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- 機能性神経障害診療ハンドブック 脳神経内科,精神科,総合診療科のギャップを埋める
商品情報
内容
プライマリケア・総合診療科でもCommonな痛みやしびれ,歩行障害など,「特に器質的原因がなく,わからないですね」「気持ちの問題ではありませんか」で終わらせない! 脳神経内科と精神科の境界領域にあるFND,運動異常症,精神・神経疾患を正しく理解し,適切な診療をするための本邦初の診療マニュアル.神経変性疾患や精神科で使用される薬剤によるさまざまな運動異常症など,正しい診断・鑑別ができれば対応が変わります.ドクターショッピングを繰り返していた患者から「先生のおかげではじめて治ることへ希望が持てました」と言われるようになる1冊です.
序文
序文
歴史的に「ヒステリー」や「転換性障害」などと呼ばれた疾患は,原因が不明の謎の疾患として考えられてきました.しかし近年,精神科と脳神経内科の間に位置する,複雑だがしばしば遭遇するcommon disease と考えられるに至り,「機能性神経障害(functional neurological disorders: FND)」の名称でとらえ直されています.診断は精神科的・心理学的特徴から行うのではなく,神経診察による陽性徴候を元に,検査は最低限としてなるべく早期に積極的に行うべきと考えられています.また医師による診療,とくに病気の説明自体が認知行動療法となるという考えが普及しつつあります.しかしCOVID—19 のパンデミック以降,FND 患者数は顕著に増加したため,なかなか診断がつかずdoctor shopping を繰り返す患者さんがたくさんおられます.よってFND の疾患概念を社会に周知する必要がありますし,その診療に関わる者は,診断のために必要な神経学的な陽性徴候を理解すること,そして治療のために必要な病状説明や認知行動療法,リハビリテーションの有効性を学ぶことが求められます.
また精神科と脳神経内科の境界領域はFND のみではありません.具体的には精神科で使用される薬剤によるさまざまな運動障害がありますし,境界領域でしばしば経験する運動障害もあります.さらには2 つの診療科の双方が診療する神経疾患(神経変性疾患・自己免疫性神経疾患)もあります.これらを適切に診療するには精神科と脳神経内科の相互の理解と協力が重要と考えられます.さらにこれらの患者の初期診療に携わることがある総合診療医にとっても不可欠な知識になります.しかし現状の専門医教育のカリキュラムでは,お互いの診療科について深く学ぶことはできず,境界領域に対応できる医師の育成は容易ではないという深刻な問題があります.
本書は以上のような問題を解決するために,境界領域にあるFND,運動障害,精神・神経疾患を正しく理解し,脳神経内科と精神科による連携を目指すことを目的としたものです.このため両診療科のまさにエキスパートの先生方にご執筆を依頼しました.ただし本邦では歴史の浅い領域であることから,私は当初,本書の制作は困難を極めるものと予想していました.しかし各執筆者の先生方にはこれ以上ないほどの,熱のこもった素晴らしい原稿をご執筆いただきました.拝読して非常に胸が熱くなりました.本書が複数の診療科の架け橋となり,FND をはじめとする境界領域の症候や疾患の理解を深め,診療の質を高めて,患者さんとそのご家族が直面する多くの苦痛を和らげることにつながるものと確認しております.最後に,これまでにないプロジェクトにご協力いただいたすべての執筆者,ならびに中外医学社の皆様に心からの感謝を表します.
2024年4月
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野教授
下畑 享良
目次
I 機能性神経障害 ―総論―
1 FNDの診断治療の考え方 (園生雅弘)
1 はじめに
2 ヒステリーの歴史概観1:神経学の源流から精神分析まで
3 ヒステリーの歴史概観2:DSM分類の登場・変遷と20世紀後半の停滞
4 ヒステリーの歴史概観3:21世紀の新潮流
5 日本におけるFND教育について
2 歴史から学ぶ(1):シャルコー以前のヒステリー (柴山秀博)
1 はじめに
2 ヒステリーという名称の採用と用語としての確立
3 フランス革命を通じてのヒステリーの意味合いの変化
4 名前を付けるということ
3 歴史から学ぶ(2):シャルコーの火曜講義録に見る機能性神経症状 (岩田 誠)
1 Charcotの火曜講義
2 Charcotにおける機能性神経症状
4 歴史から学ぶ(3):精神分析とヒステリー (加藤隆弘)
1 はじめに
2 ヒステリーの現代精神医学における位置付け
3 ブロイアーが創出した談話療法によるヒステリー治療
4 フロイトとシャルコーとの出会い
5 フロイトによるヒステリー患者への精神分析治療
6 ヒステリーの原因は心的外傷か?
7 ヒステリーの病態解明に現代の脳科学研究と精神分析が貢献しうること
8 おわりに
5 転換性障害の精神科的概念 (吉村匡史)
1 はじめに
2 精神疾患の診断基準における転換性障害(ヒステリー)
3 おわりに
6 FNDとフェミニズム (飯嶋 睦)
1 はじめに
2 FNDを取り巻く偏見と誤解
3 FNDがフェミニスト問題である理由
4 今後の課題
7 診療のコツ・注意点 (廣瀬源二郎)
1 歴史
2 問診のポイント
3 診察のポイント:“陽性徴候”のコア診察
4 診断
8 受診診療科により異なる診療のコツ・注意点 (堀 有行)
1 はじめに
2 臨床神経学(clinical neurology)と臨床精神医学(clinical psychiatry)
3 医療面接(問診)のポイント
4 診察のポイント
5 診断と鑑別診断の説明
6 予後
7 治療と長期的フォローアップのための支援のポイント
8 今後の課題
9 Stroke mimicsとしてのFND (下畑享良)
1 はじめに
2 疫学
3 問診
4 診察
5 画像検査
6 治療と病状説明
7 おわりに
10 身につけるべき症候学 (園生雅弘)
1 はじめに
2 MMTの有用性:筋力低下の分布
3 FNDの陽性徴候
4 陽性徴候による診断の限界とその克服:電気生理検査の有用性
11 FNDに間違いやすい神経疾患を通してFNDを考える (福武敏夫)
1 はじめに
2 代表的神経疾患の場合
3 神経精神症状を呈する内科的疾患
4 運動障害:ジスキネジアとカタレプシー
5 モノアミンとHPA軸,機能神経画像からFNDを考える
6 おわりに
12 FNDを合併しやすい神経疾患 (今井 昇)
1 はじめに
2 神経疾患の診断の基本
3 病歴聴取のコツ
4 神経学的診察のコツ
5 頭痛疾患におけるFND
13 コロナウイルス感染症の後遺症 (大平雅之)
1 はじめに
2 感染後FND
3 ワクチン後のFND
4 診断
5 感染後遷延症状と精神疾患の併存
6 予後
7 治療
8 まとめ
14 COVID—19とFND (下畑享良)
1 はじめに
2 文献検索とFNDの分類
3 COVID—19に関連するFNDの分類と患者数
4 非感染者に認めたFND
5 ワクチン接種後のFND
6 感染後のFND
7 おわりに
15 FNDに合併しやすい精神疾患 (是木明宏)
1 はじめに
2 合併頻度
3 FNDの素因となりうる病態
4 FNDの合併症もしくは鑑別すべき代表的な精神疾患
5 おわりに
16 FNDの病態 (冨山誠彦)
1 はじめに
2 FNDの危険因子,増悪因子と持続因子
3 機能性運動障害の病態生理
17 電気生理学的検査 (関口輝彦)
1 はじめに
2 電気生理検査を適切に診断に用いるために
3 機能性運動麻痺の電気生理検査
4 機能性感覚障害の電気生理検査
18 FNDにおける脳画像研究の現状について (吉野敦雄)
1 はじめに
2 FNDの脳画像研究
3 今後の展開
4 おわりに
19 治療(1):脳神経内科的アプローチ (神林隆道)
1 はじめに
2 どのようにFNDの診断を説明するか
3 陽性徴候(positive sign)の共有
4 集学的治療の重要性
5 発症初期および慢性期のFNDに対する治療
6 おわりに
20 治療(2):心身医学・精神医学的アプローチ (福永幹彦)
1 心身医学・精神医学における位置づけについて
2 SSDと「他の医学的疾患に影響する心理的要因」の関係について
3 機能性神経症状症(変換症)
4 SSD,FNDと「他の医学的疾患に影響する心理的要因」の関係について
5 治療について
6 治療経験
7 結語
21 FNDに対するリハビリテーション医療 (角田 亘)
1 はじめに
2 いかなる場合にリハビリテーション科にコンサルトするべきか?
3 FNDに対するリハビリテーション医療の考え方
4 リハビリテーション医療の一環として行う患者教育
5 FNDに対するリハビリテーション医療のプログラム
6 FNDに対するリハビリテーション医療の有用性を示した過去の報告
7 慢性化したFNDに合併する廃用症候群
8 日常生活と社会活動の向上を目指すリハビリテーション医療
II 機能性神経障害 ―各論―
1 機能性運動麻痺 (安藤哲朗)
1 はじめに
2 機能性運動麻痺(FW)の特徴
3 機能性運動麻痺(FW)の陽性徴候
4 機能性運動麻痺診断における注意点:器質的疾患との合併症例の存在
2 機能性感覚障害 (関口兼司)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 治療
8 予後
9 今後の課題
3 機能性振戦 (渡辺宏久)
1 はじめに
2 臨床特徴
3 機能性振戦の陽性徴候
4 電気生理学的検査の特徴
5 病態生理
6 治療
7 最後に
4 機能性ジストニア (下畑享良)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
5 機能性ミオクローヌス (守安正太郎 花島律子)
1 はじめに
2 歴史
3 問診・診察のポイント
4 検査
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
6 機能性チック (藤岡伸助 高橋信敬 坪井義夫)
1 はじめに
2 問診のポイント
3 診察のポイント
4 診断
5 鑑別診断
6 予後
7 治療
8 今後の課題
7 機能性パーキンソニズム,およびパーキンソン病に合併しやすい機能性運動障害 (武田 篤)
1 はじめに
2 症候の特徴と病態の理解に向けて
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
8 機能性歩行障害 (大熊泰之)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
9 機能性発作性運動障害 (田代 淳)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
10 機能性顔面障害 (仙石錬平)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
11 機能性発声障害 (竹本直樹 讃岐徹治)
1 はじめに
2 種類
3 問診のポイント
4 診断と治療
5 今後の課題
12 小児の機能性運動障害 (久保田雅也)
1 はじめに
2 疫学
3 小児の機能性運動障害の特徴
4 初期にギラン・バレー症候群(GBS)を疑われ,後に機能性歩行障害と診断された2例
5 さいごに
III 薬剤誘発性運動障害
1 Neuroleptic malignant syndrome(NMS,悪性症候群) (服部早紀 岸田郁子 河西千秋)
1 はじめに
2 歴史
3 病態
4 問診のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 予防
10 今後の課題
2 セロトニン症候群 (長田高志)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
3 ドパミン拮抗薬によるパーキンソニズム (関 守信)
1 はじめに
2 症候学
3 原因となる薬剤
4 検査
5 発症前パーキンソン病の関与
6 治療
4 遅発性ジスキネジア (野元正弘)
1 はじめに
2 歴史
3 発症の機序
4 臨床所見
5 対応と治療
6 おわりに
5 薬原性アカシジア (稲田俊也)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
9 今後の課題
6 急性ジストニア (宮本亮介)
1 はじめに
2 問診のポイント
3 診察のポイント
4 診断・鑑別診断
5 治療
6 今後の課題
7 レストレスレッグス症候群 (岡 靖哲)
1 はじめに
2 歴史
3 問診のポイント
4 診察のポイント
5 診断・病態
6 鑑別診断
7 予後
8 治療
8 抗うつ薬による運動障害 (佐光 亘)
1 はじめに
2 抗うつ薬
3 原因薬剤と起こりうる運動障害
4 問診のポイント
5 診察のポイント
6 診断
7 鑑別診断
8 予後
9 治療
10 今後の課題
9 薬剤誘発性振戦・ミオクローヌス (坪井 崇)
1 はじめに
2 振戦・ミオクローヌスの評価のポイント
3 薬剤誘発性振戦・ミオクローヌスの原因薬剤
4 鑑別診断
5 問診のポイント
6 検査のポイント
7 診断と治療
8 今後の課題
10 薬剤誘発性運動障害・薬剤誘発性小脳性運動失調 (太田康之)
1 はじめに
2 薬剤誘発性小脳性運動失調の原因となりえる代表的薬剤
3 最後に
IV 境界領域の運動障害
1 せん妄とカタトニア (西尾慶之)
1 はじめに
2 せん妄
3 カタトニア
4 せん妄とカタトニアの境界例の治療
2 過眠症・カタプレキシー (鈴木圭輔 小俣伸介 木村真由香)
1 はじめに
2 意識障害と睡眠
3 カタプレキシー(情動脱力発作)
4 おわりに
3 心因性非てんかん発作(PNES) (赤松直樹)
1 心因性非てんかん発作の定義
2 PNESの疫学
3 PNESの診断
4 PNESの治療
5 PNES診療における精神科医との連携
4 PNESにおける脳波検査 (村田佳子)
1 はじめに
2 問診のポイント
3 診察のポイント
4 診断
5 今後の課題
5 常同運動(Motor stereotypies) (野村芳子)
1 はじめに
2 常同運動(motor stereotypy)とは
3 分類
4 診断
5 鑑別診断
6 経過,予後
7 病態
8 治療
9 おわりに
6 チックとTourette症候群 (星野恭子)
1 はじめに:チックの正体 〜ムズムズする感覚を払拭する半不随意運動?〜
2 チックの一般的な知識
3 成人のチックを診療する場合
4 チックの新たな治療アプローチ〜包括的行動的介入〜
7 ADHD,ASD,OCDと運動障害 (金生由紀子)
1 はじめに
2 ADHD
3 ASD
4 OCD
5 ADHDとASDとOCDの関連と運動症状
6 ADHD,ASD,およびOCDにおける運動症状の診察のポイント
7 ADHD,ASD,およびOCDにおける異常運動症の治療
8 おわりに
V 境界領域の精神・神経疾患
1 レビー小体型認知症 (織茂智之)
1 はじめに
2 臨床診断基準
3 脳神経内科医,精神科医が行う診断・治療
4 早期診断のポイント
5 臨床症状
6 指標的バイオマーカー
7 DLBに対する薬物治療
8 症例
2 前頭側頭型認知症 (渡辺宏久)
1 はじめに
2 FTLDの臨床像
3 FTLDへの薬物および非薬物治療
4 ALSにおける行動障害や言語障害の特徴
5 PSP/CBSにおける行動障害や言語障害の特徴
6 まとめ
3 ハンチントン病 (長谷川一子)
1 はじめに
2 歴史
3 疫学
4 HDの運動症状と経過
5 HDの精神症状
6 若年型HD
7 検査と診断
8 鑑別診断
9 治療
10 今後の課題
11 結語
4 自己免疫性精神病 (木村暁夫)
1 はじめに
2 抗NMDAR脳炎における精神症状
3 自己免疫性精神病を見い出すポイント
4 自己免疫性精神病の診断クライテリア
5 統合失調症における抗神経抗体
6 自己免疫性精神病の治療
7 今後の課題
5 自己免疫性運動障害 (大野陽哉)
1 はじめに
2 自己免疫性運動障害に関連する自己抗体と特徴的な運動障害
3 自己免疫性運動障害・機能性運動障害の誤診例
4 自己免疫性運動障害と機能性運動障害との臨床像の比較
5 鑑別のポイント
6 おわりに
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書籍情報
- ISBN:9784498428164
- ページ数:528頁
- 書籍発行日:2024年5月
- 電子版発売日:2024年5月31日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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