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- 療養者が望む暮らしを支える 地域・在宅看護過程
商品情報
内容
●地域・在宅看護ならではの視点を統合したアセスメント枠組みを紹介.本書独自の枠組みではあるが,学習した看護理論を問わず違和感なく活用できるよう配慮した.
●得られた各情報を,療養者にとっての「自立した暮らし」「安全な暮らし」「その人らしい暮らし」の観点から再整理し,療養者が望む暮らしを実現するための支援につなげる.事例編では,5つの事例にこのアセスメント枠組みを適用し,看護過程を展開する.
●療養者本人と家族,そして支援者たちにとって,その療養生活にどのような意味があったのかを振り返る場面を設けていることも本書の特徴である.
序文
はじめに
地域・在宅看護は,地域で療養する人びとに対し,対象の暮らしの場で看護を展開します.対象を「患者」ではなく,「地域で生活する人」ととらえ,生活の質向上(その人が望む暮らしの実現)をめざします.具体的には,療養者・家族の可能性を見出し,意向や希望の実現に向けて支援していきます.そのため,地域・在宅看護領域における看護過程は,対象の看護上の問題点を抽出して解決する問題解決型アプローチだけでなく,療養者や家族の意向や希望をどのように実現できるかについて,ともに考えていく目標志向型アプローチもたいへん重要です.本書では,そのような目標志向型アプローチが展開できるよう工夫しました.これが本書の第1 の特長です.
2 つ目の特長は,地域・在宅看護過程におけるアセスメントの枠組みを新たに考案したことです.これは本書の編者のひとりである蒔田の研究をふまえ,在宅療養生活を継続するための訪問看護師の卓越した看護実践の知見をもとに,執筆者メンバーで議論を積み重ね開発したアセスメント・モデルです.自宅で暮らす療養者は,医療や看護の提供体制が整備されさえすれば生活していけるわけではありません.食事の準備やゴミ出しなども含め,すべての生活条件を整備する必要があります.本書では地域で療養生活を継続していくうえで必要な情報収集の視点として13 の項目を設定しました.次に,これらの網羅的な情報を「自立した暮らし」「安全な暮らし」「その人らしい暮らし」の視点から統合し,最後に「今後の療養生活の方向性」をアセスメントのまとめとして位置づけました.
さらに3 つ目の特長は,看護計画に多職種との連携による共同計画(collaboration plan;CP)を取り入れたことです.療養者の希望を叶え,安全・安心な療養生活を支援するには多職種との連携や協働が不可欠です.訪問看護師がどのような職種や機関とどのように連携・協働していくかを計画として具体的に明文化できるように工夫しました.このことにより,連携・協働に関する個別の看護実践が可視化されると考えています.
4 つ目の特長は,療養者・家族の希望を叶えるために,保険制度上の報酬ではカバーされない希望に看護師の立場でできることは何かを考え実行することについて取りあげた点です.現在,人工呼吸器を使用した療養者への訪問看護による外出支援は,診療報酬や介護報酬では算定できません.療養者の希望を実現するために,看護師としてできること,やるべきことは何かを考え,可能なかぎり療養者の生活の質向上を支援する重要性を,事例を通して説明しています.柔軟に看護を創造することの重要性が感じられると思います.
看護過程の展開は大変,あるいは苦手と思っている学生さんもいると思います.本書が地域・在宅看護の演習や実習を進めるうえでの伴奏者になれれば,執筆者の望外の喜びです.本書を活用して改善すべき点がありましたら遠慮なくお知らせください.今後の改訂にいかしていきたいと思っています.もちろんポジティブなご感想も今後の励みになります.執筆者一同,皆さんの実り多い演習・実習を応援しています.
2023年11月
尾崎章子,蒔田寛子
目次
第1章 地域・在宅看護とは
(尾崎章子)
1 地域・在宅看護とは
2 地域・在宅看護の場
1)療養者にとっての自宅
2)地域における生活の場
3)地域における「生活」「暮らし」
3 地域・在宅看護の対象
1)在宅療養者
2)在宅療養者の家族
3)コミュニティ・地域
4 地域・在宅看護の機能と実践の原則
1.地域・在宅看護の機能
1)療養者・家族の地域での生活の自立の支援
2)療養者の健康・生活機能の回復・維持,悪化予防
3)療養者・家族の生活の質(QOL)の向上
4)終末期にある療養者・家族に対するエンドオブライフ・ケア
5)療養者・家族を取り巻く地域のケアの水準の向上
2.地域・在宅看護実践の原則
1)主体性・個別性を尊重する
2)暮らしを重視する
3)強みをいかす
4)家族を支援する
5)ケアチームメンバーとの調整・連携・協働を推進する
6)問題解決型アプローチだけでなく目標志向のアプローチを行う
7)地域ケアの仕組みづくりに参画する
第2章 地域・在宅看護における看護過程の展開
(蒔田寛子)
1 看護過程の基本的な考え方
1)家族=介護者かつ看護の対象
2)対象(療養者と家族)の希望を知ること
3)多職種との情報共有による対象の理解
4)柔軟な論理的思考による情報収集
5)今後を予測した支援
6)多職種連携
2 地域・在宅看護における看護過程の特徴
1)アセスメント
2)看護課題の明確化
3)計画立案
4)実施(介入)
5)評価
3 地域・在宅看護過程における情報収集とアセスメント
1.地域・在宅看護過程における情報収集
1)情報源
2)情報収集方法
2.地域・在宅看護過程におけるアセスメントの枠組み
1)アセスメントの13項目
2)生活の視点で整理する3項目
3)今後の療養生活の方向性
4 地域・在宅看護過程における目標・計画・実施(介入)・評価
1.地域・在宅看護過程における目標
1)すべての療養者に共通する目標
2)包括的目標
3)小さな目標の積み重ね
4)療養者と家族の折り合い
5)療養者・家族と訪問看護師の折り合い
2.地域・在宅看護過程における計画
1)在宅看護の計画=OTEC
2)訪問看護師のいない時間
3)地域住民などとの協働
3.地域・在宅看護過程における実施(介入)
4.地域・在宅看護過程における評価
第3章 地域・在宅看護の展開に必要な基本的知識
1 地域・在宅看護に関連する制度(尾崎章子)
1.医療保険制度
1)医療保険の種類
2)保険診療の流れ
3)医療保険の給付
2.介護保険制度
1)サービス利用の手続き
2)介護保険による給付
3)地域支援事業
3.訪問看護の制度
1)訪問看護事業所(訪問看護ステーション)
2)訪問看護のしくみ
2 協働する多職種とその役割(蒔田寛子)
3 協働する関係機関・関係組織(蒔田寛子)
第4章 地域・在宅看護における看護過程の実際
事例1 脳梗塞による後遺症が残り,在宅療養を開始したAさん(清水 恵)
事例2 友人の支援を得て一人暮らしを続けるがん終末期のBさん(蒔田寛子)
事例3 サービスを利用して在宅療養を継続しているCさん夫婦(西澤和義)
事例4 人工呼吸器を使用して外出をする在宅ALS療養者のDさん(板垣ゆみ)
事例5 家族の生活継続も大切であり,在宅療養の継続困難が予想されるEさん(蒔田寛子)
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書籍情報
- ISBN:9784263237755
- ページ数:128頁
- 書籍発行日:2023年11月
- 電子版発売日:2023年12月30日
- 判:AB判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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