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- 中外医学社
- 医師×看護師×臨床心理士 緩和医療コミュニケーション相談室
商品情報
内容
厳しい状況の患者や患者家族と関わる医療者は,日々「正解なき難題」にぶつかる.
本書では実際に寄せられた難題に,緩和ケア専門医,がん看護専門看護師,臨床心理士が会話を重ね,迷いながら答えにたどり着こうとする様子が書かれている.
彼らの思考の流れや問題をとらえる視点が,一つとして同じものはない難題を解決するヒントとなるだろう.特に,対人関係を「構造化」した図は必見.コミュニケーションの新バイブルだ.
序文
はじめに
「今日も患者さんから『死にたい』って言われちゃった……。こんなとき、看護師として何て声をかけるのが正解なんだろう」
「患者さんは『早く自宅に帰りたい』って言っているけど、先生とか家族は『もっと元気になってからじゃないとダメ』って言う……。患者さんの言うこともわかるけど、先生方の言い分もわかるし……」
病棟で働く医師や看護師の皆さんは、日々多くの「難題」に向き合っていることと思います。
特に、がんや心不全、呼吸器疾患が進行し、余命が限られてきている状況では「命を長らえさせることよりも優先すべきことがあるのではないか?」という思いと、「でも医療者として患者の生命と安全を最優先すべき」との葛藤に揺れることも多いでしょう。
では、そこに唯一の「正解」があるのか? となると、実際にはそのようなものはない、という場合も多いのです。
あなたの働いている病棟に、緩和ケアの経験が深い同僚がいれば相談できるかもしれません。しかし、実際には身近にいる医療者も悩み、迷いながら「とりあえずの答え」を出して前へ進み、そしてその患者さんや家族が病棟からいなくなった後も「あのとき私たちが行ったことは本当に正しかったのだろうか」と、ふとしたときに思い出すのではないでしょうか。
今回、そのような「緩和ケアを実践する際にぶつかる、答えの出ないモヤモヤした悩み」について、緩和ケアを専門とする医師・がん看護専門看護師・臨床心理士の3 名が一緒に考えました。2022 年2 月~3 月に、全国から募集したお悩み、そこから10 個を取り上げています。僕たちが唯一の「答え」を持っているわけではありませんが、専門家が「悩むプロセス」と「答えにたどり着こうとするプロセス」を共有できることで、似たような悩みを抱えていた方々にとっても何らかのヒントになることを期待しています。
特に、この本で意識したのは「構造化」です。皆さんは、コミュニケーションや人間関係の構築は、その個々人の性格やセンスによって大きく左右されると考えていませんか。その結果、患者さんや同僚とのコミュニケーションがうまくいかない、とか職場の人間関係がギスギスする、となっても「私にはどうすることもできない……」と諦めてしまっていないでしょうか。しかし実際には、その対人関係をすべて「構造化」して図示することができれば、そしてその図の一部分を再構築して、人間関係の滞りを解消することができれば、実際に解決に結びつくケースが多々あったりします。もちろん、すべてのケースを構造化さえすれば、何でもかんでもうまくいくということはありません。中には、どうしようもないケースも存在します。しかしそれでも、現在「目の前で起こっていること」を構造で捉えることができさえすれば、「いまはどうしようもないけど、構造は把握できている」という自信の下で「経過を慎重に見守る」という判断もくだしやすくなるのです。
ぜひ皆さんには、この本で僕たち3 人が、どのように問題を「構造化」し、それを「扱いやすくしようと努力しているのか」を学んでいただくことを期待します。最初のうちは人間関係やコミュニケーションを構造で捉えることは難しくても、それを意識して職場だけではなく友人や家庭、さらには社会全体を眺めることによって、徐々に全体の構造が見えるようになってきます。この本から、ぜひその一歩を踏み出してほしいと願っています。
2023年11月
西 智弘
目次
1 患者の在宅死の希望を叶えられず後悔する訪問看護師
2種類の後悔
当初の希望と違っても、決断は患者さんの意志
自分自身の後悔に答える:責める気持ちが自身を苦しめる
看護師は「家族のように」なりやすい
訪問看護師から病院看護師に情報提供を求める手段は?
2 「医師を許せない」娘を看取った母の怒り
医療者にとっては「良い発言」が患者・家族を傷つける
決めつけや先入観の前に「話を聞く」
多様性への想像力は教育可能か?
そもそも「想像力が足りない」とはどういうことか
「溝はある」と知ってからの看護の力
3 モルヒネ使用をめぐるチームスタッフとの見解の違いに悩む医師
医療者の倫理観の違い
倫理的問題として、関わってもらう人を増やす
多方面から光を当てる
医師は決して「オールマイティな存在」ではない
「ありがとう」と言えると、相談が増える
4 家庭内での治療方針の違いに揺れる家族
「治療するかどうか」より、まず味方になってほしい
家族の歴史と力動に目を向ける
専門家と気軽につながれる場があるといい
5 緩和ケアチームの関わり方に違和感を覚える他科医師
意味あるコンサル、意味ないコンサル
チームと主治医・病棟看護師はそもそも対立構造を作りやすい
まず、共感してほしい
カンファレンスをするという「システム」に落とし込む
コラム 原因は患者さんの中にある?
6 患者さん・家族の怒りに自信をなくした若手看護師
直線的因果律と円環的認識論
「何かをしたい」患者さんへの回答はひとつとは限らない
先輩や師長の力を借りてもよい
新人とベテランのコミュニケーションの違い:怒りはチャンス
7 患者さんと家族の現状改善の理想に悩む訪問看護師
困っているのは本当に患者なのか
医療者の考える「理想」
良い意味でこの家族システムに「巻き込まれて」ほしい
看護師はコンサルテーションを受けられるのか?
救世主妄想にとらわれる
看護師には自分のケアを評価・言語化する習慣がない?
ぼくらのナイチンゲール論
コラム 自分を消す、看護師の専門性
8 患者さんと家族の意見対立に悩む病棟看護師
なぜ帰りたい? なぜ帰ってきてほしくない?
コラム 自分の感情に気づく
本人と家族が自分たちで選べるように、働きかける
患者と家族の間に立つのがアドボカシーではない
コラム ショートストーリー あな
「僕の人生は君に任せた」と言われたら?
9 終末期患者への鎮静対応に悩む病棟看護師
どうして鎮静できないのか? その理由を探る
10 一般病棟で行える緩和ケアに葛藤を覚える病棟看護師
どうして特別扱いできないのか? その理由を探る
その環境でできることをする
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書籍情報
- ISBN:9784498057388
- ページ数:200頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年2月15日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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