• ページ数 : 468頁
  • 書籍発行日 : 2024年6月
  • 電子版発売日 : 2024年5月31日
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商品情報

内容

日本周産期麻酔科学会 公式テキスト
周産期麻酔に携わるすべての医師に役立つ,日本の周産期医療の現状に即し,エビデンスに基づく知識を体系的に学べる日本周産期麻酔科学会の総力を結集した1冊.麻酔科の知識はもちろん,周産期麻酔に必要な産婦人科,新生児科,ペインクリニック,集中治療科,救急科それぞれのエキスパートから必須知識を解説いただきました.実践編として,麻酔が必要となる病態・シチュエーションごとの処方や手技,合併症各種への対応について具体的に紹介.周産期・産科麻酔検定試験の準備に役立ち,臨床の支えになる,日本周産期麻酔科学会公式テキスト

序文

序文

本書は日本周産期麻酔科学会の教科書として編纂されました.日本周産期麻酔科学会は令和2年4月1日に設立されましたが,その設立の目的は「設立趣意書」として学会のホームページに以下のように示されています.

分娩施設が集約化した諸外国と異なり小規模な分娩施設が多い我が国では,現在でも帝王切開の約40%と無痛分娩の約80%の麻酔管理が産婦人科医により行われています.しかし今後は妊婦の高齢化や合併症を持つ妊婦の増加に伴い,周産期により高度な麻酔管理や集中治療が必要とされる機会が増えることが予測されています.また無痛分娩の増加に伴い事故の報道も散見されるようになっていることから,無痛分娩にも麻酔科医がより積極的に関与してより質の高い疼痛管理を行いつつ安全性を担保することが社会から求められています.さらには医学の進歩に伴い新しい胎児治療や新生児治療の増加も予測されており,この分野でも麻酔科医の積極的な貢献が必要とされています.もちろん生殖医療に関する麻酔管理も本来であれば麻酔科医が管理すべきです.

このように周産期医療の現場からは,麻酔管理や集中治療やペインクリニックに長けた麻酔科医への期待は高まる一方ですが,周産期医療の対象となる妊産婦,褥婦,胎児,新生児に安全で質の高い周産期麻酔を提供するためには,麻酔科医自身も周産期麻酔に関する知識を深め経験を蓄積することが求められています.しかし我が国では分娩の集約化が遅れており,また周産期医療のシステムも地域により大きく異なるため,個々の施設でこれを達成するのは容易ではありません.このような状況を鑑み,我々は全国的な周産期麻酔科学の情報発信と連携の拠点として,日本周産期麻酔科学会の設立を目指します.

学会が設立されてから早くも5年が経過しましたが,この間に日本周産期麻酔科学会は着実に成長し,会員数は1000名に迫り,学術集会は3回を数えました.そして学会設立の理念を実現するために,周産期麻酔資格認定医制度と認定試験も計画されています.しかし教科書の発行には執筆依頼から3年近くが経過してしまいました.これはひとえに教科書編集委員会の責任です.多忙な中,この教科書の執筆を引き受けいていただいた先生方には改めて執筆の御礼を申し上げるとともに,出版の遅れに関しては深くお詫びを申し上げます.またこの間,献身的かつ継続的に出版のためご尽力いただいた中外医学社の上岡様,笹形様には心からの感謝の意を表します.

aこの教科書が日本の周産期医療の向上に少しでも貢献できることを願っています.


令和6年4月10日

教科書編集委員会一同

目次

第1章  周産期麻酔科学総論

1. 産科麻酔の歴史と現状

 1.産科麻酔の黎明期〈原 妹那〉

 2.わが国の産科麻酔の歴史〈斎藤淳一〉

2. 周産期麻酔科学

【周産期医療の現状】

 1.世界の現状〈松田優子〉

 2.日本の現状〈片倉友美〉

【周産期医療と麻酔】

 3.周産期麻酔科学〈山内正憲〉

3. 医療安全管理学

 1.チーム医療とシミュレーション教育〈紀之本 茜〉

 2.意思決定支援〈木下真央〉

 3.各種報告制度(医療事故関係・医療安全)〈野口智子〉

 4.周産期に関わる麻酔科医のためのさまざまな講習会〈角倉弘行〉

第2章  周産期麻酔に必要な産科の知識

1. 妊娠中の生理学

【母体の生理学】

 1.循環器系の変化〈若田竜一〉

 2.呼吸器系の変化〈渡邉美貴〉

 3.消化器系・腎臓の変化〈渡邉美貴〉

 4.血液系の変化〈渡邉美貴〉

 5.その他の変化〈若田竜一〉

【胎盤の生理学】

 6.胎盤〈望月純子〉

 7.子宮胎盤循環〈望月純子〉

2. 妊娠中の母児管理

 1.妊婦健診〈長谷川潤一〉

 2.胎児診断・出生前診断〈長谷川潤一〉

 3.麻酔科医による分娩前評価〈坂本三樹 長谷川潤一〉

 4.胎児治療〈遠藤誠之〉

 5.胎児治療の麻酔管理〈盤井多美子〉

3. 胎児の評価と治療

【分娩中の母体評価と治療】

 1.正常な分娩経過の知識〈柿ヶ野藍子〉

 2.異常な分娩経過への対応〈牧野真太郎〉

【分娩中の胎児評価と治療】

 3.分娩中の胎児評価〈松山達也 味村和哉〉

 4.CTGの読み方〈八木一暢 味村和哉〉

 5.日本産科婦人科学会(JSOG)によるレベル分類〈小松伶奈 味村和哉〉

 6.子宮内胎児蘇生〈魚川礼子〉

第3章  周産期麻酔に必要な新生児科の知識

1. 胎児の生理学

 1.子宮内環境の特殊性〈中西秀彦〉

2. 新生児の評価と蘇生

 1.分娩前後の児の生理学的な変化〈矢田ゆかり〉

 2.新生児の評価法〈甘利昭一郎 鈴木康之〉

 3.新生児蘇生法〈甘利昭一郎 鈴木康之〉

 4.わが国のNCPR〈甘利昭一郎 鈴木康之〉

 5.NICU管理や新生児期の手術が必要となる母体と児の管理〈橘 一也〉

3. 新生児の神経学的合併症

 1.脳性麻痺〈和田和子〉

 2.わが国の無過失補償制度(産科医療補償制度)〈前田和寿 多田文彦〉

4. 麻酔の児への影響

 1.総論 産科麻酔と胎児の知識〈坂野 彩〉

 2.母体への麻酔が胎児に与える影響〈坂野 彩〉

 3.硬膜外麻酔による無痛分娩中の母体発熱の機序と胎児への影響〈坂野 彩〉113

第4章  周産期麻酔に必要な麻酔科の知識

1. 区域麻酔

【脊髄幹麻酔と薬剤】

 1.局所麻酔薬の基礎〈小田 裕〉

 2.周産期麻酔で使用するオピオイド〈中島芳樹〉

 3.添加物〈中本達夫〉

 4.脊髄幹麻酔に必要な解剖および脊髄幹麻酔による生理的変化〈近江禎子〉128

 5.脊髄幹麻酔の穿刺手技〈近江禎子〉

 6.脊髄幹麻酔による神経損傷〈魚川礼子〉

 7.合併症の予防 吸引試験,試験投与,局所麻酔薬の選択,感染症〈近江禎子〉

 8.高位/全脊髄くも膜下麻酔の対応〈近江禎子〉

 9.局所麻酔薬中毒対応指針〈小田 裕〉

 10.脊髄幹オピオイドの呼吸モニタリング〈松田祐典〉

【その他の区域麻酔】

 11.総論〈松田祐典〉

 12.傍頚管ブロック〈松田祐典〉

 13.陰部神経ブロック〈中本達夫〉

 14.腰部交感神経節ブロック〈松田祐典〉

 15.腹横筋膜面ブロック〈中本達夫〉

2. 全身麻酔

 1.全身麻酔〈上山博史〉

 2.気道管理困難〈齋藤朋之〉

 3.誤嚥性肺炎〈松田祐典〉

第5章  周産期麻酔に必要なペインクリニック科の知識

1. 総論

 1.総論〈長尾 瞳 關山裕詩〉

2. 各論

【分娩時痛の生理と母児への影響】

 1.分娩時痛の解剖および神経生理〈藤原亜紀 廣瀬宗孝〉

 2.分娩時痛が母体および胎児へ与える影響〈藤原亜紀 廣瀬宗孝〉

【妊娠中/分娩後】

 3.妊娠中から分娩後の慢性痛〈高雄由美子〉

【分娩後の神経障害】

 4.分娩後の末梢神経障害〈山口重樹〉

 5.分娩後の中枢神経障害(脳血管障害)〈山口重樹〉

 6.分娩後の尿閉と尿失禁〈山口重樹〉

 7.硬膜穿刺後頭痛(PDPH)〈角 千里〉

第6章  周産期麻酔に必要な集中治療科の知識

1. 総論

 1.総論〈森松博史〉

 2.MFICU〈金川武司〉

2. 重症妊産婦の集中治療管理

【呼吸器系】

 1.ARDSの妊産婦の集中治療管理〈橋本明佳 吉田健史〉

【循環器系】

 2.循環器疾患の重症妊産婦の集中治療管理〈岡原修司〉

【血液・凝固系】

 3.産科DIC〈増田孝広 若林健二〉

 4.羊水塞栓症〈増田孝広 若林健二〉

 5.肺血栓塞栓症〈増田孝広 若林健二〉

【その他】

 6.敗血症〈山本 匠 倉橋清泰〉

第7章  周産期麻酔に必要な救急科の知識

1. 総論

 1.総論〈谷口 巧〉

2. 各論

 1.妊産婦のBLSとALS〈高橋伸二〉

 2.日本母体救命システム普及協議会〈山下智幸〉

 3.妊娠中の外傷〈清川 晶〉

 4.母体搬送システム〈山下智幸〉

第8章  周産期麻酔の実践

1. 妊娠前および妊娠中の手術

 1.妊娠中および授乳中の薬物動態〈熊澤惠一〉

 2.体外受精(IVF)およびその他の生殖補助医療(ART)〈道井亮輔〉

 3.異所性妊娠〈堤 香苗〉

 4.頚管縫縮術〈堤 香苗〉

 5.妊娠中の非産科手術〈玉井悠歩〉

2. 帝王切開

 1.産科管理〈牧野真太郎〉

 2.術前管理〈藤田信子〉

 3.脊髄くも膜下麻酔〈小山杏奈〉

 4.硬膜外麻酔〈小山杏奈〉

 5.脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)〈城本菜那〉

 6.全身麻酔〈城本菜那〉

 7.術後鎮痛〈篠田麻衣子〉

3. 経腟分娩

【硬膜外麻酔を用いない無痛分娩】

 1.薬物を用いない無痛分娩〈朝羽 瞳 谷口美づき〉

 2.薬剤の全身投与による無痛分娩吸入麻酔薬―亜酸化窒素(笑気)〈秋永智永子〉292

 3.麻酔薬の全身投与による無痛分娩〈成瀬 智〉

【硬膜外麻酔による無痛分娩】

 4.無痛分娩の体制づくり〈岡原祥子〉

 5.無痛分娩の導入〈岡原祥子〉

 6.無痛分娩の維持〈岡原祥子〉

【経腟分娩後の麻酔】

 7.分娩後の卵管結紮術〈小嶋宏幸 長坂安子〉

4. 産科危機的出血

 1.産科危機的出血に対する対応策と準備〈岡田尚子〉

【分娩前出血】

 2.前置胎盤〈須賀芳文〉

 3.常位胎盤早期剥離〈須賀芳文〉

 4.子宮破裂〈須賀芳文〉

 5.前置血管〈須賀芳文〉

【分娩後出血】

 6.子宮収縮不良〈岩野雄一〉

 7.産道裂傷〈木村準之介〉

 8.遺残胎盤〈木村準之介〉

 9.子宮内反症〈門倉ゆみ子〉

 10.癒着胎盤〈門倉ゆみ子〉

【産科DIC】

 11.羊水塞栓症〈岡田尚子〉

 12.産科DIC〈岡田尚子〉

第9章  合併症のある妊婦の集学的管理

1. 分娩の異常

 1.早産〈武田敏宏 白神豪太郎〉

 2.胎位異常(骨盤位)〈加藤果林 弓場智雄〉

 3.多胎妊娠〈加藤果林〉

 4.流産および死産〈堤 香苗 伊東祥子 白神豪太郎〉

 5.肩甲難産〈伊東祥子 白神豪太郎〉

2. 母体の異常

 1.妊娠高血圧症候群〈角倉弘行〉

 2.HELLP症候群〈角倉弘行〉

 3.肺水腫〈山本 偉 長坂安子〉

 4.感染症〈石川晴士〉

 5.深部静脈血栓症〈大内貴志〉

 6.肺高血圧症〈金子翔平 原 哲也〉

 7.周産期心筋症〈一ノ宮大雅 原 哲也〉

3. 母体の基礎疾患

【肥満・高齢妊婦】

 1.肥満妊婦〈大谷太郎 濱口眞輔〉

 2.高齢妊婦〈藤井宏一 濱口眞輔〉

 3.帝王切開既往妊婦の経腟分娩〈角倉弘行〉

【自己免疫疾患】

 4.総論〈竹川大貴〉

 5.全身性エリテマトーデス〈竹川大貴〉

 6.抗リン脂質抗体症候群〈竹川大貴〉

【循環器疾患】

 7.総論〈関野元裕 原 哲也〉

 8.大動脈疾患〈荒木 寛 原 哲也〉

 9.弁膜疾患〈岩崎直也 原 哲也〉

 10.不整脈〈吉富 修〉

 11.先天性心疾患〈矢野倫太郎 原 哲也〉

【内分泌疾患】

 12.総論〈原 哲也〉

 13.糖尿病〈横山明弘 原 哲也〉

 14.甲状腺疾患〈原田弥生〉

 15.褐色細胞腫〈原田弥生〉

【血液疾患】

 16.総論〈関 博志〉

 17.貧血〈関 博志〉

 18.血小板減少症〈本保 晃〉

 19.先天性凝固異常〈若泉謙太〉

【肝・腎・中枢神経系・その他疾患】

 20.肝疾患〈松下克之〉

 21.悪性高熱〈藤井宏一 濱口眞輔〉

 22.側弯症〈大谷太郎 濱口眞輔〉

 23.神経疾患(多発性硬化症)〈沼田祐貴 濱口眞輔〉

 24.神経疾患(脊髄損傷)〈沼田祐貴 濱口眞輔〉

 25.神経疾患(てんかん)〈沼田祐貴 濱口眞輔〉

 26.神経疾患(脳卒中)〈坂本茉理〉

 27.精神疾患(双極性障害,不安障害)〈濱口眞輔 沼田祐貴〉

 28.腎疾患〈東 みどり子〉

 29.呼吸器疾患〈石川晴士〉

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書籍情報

  • ISBN:9784498055544
  • ページ数:468頁
  • 書籍発行日:2024年6月
  • 電子版発売日:2024年5月31日
  • 判:A4判
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