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INTESTINE 2019 Vol.23 No.3 早期大腸癌内視鏡治療後の転移再発と予後
『INTESTINE』編集委員会 (編集) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
本特集では,早期大腸癌を対象として,内視鏡治療手技別,病変の組織学的特徴から見た内視鏡治療後の転移再発と予後の実態を明らかにするとともに,内視鏡治療の課題などについて執筆いただいた(編集後記より抜粋).
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序文
序説
今回,「早期大腸癌内視鏡治療後の転移再発と予後」というテーマの特集を企画させていただいた.ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)をはじめとする内視鏡治療技術の進歩によって,早期大腸癌は腫瘍の大きさやSM浸潤度を問わず,内視鏡的一括切除が可能となってきた.多くの早期大腸癌が内視鏡治療されるようになった一方で,転移再発をきたす症例が存在するのも事実である.転移再発を起こしやすい病変の生物学的悪性度を推測するうえで,その発育進展を考えることが一つの手掛かりとなる.
以前より大腸癌の組織発生については,腺腫が癌化するというadenoma-carcinoma sequence が支持されてきたが,われわれはⅡc型de novo癌の存在・重要性について数多くの報告を行ってきた.多くの臓器では癌は正常上皮から直接発生するもの(de novo癌)が少なくない.大腸においても前癌病変を伴わず正常粘膜から直接発生するⅡc型de novo癌こそが,食道癌や胃癌と同様に,大腸癌の発育においてもメインルートと信じ,これまで研究を重ねてきた.de novo癌は悪性度が高く,遠隔転移をきたしやすいといわれているが,実際のデータでもその傾向は認められた.
筆者が陥凹型早期大腸癌の存在とその臨床的意義を書籍「早期大腸癌─平坦・陥凹型へのアプローチ」(医学書院)として世に問うたのが1993年であり,その後Ⅱcをはじめとする陥凹型腫瘍や拡大内視鏡によるpit pattern診断が徐々に認識されてきた.陥凹型病変は腺腫を介することが少なく,de novo癌であり,陥凹型大腸癌が隆起型や平坦型の腫瘍と大きく異なる特徴を有していることが解明されてきた.陥凹型早期大腸癌は,隆起型や平坦型に比べ,腫瘍径が小さいうちにSM浸潤をきたし,脈管侵襲や簇出の出現率が有意に高く,腺腫成分をほとんど認めないといった病理学的特徴を示した.すなわち,陥凹型大腸癌は腫瘍の進行が速く,腫瘍径が小さくとも悪性度が高いと考えられる.
では実際に,陥凹型早期大腸癌は遠隔転移や再発をきたしやすいのだろうか.当センターにおいて,T1(SM)癌1,051病変の検討では,遠隔転移再発をきたした10例のうち5例(50%)が陥凹型大腸癌であった.なかでも,内視鏡治療後に遠隔転移再発をきたした4例のうち2例は陥凹型大腸癌であり,陥凹型大腸癌は内視鏡治療後には再発をきたしやすいかもしれない.腫瘍径が小さく,内視鏡的一括切除が可能であっても,再発のリスクが高いため,厳重なフォローアップが必要である.
癌の転移を起こす機序は複雑であり,さまざまな因子が関わっている.1980年代初頭より上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition;EMT)という概念が提唱され,現在では広く受け入れられている.EMTとは整然と配列し互いに密な連結を有する上皮細胞の性質を失い,周囲との結合が弱く運動能を有する間葉系細胞の形質を獲得するメカニズムのことである.癌細胞は増殖しながら,一部の細胞がEMTを起こし,細胞極性を失い細胞間接着が減弱することで,運動性が上昇し,血管やリンパ管に侵入し血液やリンパ液に乗り他臓器に移動する.その後MET(mesenchymalepithelial transition)を起こし生着し,転移巣を構築する.その過程にはさまざまな分子が関わっており,日夜研究がなされている.
昨今では人工知能(artifi cial intelligence;AI)が目覚ましい進化を遂げ,医療への応用が進んできている.われわれも,大腸腫瘍の存在および質的診断においてAIを用いた研究・開発を進めている.さらに,SM癌のリンパ節転移リスク予測にもAIを活用し,この方法がoversurgeryの数を減少させる可能性があるという結果が得られている.今後は予後や再発転移のリスクに対しても,AIを活用することで,患者の予後の改善に寄与するような結果が得られることを確信している.
今回の特集で内視鏡治療後の転移や再発を起こしやすい腫瘍の特性が明らかになれば幸いである.
昭和大学横浜市北部病院消化器センター
工藤 進英
目次
序説
Ⅰ.大腸癌治療ガイドラインから見た早期大腸癌の内視鏡治療適応と大腸T1癌のリンパ節転移リスクの層別化
Ⅱ.早期大腸癌内視鏡治療後の転移再発と予後の実態
(1)隆起型早期大腸癌
(2)表面型早期大腸癌
(3)LST
(4)局在別の特徴─ Rb T1癌の悪性度を中心に
(5)追加外科手術の意義と限界
(6)内視鏡治療後経過観察し再発した大腸T1(SM)癌の転帰・予後
Ⅲ.先行する内視鏡治療は追加手術後の予後に影響するか?
(1)大腸T1癌において先行する内視鏡切除が追加外科手術後の予後に与える影響
(2)予後に影響させないための注意点
Ⅳ.内視鏡治療後の至適サーベイランスについて
Ⅴ.症例
(1)リンパ節再発をきたした粘膜内癌と診断された直腸LST病変の1例
(2)完全内視鏡切除後4年目に再発が確認された直腸癌の1例
(3)内視鏡的摘除後リスク因子がSM浸潤度1,000μm のみであった再発症例
(4)内視鏡的摘除後にリンパ節転移,および遠隔転移をきたした直腸粘膜下層深部浸潤癌の1例
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書籍情報
- ISBN:9784004202303
- ページ数:98頁
- 書籍発行日:2019年5月
- 電子版発売日:2019年6月5日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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