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- 別冊「医学のあゆみ」がん免疫療法の躍進
商品情報
内容
●2017 年10 月現在,わが国では抗PD-1 抗体薬としてニボルマブとペムブロリズマブが,抗CTLA-4 抗体薬としてイピリムマブが承認され,適応症としては,悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌などに次々と拡大してきている.
●従来の治療を大きく凌駕する成績が報告され,標準治療が大きく変容し,がん治療のパラダイムシフトを迎えているが,がん免疫療法は,さまざまな意味でがん治療の臨床現場の混乱を招いているのもある側面事実である.
●そこで本書では,がん免疫療法の基礎と臨床への展開.臨床における最新の治療成績,従来のがん治療とは異なる副作用とその対策,さらに医療経済といった社会的な問題まで幅広いトピックスを網羅した一冊.
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序文
はじめに
1992年11月,『European Molecular Biology Organization(The EMBO)』誌に京都大学の石田靖雄,本庶 佑らが自己反応性T細胞にアポトーシスを誘導する分子の候補として,programmed cell death-1(PD-1)の単離・同定を報告した.以降,日本人研究者を中心に,このPD-1に関する研究が蓄積され,自己免疫に加えて,感染免疫,腫瘍免疫,移植免疫など,さまざまな免疫応答を抑制するメカニズムが解明されていった.とくに腫瘍免疫を利用したがん治療への応用はめざましい成果をあげており,この10年で一躍がん治療の中心的治療に躍り出るに至った.今まで臨床的な成果をあげられなかったがん免疫療法の現在の隆盛を,いったい誰が予測できたであろうか.2017年10月現在,わが国では抗PD-1抗体薬としてニボルマブとペムブロリズマブが,抗CTLA-4抗体薬としてイピリムマブが承認され,適応症としては,悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,古典的Hodgkinリンパ腫,頭頸部癌,胃癌とつぎつぎと拡大してきている.
従来の治療を大きく凌駕する成績が報告され,標準治療が大きく変容している今,まさに,がん治療のパラダイムシフトを迎えている.しかしその一方で,突如として臨床現場に登場した(感のある)がん免疫療法は,さまざまな意味でがん治療の臨床現場の混乱を招いているのもある側面事実である.今回,「がん免疫療法の躍進」というテーマで,がん治療における免疫療法の,基礎から臨床,そして社会的な問題まで,現在,各領域の最前線で活躍している研究者・臨床家に執筆を依頼し,超多忙のなか,期待を遙かに超える珠玉の原稿をいただいた.この場を借りて,執筆者の先生方に感謝申し上げる.
本書を熟読していただくことが,がん免疫療法の基礎と臨床への展開,そして,臨床における最新の治療成績,従来のがん治療とは異なる副作用とその対策,さらに医療経済といった社会的な問題まで,広く深く理解できる絶好の機会であると自負している.多くの方にご活用いただき,研究や診療の一助となることを願ってやまない.
室 圭
愛知県がんセンター中央病院副院長,同薬物療法部,同外来化学療法センター
目次
はじめに
概論
1.がん免疫療法概論
・がん免疫療法の歴史
・免疫チェックポイント阻害剤
・遺伝子改変型T細胞療法
・がん免疫療法の将来展望
がん免疫療法の基礎から臨床へ
2.ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法
・ネオアンチゲンとは?
・ネオアンチゲン特異的T細胞による抗腫瘍免疫応答
・ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法
・ネオアンチゲンを標的とした個別化がん免疫療法の課題
3.がんの免疫監視,免疫編集,そして治療へ
・がん免疫監視・編集仮説
・がん免疫編集仮説のマウスモデルでの検証
・治療誘導性のがん免疫編集(therapeutically-induced cancer immunoediting)
・ヒトにおけるがん免疫編集
・ヒトにおける治療誘導性のがん免疫編集
4.T細胞を利用したがん免疫療法
・CAR-T療法
・TCR-T療法
・TIL療法
・非自己細胞の利用
・T細胞輸注療法の課題
5.免疫チェックポイント阻害療法のバイオマーカー
・免疫チェックポイント阻害治療の反応性に関与するヒトがん免疫病態の多様性とその機序
・腫瘍組織バイオマーカー
・血液バイオマーカー
6.がん免疫におけるTregの役割
・発がんと免疫のかかわり:がん免疫編集機構
・がん免疫療法の展開
・制御性T細胞(Treg)とは
・がん局所のTreg
・Tregの代謝
・Tregをターゲットとしたがん免疫療法
7.抗CTLA-4抗体の基礎と臨床
・CTLA-4によるT細胞制御
・がん免疫応答におけるCTLA-4の位置づけ
・抗CTLA-4抗体の種類と作用機序
・抗CTLA-4抗体の有効性
・抗CTLA-4抗体の効果発現パターン
・抗CTLA-4抗体の有害事象
・バイオマーカー
・まとめと展望
8.抗PD-/抗PD-L1抗体薬の基礎と臨床
・免疫チェックポイントの発見と機能解明
・免疫チェックポイント阻害剤の作用機序
・免疫チェックポイント阻害剤
9.抗CCR4抗体薬の基礎と臨床
・CCR4とは
・ATLにおけるCCR4の発現意義
・CCR4を分子標的とする新規抗体療法の開発
・がん免疫応答制御と抗体療法
・おわりに―抗CCR4抗体のこれから
10.腸内細菌叢と腫瘍微小環境,がん免疫
・腸内細菌叢と免疫系
・腸内細菌叢とがん微小環境
・腸内細菌叢とがん免疫療法
・細胞傷害性抗がん剤が誘導するがん免疫と腸内細菌叢
・腸内細菌叢を標的とした個別化医療の可能性
がん免疫療法の臨床
【がん種別治療】
11.悪性黒色腫免疫治療の最前線
・抗CTLA-4抗体
・抗PD-1抗体
・悪性黒色腫免疫療法のトピックス
12.肺癌におけるがん免疫療法
・非小細胞肺癌治療に対する免疫チェックポイント阻害剤の導入
・患者選択におけるバイオマーカー(効果予測因子)
・今後の展望
13.頭頸部がんのがん免疫療法
・転移・再発頭頸部がんに対するがん薬物療法
・頭頸部がんに対する免疫チェックポイント阻害薬
・免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカー
・頭頸部がんに対する免疫療法の展望
14.消化器癌に対する免疫チェックポイント阻害薬―現在までのエビデンスと今後の展開
・食道癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
・胃癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
・大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
・肝に対する免疫チェックポイント阻害薬
・MSI-H癌(胆道癌,膵癌を含む)に対する免疫チェックポイント阻害薬
・今後の展開
15.Hodgkinリンパ腫に対する抗PD-1抗体療法
・Hodgkinリンパ腫(HL)と抗PD-1モノクローナル抗体
・抗PD-1抗体:nivolumab
・抗PD-1抗体:pembrolizumab
・抗PD-1抗体の同種造血幹細胞移植への影響
・抗PD-1抗体の効果とゲノム異常
書き下ろし
16.泌尿器癌における免疫チェックポイント阻害薬の現況
・腎癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
・尿路上皮癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
・前立腺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬
17.婦人科がんに対するがん免疫療法の新展開―PD-1経路阻害薬への期待
・婦人科腫瘍に対するPD-1経路阻害薬の臨床試験(治験)
【副作用】
18.免疫チェックポイント阻害薬による有害事象
・免疫関連有害事象(irAE)の発現部位と頻度
・irAEの発現時期
・副作用への対処方法
19.免疫チェックポイント阻害薬による下垂体障害・下垂体炎
・自己免疫性下垂体炎
・抗PD-1抗体による下垂体障害
・抗CTLA-4抗体による下垂体障害・下垂体炎の特徴
20.免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能障害・副腎機能障害
・がん免疫療法と甲状腺機能障害・副腎機能障害
・免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能障害
・免疫チェックポイント阻害薬による副腎機能障害
・免疫チェックポイント阻害薬による副腎機能障害のメカニズム
21.あらたなoncological emergencyとしての1型糖尿病
・1型糖尿病とは
・免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の発症機序
・免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病の特徴
・1型糖尿病への対策
22.免疫チェックポイント阻害薬による神経・筋障害
・神経・筋障害の副作用
・神経・筋障害疾患におけるirAEの診断
・irAEとしての重症筋無力症(MG)
・筋炎・心筋炎の合併
・irAE-MGの治療
23.肺臓炎/間質性肺炎―免疫介在性肺障害として理解する
・免疫チェックポイント阻害薬による肺臓炎
・肺臓炎の発現割合
・肺臓炎の臨床的特徴
・irAEと治療効果
・患者への投与にあたって
がん免疫療法と社会
24.がん医療の費用対効果
・費用対効果の方法
・免疫チェックポイント阻害薬の費用対効果
・他の治療との比較
・1QALYはいくらか?
サイドメモ
免疫寛容
Microbiomeとdysbiosis
IMDC分類
抗AChR抗体はICIs投与前に測定すべきか?
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書籍情報
- ISBN:9784006528491
- ページ数:160頁
- 書籍発行日:2018年9月
- 電子版発売日:2019年3月29日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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