はじめに

私が，「服薬指導のエッセンス」を自費で初めて作ったのが2017年。それから，第4版まで製作しました。そして今回，じほうさんから出版させていただくことになりました。実は，「これなら身につく！　薬局英会話最短トレーニング」（じほう）の著者のNorikoさんが，私の本を気に入ってくれていまして，Norikoさんの推薦で今回の出版に繋がりました。自分の薬剤師人生の後半に，まさかこのような素敵なことが起こるとは思っていませんでした。初版から読んでいただきました読者のみなさん，私と接してくださった患者さんや同僚，そして編集部スタッフのみなさんのおかげで，無事にできあがりました。ここで，心から御礼を申し上げます。ありがとうございます。

この本は，「自分が仕事で使える本を作る」というコンセプトが始まりです。今の時代，たくさんの情報があり，どういう内容に触れるか非常に迷いました。いろんな情報に触れていると，どの情報も大切に思えてきます。しかし最終的には，自分の身体の中から自然に出てくることを書きました。おそらく，これらは私の20年間の薬剤師生活で，自然に私の身体に入ってきたもの。そして実際に使っているものです。つまり，ノンフィクションです。そういう意味では，みなさんの頭にも，自然に入ってくれるのではないかと期待しています。

注意してほしいのは，私の服薬指導での答え方がパーフェクトではない点です。もしかしたら，もっとよい答え方があるかもしれません。服薬指導はその検討の繰り返しです。この本に記載しているようなシチュエーションに出会っても，即，私が記載した通りに答えないでください。必ず一呼吸置いて，その患者さんの背景も十分に考慮して，言葉を選んでください。

薬剤師にありがちなのは，患者さんが話している間に，何気に自分でストーリーを先読みして答えを探すこと（ないですか？）。実のところ，患者さんのお話を最後まできちんと聞いていないことがあります。現場が忙しいと，そのような癖がついてしまいがちです。まずは患者さんのお話を最後まで聞いてください。そして，患者さんが聞きたいことは何なのか？　患者さんの背景も含めて精査して，どのように返答するかを決めてください。

患者さんの前に立つまでは，薬剤師の仕事には調剤・監査など瞬発力が求められます。この本に掲載した表などは，その瞬発力の助けになるかもしれません。記憶に頼ることがよいことではありません。薬剤師の仕事はカンニングOKなので，ぜひご利用ください。

この本が，患者さんが安心して治療することの一助になれるのなら，そして患者さんが笑顔で薬局を出ることの一助になれるなら，これほど嬉しいことはありません。

鹿嶋直純