ファーストコール

  • ページ数 : 200頁
  • 電子版発売日 : 2024年7月22日
¥2,530(税込)
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商品情報

内容

悩める救急隊員に教えます。
スキル上達のための指南書、登場です!!


救急隊から医療機関へ電話連絡する第一報を「ファーストコール」といいます。ファーストコールの質は伝える救急隊員個人の力量に依存しています。そのため情報が伝わらない、受け手に誤解が生じるなどからトラブルが起こる場合があります。本書は救急隊員のファーストコールを主な題材として、上手な伝え方のヒントを示します。まさに救急隊員のための応援歌です。 この一冊であなたの明日からの仕事がレベルアップします。

序文

はじめに


「病院への電話……、苦手」

そう思っている救急隊員の方、多いのではないでしょうか。救急隊員は、現場から搬送する医療機関に傷病者の情報を伝えます。その最初の一報をファーストコール(firstcall)といいます。

「今日はお前、電話しろ」

「えっ、…はい」

いつも電話のやり取りが原因で搬送先の医者から怒られている隊長が、今日は部下の隊員に電話するように指示しました。良くも悪くも上に倣うのが消防組織の仕事のやり方ですので、しぶしぶ彼も隊長の口調と同じように電話をします。

「はい、○○病院です」

「もしもし、○○病院でしょうか。××救急隊です。いつもお世話になっております。患者さんをお願いしたいのですが…」

お決まりの切り出し、定型文です。救急隊からの電話で、果たして患者さんの依頼以外の用事があるのかな、といつも思いながら私は電話を受けます。

ここから先がバラバラで千差万別。長い話でなかなか要点が出てこない人。話がどんどん枝分かれする人。聞いた情報を聞いた順番にすべて話す人。自分勝手に結論を決めつけている人。始めから自分でも内容がわかってない人。

「ストップ! それで、そもそも年齢と性別は?」と、基礎情報が欠けていて聞いていてもイメージが湧かず、こちらから話を遮ることもあります。逆にとても少ないのですが、非常にわかりやすく伝えてくる人もいます。伝えるセンスが生まれつき備わっている、または努力している人です。

昔、日本の救急隊は呼ばれた現場に行き、傷病者を病院に届けるだけのいわゆる「運び屋」でした。人々の生活が豊かになり世界有数の長寿国となる中で、しだいに救急隊の活動の質も求められるようになりました。救急救命士という国家資格が設けられ、一部の医療行為が現場で認められるようになったのも、その時代の流れからです。

現代、そしてこれからの救急隊員は社会ニーズに応えるため、非常に多くの知識や技術を習得する必要があります。そのためさまざまな教育カリキュラムが用意されています。私は消防学校で教壇に登り、これから救急隊員になる学生の講義も担当していますが、その教育内容の全体を見渡すとある分野が取り残されていると感じています。

「伝える」技術です。

義務教育も含め、今まで「伝える」技術を学習しトレーニングする機会が少なかった人が、自己流で情報を伝えているのが現状です。消防職員は上司や先輩の所作を見て聞いて感じて、たまに指導を受けて仕事を覚えていきます。センスの良い人が、その能力を自覚し重要であると把握し部下に教育すれば、技術は上達するかもしれません。しかし、そのようなチャンスが無ければ悪いままで脈々と受け継がれていってしまいます。センスに頼るのではなく、伝える教育とトレーニングをするべきです。

私が新しく入職した研修医たちによく言っていることがあります。「臨床(患者さんを相手に仕事する)では、2つの伝える力が医者には必要とされる。1つは患者さんにわかりやすく説明する力。患者さんやその家族が理解できなければ、たとえ正しいことをしていてもトラブルになる。もう1つは同業者に簡潔に伝える力。ダラダラとよくわからないプレゼンをすると馬鹿にされ相手にされなくなる。どちらも意識して日々トレーニングしないと上達しない」と。医者の世界でも伝える技術は重要です。

なぜ救急隊員に伝える技術が必要なのでしょうか。残念ながら、すべての救急患者さんを常に100パーセント受け入れができる救急病院が現実には存在しないからです。手術室が使用中であれば、急ぎの手術が必要な患者はその時点では受け入れできません。院内の人工呼吸器がすべて稼働している中で、さらに人工呼吸が必要な患者は受け入れできません。ですから、救急の最後の砦といわれる「救命救急センター」であっても、救急隊からの情報を基に現在の状況から受け入れできるか否かを判断しなければなりません。画像やデータを伝送するなど検討されつつありますが、補助的であり、現時点では救急隊のファーストコールが非常に大きな役割を果たしているのが実状です。

救急隊員の伝える力は、上達しなければ運んだ先の医療スタッフと救急隊員の双方が不快な思いをするだけでは終わりません。担当した傷病者も不満に思うかもしれません。さらには、正しく情報が伝わらなかったために、傷病者の生命に関わることも起こり得ます。毎日の筋トレで割れた腹筋に一人ニンマリするのと同じように、日々の積み重ねで伝える力もつけていきましょう。

この本では、救急隊員のファーストコールを主な題材として、上手な伝え方のヒントを示していきます。「ヒント」ですが、正解に至るとは限りません。また、絶対的な正解もありません。

「なぁ、婆さん。アレをナニして」

「あいよ」

こんなやり取りでも、きちんと伝わりコミュニケーションが成立する、ヒントを無視した特殊な場合も存在します。

特殊でない普遍的な伝え方を、ヒントを参考に自分なりに模索してください。その努力の積み重ねが必ず伝える力を向上させていきます。また「救急隊員の」とは言いましたが、ほかの職種にも十分応用できると思います。本文の中に消防の皆さんにとって「そんなことは釈迦に説法だよ」と言われそうなシツコイ内容があるのは、ほかの職種の方々にも消防の業務内容をイメージしていただくためです。

皆さんの仕事や生活の中で、人の役に立ち、自分も満足できるグッドジョブにこの本が貢献できれば幸いです。


二〇二四年六月

水嶋 知也

目次

はじめに

第Ⅰ章 情報をまとめる

1 情報を集めよ!

一 出動

二 現場到着

三 観察と推理

2 情報を整理せよ!

一 情報を集めっ放しにしない

二 相手の欲しい情報は何か

三 情報の強弱を意識する

四 情報を捨てる

五 プロブレムリスト

六 迷ったら主訴に立ち返る

七 情報が不足、未整理でも許容される場合もある

第Ⅱ章 これじゃ伝わらないNG集

一 わからないから全部伝える

二 情報を集まった順に伝える

三 また聞きを伝える

四 慌てる

五 事実と見解を交ぜる

第Ⅲ章 伝えるときのお約束

一 伝える相手に合わせる

二 正しい知識で!

三 内容をできる限り理解する

四 都合の悪い情報を隠さない

五 聞き取りやすい話し方で

六 共通の認識か確認する

七 迷わせる情報や言葉を入れない

八 カラ元気もあり!

第Ⅳ章 「伝わる」ためのテクニック

一 ポイントを絞る

二 できるだけ短く

三 キーワードや結論を先に伝える

四 5秒で掴め!

五 伝える順序を考える

六 データで示す

七 イメージが湧く言葉を加え

八 繰り返す

九 5W1Hを意識する

参考文献

おわりに

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書籍情報

  • ISBN:9784911108420
  • ページ数:200頁
  • 電子版発売日:2024年7月22日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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