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医学のあゆみ290巻2号 フェロトーシス(鉄依存性細胞死)―そのメカニズムの解明と,治療への応用

  • ページ数 : 70頁
  • 書籍発行日 : 2024年7月
  • 電子版発売日 : 2024年7月11日
1,650
(税込)
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商品情報

内容

・プログラム細胞死であるフェロトーシスは,がん,神経変性疾患,虚血再灌流障害などとの関連が報告されていることもあり,近年,急激な勢いで研究が進捗している.
・分子メカニズムが解明され,フェロトーシスは,鉄によって生じる膜の多価不飽和脂肪酸の過酸化が惹起する脂質ラジカルがトリガーとなる細胞死であることが明確となった.
・しかし,フェロトーシスは生理的機能を含めて未解明な問題が多く,膜脂質の過酸化から細胞死に至る経路も未解明である.本特集の読者がフェロトーシスに興味を持ち,研究に参画されることを期待したい.

序文

はじめに

フェロトーシスは,Ras 遺伝子によってがん化した細胞を死に誘導する薬剤の解析から,2012 年にDixon らによって報告されたプログラム細胞死である.がん,神経変性疾患,虚血再灌流障害などとの関連が報告されていることもあり,近年,急激な勢いで研究が進捗している.細胞死には細胞死誘発系とそれを抑制する抑制系が存在する.フェロトーシスの“フェロ”が意味する鉄は,過剰量が存在するとフリーラジカルの産生を介して毒性を発揮するので,フェロトーシスの鉄毒性のアウトカムのひとつであると考えられる.しかし,ほとんどの培養細胞は培地への鉄添加では細胞死は誘導されないことなどもあり(初代継代細胞は鉄添加で細胞が死滅することは知られていたが),鉄毒性の観点,すなわち鉄による酸化ダメージの観点からのフェロトーシス解析はほとんどなされていない.しかし,誘発薬剤を用いた研究を中心に分子メカニズムの解明は進捗し,フェロトーシスは鉄によって生じる膜の多価不飽和脂肪酸の過酸化が惹起する脂質ラジカルがトリガーとなる細胞死であることが明確となっている.本特集では,最先端のフェロトーシス研究に従事しておられる気鋭の研究者にフェロトーシスの分子メカニズム,種々の疾患におけるフェロトーシスの役割について最新の知見をご紹介いただいた.

しかし,フェロトーシスの生理的機能は未解明である.アポトーシスなどの他のプログラム細胞死では細胞死を誘導するデスシグナルが存在するが,フェロトーシスではそのようなシグナル系は明確ではない.それゆえ,フェロトーシスは細胞が望ましくない状況に至れば積極的に細胞死を誘導するプログラムなのかもしれない.生理的な役割以外にもフェロトーシスにはまだまだ未解明な問題が多い.実は,膜脂質の過酸化から細胞死に至る経路も未解明である.本特集を契機に,多くの先生方がフェロトーシスに興味を持ち,研究に参入していただければ幸甚である.


岩井一宏
Kazuhiro IWAI
京都大学大学院医学研究科細胞機能制御学,同理事・副学長

目次

特集 フェロトーシス(鉄依存性細胞死)─ そのメカニズムの解明と,治療への応用

はじめに

酸化脂質とフェロトーシス惹起

フェロトーシスとセレン代謝

二価鉄検出プローブを使ったフェロトーシス研究

GPx4研究からみた脂質酸化を介する細胞死―フェロトーシスとリポキシトーシス

フェロトーシスの細胞間拡散とフェロトーシス細胞由来抗老化シグナルモデル―フェロトーシス細胞からの分泌シグナルの多様な機能

フェロトーシスの制御によるがん治療への応用

虚血再灌流障害とフェロトーシス

フェロトーシス抵抗性と発がん

アントラサイクリン心毒性におけるフェロトーシス

【TOPICS】

泌尿器科学

前立腺癌の新規体外診断薬S2,3PSA%

環境衛生

下水情報活用―下水調査結果に基づく感染陽性者数予測

【連載】

臨床医のための微生物学講座(17)

EBウイルス

緩和医療のアップデート(12)

緩和ケア研究アップデート―同領域の研究手法の工夫と今後の課題

自己指向性免疫学の新展開―生体防御における自己認識の功罪(4)

薬物により自己への認識様態を変化するHLAとそれが持つ特徴的な細胞内挙動

【フォーラム】

死を看取る―死因究明の場にて(18)

死因究明の実践(1)

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書籍情報

  • ISBN:9784006029002
  • ページ数:70頁
  • 書籍発行日:2024年7月
  • 電子版発売日:2024年7月11日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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