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  • 高齢者の認知レベルに合わせた作業と環境へのアプローチ -QOL向上のための実践ヒント-

高齢者の認知レベルに合わせた作業と環境へのアプローチ -QOL向上のための実践ヒント-

  • ページ数 : 136頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2024年6月5日
¥3,740(税込)
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商品情報

内容

高齢者や認知症クライエントのQOLは向上できる!
QOLは何をもって向上するのか、どうやって測るのか、臨床実践のヒントが満載。


高齢者や認知症クライエントのQOL向上に欠かせない「ADL/IADLの目標設定」「最適なアクティビティの選定」「快適な住環境設定」について、理論的な枠組みと知識をベースに「認知レベル」「生活機能年齢」をキーワードに解説。
著者の研究テーマであるQOL(生活の質)/幸福感を中心的視座とし、作業療法学的観点から高齢者や認知症のクライエントへの認知レベルに対応した介入効果、作業遂行と心理・認知的要因、環境の相互関連について、長年の研究で得られた知見や情報を整理し、著者開発のスケールとともに具体的な臨床応用の方法を一冊にまとめました。
高齢者や認知症のクライエントと関わる際のクリニカルクエスチョン対する答え、解決の糸口となるヒントを提供しています。

序文

はじめに

QOL(Quality of life)は,医療保健福祉専門職に共通するキーワードとなっており,作業療法アウトカムを示す指標である.したがって,高齢者や認知症のクライエントに関わる作業療法士は,QOL向上を念頭において作業療法を実践していると思う.しかし,「どうすればQOLが向上するのか?」「何をもってQOLが向上したといえるのか?」「QOLはどうやって測るのか?」「そもそもQOLとは何か?」このような疑問を抱いている人もいるのではないだろうか.これらの疑問に対する答え,あるいは解決の糸口となるヒントを本書は提供する.また,次のような疑問もあるのではないだろうか.

「ADL/IADLの目標設定はどうすればよいのか?」「そもそもADL/IADLはどこまで改善するのだろうか?」「アクティビティは何をどのように行えば良いのか?」「集団レクリエーションはどのように計画すれば良いのか?」「テーブルや椅子の高さが合うようにするには,どのようにすれば良いのか?」「デイルームの模様替えを計画しているが,どのようなことに気をつければ良いのか?」これらの臨床疑問(クリニカルクエスチョン)はすべて,高齢者や認知症のクライエントのQOL向上につながることである.本書では,これらを解決する臨床実践上のヒントを提供する.

著者はこれまで長年にわたり,高齢者や認知症のクライエントを対象として次のような研究を行ってきた.

·認知レベルとADL/IADL能力の関連

·認知レベルと対応したADL/IADLスケール(ADL/IADL-COG)の開発

·テーブルや椅子の高さの適合

·施設デイルームや食堂の環境設定方法

·感情や交流の評価法の開発

·認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクスの開発

本書は,高齢者や認知症のクライエントのQOL 向上につながる作業療法実践に役立つ情報を提供することを目的として,これまでの研究活動を通して明らかになった知見や情報を整理し,『高齢者の認知レベルに合わせた作業と環境へのアプローチ』と題して,高齢者や認知症のクライエントの「ADL/IADL」,「アクティビティ」,「住環境」に対する具体的な臨床応用の方法をまとめたものである.

第1章では,高齢者や認知症のクライエントのQOL の捉え方と「理論的枠組み」,QOL向上につながるアプローチの基礎となる認知レベルとADL/IADL能力の関係や人の行動と環境の関係に関する「理論的知識」,高齢者や認知症のクライエントに使できる「QOL評価スケール」などについて概要を解説する.

第2章では,QOL の構成要素であり,作業療法アウトカムにも該当する「ADL/IADL」に対して,認知レベルに合わせたアプローチを解説する.本書のキーワードである「生活機能年齢」を指標として,開発した『認知レベルと対応したADL/IADL スケール(ADL/IADL-COG)』と認知機能評価スケールから,認知レベルとADL/IADL能力の関係性を分析する方法や認知レベルに合わせたADL/IADL の目標設定と介入計画立案について解説する.

第3章では,QOLの構成要素であり,作業療法アウトカムにも該当し,作業療法士が手段として用いる「アクティビティ」について,認知レベルに合わせたアプローチを解説する.「生活機能年齢」を指標として認知レベルの違いとアクティビティへの携わり方の関係を整理して,『ADL/IADL-COG』を使用した認知レベルに合わせたアクティビティの目標設定と介入計画立案について解説する.また,アクティビティ適用の計画が視覚的に捉えやすく,他職種との情報共有も可能な開発した『認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクス』を紹介する.

第4章では,QOL の構成要素であり,人の作業に影響を及ぼす「住環境」について,認知レベルや人体寸法に合わせたアプローチを解説する.高齢者や認知症のクライエントに好ましい9つの住環境設定の基本方針を示し,基本方針ごとに,認知レベルや人体寸法などに合わせた具体的な住環境の設定方法について解説する.また,他職種と情報や問題を共有するための「住環境設定のための評価の視点」を紹介する.そして,第5章では,本書で紹介した高齢者や認知症のクライエントへの認知レベルに合わせた作業と環境へのアプローチの理解を促進するために,回復期リハビリテーション病棟,デイサービス,在宅(訪問作業療法)といったさまざまな場で作業療法士が実践した「事例」を紹介する.また,最後に,認知レベルに合わせた作業へのアプローチの捉え方は,統合失調症や高次脳機能障害のクライエントにも応用できる可能性があることを,研究結果を整理しながら解説する.

作業療法士は高齢者や認知症のクライエントのQOL 向上を作業療法アウトカムとして具体的に示す必要がある.本書で紹介した内容が読者の臨床実践上の一助になれば幸いである.

本書の刊行にあたり,写真を提供してくださった方々,企画を提案してくださった戸川はるな氏,そして執筆と編集の間,丁寧かつ細やかな配慮と助言をしてくださった協同医書出版社の與儀美津子氏に心からの感謝を申し上げたい.


2023年5月

久野 真矢

目次

【第1章】高齢者や認知症のクライエントのQOLを向上させるために

1.QOLに対する作業療法士の役割とQOLのアウトカム

2.高齢者や認知症のクライエントのQOLをどのように捉えるか

 1)QOLの成り立ち

 2)QOLの定義とリハビリテーションの捉え方

 3)高齢者や認知症のクライエントのQOLを理解するための理論的枠組み

3.高齢者や認知症のクライエントのQOLを向上させるための理論的知識

 1)能力−圧力モデル(Press-Competence Model)

 2)認知−活動モデル

 3)対人距離(パーソナルスペース)

 4)プライバシーとテリトリー

 5)行動セッティング

4.高齢者や認知症のクライエントのためのQOL評価スケール

 1)高齢者のためのQOL評価スケール

 2)認知症のクライエントのための包括的QOL評価スケール

 3)認知症のクライエントのための限定的QOL評価スケール

5.QOL向上のために適切な人的環境(心理的環境)とは

 1)ケアスタッフに求められる関わり方

 2)ケアの質を評価する「認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping:DCM)」

【第2章】認知レベルに合わせてADL/IADLへアプローチする

1.キーワードの整理

 1)認知レベルとは

 2)ADL/IADLとは

 3)生活機能年齢とは

2.認知レベルやADL/IADL能力とQOLの関係

3.認知機能評価スケール

 1)MMSE(Mini-Mental State Examination)

 2)HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)

 3)FAB(Frontal Assessment Battery)

 4)NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)

4.認知レベルと対応したADL/IADLスケール(ADL/IADL-COG)

5.高齢者や認知症のクライエントの認知レベルとADL/IADL能力の関係

 1)正常老化,軽度認知障害(MCI),認知症の認知レベルの違い

 2)正常老化,軽度認知障害(MCI),認知症のADL/IADL能力の違い

 3)高齢者や認知症のクライエントの認知レベルとADL/IADL能力の特徴的な関係

 4)高齢者や認知症のクライエントの認知機能評価スケールとADL/IADL能力,生活機能年齢の特徴的な関係

 5)認知症タイプ別の認知機能評価スケールとADL/IADL能力,生活機能年齢の関係

6.認知レベルに合わせたADL/IADLへのアプローチ

 1)カルテや他部門からの情報収集を通して健康状態や生活背景を把握する

 2)インタビューを通して生活上の困りごとを把握する

 3)インタビューなどを通して価値や目的をおく作業を把握する

 4)身体機能を把握する

 5)認知レベルを把握する

 6)ADL/IADL能力を把握する

 7)認知レベルとADL/IADL能力の関係性を分析する

 8)ADL/IADLへのアプローチを計画する

【第3章】認知レベルに合わせてアクティビティへアプローチする

1.キーワードの整理

 1)認知レベルとは

 2)アクティビティとは

 3)生活機能年齢とは

2.アクティビティとQOLの関係

 1)アクティビティに携わることとQOLの関係

 2)アクティビティに必要な環境とQOLの関係

3.認知レベルとアクティビティの環境設定の関係

4.認知レベルの違いによるアクティビティに携わる能力の関係

 1)認知機能評価スケールと生活機能年齢の関係

 2)認知機能評価スケール得点範囲と認知レベル上の生活機能年齢の関係

5.認知レベル別で捉えるアクティビティ適用の基本方針

 1)重度認知症のアクティビティ適用の基本方針

 2)中等度認知症のアクティビティ適用の基本方針

 3)軽度認知症のアクティビティ適用の基本方針

 4)軽度認知障害(MCI)〜正常のアクティビティ適用の基本方針

6.認知レベルに合わせたアクティビティへのアプローチ

 1)アクティビティにアプローチする手順

 2)認知レベルとアクティビティに携わる能力の関係性を分析する

 3)アクティビティへのアプローチを計画する

7.認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクス

【第4章】認知レベルに合わせて住環境へアプローチする

1.キーワードの整理

 1)認知レベルとは

 2)住環境とは

 3)人体寸法とは

2.住環境とQOLの関係

3.認知レベル,人体寸法と住環境設定の関係

4.高齢者や認知症のクライエントに好ましい住環境設定の基本方針

5.住環境へのアプローチ

 1)安全である環境

 2)プライバシーが確保された環境

 3)なじみのある家庭的な環境

 4)なじみのあるアクティビティを行える環境

 5)機能的な環境

 6)交流が促される環境

 7)適切な感覚刺激の環境

 8)分かりやすい環境

 9)行動が促される環境

6.多職種連携による住環境へのアプローチに向けた住環境評価の視点

【第5章】事例紹介,今後の展望と可能性

1.事例紹介

 1)事例1

 2)事例2

 3)事例3

 4)事例4

2.事例のまとめ

3.今後の展望

4.認知−活動モデルの可能性

 1)統合失調症のクライエントへの応用

 2)高次脳機能障害のクライエントへの応用

おわりに


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書籍情報

  • ISBN:9784763995711
  • ページ数:136頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2024年6月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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