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膠原病コンサルの手引き その相談の根拠・原因,説明できますか?

  • ページ数 : 388頁
  • 書籍発行日 : 2024年8月
  • 電子版発売日 : 2024年8月9日
6,600
(税込)
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商品情報

内容

その患者さん、本当に膠原病ですか?

膠原病は全身性の自己免疫疾患であり,関節症状,皮膚症状,頭頸部の症状,臓器病変,薬剤副作用,そのほかさまざまな臓器に炎症を引き起こします.しかし,これらの症状は膠原病以外の疾患でも見られることがあり,鑑別診断に苦慮することも少なくありません.本書は膠原病の解説を中心としつつ,膠原病以外に考えられる多くの原因にも目を向けました.総合内科や各専門科からよく相談をうける各種症状について,膠原病内科医が総合診療的視点でみた時にはどのように考えているのかを解説しました.

序文

リウマチ性疾患,いわゆる膠原病は全身性の自己免疫疾患であり,関節や皮膚,さまざまな臓器に炎症を引き起こします.しかし,これらの症状は膠原病以外の疾患でも見られることがあり,鑑別診断に苦慮することも少なくありません.

筆者が学生や研修医の頃,「膠原病」という領域は理解に苦しみました.授業や研修ローテーションで知識を教えられても,深く理解したような気にはなれなかったのです.この感覚は膠原病を専門としてからもしばらく拭い去ることができませんでした.

医学の授業や研修ローテーションを地理の授業になぞらえるのであれば,各地域の地名や特産物を教えてもらうようなものです.当然,「膠原病内科」も地域の一つ(臓器別診療科の並列)として教えられることとなり,教科書も地域のガイドブックのような形で記されています(図左).しかし,膠原病を少し理解できるようになった現在の私からすると,膠原病を一つの地域(臓器別診療科の並列)として捉えることに無理があるように感じられます.「膠原(コラーゲン)」という名称こそついておりますが,これは免疫学の理解が進んでいなかった時代につけられた歴史的遺残であり,膠原病は「免疫系」という姿・形のないシステムの異常による疾患です.免疫系の異常は臓器を選びません.その時々で侵される臓器が異なります(図右).ある臓器に異常が出現した場合,当然その他疾患との鑑別が必要となります.鑑別のためには,その臓器のコモンディジーズもある程度知っておかなければなりません.膠原病と思いきや,実は他科(臓器別診療科)で頻度の高い疾患であったりすることもあるわけです.一方で,臓器別診療科の疾患では説明しにくいから,免疫の異常かもしれないという考えに至ることもあるわけです.

本書は,関節症状,皮膚症状,頭頸部の症状,臓器病変,薬剤副作用,検査値異常といったさまざまな所見から,膠原病とそれ以外の疾患を見極めるためのガイドブックです.他の書籍では膠原病疾患の解説が中心となっていますが,本書は膠原病以外の鑑別疾患を数多く取り上げている点がユニークです.これにより,主訴や症状,検査値異常からの鑑別がしやすくなっています.

また本書では,総合内科や各専門科からよく相談をうける問題に対して膠原病専門医がどのように考えているのかを言語化しました.「膠原病」という地域(臓器別診療科と並列で示される分野)のみをガイドするものとは異なり,膠原病を浮き彫りにするために,膠原病以外の疾患の情報も多く含むようにしております.鑑別疾患を挙げることを優先し,個々の疾患に関する解説は最低限に留めて,詳細は成書に譲ることといたしました.A(I 人工知能)を利用しても効率よく鑑別疾患を挙げるのは難しいため,本書ではそのヒントを示し,鑑別疾患さえ絞れてしまえば,成書やAI を活用して,その後のプロセスに必要な情報は簡単に手に入るであろうとの考えです.このように簡略化したにもかかわらず,一冊の書籍としてまとめ上げるのは想定より困難でした.筆者自身の力量不足もあり,必要な情報をすべて書き尽くしたと心境には到底至りませんが,短くともコンセプトの方向性は間違っていないと信じて一つの書籍にしました.読者の皆様が意見・批判を本書に重ねていただき,各々の思考の中でこのベクトルが太く長いものになれば,筆者の愚見も少しは世の役に立つことになりましょう.同時に「人を助ける」という医学を志した若かりし頃に向けたベクトルを少し伸ばすことにもなり,この上ない喜びとなります.

本書が研修医や一般内科医の先生方にとって,日常診療の一助となれば幸いです.


2024年6月

東京ベイ・浦安市川医療センター医長
千葉大学医学部臨床教授
岩波慶一

目次

Ⅰ 膠原病の概念編

第 1 章  膠原病クラスター

 A.関節リウマチ

 B.全身性エリテマトーデス

 C.シェーグレン症候群

 D.全身性強皮症

 E.皮膚筋炎

 F.多発性筋炎

 G.混合性結合組織病

   Column1 皮膚筋炎/多発性筋炎という分類は古い?

第 2 章  高齢者関節炎クラスター

 A.高齢発症関節リウマチ 

 B.リウマチ性多発筋痛症

 C.RS3PE症候群

第 3 章  脊椎関節炎クラスター

 A.体軸性脊椎関節炎

 B.乾癬性関節炎

 C.炎症性腸疾患関節症

 D.反応性関節炎

第 4 章  VEGF関連疾患クラスター

 A.特発性多中心性キャッスルマン病

 B.TAFRO症候群

 C.POEMS症候群

第 5 章  血管炎クラスター

 A.高安動脈炎

 B.巨細胞性動脈炎

 C.結節性多発動脈炎

 D.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

 E.多発血管炎性肉芽腫症

 F.顕微鏡的多発血管炎

 G.IgA血管炎

 H.クリオグロブリン血症性血管炎

 I.抗GBM抗体病

 J.蕁麻疹様血管炎

 K.ベーチェット病

 L.[発展]血管炎をミミックする疾患

 M.[発展]わかりにくい血管炎の「サイズ」

第 6 章  自己炎症性症候群クラスター

 A.家族性地中海熱(日本)

 B.成人発症スチル病

Ⅱ 関節症状編

第 1 章  関節症状を整理する

 A.思考プロセス

第 2 章  鑑別―主訴から考える

 A.頸が痛い

 B.腰が痛い

 C.肩が痛い

 D.肘が痛い

 E.手が痛い

 F.股関節が痛い

 G.膝が痛い

 H.足が痛い

 I.前胸部が痛い

第 3 章  鑑別―多面的要因から考える

 A.複数領域からのアプローチ

 B.病歴からのアプローチ

第 4 章  原因からみる関節症状

 A.さまざまな疾患をミミックするCPPD病 (ピロリン酸カルシウム沈着症による疾患)

 B.さまざまな疾患を引き起こすC型肝炎ウイルス

 C.筋骨格系から見つかる悪性腫瘍

Ⅲ 関節以外の全身症状編

第 1 章  皮膚症状

 A.皮疹総論

 B.ステロイド外用薬の使い方

 C.爪と爪郭の異常

 D.脂肪織炎

 E.好中球性皮膚症

 F.環状紅斑

 G.むち打ち様紅斑

 H.膨 疹

 I.リベド

 J.脱毛症

 K.白斑症

 L.皮膚石灰沈着症

 M.血管性浮腫

 N.レイノー現象

 O.肢端チアノーゼ

 P.顔の赤み

 Q.耳の腫れ

 R.手荒れ

 S.傍腫瘍症候群の皮疹

第 2 章  頭頸部症状

 A.目の乾き(ドライアイ)

 B.目が赤い

 C.物が二重に見える(複視)

 D.鼻中隔穿孔

 E.口腔の乾燥(ドライマウス)

 F.舌表面(舌背)の異常

 G.口内炎

 H.歯肉腫脹

 I.頸動脈の痛み

 J.唾液腺腫脹

 K.巨細胞性動脈炎の多彩な症状

第 3 章  臓器病変

 A.間質性肺疾患

 B.びまん性肺疾患

 C.膠原病肺

 D.肺胞出血

 E.タンパク尿

 F.回盲部の炎症

 G.無症状の腹腔内遊離ガス

 H.慢性偽性腸閉塞

 I.血栓症・不育症

 J.陰部潰瘍

 K.くり返す感染症

   Column2 血漿交換中のリツキシマブ

Ⅳ 薬剤副作用編

第 1 章  代表的な副作用

 A.サルファ剤過敏症

 B.薬剤性血管炎

 C.血清病様反応

 D.免疫チェックポイント阻害薬の副作用

第 2 章  ゲル-クームスで分類する薬剤副作用と免疫疾患

Ⅴ 検査値異常編

第 1 章  検査の基本

 A.検査とのかかわり方

 B.自己抗体検査の基本的な考え方

第 2 章  検査結果の判断の仕方

 A.CRPが高い

   Column3 CRPは不要か?

 B.赤血球沈降速度亢進

 C.リウマトイド因子陽性

 D.抗CCP抗体陽性

 E.MMP-3が高い

 F.抗核抗体陽性

 G.抗Ro/SS-A抗体陽性

 H.抗細胞質抗体陽性

 I.抗リン脂質抗体陽性

 J.ANCA陽性

 K.クリオグロブリン陽性

 L.IgG4が高い/IgG4形質細胞陽性

 M.好酸球増多症

 N.クームス試験陽性

 O.破砕赤血球

 P.骨髄異形成腫瘍(骨髄異形成症候群)と免疫異常

 Q.補体が低い

 R.免疫グロブリンが高い/低い

 S.クレアチンキナーゼ高値

 T.凝固時間(PT・APTT)延長

 U.HLA検査のピットフォール

   Column4 自然抗体と血液型占い

略語

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書籍情報

  • ISBN:9784525235017
  • ページ数:388頁
  • 書籍発行日:2024年8月
  • 電子版発売日:2024年8月9日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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