特集にあたって
子どもと家族のグリーフに心を寄せ，ささえる存在として

グリーフケアは，子どもとの死別後に家族へ行われる支援と受け取られることも多いですが，広義では，「診断された直後からはじまり，闘病中からの一連のかかわりが，家族のグリーフ過程にとって何らかの助けとなる」とされています。本特集では，この広義のグリーフケアについて幅広く取り上げ，診断時・闘病期間中のかかわりから子どもと死別した後までのグリーフケアを継続した視点でとらえ，皆さんが実際の臨床現場で経験し，共感できるような，そして日々の看護ケアの気づきになるような内容を目指しました。

子どもの死と一言でいっても，流産・死産，新生児から乳幼児，学童期・思春期の子どもに至るまでの死を含みます。日々，成長・発達している子どもに対する家族の思いもさまざまです。また，子どもの亡くなり方も，胎児の段階での死，乳児の突然死，事故や災害・自殺などの予期せぬ死から，難治性の疾患により闘病の末に死を迎えるなど多様です。多くの場合，診断時から子どもが亡くなるまでの間には，子どもと家族をささえる専門職種がかかわりをもちます。制限のあるなかでも子どもらしく豊かな時間を過ごし，最期の瞬間まで生をまっとうできるように，そしてその家族をサポートできるようにするためには，多職種の力が不可欠であり，今回，多岐にわたる職種・立場の方にも執筆にご協力いただきました。

難治性の疾患の子どもは，治療や救命率を上げるために専門性の高い大学病院や小児専門病院で治療を受け，そこで闘病生活を行い，時として看取りになるケースが大半を占めます。しかし，子どもが生活をしているあらゆる場所，そして子どもが最期を迎える場所はさまざまです。少ないとはいえ子どもを看取ることがありえる一般病院，施設，在宅などを加え，全国の幅広い地域からの実践活動を紹介していただきます。

小児領域におけるグリーフケアでは，子どもを亡くした親へのケアを中心に考えがちですが，本特集では，当事者の子ども，きょうだいや一緒に闘病してきた仲間である子ども，さらに子どもと家族をそばでささえ続けてきた医療者へのケアも考える機会にしたいと思います。

いとおしいわが子を亡くす，大切なきょうだいや友を亡くすという深い悲しみ，悲嘆を抱えながら日常を送る人々に対して，診断時から継続してかかわっている小児医療に携わる者は，悲しみに心を寄せ，寄り添い支えることができる存在と考えます。そして少なからず，小児医療に携わる人々も深い喪失体験を経験しています。本特集が喪失体験，悲嘆を抱えながら共に生きる人々の一助となり，よりよいケアにつながることを願っています。

志藤千晴
元神戸女子大学看護学部／小児看護専門看護師