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- キズの治療はリズムとテンポ! ER創傷の基本手技[Web動画付]
商品情報
内容
創の部位ごとに対処法を探せる構成で,適切な評価と応急処置(一次処置)が重要なERで求められる多様なスキルを,多数の症例写真と手技動画で丁寧に解説。
筆者の豊富な経験に基づくtipsも盛り沢山。さらに「初期研修中に身に付けておくべきスキル」 や「救急科専攻医~専門医が身に付けたい応用テクニック」も明示し,すべての救急医が活用できる充実の1冊となっている。
序文
序文
本書は救急外来(以下,ER)で遭遇する創傷を,いかに適切に,合併症なく処理をするかを解説するために書かれています。
世の中にはER診療について書かれた本が多く出版されています。その多くが初期研修医に対して書かれており,大変わかりやすく書かれています。私どもの病院の初期研修医も多くがそのようなマニュアルを携行しており,確かにそれを読むと多くの場合,「これ1 冊でERはなんとかなるんじゃないのか?」と感じてしまいます。
このようにERの初期診療の解説本は,確かに若手医師には役に立ち,必須の指南書と言えるでしょうが,それだけにマニュアル化しやすい分野です。マニュアルは頭をあまり使わないで済むし,網羅的で見落としが少ないという特徴があります。
しかし一方で,創傷についてはどうでしょうか。
今現在,日本で救急の分野で本格的に「ERのための」創傷について書かれた本は,数えるほどしかなく(いずれも優れた解説本です),一方で「創傷」の教科書とよべるものに関しては,植皮術などの形成外科的技術への言及が多く,必ずしもERでのニーズに合っているとはいいがたいものがあります。
さて,唐突ですが,ここで少し自己紹介をさせてください。筆者は金沢大学の第二外科という外科医局の出身でして外科専門医です。学位もここで取りました。金沢大学第二外科では,日本医科大学千葉北総病院の松本尚・元センター長(現特任教授)の2 年下の後輩でして,手術中に松本先生からケリーでしこたま手を叩かれて外科手技を学びました(ただし,ケリーで手を叩いてきたのは松本先生だけでしたが)。その後,杏林大学で今でいうところのacute care surgery と外傷外科を勉強させていただき,JATECTMの会場で当時聖マリアンナ医科大学の救命救急センター長であった箕輪良行先生に誘われてERの道に入りました。そして2016 年,東京ベイ・浦安市川医療センターで救急研修プログラムを立ち上げるために同病院に医局派遣されました。そこで志賀隆先生,舩越拓先生らと出会えたのは筆者の人生の中でも最も幸運だったことの1つと考えております。ただし,日露戦争中に沙河から旅順に赴いた児玉源太郎のように浦安を手助けしようとの思いで赴いたはいいものの,浦安の皆さんはとても優秀な方ばかりでしたので,ERフィジシャンとしては私には大して仕事もなく,細々とERのケガ,キズを診るということになったのは自然の流れといわざるをえません。ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず。まさに淀みに浮かんでたゆたいながら細々と,です。しかし,そこは東京ベイ・浦安市川医療センターですから,細々とですが沢山のケガした患者さんを診ましたし治療をさせていただきました。シフト制勤務のERで自分がやった創治療のフォローアップを写真を使って結果を確認していくという方法をもって確立したのも同病院でした。その後,練馬光が丘病院で救急研修プログラムを立ち上げることとなり,また異動となりました。ちょっと脱線しますが,医師の場合,資格というものは力の源泉だといわれていましたが,私のように資格によって翻弄されるということもあるわけでして,なかなか人生奥が深いです。昔金沢大学第二外科で,「おい井上,人生っていうのは,運7 割,閨閥2割,実力1割だぞ,その1割の実力もなかったらどうすんだ?」と言われたのを思い出します。それはそれとして,創傷患者の臨床写真によるフォローアップシステムを東京ベイ・浦安市川医療センターから練馬光が丘病院にそっくりそのまま移植しました。今回,救急医,あるいは救急外科医目線で,初学者から中堅までの現場のニーズに合った新しい技術解説の本を作りたいと考えたわけですが,本文中の臨床写真はそのような写真の中から選んだものばかりで,ほとんどの写真が私自身が手掛けたものです(もちろん他の先生によるものもあります)。
一連のERの旅を通じて私が感じたことは,いくら優秀な研修医でも外科的な手技はきちんと教えてもらって練習しないと身に付かないものなんだなという点です。そこで本書では,豊富な臨床写真やイラストを用いて臨場感を出し,また特に身に付けてほしい手技には動画も付けることとしました。
ERでの創傷の治療は,手術室での手技と違いほとんどが局所麻酔下に行われます。つまり患者さんは常に意識があり,医療者の動きを見,言動を聞いています。従って,ERでの創傷の治療中は,バタバタせず,途中で物品を取りに行くようなことも極力避けて,リズミカルにテンポよく,流れるように処置を終わらせるようにしなければなりません。これは例えば包帯を巻き終わるまで,すべてが一連の流れであることが理想です。このような創処理・創処置をやってこそ,患者さんは安心感を得られます。また,これは私感ですが,リズミカルにテンポよく,流れるように処置を終わらせた創は,不思議なもので,傷の治りもスムーズに良くなるという手ごたえを得ています(臨床現場は奥が深いです)。本書はそのための技術を解説した実用書です。
技術の習得はひたすら反復練習です。近道はありません。逆に近道を謳っている場合はその先に落とし穴が待っています。正しい反復練習をしていれば,そのうちに自転車に乗れたときのように身体が覚えてくれます。初学者の方は基礎を学ぶために,中堅の救急医の方は技術を見直すために,是非この本を開いてください。そして,足りないところは反復練習をしてください。くれぐれも創の処理・処置中に,「あっ」とか「しまった!」とか「チッ」と舌打ちとかして患者さんを不安にさせないように祈念しています。
2024年3月
練馬光が丘病院 総合救急診療科救急部門 部長
井上哲也
目次
Part 1 総論
創傷を扱うに際して
創傷治癒のメカニズム
救急科と形成外科の対応の違い
座談会 救急医にとっての外科研修の必要性について
Part 2 創傷治療で身に付けるべきテクニック
必須の基本テクニック:初期研修でこれだけは身に付けよう
局所麻酔:麻酔なしに洗浄も創観察もできない
創の観察と洗浄
処置時の感染対策と抗菌薬投与
創縫合を行うための基礎知識−器具の使い方など
創縫合の基本手技−結紮法
創縫合の基本手技−縫合法
創縫合の応用テクニック:複雑な創への対応
弯曲した創・ギザギザの創
デブリードマン
さまざまな創傷の縫合
ドレーン挿入留置
座談会 忘れられない反省症例
Part 3 部位別の処置法など
頭部
頭皮
顔面/前額部
眼とその周囲
耳介
鼻
口唇・舌
手
爪
動物咬傷(イヌ・ネコ・ヒト)
軽症熱傷
湿潤療法
陰圧閉鎖療法(NPWT)
座談会 創の治療に役立つトリビア
Part 4 処置後のフォロー
破傷風予防
患者指導と抜糸
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書籍情報
- ISBN:9784758313148
- ページ数:336頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年4月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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