特集にあたって
カンファレンスを通して最善のケアを創る

多職種で医療が行われる昨今，目の前の子どもに最善のケアを行うため，話し合いによってケアの目標や方向性を見出していくことが日常になりました。この話し合いを私たちは，「カンファレンス」と呼んでいます。患者をケアする前にカンファレンスを開き，そこで見出された目標に向かって患者にケアを行い，また課題を持ち寄ってカンファレンスをして目標を実現するまでケアとカンファレンスを重ねていきます。患者にとって，私たちのケアが独りよがりにならないよう多方向の視点で話し合うのはとても大切な過程です。カンファレンスはさまざまなところで行われています。例えば，日々の仕事を調整する業務カンファレンス，退院後の生活を見通したケアやその評価についてのカンファレンス，在宅移行支援における地域の医療機関も含めた拡大カンファレンスなどです。カンファレンスが行われる目的は多様で，その目的に応じて参加する職種や時間も変わってきます。

疾患をもつ子どもや医療的ケアが必要な子どものみならず，近年は育児に不安を抱えたり，育児に困難を抱く家族を支えることも小児看護の重要な役割です。子どもと家族を医療，福祉，教育の多方面から支え，社会のなかで子どもが健やかに育つ環境をつくるためには，その環境をつくる人々同士のコミュニケーションが必要になっていきます。しかし，その人々にもそれぞれの価値観があり，子どもと家族へのかかわり方，問題の解決方法に違いがあるので，カンファレンスで互いの考えを知り，知恵を集めてよりよいケアをつくっていくのだと思います。子どもと家族を取り巻く環境は，変化が著しく，複雑で，不確かな課題がたくさんあります。一度の話し合いで決めたいことがさっと決まるときもあれば，意見の違いから目標の方向性さえも見出せず頓挫してしまうこともあります。カンファレンスを進行するファシリテーターも参加者も，それぞれの子どもの最善にむけて，忙しない現場で日々奮闘していることでしょう。

本特集では，多様なシチュエーションで実践されているカンファレンスを紹介していただきます。医療施設内でのカンファレンス，医療施設と地域が交わるカンファレンス，そして地域の訪問看護ステーションや福祉・教育施設で行われているカンファレンスなどです。カンファレンスを実施することで，よりよいケアが創られていくという実践を改めて考える機会にしてみたいと思います。

渡邊輝子
済生会横浜市東部病院看護部長／小児看護専門