ラダーと事例から学ぶ家族志向のケア--家族療法の考え方とスキルをプライマリ・ケアに活用する

  • ページ数 : 222頁
  • 書籍発行日 : 2024年6月
  • 電子版発売日 : 2024年6月5日
¥6,160(税込)
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商品情報

内容

患者個人の問題は家族の問題でもある?!
「家族が絡む事例にどのように向き合うか?」「個別性の強い家族への対応をその場しのぎにしないためには?」など,患者の背景に存在する家族問題への介入は容易ではありません.家族は複数のメンバーがそれぞれの気持ちや考えをもち,相互に複雑な関係性をもち,また家族にはそれまでの歴史や文化があるためです.本書は家族をシステムとしてとらえ,家族療法の理論・スキルを応用し,さまざまな医療現場で実践できるように工夫しました.総合診療,家庭医療でトレーニング中の医師はもちろんのこと,家族問題に難しさを感じたことのある医療者であれば誰でも役に立つ内容となっています. 【家族志向のケアにおけるラダー式学習目標】 レベルごとの技術をマスターして,家族問題への適切な介入を目指そう. レベル 1「医師主導で情報を扱う」,レベル 2「双方向に情報を扱う」,レベル 3「感情面を扱う」,レベル 4「家族関係を扱う」,レベル 5「困難事例を扱う」

序文

健康問題は目の前の患者個人だけのものではなく,家族,地域,社会と連動している.つまり,Engel が示したように,私達の健康問題は,組織-臓器-個人-家族-地域-社会が相互に関係しあうシステムの中で成り立っている1).とりわけ家族との相互の影響が大きいことが,これまでの研究で明らかになってきた.身近な例をあげると,さまざまな身体症状や疾患のきっかけとなる家族のライフサイクルの変化,高齢者や終末期患者をお世話する介護家族の抱える問題,子ども期や思春期における問題行動の裏にある家族内の葛藤関係などである.家族と関わるこのような問題をより包括的にとらえ,効果的に支援することを目指す領域として,家族志向のプライマリ・ケアが発展してきた.家族志向のケアは家族療法の基本的な考え方・技法を基盤に体系化されている.そして近年,わが国でもこの領域は総合診療・家庭医療専門医に求められる能力として広く認識されるようになった.一方,専門研修プログラムにおいて,その教育のリソースや方法はまだ確立しておらず,どのように学習,実践したらよいかわからないという声が多い.

本書の著者らは,有志のオンライン勉強会,学会のワークショップなどで,その教育,学習に取り組んできた.その中で,多くの若手医師から,勉強しても実践になかなか結びつかない,どうすればよいかという質問をしばしばいただいた.本書ではそのような声に応えるべく,試行錯誤しながらわかりやすいメソッドとしてまとめた.すなわち,Doherty とBairdが5 段階で示したプライマリ・ケアにおける家族介入のレベルに沿って5 つのラダーに分け,考え方,スキルをできるだけ実践的に解説した2).対象としては,主に総合診療・家庭医療の専攻医を想定してまとめたが,プライマリ・ケア,地域医療に従事する,さまざまな専門診療科の医師やメディカルスタッフの方々にも,十分活用いただけると考えている.1 章では,この分野の基礎となる,家族をシステムとしてみる視点,病気と家族について,基本理論やエビデンスを述べる.2 章では5 つの各ラダーに分けて具体的な考え方やスキルを詳しく解説する.3 章ではプライマリ・ケアにおける多様な場面での臨床ケースシナリオを用いて考え方や実践例を示す.ケースシナリオは,読者が困っている事例に似た場面を参照したり,また,学習会での検討事例としても活用できることを想定した.4 章では家族志向のケアの学び方・教え方,そしてよくある質問に対する回答を記す.本書は関心のあるどの章から読んでも理解しやすいよう工夫した.本書が読者の皆さまの家族志向のケアの理解と実践にお役に立てれば幸いである.

文献

1) Engel GL. The clinical application of the biopsychosocial model. Am J Psych. 1980; 137: 535-44.

2) Doherty W, Baird M. Family therapy and family medicine. Guilford Press; 1983.


2024年4月

三重大学医学部 附属病院総合診療科/名張地域医療学講座
若林英樹

目次

1章 ■ イントロダクション

家族志向のケアとは〈若林英樹〉

 はじめに

 家族という概念

 家族志向のケアの誕生と発展

 家族志向のケアの効果についてのエビデンス

病気と家族〈山田宇以〉

 システムとしてみる家族

 家族が病気に及ぼす影響,ソーシャルサポートとしての家族

 病気が家族に及ぼす影響

 健康信念,病気の意味づけと家族

 家族の心理的適応

 医療者と家族

2章 ■ 家族志向のケアにおけるラダー式学習目標

発想と概観〈田中道徳〉

レベル1 医師主導で情報を扱う〈田中道徳〉

 知識・技法の解説

 I 診断・治療(精神疾患も含む)に必要な情報を聴取できる.

 II 家族歴を聴取できる.

 III 臨床的・法的・倫理的に最低限必要な情報を聴取し,説明できる.

 IV 情報に基づいたアドバイスや処方をはじめ治療や対応を行うことができる.

 V 危機的状況のアセスメントと緊急対応ができる.

 目標となる診察/事例解説

レベル2 双方向に情報を扱う〈河田祥吾〉

 知識・技法の解説

 I 患者と家族がそれぞれ影響し合うことを理解できる.

 II 配慮すべき家族(ヘルスエキスパートや顧客)を理解し,把握することができる.

 III 家族図の基本的事項(関係性を除く構成のみ)を描くことができる.

 IV 患者や家族とラポール形成を意識することができる.

 V 患者や家族の解釈モデルを引き出すことができる.

 VI 臨床家・患者・家族が互いに満足できるプランを立てることができる.

 目標となる診察/事例解説

レベル(3) 感情面を扱う〈種本陽子,田中道徳〉

 知識・技法の解説

 I 患者や家族の感情とその背景にある問題のとらえ方を理解できる.

 II 患者や家族に共感し,その感情を反映して,その効果を意識できる.

 III 多方向への肩入れを用いて患者や家族一人ひとりに公平に共感を示すことができる.

 IV 患者や家族から引き出した感情やその背景にある問題のとらえ方に対してカウンセリング技法を用いて介入できる.

 V 医療者と患者・家族の関係性の特徴を理解し,自らの診療場面における問題点を指摘できる.

 目標となる診察/事例解説

レベル4 家族関係を扱う〈宮本侑達〉

 知識・技法の解説

 I システム論的視点から医師・患者・家族の相互プロセスを認識することができる.

 II 家族の発達・機能・構造を理解し,家族アセスメントを行うことができる.

 目標となる診察/事例解説(1)

 III アセスメントをもとに方略を立て,家族カウンセリングを実践できる.

 IV 家族カンファレンスを5つのステップに沿って実施することができる.

 V 医療者と患者・家族の関係性を認識し,コントロールできる.

 VI レベル4とレベル5を区別し,専門家につなぐべきタイミングが理解できる.

 目標となる診察/事例解説(2)

レベル5 困難事例を扱う〈田中道徳〉

 知識・技法の解説

 I 家族支援の専門家や,それ以外の拡大可能なリソースを把握することができる.

 II 支援の五角形を意識しながら,臨床家自身,患者,家族,医療リソース,地域リソースのシステムをアセスメントすることができる.

 目標となる診察/事例解説(1)

 III アセスメントに基づき,臨床家自身の職務・能力・労力の限界を認識した上で,必要に応じて支援システムを適切に拡大し,システム全体を調整できる.

 目標となる診察/事例解説(2)

 IV 過去の自分の経験を意識し,自己省察を行いながら,医師自身のストレスなどに対処できる技術を身につける.

 目標となる診察/事例解説(3)

(3)章 ■ 臨床事例集

イントロダクション〈宮本侑達〉

 事例から学ぶ重要性

 本章の構成

 本章を個人・グループ学習に活用する方法

 ケース1[外来]予防接種の遅れがある4カ月女児から母親の育児不安を認めた事例〈久保田 希〉

 ケース2[外来]不登校の14歳女児から三世代をめぐる家族内葛藤を認めた事例〈高島大樹〉

 ケース(3)[外来]適応障害の52歳男性から夫婦関係の再調整の困難さを認めた事例〈宮本侑達〉

 ケース4[外来]5歳男児の診療中に夫婦の役割についての認識の違いを認めた事例〈向原千夏〉

 ケース5[外来]頭痛で救急受診を繰り返す46歳女性から原家族の価値感への葛藤を認めた事例〈村山 愛〉

 ケース6[病棟]糖尿病の内服アドヒアランスが低下した5(3)歳男性から長期のひきこもり問題を認めた事例〈内堀善有,田中道徳〉

 ケース7[病棟]嚥下困難となった78歳女性の人工栄養をめぐり家族内で意見対立を認めた事例〈富田詩織〉

 ケース8[在宅]がん終末期の78歳男性の療養先をめぐり家族内で意見対立を認めた事例〈清水洋介〉

 ケース9[在宅]認知症の89歳女性に対して不適切な介護を行う長男に家族や多職種が困った事例〈江副一花〉

 困難事例1皮膚科医から家族志向のケアを依頼された難治性アトピー性皮膚炎10歳女児の事例〈松下 明〉

 困難事例2自閉スペクトラム症を認めひきこもりとなった24歳男性の事例〈永嶋有希子〉

 困難事例(3)認知症により50年連れ添った夫婦関係に悪循環パターンが生じた74歳女性の事例〈若林英樹〉

 困難事例4家庭内暴力や家族内の精神疾患を認めた72歳男性に病棟多職種を含めたMedical Family Therapyを行った事例〈山田宇以〉

4章 ■ おわりに

家族志向のケアの学習と教育〈山田宇以,若林英樹〉

 基本となる学習モデル

 医療面接・心理療法の訓練とスーパーヴィジョン

 治療者自身について

 まとめ

 よくある質問と答え FAQ

   学習のための書籍・団体リスト

   さいごに〈松下 明〉

   索引

〈プロからのワンポイントアドバイス〉

 ◆家族志向のケアを実践へつなげる有用な5つの質問

 ◆高度な共感の技術

 ◆家族の発達・機能・構造の視点

 ◆きょうだい順位と性格

 ◆日本に多い特徴的な家族構造

 ◆外来で効果的なブリーフセラピー

 ◆近位リソースの例とその特徴

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書籍情報

  • ISBN:9784498120143
  • ページ数:222頁
  • 書籍発行日:2024年6月
  • 電子版発売日:2024年6月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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