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商品情報
内容
よく出会う症例をもとにした問題を解くことで適切な小児薬の選び方,使い方,禁忌などがわかる問題集.薬が必要か否かの判断も養うことができ,治療戦略を考える力が身につきます.小児薬の使用に自信がもてます!
序文
序
「今やろうとしていることは,ほんとに患者さんとご家族のHAPPY に貢献するのだろうか?」
それが,僕が検査でも治療でも,悩んだときに立ち返ることばです.処方だけして満足していないだろうか.患者さんが家に帰ってからのことをイメージできているだろうか.もらった薬をほんとに飲めたのだろうか.そもそも,効く薬なのだろうか.患者さんとご家族はそれでほんとにHAPPY になれただろうか.最初に「小児薬ドリル」の企画をいただいたときに,それはもちろんありがたかったのですが,僕には心にひっかかりが2 つありました.それは,小児の薬の本であること,症例問題の回答が選択肢形式であることの2 点でした.
1 つ目として「薬ありきへの抵抗」です.薬の本なんだから薬を出すのが前提になってしまう気がしますが,そもそも“受診=薬の処方”ではありません.例えば,カゼであれば効果が十分に証明された薬はありません.処方よりも,解釈モデルの解決(“本当は”なにが心配で受診したか),ホームケアの指導,どういうときにほかの疾患を心配して受診するかの説明など大切なことがあります.効果のない薬剤処方は薬嫌いな子どもを生み出し,本当に必要な薬が出てきたときに飲めなくなるかもしれません.薬を子どもに飲ませるのは大変なんです.
2 つ目として「選択肢形式への抵抗」です.当然ですが,実臨床で選択肢の提示がされることはなく,むしろ自ら選択肢を生み出しそれを吟味し選択する力が必要です.そして,セッティング,リソース,医療者,患者・患者家族によって正解は変わります.正解は1 つとは限りません.
そんなこんなで考え込んでいるうちに,「やっぱり小児薬ドリルいいじゃん!」と思うようになりました.「薬ありきへの抵抗」は,薬の本でありながら,薬を出すかどうかまで考える本,薬の目線で考える本,小児の薬を相対化する本であればいいじゃないか.次に,「選択肢形式への抵抗」です.アウトプットは学ぶうえで大切です.考えてみれば,われわれは人生でさまざまな選択肢形式の問題に出会ってきました.ゆえに,アウトプットの方法として選択肢問題への親和性が高いし,自由回答よりさらっと考えることができます.そう思うとドリルは学びに最適なのではないか,なんなら選択肢を見るとちょっとワクワクすらしてこないですか?!
対象とする読者は主に初期研修医や小児科専攻医ですが,看護師などの多職種や上級医の学びにもなると思っています.編集をしていて,なにより僕が楽しみながら勉強できました.構成は,「はじめに」「基礎編」「実践編」になっています.「はじめに」は,薬剤師の池田さんによる小児と薬についての総論から始まります.薬を処方すると決めても,小児では薬の剤形,味も気にしなければなりません.飲んでもらえなければ何も始まりません.飲ませようとする保護者の疲労と,患者さんと保護者の信頼関係の喪失が残るだけです.基礎編はまず症例をみて問題を解いてもらったあと,最後に解説をしています.木を見て,木を見て,最後に森を見るイメージです.実践編は,1 人の症例を診ていく過程のなかで問題を解いていきます.旅のなかで何度も岐路に立つ,より診療に近い流れです.もしかすると,難易度にばらつきがあるように感じるかもしれません.しかし,それは最前線で真摯に患者さんを診る筆者たちが重要と考えるポイントですし,そもそも実臨床では難易度の札を下げた患者さんは受診しないので,好き嫌いなく噛みしめていただければと思います.いつもの診察室で,目の前に本書で提示された患者さんがいることをイメージしながら,どうするかを考えてみてください.
羊土社編集部の深川正悟さん,鈴木美奈子さん,西條早絢さん,僕の背中を押してくださり大変ありがとうございました.最後に,いつも刺激と元気をくれる全国の仲間,そして,患者さんとご家族に深く深く感謝します.
“患者さんとご家族のHAPPY のために”
2024年1月
福岡市立こども病院 集中治療科
鉄原健一
目次
はじめに
1 薬の剤形,味,量【池田隆史】
2 服薬指導【池田隆史】
3 輸液【加藤宏樹】
4 処置鎮静【安田真人】
5 鎮痛(骨折など)【安田真人】
6 漢方薬【児玉和彦,鈴村水鳥】
基礎編
第1章 よく診る疾患,大事な疾患
1 風邪(上気道炎,気管支炎)【児玉和彦】
2 咽頭炎【児玉和彦】
3 ヘルペス性歯肉口内炎【水野真介,笠井正志】
4 副鼻腔炎【水野真介,笠井正志】
5 クループ【安田真人】
6 細気管支炎【大西理史】
7 肺炎【水野真介,笠井正志】
8 中耳炎【水野真介,笠井正志】
9 胃腸炎【大西理史】
10 細菌性腸炎【張 慶哲】
11 虫垂炎【張 慶哲】
12 胆嚢炎,胆管炎,膵炎【張 慶哲】
13 尿路感染症【荒木かほる】
14 亀頭包皮炎【張 慶哲】
15 伝染性膿痂疹【張 慶哲】
16 蜂窩織炎【松井俊大】
17 敗血症【安田真人】
18 髄膜炎【松井俊大】
19 インフルエンザ【荒木かほる】
20 抗ウイルス薬【水野真介,笠井正志】
21 気管支喘息【牟田龍史】
22 アレルギー性結膜炎【武石大輔】
23 アレルギー性鼻炎【牟田龍史】
24 アトピー性皮膚炎【武石大輔】
25 動物咬傷【大西理史】
第2章 緊急対応が必要な病態
1 総論【鉄原健一】
2 けいれん【鉄原健一】
3 アナフィラキシー【鉄原健一】
4 心停止【竹澤芳樹】
5 意識障害【大西理史】
6 熱傷【大西理史】
7 外傷における輸血【前島直彦】
8 気管挿管【若林知宏】
第3章 一般外来でよく診る疾患
1 一次性頭痛【牟田広実】
2 過敏性腸症候群【牟田広実】
3 起立性調節障害【牟田広実】
4 夜尿症【牟田広実】
実践編
1 尿路感染症【荒木かほる】
2 肺炎【若林知宏】
3 細菌性髄膜炎【松井俊大】
4 けいれん重積【鉄原健一】
5 心停止【竹澤芳樹】
6 気管支喘息【牟田龍史】
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書籍情報
- ISBN:9784758124096
- ページ数:326頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年2月3日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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