はじめに

「訪問看護は、医療保険と介護保険の両方にまたがっていて、制度が複雑でわかりにくい」

「病名 ·病状によって利用する保険が変わるので、覚えきれない」

「医療保険と介護保険のしくみを理解するのに1年かかった」

「どうして訪問看護は、制度が複雑なの」

「制度や報酬がよくわかる簡単な本はないの」

このような声に応えるために、平成28（2016）年8月に本書初版を発刊しました。

訪問看護ステーションは、平成4（1992）年に創設され、看護師が管理者となる事業所として新設されました。このときに制度や報酬のしくみが大きく変わりました。そして、平成12（2000）年に、介護保険制度がスタートし、訪問看護は、医療保険と介護保険との両方の制度で運営することになり、複雑化していきました。また、診療報酬は2年ごとに改定、介護報酬は3年ごとに改定、そして、6年ごとに両報酬の改定が同時に行われることにより、少しずつ制度の改善をしてきました。このような理由から、訪問看護の制度は複雑でわかりにくくなっているのが現状です。

しかしながら、制度を正しく理解し、健全な事業運営をすることは、訪問看護ステーション管理者の大きな役割です。

第2版は平成30（2018）年度に行われた診療報酬と介護報酬のダブル改定、第3版は令和1（2019）年度の消費税率アップに伴う報酬額の改定と令和2（2020）年度の診療報酬改定、第4版は令和3（2021）年度の介護報酬改定と令和4（2022）年度の診療報酬改定の内容を盛り込み、順次、改訂版として発刊してきました。

今回は、6年に1度の医療・介護・障害福祉の報酬が改定されるトリプル改定の年です。第5版は訪問看護ステーションの収入に直結する、令和6（2024）年度の診療報酬と介護報酬の改定の内容に沿って改訂しました。改定の内容は「2024（令和6）年度診療報酬改定の概要」「2024（令和6）年度介護報酬改定の概要」としてまとめてあります。

本書は医療保険と介護保険、その関係等を中心に掲載していますので、訪問看護制度の入門書としてご利用ください。詳しい正確な法律や制度・報酬、公費医療費・自賠責保険・障害者総合支援法などについては他の成書を参考にしていただければと思います。

本書が、訪問看護ステーションの管理者やスタッフ看護師のみならず、ケアマネジャーなどの他職種にとっても、制度や報酬について、よりスムーズに正確に理解できるための一助となれば幸いです。

これからますます訪問看護への期待は高まる一方です。真価を発揮して十分に役割を果たしていただきたいと思います。

2024年7月

清崎由美子