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- 今日から使える 腹部CT読影ガイド
商品情報
内容
「腹部CTの読影?ちょっと苦手…」そんなあなたにおすすめ!読影時の目の動かし方や各臓器のチェックポイントで「漫然と読影」を抜け出し,効率よく,見落としなく読影するための一歩を踏み出せます!
序文
序
人の手によって書かれたもので人に理解されぬものは存在しない,私は日々そう信じて,画像所見を文章に翻訳する作業を行っています.しかしながら画像が臨床現場の依頼に即した情報をもつか,というのはまた別問題で,それには適切な臨床診断,その鑑別疾患に対応したモダリティや検査方法の選択が必要となります.ただこれらのレポート作成やオーダーに関する内容は本書の主たるテーマではありません.
私が放射線科を志した初期研修医時代にはすでに,腹部CT は臨床現場で大きな意味を持っていました.しかしいざ自分で読影をしようと思っても,多量の画像データの中にある種々の臓器をどのように目を通せば見落としがないように読影できるのかわからず,またそのなかに紛れ込む疾患の検出も,その解釈も難しく,いつも困っては放射線科の先生方に尋ねていました.そのときから今に至るまで,多くの先生方から教えて頂き,暗中模索しながら自分なりに修正してきた腹部CT 画像の「読影方法」,それを初学者の方にお伝えすることができないか,という思いから本書の執筆がはじまりました.
ある地域に関して全体像を把握し,どのように各所を回れば効率がよいかを提示し,そして各観光地ではこのようなところを重点的に見ればよい,と示したものが観光ガイドブックであるなら,それを腹部CT に関して示したのが本書です.すなわち,見知らぬ土地の回り方を学ぶガイドブックのように,CT 画像を系統的に読影する方法を習得し,異常所見を「検出」する段階に重きを置きました.特に初学者においては,この検出が一つの大きな課題となり,そもそも発見できなければその先にある画像の解釈に進むことはできません.したがって,腹部CTにおける各臓器の回り方を具体的に提示し,その通りに臓器を回ることで見落としの少ない読影方法を習得してもらう,というのが本書の主たる目的となります.そのうえで,各臓器にはチェックすべき要所があり,これに着目してもらいながら実際の画像に目を通すと,しだいに異常所見が検出できるようになっていくはずです.
「どの作品も似たような内容だ.しかしどの部分を切りとって読んでもおもしろい」ある作家を評してそう語る友人がいました.潔癖症的な私の性格からは,小説を前から順に読む以外の楽しみ方があるのだと当時は感銘を受けました.読書をはじめて四半世紀が経過し,ようやく私もランダムにめくったページから楽しみを覚える作品も増えてきました.私の尊敬する放射線科の先生方のなかには,系統的な読影方法はなく,大まかに画像に目を通すと異常所見の方から目に飛び込んでくるのだと言う方もおられ,先の読書の方法に通じるものがあるのかもしれません.円熟していくほど自由になっていくということもあるでしょうし,その点で私が本書で提示した読み方がただ一つの正解であるとは微塵も考えておりません.しかしながら系統的な読影方法が一つ具体的に提示されることで,当時読影のとっかかりをつかむのに苦労した私のような初学者に何か伝えることができたなら,これ以上の喜びはありません.ひとたび歩きはじめたら,あとは自由に足が進んでいくことでしょう.
最後になりましたが,ご多忙のなかで監修を快く引き受けてくださった恩師の山﨑道夫先生,カバーイラスト作成時に私の拙いイメージ図を具現化してくださった谷村賢太先生,企画から校正に至るまで私の潔癖症的な細かい相談に乗ってくださった羊土社編集部の藤澤優様,鈴木美奈子様,いつも私を支えてくださる滋賀医科大学放射線科と同門の先生方,私の文章を何度も確認し適切な助言をくれた妻,そして執筆中に元気に生まれてくれた娘(ともちろん出産を無事に乗り越えてくれた妻に再度),皆様に心から感謝を捧げます.
2024年2月 山鳩鳴く
滋賀医科大学 放射線医学講座 沖 達也
目次
第0章 系統的読影法のススメ「腹部さんぽmap」
読影の4D
読影の段階
腹部さんぽmap
観光マップのように効率よく臓器を回ろう
スネークキューブのように連続性をもつ
第1章 肝臓の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
肝腫大 急性肝炎,うっ血肝
肝萎縮 肝硬変
☑ 吸収値
高吸収 鉄過剰症:ヘモクロマトーシス,ヘモジデローシス,アミオダロン肝
低吸収 脂肪肝
☑ 胆管拡張
[pitfall] periportal collar sign
☑ 肝内ガス
☑ 腫瘤
腫瘍 肝嚢胞,肝血管腫,肝細胞癌(HCC),転移性肝腫瘍
感染 肝膿瘍
第2章 胆嚢・胆管の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
胆嚢腫大 急性胆嚢炎
胆嚢萎縮 慢性胆嚢炎
☑ 内容物
胆嚢結石,胆道出血
[pitfall] 偽胆石
[memo] 胆泥・濃縮胆汁とヨード造影剤胆嚢内貯留
☑ 壁肥厚・隆起性病変
胆嚢腺筋腫症,胆嚢ポリープ,胆嚢癌
☑ 総胆管・肝内胆管拡張
総胆管結石,肝外胆管癌
第3章 膵臓の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
膵腫大 急性膵炎,急性膵炎の合併症,自己免疫性膵炎
膵萎縮 慢性膵炎
☑ 腫瘤
乏血性腫瘤 膵癌
多血性腫瘤 神経内分泌腫瘍(NET)
嚢胞性病変 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
第4章 脾臓の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
脾腫
☑ 腫瘤
脾血管腫,脾過誤腫,嚢胞性病変
[memo] モアレ像
[pitfall] 脾梗塞
☑ 脾門部構造
脾動脈瘤,膵内副脾
[memo] 副脾
第5章 副腎の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
副腎皮質過形成,両側副腎皮質大結節性過形成(PBMAH)
☑ 腫瘤
副腎腺腫,褐色細胞腫,副腎転移,副腎リンパ腫
第6章 腎臓・尿管の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
急性腎盂腎炎
[pitfall] 腎梗塞
☑ 腫瘤
単純性腎嚢胞,非定型腎嚢胞,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD),腎細胞癌,腎血管筋脂肪腫(AML)
[memo] Bertin柱の肥厚と腎葉異型(renal lobar dysmorphism)
☑ 腎盂・尿管拡張
尿管結石,腎盂癌・尿管癌
[pitfall] 傍腎盂嚢胞
☑ 結石・石灰化
第7章 膀胱の歩き方
解剖 目線map
☑ 壁肥厚/隆起性病変
びまん性 慢性膀胱炎
局所(腫瘤)性 膀胱癌
[memo] 膀胱憩室
☑ サイズ
神経因性膀胱
☑ 内容物
高吸収貯留物 膀胱結石,出血
ガス 気腫性膀胱炎
[memo] 造影剤の膀胱内排泄 医原性のガス貯留
☑ 尿膜管遺残
感染性尿膜管洞
第8章 前立腺の歩き方
解剖 目線map
☑ サイズ
前立腺肥大症,前立腺癌,前立腺膿瘍
第9章 子宮・卵巣の歩き方
解剖 目線map
☑ 子宮のサイズ・腫瘤
子宮筋腫,子宮腺筋症
☑ 子宮内腔の貯留物
☑ 卵巣のサイズ・腫瘤
正常卵胞・機能性嚢胞・傍卵巣嚢腫,成熟奇形腫,子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞),その他の腫瘍性病変
☑ 出血・破裂・捻転(婦人科の急性腹症)
卵巣出血,異所性妊娠,卵巣腫瘍破裂,卵巣/卵管捻転(付属器捻転)
第10章 下部消化管の歩き方
解剖 ▶目線map
☑ 小腸・大腸の壁肥厚・腫瘤
感染性腸炎,虚血性腸炎,結腸憩室炎,憩室出血,虫垂炎,炎症性腸疾患,大腸癌
☑ 腸管拡張
絞扼性腸閉塞,単純性腸閉塞,ヘルニア,腸重積,イレウス
[pitfall] 腸管の血管病変
☑ 腸間膜・リンパ節
腸間膜脂肪織炎,リンパ節転移,癌性腹膜炎
第11章 上部消化管の歩き方
解剖 ▶目線map
☑ 壁肥厚・腫瘤
食道 食道癌,食道静脈瘤・胃静脈瘤
胃 胃癌,胃粘膜下腫瘍,急性胃粘膜病変(AGML)
十二指腸 十二指腸潰瘍
[memo] CT時の発泡剤内服 腸回転異常症
[pitfall] 十二指腸傍乳頭部憩室
☑ 上部消化管拡張
食道裂孔ヘルニア,異物誤嚥
第12章 血管・リンパ節の歩き方
解剖 ▶目線map
☑ 血管径の拡大
大動脈瘤,内臓動脈瘤,大動脈解離(解離性大動脈瘤)
☑ 主要分岐血管の途絶
上腸間膜動脈閉塞症(SMA閉塞症),正中弓状靭帯圧迫症候群(MALS)と内臓動脈瘤
☑ リンパ節腫大
リンパ節転移,悪性リンパ腫,IgG4関連疾患
第13章 肺野・骨軟部の歩き方
目線map
☑ 肺野の観察
[pitfall] 肺野の重力効果
☑ 骨・軟部の観察
骨転移,化膿性脊椎椎間板炎
[memo] 骨島,骨折後変化 変性による変化:vacuum phenomenon とSchmorl 結節
[pitfall] 脊髄硬膜外血腫
付録1 腹部外傷の画像
腹部臓器損傷
肝損傷
膵損傷
脾損傷
腎損傷
腸管・腸間膜損傷
付録2 造影剤のはなし
造影CT検査の一般事項
造影検査による利点 臓器コントラストの向上,血管内コントラストの向上
造影剤の種類
副作用 アナフィラキシー,腎機能低下
禁忌・相対禁忌 ヨード造影剤の過敏症,気管支喘息,褐色細胞腫(の疑い)
検査前の注意点 検査前の飲食について,内服薬剤の確認
[memo] 熱感 禁忌・相対禁忌だが造影CTを施行したい場合
合併症
ダイナミック造影CT
撮影のタイミングの基本
各臓器に適した時相
各時相の特徴
付録3 CTのちょっとした原理とその「のぞき窓」
CTの原理
CTの「のぞき窓」:ウインドウレベルとウインドウ幅
あとがき〜監修の言葉〜【山﨑道夫】
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書籍情報
- ISBN:9784758124140
- ページ数:236頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年4月12日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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