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医療現場のアンガーマネジメント入門 明日から使えるノウハウを体系的に解説!

  • ページ数 : 232頁
  • 書籍発行日 : 2024年9月
  • 電子版発売日 : 2024年9月18日
3,300
(税込)
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商品情報

内容

職場のスタッフや患者・家族に対する「怒り」の感情をどうコントロールするか。
明日から実践できるよう、体系的かつ具体的に解説。


 医療現場では迅速で的確な判断を常に求められる高ストレス環境のため、他のスタッフなどに対する「怒り」が発生しやすいと言われています。そこで重要になるのが、自身の怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」です。本書では、院内外で医療従事者向けの研修を多数手がける、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの大浦裕之氏(岩手県立中央病院副院長)が、医療現場で生じる怒りをどうコントロールし、怒りに起因する被害(パワハラなど)をいかに防ぐか、体系的に解説します。著者が日ごろ活用する院内規程などの関連資料も盛り込んでおり、アンガーマネジメントやパワハラ対策を効果的に実践できる内容です。

序文

はじめに

本書に興味を持っていただき、ありがとうございます。私はかつて、長期にわたり上司からすさまじいパワーハラスメント(パワハラ)を受けた経験があります。当時、パワハラ被害を病院上層部に訴えても、誰一人として対応してくれませんでした。相談窓口すらも存在しませんでした。今振り返ると、メンタルを潰されず医療事故も起こさなかったことは本当に幸運でした。命を守る現場でパワハラを平気で行う加害者と、それを放置する病院組織……。そのとき感じた「こんなことが命を守る医療現場であっていいのか」という強い義憤の思いが、その後のハラスメント対策活動におけるモチベーションの原点となりました。

医療機関は、怒りをむき出しにして他者にぶつけることが黙認されている“ 怒りの無法地帯” です。これまで勤務した多くの病院で見てきたのは、医療スタッフが罵声や過度の叱責などのパワハラを受け、その状況がほぼ放置されているという現状でした。医療現場は他の業種に比べて怒りが湧きやすい要素がそろっており、一瞬の怒りがパワハラに直結しています。そして医療者は、このような環境に無条件で耐えるべきものとされてきたのです。

医療現場のパワハラは人権侵害であるとともに、被害スタッフに精神的ストレスを与え、意欲減退や注意力低下によるインシデントを引き起こす原因となります。さらに、パワハラは看護職員の離職による人手不足や、心理的安全性の低下によるコミュニケーション不全に起因した医療事故の要因となり、医療安全及び経営上の観点から医療機関にとって重大な脅威となっています。しかしながら、日本の医療機関では、これまでほとんど組織的なパワハラ対策は取られてきませんでした。2022年4月に改正労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法により、医療機関も含めた全事業体にパワハラ防止対策が義務化されました。これを機に、医療安全が最優先であるべき医療機関こそ、一層のパワハラ対策に取り組む必要があります。

高度急性期病院である当院(685床)では、2019年9月に宮田剛病院長の主導の下、ハラスメント防止対策プロジェクトが発足し、私がリーダーを拝命しました。「義憤」を胸に、「ハラスメント防止対策を組織としてどうシステム化できるか」と自問自答しながら、様々な施策による防止対策体制を整備してきました。本書の巻末には、当院のハラスメント防止対策関連資料を掲載しました。各医療機関で自由にご活用ください。

こうしてハラスメント防止対策に関わっていた中、あるきっかけで、アンガーマネジメントに出会いました。アンガーマネジメントは「怒らないこと」とよく誤解されますが(私もそうでした)、決して「怒りを6 秒我慢する方法」ではなく、「怒る必要があるときは上手に怒り、怒る必要のないときは怒らずに済む」ことを目標とします。「怒りの感情」のコントロールスキルであるアンガーマネジメントの最終目標は「怒りで後悔しないこと」です。

アンガーマネジメントは心理トレーニングであり、3つのコントロールを反復練習することで、怒りにくい体質へと変容することを目指します。すなわち、怒りが衝動的に湧いたときに思わず反応しない「衝動のコントロール」、「~べき」という考え方を緩め、他人や物事に対する許容度を上げて無駄に怒らないようにする「思考のコントロール」、そして、怒るか・怒らないかを判断する「行動のコントロール」です。

「アンガーマネジメントでパワハラをある程度防止できるかもしれない」と思い立ち、日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントファシリテーター資格を取得し、2020年6月から院内全体でアンガーマネジメント普及啓発活動(アン活)を開始しました。活動1年後のアンケート結果では、36%の職員が「パワハラが減った」と感じており、さらに64%が「アン活はパワハラ抑止に有効」と回答しました。この結果から、怒りの感情をコントロールすることでハラスメント抑止につながる可能性が示唆されました。本書では第1章で、当院でのアン活とその効果を紹介しています。

当初は、主にハラスメント防止対策としてのアン活に取り組んでいましたが、活動を続けるうちに、自分自身が無駄な怒りによるストレスから解放され、家族を含めた周囲との人間関係が大きく改善されたことに気付きました。そしてアンガーマネジメントにより、物事の見方が変わり、人生そのものが前向きになり、とても生きやすくなったと実感しています。このように、アンガーマネジメントはプライベート面でも大いに効果を発揮します。この気付きを得てからは、ハラスメント対策に限らず、医療従事者のウェルビーイング向上に資するスキルとしてアンガーマネジメントをお伝えしています。

本書は日経メディカル Onlineの連載「大浦裕之の『医療従事者のためのアンガーマネジメント入門』」をベースとして構成したものです。各医療機関におけるハラスメント対策の参考に、そして何より皆様の今後の人生に何かしら役立つヒントになれば幸いです。


2024年9月

大浦裕之

目次

第1章 基礎から学ぶアンガーマネジメント

アンガーマネジメントはなぜ必要か

1. 医療機関は“ 怒りの無法地帯”

2. 緊迫した医療場面でのパワハラは「あおり運転」と同義

岩手県立中央病院での“アン活”の取り組み

3. 組織的な“アン活” 推進でパワハラを予防

4. 怒りが頻発する高度急性期医療現場への“ アン活” 導入の効果

怒りはなぜ生まれるのか理解しよう

5. 脳科学的に見た「怒り」の発生メカニズム

6. 「べき」型思考があなたを怒らせる

7. マイナスの感情・状態が「怒りの燃料」に

8. 破壊的行動につながる「問題ある4つの怒り方」

9. なぜ医療現場で怒りが湧きやすい?その理由を徹底解説

第2章 怒りをコントロールするテクニック

1. 怒りの衝動をコントロールする2つのテクニック

2. 怒りにくい体質への変容を目指す「思考のコントロール」

3. 怒りのトリガーを引かないための「期待」の手放し方

4. 「メタ認知」で自分の心の状態を客観的に把握する

5. より望ましい対応につなげる「リフレクション」

6. どうしても許せない場合の「行動のコントロール」

7. 「リフレーミング」で視点を変える

8. 幸せな人生へ導く感情マネジメントスキル「WISERモデル」

9. WISERモデルを感情コントロールに生かす

第3章 医療現場でのパワハラを防ぐ

1. ハラスメントがもたらす医療安全の深刻な危機

2. これってパワハラ?医療現場で押さえておくべきポイント

3. パワハラから病院を守る──カギとなる「3つの措置」

第4章 Q&A 編

資料編  ハラスメント防止対策資料集

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書籍情報

  • ISBN:9784296206315
  • ページ数:232頁
  • 書籍発行日:2024年9月
  • 電子版発売日:2024年9月18日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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