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- 医師のための処方に役立つ薬理学
商品情報
内容
「薬理学」は診療にもっと使える!薬物相互作用・モニタリング・副作用などの「処方・診療に役立つ知識」をポイントで押さえ,より自信を持って,安全な薬物治療ができる!処方に携わる全医師におすすめの内容です.
序文
なぜ医師に薬理が必要なのか
現代の医療では、実にさまざまな介入手段を用いて患者の治療が行われるが、その中心が薬による介入、すなわち薬物治療であることは、昔も今も変わらない。生薬しかなかった時代を含めると薬物治療は5 千年も前にはじまり、人類の歴史とともに発展してきた。
外科手術とちがい難しい手技を要しないことや、マクロ的な侵襲が少ないことは、薬物治療の大きな利点である。ただ、そのせいで、薬物治療は医師なら誰にでもできる容易な手段と思われがちだが、それは間違っている。第一に、薬物治療にも必ずリスクがある。古くから用いられてきた薬でも重大な副作用はもちろん起こるが、最近は計画的に設計されてつくられた薬が多くなり、それだけに効き目があまりに鋭く、使い方の難しい薬が増えている。しかし、リスク因子は薬の側だけにあるのではない。むしろ、薬の安全性に無頓着な医師が薬の使い方を誤って引き起こす健康被害が数多く見受けられる。第二に、現代医療ではEBM(証拠に基づく医療)の実践が求められており、医師は、患者にとって最もよい薬を選んで用いる必要がある。しかしながら、どのような薬がよい薬なのか正確に判断できない医師が多く、EBM の実現は簡単ではない。
もし、治療に使う薬をエビデンスに基づいて的確に選び、その薬を適正な方法で用いる能力があれば、薬の効果を最大限に引き出すことができるとともにリスクを最小限にとどめることができる。しかし、そのような能力をもった医師は、残念ながらとても少ない。これはなぜなのだろう?
あなたが医師なら学生時代に薬理学の単位をとっているはずだが、それはどんな授業だっただろうか? 薬理学なのだから、薬の作用機序については詳しく学んだはずだ。しかし、薬を正しく使う方法、よい薬を選ぶ方法、副作用被害を最小限にする方法など、診療に直結した教育は行われていただろうか?ほとんどの医学部で薬理学は基礎医学の1 つに位置づけられ、臨床医学をまだ知らない低学年で学ばせることが多い。このため、薬理学でせっかく学んだ薬の知識を卒後の診療に活かすのは難しい。けれども、薬の知識は実際の診療で使えなければあまり意味がないのである。
医学部の薬理学教育に携わるなかで、筆者は、診療に直接結びつく教育を行いたいと思い、可能な範囲で教育内容を見直してきた。しかし、思い描いた改革案のうち一部しか実現できないまま定年を迎えてしまった。実現できなかったことの1 つに、薬理の卒後教育がある。そもそも、卒業前の学生にいくら薬のリスクを説いても実感がわかないのは無理もないことだ。薬理の勉強は、患者の治療に直接かかわりながらする(やり直す)のが最もよい。そのため、卒後研修に薬理教育を取り入れてはどうかと思っていたが、果たせなかった。
そこで、薬を処方する医師のために薬理の解説書をつくろうとして書いたのがこの本である。薬を処方しない医師はほとんどいないので、すべての医師を読者に想定しているが、特に、患者の診療をはじめたばかりの若い医師、医学部で薬理を勉強したが忘れてしまった医師、診療に直結する薬理を学び直したい医師などに読んでもらいたいと思っている。また、特定分野の専門医よりも、プライマリ=ケアに携わる医師を読者に思い描いて書いた。
本書はいわゆる教科書(網羅的な解説書)ではなく、医師に必要な薬理の総論を筆者なりに解説したものである。総論に絞ったのは、それが、薬物治療を行うに当たって身につけるべき基礎知識や態度、倫理を学ぶ重要な教程であり、時代によらず普遍的だからだ。それに対して各論(疾患別の治療薬の解説)は、情報の更新が著しく速いため(医学の他分野と比べても圧倒的に速い)、紙の出版物による知識の提供は今の時代にそぐわない気がする。
教科書ではないので、ところどころに筆者の意見も書いた。しかし主観的な「エッセイ」を書いたわけではなく、記述にはそれぞれ背景となる根拠資料がある。ただ、煩雑になるので参考文献の表示は一部にとどめた。なお、数多くの薬のなかでも人類史上きわめて重要と考える薬を厳選して
「殿堂入り」とし、各章の末尾に解説文を付けた。それらも含めて、診療の空き時間などに楽しみながら読んでいただき、薬物治療への意識を高めてもらえれば幸いである。
笹栗俊之
目次
第1章 薬物治療とは
1.薬とは何か
薬を定義すると/薬はなぜ「くすり」というのか/薬と毒はどう違うのか/薬と食品はどう違うのか
2.薬の多様性
生薬/低分子医薬品/低分子医薬品の大半は自然界出身/高分子医薬品/薬らしくない薬
3.病気は薬で治せるか
予防・診断・治療のすべてに薬が用いられる/治療薬で病気は治るのか/標的分子による戦略の違い
4.薬の名前
◯◯薬と◯◯剤の違いは?/薬には複数の呼び方がある/名前の混乱が医療過誤を引き起こす
第2章 薬史5千年
1.古代から中世〜生薬をもとめて〜
薬物治療の夜明け/医学・薬学の“父”/古代から中世へ
2.ルネサンスから近世〜迷信からの脱却〜
医学のルネサンス/近世へつづく医学・薬学の革命
3.近代〜薬は純物質に〜
植物アルカロイドの発見/19世紀の医学革命
4.近現代〜化学療法の時代〜
薬の合成がはじまる/化学療法薬の登場/生体高分子の薬としての利用/抗生物質の発見
5.現代〜セレンディピティとの惜別〜
薬は発見するものから発明するものへ
第3章 薬はなぜ効くのか
1.薬理作用とは
薬が体に働きかけるプロセス/薬は結合してはじめて作用を表す/構造-活性相関
2.薬のターゲット
いろいろな標的分子/標的分子と刺激-応答システム/何が標的になりやすいか/①内因性リガンドと②受容体/③酵素/④イオンチャネル・トランスポーター/⑤細胞内情報伝達因子と⑥転写因子/⑦遺伝子
3.薬理作用の様式
濃度と効果の関係/効力と最大効果/作動薬と逆作動薬/拮抗薬/余剰受容体
4.薬物感受性
薬物感受性の変化/脱感作/過感受性
第4章 薬のたどる道
1.PKとPD
薬理の“セントラルドグマ” /血中薬物濃度に関するパラメーター/薬はADMEで処理される/薬物動態の基本パラメーター
2.薬の吸収〜そもそも体内にどれだけ入るのか〜
吸収にかかわる投与経路と剤形/全身投与/局所投与
3.薬の体内分布〜はたして作用部位まで辿り着けるのか〜
薬の分布とは/薬はどのように細胞膜を通過するか/血漿蛋白質との結合/組織での結合と蓄積/分布の制御機構/分布容積/分布容積の変動
4.薬の代謝〜化学修飾され、水溶性になる〜
代謝とは/第I相反応/第II相反応
5.薬の排泄〜出ていくが、たまに戻ってくることも〜
薬の排泄とは/尿中排泄/胆汁中と糞中排泄/クリアランス/肝クリアランスと腎クリアランス/消失速度定数と消失半減期
6.薬の投与計画
医師が決めなければならないこと/①定常状態の血中濃度を治療域に収める/②必要なら負荷投与、その後は維持投与/③変動があれば、都度修正
第5章 くすりはリスク〜有害反応を知る〜
1.薬による健康被害
用語の違いを理解しよう/有害反応の重さ/有害反応の分類
2.これを見たら薬を疑え
有害反応は死因第5位!?/知っておくべき有害反応/漢方薬の有害反応
3.被害を最小化するために
有害反応の予防・診断・治療/副作用被害救済制度
第6章 多剤併用の薬理
1.薬と薬の干渉
薬物相互作用とは/薬物相互作用の分類
2.薬物動態への干渉
薬物動態学的相互作用とは/吸収過程の相互作用/分布過程の相互作用/代謝過程の相互作用/排泄過程の相互作用
3.薬理作用への干渉
薬力学的相互作用/相互作用の利用/好ましくない相互作用
4.ポリファーマシー
ポリファーマシーよりポリフォニーを/有害な相互作用を避けるには/配合剤の功罪
第7章 薬物治療のカスタム化
1.遺伝子の変異と多型
薬効と有害反応の個人差はなぜ生まれるのか/薬理遺伝学/遺伝子による薬物動態の違い/遺伝子による薬理作用の違い/がん細胞の変異
2.感染症と薬
薬剤耐性とは/細菌の薬剤感受性/薬剤耐性の獲得/薬剤耐性の機序/抗菌薬の適正使用
3.小児と薬
子どもは小さな大人ではない/成人とは違う小児の薬物動態/小児の薬用量/注意するべき有害反応/適応外使用という問題
4.高齢者と薬
超高齢社会と薬物治療/加齢による薬物動態の変化/薬理作用の変化/高齢者の薬物治療:7つのポイント
5.妊娠と薬
女性と薬/妊娠による薬物動態の変化/胎内曝露の影響/薬物治療の原則/妊娠中よくみる病気への対応/男性の避妊が必要な薬/授乳と薬物
6.肝障害と腎障害
臓器障害と薬/肝障害時の薬物治療/腎障害時の薬物治療
7.薬物治療のモニタリング
処方後の経過観察/経過観察の方法/血中濃度の測定
第8章 間違いだらけのクスリ選び
1.EBMとNBM
薬物治療とEBM/EBMの2つの方向性/EBMの実践/医療におけるナラティブの役割/ディオバン事件
2.良い薬を選ぶには
良い薬とは何か/パーソナルドラッグ
3.薬物治療のインフォームド=コンセント
「ムンテラ」/薬物治療におけるインフォームド=コンセントの役割/コンプライアンスとアドヒアランス、コンコーダンス
4.処方箋を正しく書くために
処方箋とは?/処方箋に記載する事項/いろいろな処方例
5.処方医の十戒
こんな医師になってはならない
エピローグ
用語索引
薬剤索引
著者略歴
薬の殿堂
1.ニトログリセリン
2.アドレナリン
3.アセトアミノフェン
4.ワルファリン
5.メトホルミン
6.ジアゼパム
7.バルプロ酸
8.カプトプリル
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書籍情報
- ISBN:9784758124171
- ページ数:414頁
- 書籍発行日:2024年8月
- 電子版発売日:2024年8月23日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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