

 4)ADOS-2(自閉症診断観察検査 第2版,Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition)

 5)PEP-3(自閉児・発達障害児教育診断検査 三訂版,Psychoeducational Profile-3rd edition)

確認Check!

第5章 障害各論

A.特異的言語発達障害(後藤多可志)

1.定義

2.有病率・原因

 1)有病率

 2)原因

3.症状

 1)臨床マーカー(英語圏を中心に)

 2)臨床像

 3)併存疾患

 4)予後

4.評価

5.指導・支援

 1)指導の原則

 2)具体的な指導方法

6.レイトトーカーと特異的言語発達障害

7.発達性言語障害と特異的言語発達障害

B.限局性学習症―発達性ディスレクシアを中心に(原 惠子)

1.定義

 1)医学界の定義:DSM-5-TRの診断基準

 2)教育界での定義:文部科学省による定義

 3)発達性ディスレクシアの定義:国際ディスレクシア協会(IDA)による定義

 4)医学界と教育界,国際ディスレクシア協会(IDA)の定義の比較

2.有病率・原因

 1)有病率

 2)併存症

 3)鑑別が必要な障害

 4)遺伝

 5)原因

3.症状

 1)文字・単語レベルの読みの困難:デコーディングの問題

 2)文字・単語レベルの書き・つづりの問題:エンコーディングの問題

 3)年齢・重症度による症状の顕在化の異なり

 4)高次の読み書きの困難

4.評価

 1)知的レベルの確認

 2)読み書きの習得度の評価

 3)読み書きに関わる認知機能の評価

 4)その他

5.指導・支援

 1)支援を考えるにあたって配慮すること

 2)特別支援教育,合理的配慮

 3)支援方法

C.知的発達症(知的能力障害)(青木さつき)

1.定義

 1)診断基準

 2)重症度

 3)全般的発達遅延

2.有病率・原因

 1)有病率

 2)原因

 3)予防ならびに早期発見・早期対応

3.症状

 1)重症度別

 2)軽度~境界域の概念的領域の特徴

 3)併存症

 4)知的発達症児と自閉スペクトラム症児の差異の例

4.評価

 1)評価の目的

 2)発達水準の把握

 3)適応能力の把握

 4)観察

 5)保護者から聴取すること

5.指導・支援

 1)安心できる環境

 2)刺激の量をコントロール

 3)スモールステップで繰り返し

 4)最重度・重度の児に対して

D.自閉スペクトラム症(藤原加奈江)

1.定義

 1)基準A:社会的コミュニケーションと社会的相互関係の特徴的な障害

 2)基準B:行動,興味,活動の限定的,反復的なパターンと感覚障害(以下の2つ以上の合致)

2.疫学・原因・メカニズム

 1)疫学的データ

 2)原因と併存症

 3)発現メカニズム

3.症状

 1)神経心理学的観点からみた特徴

 2)言語・コミュニケーション障害

4.評価

 1)スクリーニング検査

 2)確定診断のための検査

 3)その他の検査

 4)言語・コミュニケーション支援のための評価

5.指導・支援

 1)標準的発達をモデルとした支援法

 2)適応行動への支援

 3)障害特徴を踏まえた支援

 4)言語・コミュニケーション支援のポイント

 5)個別支援から集団支援へ

 6)保護者(支援者)支援

E.注意欠如多動症(水戸陽子)

1.定義

 1)DSM-5-TRの定義

 2)ICD-10・ICD-11における位置づけと診断名

2.有病率・原因・病態

 1)有病率

 2)原因

 3)病態

3.症状

4.評価

 1)医学的診断

 2)神経心理学的評価

 3)評価時の注意点

5.指導・支援

 1)心理社会的側面への支援

 2)薬物療法

 3)言語聴覚士による支援

F.脳性麻痺(上岡清乃・石坂郁代)

1.定義

 1)脳の非進行性病変

 2)運動および姿勢の異常

2.発生率・原因

 1)発生率

 2)原因

 3)併存症

3.病型分類

 1)筋緊張異常の分類(生理学的分類)

 2)麻痺の身体分布(部位分類)

4.評価

 1)全体的な発達・知的発達・言語発達

 2)感覚・認知

 3)運動

 4)口腔機能

5.指導・支援

 1)医学的治療

 2)療育

 3)摂食嚥下指導

 4)言語・コミュニケーションの指導

G.重複障害(上岡清乃・石坂郁代)

1.定義

  [重症心身障害とは]

2.発生頻度と原因

3.重症心身障害の病態とその対応

 1)摂食嚥下

 2)言語・コミュニケーション

4.地域連携と家族支援

 1)教育機関との連携

 2)家族支援

H.後天性言語発達障害(藤原加奈江)

1.定義

 1)小児失語症と後天性言語発達障害

 2)小児期の脳

2.原因

3.症状

 1)原因疾患の症状への影響

 2)成人失語症との相違

4.評価

 1)インテーク面接

 2)言語検査

 3)発達検査・知能検査

5.指導・支援

 1)成人の訓練・支援方法

 2)各期の支援のポイント

 3)環境調整

 4)カウンセリング

確認Check!

第6章 指導・支援

1.指導・支援の目標設定(青木さつき)

 1)指導領域・指導目標

 2)個別指導と集団指導

 3)自由場面型と課題設定型

2.発達段階に応じた指導(青木さつき)

 1)前言語期

 2)幼児前期

  [語彙獲得期][構文獲得期]

 3)幼児後期

 4)学童期

3.指導・支援の方法と原則(工藤芳幸)

 1)発達論的アプローチ

 2)学習理論に基づく方法(行動療法)

 3)認知・言語的アプローチ

 4)包括的アプローチ

 5)語用論的アプローチ

 6)拡大・代替コミュニケーション(AAC)

 7)障害別支援

4.環境調整(西野将太)

 1)保護者・家族支援

 2)ライフステージに応じた保護者・家族支援

 3)父親への関わりを考える

 4)きょうだいへの視点

 5)言語聴覚士は保護者と一緒に子育てをしていく仲間である

5.地域連携(西野将太)

 1)連携を通して子育てと子どもの発達を支える

 2)言語聴覚士の行う発達支援

 3)横の連携・縦の連携(縦横連携)

 4)言語聴覚士による連携の実際

 5)高等教育と就労支援

6.法令と社会資源(西野将太)

 1)背景

 2)法令

 3)サービス

確認Check!

Column

構音と発達障害(中島悠紀)

吃音と発達障害(原 由紀)

音・文字対応の単位(原 惠子)

「自閉スペクトラム症」名称の変遷(藤原加奈江)

学校教育の場で働く言語聴覚士(佐々木ゆり)


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書籍情報

  • ISBN:9784263270721
  • ページ数:272頁
  • 書籍発行日:2023年12月
  • 電子版発売日:2023年12月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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