臨牀消化器内科 Vol.39 No.8 特集「これからの胃癌診療」

  • ページ数 : 128頁
  • 書籍発行日 : 2024年7月
  • 電子版発売日 : 2024年7月17日
¥3,300(税込)
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商品情報

内容

最近では喜ばしいことに胃癌は減少傾向で技術認定を取得するための症例数獲得に困るようなことも耳にする.一方で,内視鏡技術・機械の進歩,多数の臨床試験によるエビデンスの構築にもとづき,胃癌の診断・治療戦略は複雑化している.このように変化・進歩しつつある胃癌診療の検診から内視鏡診断・治療,外科手術,薬物療法,ゲノム医療そして人工知能による診療支援の現況を解説し,一冊で胃癌診療のすべてを網羅できるような本特集を企画した.(編集後記より)

序文

本書の発行に寄せて


この20年で大きく変わった本邦の胃癌診療について,巻頭言として綴ってほしいとの依頼を受けた.日本の胃癌診療は,20年前よりももっと以前,先達たちが,胃癌の放射線診断,内視鏡診断,外科手術,化学療法について多大な情熱をもって取り組んできた.そして体系的にまとめあげ,「胃癌取扱い規約」「胃癌治療ガイドライン」が世界に先駆けて作成された.胃癌診療に関しては日本が世界をリードしてきたのである.

そして,過去20年間においても大きな進歩を遂げてきた.

まず,胃癌の診断とスクリーニングの進歩が挙げられる.とくに20年前と比較して内視鏡による胃癌のスクリーニングが普及したことにより,早期発見例が増加した.また内視鏡検査技術の進歩も大きな変化をもたらした.NBI,BLIなどの新しい画像強調技術が開発され,拡大内視鏡と組み合わせることで,より精密な検査が可能となり,早期胃癌の早期発見や癌・非癌の質的診断に大きく貢献している.Helicobacter pylor(i H. pylori)未感染胃における胃型腫瘍の増加もまた新しい変化である.かつての若手内視鏡医として白色光とインジゴカルミンのみで診断していた筆者にとって隔世の感がある.

治療法の多様化も胃癌診療の進歩の一つである.

とくに,内視鏡治療は,20年前に比べて大きく進歩してきた.本邦で開発されたESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)は,早期胃癌や前がん病変に対する治療法として日本のみならず世界に広く普及している1),2).ESDは,それまでのEMR(内視鏡的粘膜切除術)よりも広範囲な,また潰瘍瘢痕のあるような病変を切除することが可能であり,その適応はどんどん拡大されてきた.現在では早期胃癌の6割以上が内視鏡で治療され,外科手術を回避できるようになってきている.また高齢者への適応拡大が検討されており,適応はさらに広がっていくと思われる. 胃癌の外科手術も進化している.従来の開腹手術に代わり,腹腔鏡下手術やロボット支援下手術が広く行われるようになった.これにより,手術の精度が向上し,患者の回復期間が短縮されるなど,QOLの改善が図られている.まだ実現には遠いものの,AIによる自動手術も夢物語ではなくなってきた.

薬物療法もまた大きく変わったものの一つである.20年前に比べて,化学療法の選択肢が大幅に増えた.従来のプラチナ製剤やフッ化ピリミジンなどの基本的な化学療法に加えて,タキサンなどの新しい薬剤が使われるようになった.これらの薬剤には,胃癌細胞に直接作用するだけでなく,腫瘍の血管を破壊することで間接的に腫瘍を攻撃するものもある.さらに分子標的薬の登場,免疫チェックポイント阻害薬の登場が,数十年変化に乏しかった胃癌薬物療法を大きく変えた.HER2陽性の進行胃癌に対するトラスツズマブ(ハーセプチン®)の使用,EGFR(上皮成長因子受容体)阻害薬やVEGF(血管内皮増殖因子)阻害薬,そしてニボルマブ(オプジーボ®)なども導入され,患者にとって新しい有効な治療法となっている.経口薬の選択肢も増え,S‒1やカペシタビンなどの経口薬は,化学療法として広く使用されている.これらの薬剤は,点滴に比べて患者の負担が軽減されるだけでなく,投与の柔軟性も高く,QOLの向上に寄与している.

以上のように,日本における胃癌診療は,過去20年間で大きく進歩した.医療技術の発展や診療体制の改善により,胃癌患者への治療とケアの質が向上し,生存率の改善やQOLの向上が実現されている.

一方で,H. pylori未感染人口が増加し,近い将来,日本の胃癌発生率は激減すると推測されている.2035年には現在の対策型検診の意義はほぼなくなるという衝撃的な報告もされた3).過去20年間で進歩した胃癌診療であるが,これからの20年もまた大きく変化の刻を迎えると思われる.


小野 裕之



1) Ono H, Kondo H, Gotoda T, et al:Endoscopic mucosal resection for treatment of early gastric cancer. Gut 48;225‒229, 2001

2) Ono H, Seewald S and Soehendra N:Endoscopic resection, ablation, and dissection. Classen M, Tytgat GNJ, Lightdale CJ( eds):Gastroenterological Endoscopy(2nd ed). 331‒341, Thieme, Stuttgart‒New York, 2010

3) Mizota Y and Yamamoto S:How long should we continue gastric cancer screening? From an epidemiological point of view. Gastric Cancer 22;456‒462, 2019

目次

【特集目次】 「これからの胃癌診療」

巻頭言 胃癌診療20 年の変遷 /小野 裕之

1.これからの胃癌検診/間部 克裕 他

2.H.pylori関連胃癌の内視鏡診断/小林 正明 他

3.H.pylori非関連胃癌の内視鏡診断/赤澤 陽一,上山 浩也 他

4.胃癌の放射線診断/西牟田雄祐 他

5.早期胃癌に対する内視鏡治療/川田  登 他

6.早期胃癌に対する低侵襲外科手術/幕内 梨恵

7.進行胃癌に対する低侵襲外科手術/布施 匡啓,徳永 正則 他

8.胃癌に対するConversion surgery/中西 香企 他

9.腹膜播種のある胃癌に対する治療― パクリタキセル腹腔内投与(IP-PTX)併用SOX療法の経験を交えて/齋藤  心 他

10.切除不能胃癌に対する薬物療法/鈴木 伸三

11.胃癌のゲノム医療/久保田洋平,砂川  優

12.胃癌におけるプレシジョン医療/中山 厳馬

13.胃癌診断と治療におけるAI の現状と展望/平澤 俊明 他

〔連 載〕

「胃炎の京都分類」の使い方

第23 回 胃炎と胃癌でみられる白点は何を意味するのか/土山 寿志,中西 宏佳

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書籍情報

  • ISBN:9784004003908
  • ページ数:128頁
  • 書籍発行日:2024年7月
  • 電子版発売日:2024年7月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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