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臨牀消化器内科 2019 Vol.34 No.2 胆嚢癌診療の現況
商品情報
内容
【特集】胆囊癌診療の現況
・胆囊癌の疫学 (1) 日本と世界の発生動向
・胆囊癌の疫学 (2) 危険因子
・胆囊癌の病理
他
>『 臨牀消化器内科』最新号・バックナンバー
序文
巻頭言
今月は胆囊癌の特集である.内視鏡診断から外科的治療まで広い視点から胆囊 癌診療を把握できるような執筆陣と項目立てで構成されている.胆囊癌における診断・治療は未だ満足のゆく状況ではないが,巻頭言として私見を述べさせていただきたい.
最近の疫学研究では糖尿病や体脂肪の増加,すなわち肥満が胆囊癌の危険因子であることが明らかにされている1).糖尿病については,インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症や高インスリン様成長因子による腫瘍増殖促進,活性型エストロゲン増加による上皮の増殖促進などがその発癌機序と考えられている.肥満は,高インスリン血症,脂肪組織の慢性炎症,アディポカインなどによる直接的な影響だけでなく,肥満による胆石形成を介して間接的に胆囊癌の危険因子となりうる.そして胆石の疫学研究では,結石径3cm以上,有症状例,胆石保有期間が長いことなどが胆囊癌危険因子とされ,胆石に伴う上皮の慢性炎症が異形成 や癌化を促進すると考えられている.しかしながら,無症候性胆石(多くは肥満, 糖尿病を合併している)の長期にわたる経過観察では胆囊癌発生率は低率とされており,胆囊癌ハイリスクグループをどう設定し効率的な早期診断に結びつけていくかといった検討にはさらなる知見が必要である.先天性膵・胆管合流異常も胆囊癌の危険因子として知られているが,その成り立ちは膵液の逆流に伴う慢性炎症とされている.この膵・胆管合流異常は診断さえつけば予防的胆囊摘出術を行えるが,合流異常そのもの,とくに先天性胆道拡張非合併例を効率よく診断する方策は確立されていない.
健診の腹部エコーで指摘される10mm以下の多発する胆囊ポリープの多くはコレステロールポリープであり,その多くは肥満,脂肪肝との関連がある.偶然発見された 10mm以下の胆囊ポリープを経過観察した検討では癌化がほとんどないことが知られており,前癌状態である腺腫を念頭に胆囊ポリープを厳密に経過観察することは費用対効果の面においても否定的な意見が多い2).胆囊癌の多くはdysplasia‒carcinoma sequenceでありadenoma‒carcinoma sequenceはまれとされ,10mm以下の胆囊ポリープを胆囊癌ハイリスクグループとして効率よく診断することは困難である.
「胆道癌取扱い規約(第5版)」3)には早期胆囊癌の定義があり,「組織学的深達度が粘膜(m)内または固有筋層(mp)内にとどまるもので,リンパ節転移の有無は問わない」とされている.しかし,現行の第6版4)には記載されていない.今後本邦のデータ(長期成績,リンパ節転移の有無など)をもとに早期胃癌同様に早期胆囊癌の定義を確立することが望まれる.実際,胆囊摘出術後に偶然に胆囊癌と 病理診断された症例ではm癌(pT1a)では追加切除を必要とされていない.mp癌 (pT1b)の予後も良好であるがm癌に比べると5年生存率は低下する.この違いはmp癌を早期胆囊癌とするかで議論となるが,病理学的検索を全割標本で行わないとss癌(pT2)をmp癌と診断している可能性が指摘されている5).本特集では「胆囊摘出後に判明した胆囊癌の取り扱い」,「早期の胆囊癌はあるのか?」などのトピックスを取り上げ,こうしたclinical questionに最新の情報を紹介する項目立てとなっている.胆囊癌の根治的治療は外科手術であるが,その術式には議論が多い.化学療法も胆囊癌に特化した有効性を論じるにはエビデンスが不足しており,術前・術後化学療法は今後の知見を待つべき領域である.
本特集では疫学から始まり,病理,画像診断,手術,化学療法まで胆囊癌診療の現況を網羅的にup‒to‒dateできるような構成となっている.読者諸氏の今後の診療への新たなステップとなれば,特集を企画された編集委員会の意図は達成されたといえよう.
露口 利夫
目次
巻頭言
1.胆囊癌の疫学
(1)日本と世界の発生動向
(2)危険因子
2.胆囊癌の病理
3.胆囊癌の診断
(1)診断体系と鑑別診断
(2)腹部超音波
(3)超音波内視鏡
(4)CT
(5)MRI
4.胆囊癌の治療
(1)手 術
(2)化学療法
5.トピックス
(1)胆囊摘出後に判明した胆囊癌の取り扱い
(2)早期の胆囊癌はあるのか?
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書籍情報
- ISBN:9784004003402
- ページ数:112頁
- 書籍発行日:2019年1月
- 電子版発売日:2019年3月1日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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