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臨牀消化器内科 Vol.39 No.5 特集「肝細胞癌の集学的治療」
商品情報
内容
序文
―本特集を企画して―
肝細胞癌は治療という観点からも,他癌腫とは異なる特徴を有する.
1 .治療選択肢の多様性
切除,ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation;RFA)や経皮的マイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy;PMCT),経カテーテル肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemo‒embolization;TACE),薬物療法などの標準療法に加え,肝動注化学療法(hepatic arterial infusion chemotherapy;HAIC)や放射線治療,肝移植と,さまざまな治療選択肢がある.
2 .背景肝の肝予備能の重要性
背景肝の肝予備能は,治療選択のみならず生命予後にも大きく影響する.従来,肝細胞癌の最大の原因であったB 型肝炎やC 型肝炎は抗ウイルス薬により制御可能となり,肝予備能の改善,ひいてはウイルス性肝細胞癌の予後改善をもたらしている.一方,近年増加しているMASH (metabolic dysfunction‒associated steatohepatitis)由来肝細胞癌においては背景肝の炎症を制御する方法が確立しておらず,薬物療法,とくに複合免疫療法の治療効果にも悪影響を及ぼしている.
3 .多中心性発癌
多くの肝細胞癌は肝の炎症や線維化を背景として発生する.したがって,肝硬変のような病態では前癌病変がすでに複数存在しており,同時にあるいは異時性に多中心性発癌をきたす.多中心性発癌のため,多発癌は必ずしもモノクローナルでなく,また再発癌も初発癌とは異なるクローンの可能性がある.多クローンであれば,とくに薬物療法では結節ごとに治療効果が異なるなどの現象が認められる.
肝細胞癌の特徴から,治療アルゴリズムは複雑にならざるを得ず,治療方針は,肝臓外科医,肝臓内科医,放射線科医,腫瘍内科医などによるcancer board により決定することが望ましい.そのような状況で,近年めざましい発展を遂げているのが薬物療法である.2009 年に分子標的治療薬であるソラフェニブが登場して以後,今日に至るまでレゴラフェニブ,レンバチニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブと,多くの一次あるいは二次以降の治療薬としての分子標的治療が登場した.2020 年にはアテゾリズマブ(PD‒1 抗体)+ベバシズマブ(VEGF 抗体)併用療法,2023 年にはデュルバルマブ(PD‒1 抗体)+トレメリムマブ(CTLA‒4 抗体)併用療法がソラフェニブに優越性をもって新たな一次治療レジメンとして承認され,切除不能進行肝細胞癌の標準治療は今や免疫チェックポイント阻害薬を用いた複合免疫療法となっている.また,薬物療法の発展に伴い,advanced stage のみならずintermediate stage でのTACE と薬物療法の併用,あるいはearly stageでの術後補助療法としての薬物療法など,多くの治験が行われており,肝細胞癌の集学的治療を大きく変えつつある.肝細胞癌患者の生命予後のさらなる改善が期待されるところである.集学的治療の発展は肝切除術の概念も変えつつあり,borderline resectable という概念が登場している.さらには粒子線治療が保険適用となり,治療選択肢はより多岐にわたるようになった.治療の選択肢が増えることは肝細胞癌患者にとって福音であるが,その一方で,治療法選択の決定木は複雑となり,混迷を深めている側面もある.
また,治療により根治が得られても,肝障害を背景とする肝細胞癌は高率に再発を繰り返すため,肝細胞癌患者の生命予後改善には逐次的な治療が重要である.しかしながら,治療は多かれ少なかれ肝予備能悪化をもたらすことが多く,根治を目指す一方で,肝予備能を維持することは繰り返し治療を行ううえでもきわめて重要である.薬物療法の逐次治療も同様である.肝細胞癌治療は,いかに肝予備能を維持しながら癌を治療するかにかかっている.その複雑な病態と多くの治療選択肢から,肝細胞癌こそ集学的治療を必要とする疾患であり,また,集学的治療が有効な癌腫であるといえる.
このように急速に発展を遂げる肝細胞癌の治療を,各分野の第一人者に概説いただいた.肝細胞癌患者にとって最善の治療法選択,また,それによるさらなる生命予後改善にお役に立てれば本望である.
Naoya Kato
*千葉大学大学院医学研究院消化器内科学(〒260‒8670 千葉市中央区亥鼻1‒8‒1)
Guest editor 加藤 直也*
目次
特集/ 肝細胞癌の集学的治療
巻頭言 加藤 直也
1 .肝細胞癌治療アルゴリズム 建石 良介
2 .肝細胞癌治療の実際
(1)肝切除術 楊 知明,波多野悦朗 他
(2)穿刺局所療法 森本 直樹
(3)肝動脈化学塞栓術および肝動注化学療法 平岡 淳 他
(4)薬物療法
① 複合免疫療法(アテゾリズマブ+ ベバシズマブ) 中馬 誠 他
② 複合免疫療法(デュルバルマブ+ トレメリムマブ) 葛谷 貞二 他
③ 複合免疫療法以外の分子標的薬 山下 竜也 他
④ 肝細胞癌に対する薬物療法の治療シークエンスの変遷と今後の展望 井上 将法,小笠原定久 他
⑤ Intermediate stage での薬物療法 上嶋 一臣
⑥ 薬物療法におけるバイオマーカー 小玉 尚宏 他
⑦ 薬物療法によるconversion 土谷 薫 他
⑧ 薬物療法の将来展望 池田 公史
(5)粒子線治療を含む放射線治療 若月 優
(6)肝移植 吉住 朋晴 他
〔連 載〕 「胃炎の京都分類」の使い方
第20回 固着粘液は何を意味するか 寺尾 秀一
内視鏡の読み方
胃の褪色調陥凹性病変の鑑別診断 伊藤 孝助,平澤 俊明 他
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書籍情報
- ISBN:9784004003905
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2024年4月
- 電子版発売日:2024年4月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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