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- 研修医の羅針盤 「現場の壁」を乗り越える、国試に出ない必須3スキル
商品情報
内容
臨床研修で誰もが必ず経験する悩み・失敗をコミュニケーション,臨床推論,意思決定の3つのスキルを身に付けて解決!国試と実臨床のギャップを埋めて,スキル取得のポイントや考え方,スキルの活用法がわかります!
序文
はじめに
臨床現場に潜む" 見えない壁" を乗り越えるために
桜咲く4 月は,新社会人として臨床の現場に初期研修医の先生方がやってくる希望の春です.私自身ありがたいことに,新しい仲間たちへのオリエンテーションやレクチャーをする機会をいただくことも多くなりました.期待と不安を抱えた,初々しいみんなの顔を見ながら話をするたびに,どうか全員が最後まで,健やかに実りある臨床研修ができますようにと祈りにも似た想いを抱きます.
臨床研修は臨床医としてキャリアを積んでいくうえでは,誰もが修了しなければならない2 年間です.一方で,医師として働く全員が経験する研修とはいえ,決して楽な道のりではありません.医師国家試験の勉強では学ぶことがないにもかかわらず,臨床現場に必ず潜んでいる" 見えない壁" にぶつかり,時には潰されそうになる同期や後輩をたくさん見てきました.私自身も漏れなく,そんな壁にぶつかり続けた初期研修医の1 人でした.
「なんでいつも正しい診断にたどり着けないのか…」
「どうして患者さんに上手く病歴聴取や病状説明ができないのか…」
「なぜスタッフと仲よくコミュニケーションがとれず,自分の評判はよくないのか…」
自分はこんなにたくさん医学書を読んで,同期の誰よりも勉強しているのに,あの同期みたいにスタッフや患者さんと仲よくなったり,上級医の先生みたいにかっこよく診断できないのだろう?
理想の臨床医をめざして前に進むよう努力すればするほど空回りをしているような,虚しい感覚に陥ることもありました.
そんな昔の自分と同じように臨床現場の" 見えない壁" に何度もぶつかり,同じような悲しい顔をしている研修医達の姿を見ると,少しでも彼らに寄り添い,救うことができたらと思わずにはいられません.もちろん,私もまだまだ未熟で,めざすべき臨床医となれるようもがきながら前に進もうとする旅路の途中です.ですが,若手指導医となった今,以前は見えていなかった" 見えない壁" が私にも少しずつ見えるようになりました.研修医時代には,もちろん自分が何にぶつかっているのかもわからず,そんな壁が存在すること自体も知り得ませんでした.きっと後輩たちもみんな,かつての私と同じなのです.何が正しいのか,目標(ゴール)を見つけることができないまま,がむしゃらにこの" 見えない壁" にぶつかり続け,時に心と身体を傷つけながら,自覚もないままいつの間にか乗り越えている…それこそが臨床医として成長していくことなのかもしれません.でも," 見えない壁" の正体が早いうちにわかれば臨床研修をもっとうまく乗り越えられるのではないでしょうか.この本では,臨床現場に出てきたばかりでは意識することのできない" 見えない壁" の正体を解き明かし,その壁を乗り越えるためのスキルやマインドを余すことなく解説していきます.本書は,医師国家試験を終えた医学生,臨床研修1,2 年目の研修医を主な読者対象としており,この本を読むことで,医学生は将来臨床研修でどのようなスキルを身につけなければいけないのかを知ることができ,研修医や若手医師は臨床でうまくいかない状況や壁にぶつかったとき,どのように対処すべきかを考えるヒントを得ることができます.本書が,臨床現場という大海原で航海を始める,すべての研修医を導く羅針盤のような1 冊となり,立派な臨床医をめざすという人生をかけた旅路を素敵にする助けになるよう,願いを込めて執筆しました.そして,少しでも臨床現場の解像度を上げられるよう,医師に加えて,ともに病院で患者さんのために働くたくさんの他職種の方々にヒアリングやアンケートでご協力いただきました.私達の熱い想いのこもったこの本を,多くの先生方に手にとっていただけたら嬉しい限りです.
最後に,このような類書の少ない難しいコンセプトの書籍の伴走を快諾してくださり,導いてくださったわが人生のアニキである髙場先生,素敵な漫画やイラストを描いてくださいました角野先生,本書の企画・発刊まで誠心誠意取り組んでいただいた羊土社編集部の深川正悟氏,清水智子氏をはじめ多くの編集部スタッフの方々,書籍の執筆にあたりヒアリングやアンケートにご協力いただきましたすべての方々に厚く御礼申し上げます.
2024年1月
広島大学救急集中治療医学所属 県立広島病院 整形外科
三谷雄己
目次
第0章 まえがき【三谷 雄己】
・医師国家試験と臨床現場の違い
はじめに/それぞれの立場からみた,初期臨床研修に対する悩み・不安/国試と臨床現場の違い/臨床現場で必要な3つのスキル/国が定める臨床研修の到達目標/本書の立ち位置
第1章 コミュニケーションの基本【三谷 雄己】
0 コミュニケーション 総論
「臨床現場」という大海原を旅するには,仲間とのコミュニケーションが必要不可欠!
1 みんな,全然話を聞いてくれないじゃん! ~患者さんとのコミュニケーション~
医師と患者さんはどうしてわかり合えないことがある?/上手く噛み合わない…そんなときの一工夫・解決策/自分の感情をコントロールする/問題と感情を分け,相手とゴールをすり合わせる/コミュニケーションを諦めない!
2 今日もまた看護師さんに怒られた… ~看護師さんとのコミュニケーション~
コミュニケーションは大切だけど,いざとろうとすると難しい…/看護師さんをよく知ろう!/医師と看護師がそれぞれ重視・優先していることは何か?/医師と看護師さんをつなぐ ~病棟指示/上手くコミュニケーションをとるためのコツは?
3 他職種の人から電話がかかってくるとドギマギしちゃう… ~他職種とのコミュニケーション~
あのスタッフの方の職種って何…? 思ったよりも多い医療系の職種/薬剤師〜薬剤のスペシャリスト/療法士〜リハビリテーションのスペシャリスト/臨床検査技師〜検査のスペシャリスト/診療放射線技師〜画像検査のスペシャリスト/臨床工学技士〜医療機器のスペシャリスト/管理栄養士〜栄養療法のスペシャリスト/すべての医療スタッフは,患者さんのために
4 文書を書くのって難しい… ~文書作成~
文書作成とは,実はコミュニケーションの一形態/紹介状は"バトン"!
5 上の先生へのコンサルトって難しい… ~上級医へのコンサルト~
コンサルトの壁を乗り越えよ!/コンサルトの目的と相手のニーズを意識しよう/コンサルトのポイント/コンサルトの型/伝書鳩からの卒業! 自分の足で稼いで,自分の頭で考えよう!
6 医者も見た目が9割? ~身だしなみと礼節~
今までの常識はここでは非常識?! 意外とわからない病院での正しい身だしなみと礼節/あなたは"医師"としてみられている/医師が身にまとう,白衣の役割/医師である前に"人"でもある
第2章 臨床推論【髙場 章宏】
0 概論:臨床推論という霧海に挑もう
臨床推論を学ぶ難しさ/臨床推論を学ぶうえで重要な「考え方」を身に付けよう!
1 「めまい」って言われたのに… ~臨床推論の出発地点:「問題点」を抽出する~
臨床推論という航海の出発点/医師の仕事≒患者さんの問題解決/「誤変換」の罠:注意すべき主訴/鑑別疾患リストをあげよう!
2 主訴がよくわからない…どうしよう… ~曖昧な主訴の対応~
現場は"曖昧さ"で溢れている/問題点が曖昧なときの対応①:ゴールから逆算する/問題点が曖昧なときの対応②:受診理由を尋ねる
3 なんとなくオーダーした検査が陽性!どうする? ~常に確率で考える~
思ってた検査結果と違う! どう解釈する?/「確率」という羅針盤/検査の特性:感度・特異度・尤度比を把握する/検査前確率を意識せよ!/検査をオーダーする時点で,その後の行動は決まっている!
第3章 意思決定【髙場 章宏】
0 総論
なぜ意思決定力が重要?/なぜ意思決定が難しい?/意思決定力を鍛えるために
1 効率的な調べ方って? ~臨床疑問の調べ方~
記憶力より"調べるスキル"!/「何がわからないのか」を把握しよう/EBMの5ステップアプローチ
2 次にすることって何だろう…? ~ゴール(=あるべき状態)から考える~
診断がついたら,次にすることは?/ゴールから逆算して,次にすることを考える/他職種の情報を活用する
3 どうやって説明して,治療方針を決めればよいか… ~病状説明~
治療方針に迷ったら…目標(ゴール)から考える/リスクと不確実性(選択肢の数)から,説明のプロセスを考える/病状説明の6つのステップ/治療方針を決められないとき…
おわりに
索引
Column
1. 教わり上手になる! キーワードは「なべおたま」⁈【三谷 雄己】
2. 直観的思考(システム1)と分析的思考(システム2)〜あなたは今,どちらの思考を使っていますか? 〜【髙場 章宏】
3. UpToDate の使い方をマスターしよう!【髙場 章宏】
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書籍情報
- ISBN:9784758124102
- ページ数:197頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年1月30日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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