dAVF・AVM(硬膜動静脈瘻・脳動静脈奇形)のすべて

  • ページ数 : 288頁
  • 書籍発行日 : 2024年10月
  • 電子版発売日 : 2024年10月1日
17,600
(税込)
m3.com 電子書籍ポイント: 960pt ( 6 %)
m3ポイント:1%相当 point-info
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

【dAVFとAVMのすべてがこの1冊で学べる!】
好評を博した『硬膜動静脈瘻のすべて』を大幅改訂。
臨床で遭遇し得るあらゆるタイプのdural AVF(硬膜動静脈瘻)とAVM(脳動静脈奇形)を完全網羅。
疫学から病態、最新のデバイス、治療法まで学べ、血管内治療専門医試験の学習にも最適。
治療の実際がよく分かるWEB動画22本付き!

序文

諸言~改訂の目的と意義~


『血管内治療にかかわる医師必携 硬膜動静脈瘻のすべて』(2011年)を出版後,10年以上が経過した.

この間にマイクロカテーテル,ガイドワイヤー,distal access catheter(DAC)の進化,またOnyxを含めた非接着性液体塞栓物質の普及に伴い,硬膜動静脈瘻(dural arteriovenousfistula:dAVF),脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)に対する塞栓術の治療戦略そのものが,特にここ数年で劇的に変化してきた.

まず,マイクロカテーテルに関しては,DeFrictor Nano,CHIKAI X 010の導入により従来Marathon,Magicでは到達できなかったレベル(dAVFではシャントを越えて静脈サイドまで,AVMではnidus内)までマイクロカテーテルの導入が,稀ならず可能となってきた.このことにより,non-sinus typeのdAVFでは,大部分の症例が血管内治療(Onyxを用いたTAE)で根治できるようになり,AVM塞栓においてもnidusのみの塞栓が可能となったため,塞栓術に伴う虚血性合併症が減少してきている.

また,DACが頭蓋内動脈の遠位まで十分に挿入できれば,いわゆるplug and push法を用いても,マイクロカテーテルの抜去困難となる症例は激減してきている.ただし,理論的には,この手技に関してはdetachable tip microcatheter(現時点で国内では使用できない)を用いたほうが安全性は向上することは間違いない.

カテーテルの末梢到達性の進歩は動脈のみならず,静脈からのアプローチも可能にした.

Non-sinus type dAVFで動脈側から十分末梢に到達できない場合は,静脈流出路を逆に辿り,シャントを閉塞することも可能になってきている.また小型のAVMでは,流出静脈を逆行性に辿り,静脈サイドからplug and push法でnidusを越えてOnyxを流入動脈まで到達させることができれば,根治に持ち込むことも可能である.出血発症の脳幹,基底核の小型AVMは本治療のよい適応と考えられている.

さらに,sinus typeのdAVFでisolated sinusを伴うものは,従来は閉塞した静脈洞から逆行性にマイクロカテーテルを挿入し,静脈洞全体をコイルで塞栓するのが主流であったが,現在では,安全かつ最も接近できるfeederの末梢にマイクロカテーテルを挿入しOnyxを用いたTAEで簡単にかつ短時間で完全閉塞させることが可能となり,isolated sinus内にマイクロカテーテルを導入できた場合にも,コイルではなくOnyxでisolated sinusを充填することにより,より短時間で経済効率もよく塞栓を完遂することができるようになっている.また,isolated sinusとは真逆のsinusが開存しており,耳鳴りのみで発症する横-S状静脈洞のdAVFにおいても,罹患静脈洞にprotection balloonを留置することにより,静脈洞温存下にシャントのみを閉塞させ,根治させることも可能となってきている.

以上,マイクロカテーテルの末梢到達性の向上,動脈,静脈側からのOnyxを用いた塞栓術の導入によりdAVF(頭蓋頚椎移行部,脊髄,小児を除く)の大部分は血管内治療で根治可能となってきている.また,AVMにおいても静脈側からのアプローチによる根治的塞栓術が可能となり,ドイツ,フランスではこの技術はさらに進化しており,今後10年以内にAVMは血管内治療で根治可能な疾患となるものと思われる(AVMの経静脈的塞栓術に関しては,世界で最も経験豊富なChapot先生に執筆をお願いし,日本語に翻訳した状態で記載している:2章B-3「AVMの根治的塞栓術:Chapotの流儀」参照).

本書では,従来のシャント疾患の診断,治療法に加え,ここ数年で導入された新たな治療法,治療戦略,デバイス,それに伴う合併症について重点的に加筆した.現在,実臨床でdAVF, AVMの治療に携わっている先生方が本疾患の治療を行う上での一助になれば幸いである.


2024年8月

寺田 友昭
昭和大学横浜市北部病院脳神経外科 特任教授,脳血管センター長

目次

・緒言~改訂の目的と意義~

・編集・執筆者一覧

・本書の使い方

・WEB動画の視聴方法

【1章 硬膜動静脈瘻】

〈A 硬膜動静脈瘻とは〉

1 dAVFの病因

①歴史

②疫学

③dAVFの成因:臨床例,組織所見,動物モデルからの検討

2 dAVFの臨床的特徴

①症状/症候

②分類

3 解剖からみたdAVFの発生

4 dAVFの治療に必要な血管解剖と画像診断

〈B 硬膜動静脈廔の治療総論〉

1 硬膜動静脈シャント:治療の原理原則

2 TAE

①マイクロカテーテルとその選択

②固体塞栓物質を用いたTAE

③液体塞栓物質:Onyx 新たなデバイス導入に伴う治療法の変遷

<Side memo ①> OnyxはすべてのdAVFに使用可能か?

<Side memo ②> Phil,Eudragitを用いた塞栓術

④NBCA

3 TVE

①カテーテルとアクセスルートの確保

・症例1 偶然MRIで発見されたsphenoid wingのdAVF

・症例2 皮質下出血で発症した左TS-SS dAVF

・症例3 左耳鳴で発症した左TS-SS dAVF

・症例4 左耳鳴で発見された左SS dAVF,いわゆるisolated sinus dAVF

・症例5 眼球充血で発症したCS dAVF

・症例6 眼球突出で発見されたCS dAVF

②Onyxを用いたTVE

・症例1 Tentorial dAVF

・症例2 Middle cranial fossa dAVF

・症例3 SSS dAVF

・症例4 Confluence dAVF

・症例5 ACC dAVF

4 バルーンによるsinus protectionを用いたdAVFの治療

・症例 TS/SS dAVF,Borden分類type 1

5 dAVFに対する外科的治療

・症例1 頭蓋内静脈逆流のみを認める70 歳代の頚動脈・海綿静脈洞瘻

・症例2 左transverse sinusのisolated sinusを伴う dAVFで出血発症した・症例

・症例3 Anterior cranial fossa dAVF

・症例4 出血で発症したstraight sinus近傍の左tentorial dAVF

・症例5 Minor bleedingで発見された右craniocervical junctionのdAVF

・症例6 両下肢のしびれ,脱力,軽度の膀胱直腸障害で発症した右Th6 のspinal dAVF

6 dAVFに対する放射線治療

・症例1 上矢状静脈洞のdAVFに対する治療例

・症例2 直静脈洞のdAVFに対する治療例

〈C 硬膜動静脈瘻の治療各論〉

1 海綿静脈洞部dAVF

①診断・治療のポイント

②シルビウス静脈開存例の症例

・症例 海綿静脈洞がシルビウス静脈の正常還流路として使われているindirect CCFに対する血管内治療

③Target embolization

・症例 右眼球充血および右外転神経麻痺による複視で発症した右CS dAVF

④コイルとNBCAを用いた選択的塞栓術,下錐体静脈洞のballoon sinoplasty

・症例 海綿静脈洞部dAVFに対するコイルとNBCAを用いた選択的塞栓術と下錐体静脈洞のballoon sinoplasty症例

⑤眼静脈直接穿刺

・症例 頚動脈海綿静脈洞瘻に対する経皮的上眼静脈直接穿刺

2 横静脈洞―S状静脈洞dAVF

・症例1 TSおよびSSのほぼ全域にシャントを来していたisolated sinus dAVFに対してTAEを行った1例

・症例2 経静脈的アプローチが困難で穿頭による静脈洞直接穿刺にて塞栓術を行った1例

・症例3 OnyxによるTVEが有用であった1例

3 テント部dAVF

①疾患の解説と診断・治療の概要

②心停止下のOnyx注入テント部dAVF

・症例 Rapid ventricular pacingを併用して心停止下にOnyx注入を施行したテント部dAVF

③Anterior falcotentorial junction dAVF

・症例 TVEにて治療したanterior falcotentorial junction dAVF

4 SSS dAVF

・症例1 痙攣重積発作で発症したSSS dAVF

・症例2 脳ドックで発見されたSSS dAVF

・症例3 クリッピング術施行後のde novo多発性dAVF

5 Anterior cranial fossa dAVF

・症例1 右急性硬膜下血腫および脳内出血で発症した右ACF-dAVF

・症例2 左急性硬膜下血腫で発症した左ACF-dAVF

<Side memo> TVEで根治できたACF-dAVF

6 Anterior condylar confluence部dAVF

・症例1 拡張したACCを持ち,内頚動脈下錐体静脈洞へ流出する1例

・症例2 舌下神経麻痺にて発症した1例

・症例3 IPSへの逆流により眼症状を呈したACC-dAVF

7 頭蓋頚椎移行部dAVF

①総論

・症例 神経症状にて発症した頭蓋頚椎移行部dAVF

②TAE(NBCA)

・症例 TAE(NBCA)で根治を得た頭蓋頚椎移行部dAVF

③Epidural AVFのTVE

・症例 SAHで発症したcervical spinal epidural AVF

8 Pial feederを持つdAVF

・症例1 Pure pial feederを伴った左Iateral tentorial sinus dAVF

・症例2 Pre-existing dural feeder of a pial arteryを伴ったfalcotentorial dAVF

9 Dural and pial AVF

・症例 脳静脈洞血栓症後に発生したnon-sinaus type,multiple dAVF,associated with pial AVF

10 脊髄dAVF

・症例1 Thoracic spinal dAVF

・症例2 Cranio-cervical junction spinal epidural AVF

・症例3 Cervical spinal epidural AVF

11 小児の硬膜動静脈瘻

12 Direct AVF

①Carotid Artery

・症例 内頚動脈瘤破裂によるD-CCF

②Vertebral Artery

・症例 拍動性耳鳴で発症した左椎骨動静脈廔

〈D 硬膜動静脈廔の合併症とその対策〉

1 Onyx使用に伴う合併症

2 液体塞栓物質迷入の合併症

・症例 NBCAが親動脈に迷入した1例

3 出血性合併症

・症例1 海綿静脈洞部dAVFに対するTVE後に後方ドレナージが遺残したため,脳幹の静脈うっ滞による止血性梗塞を生じた1例

・症例2 横静脈洞部dAVFのsinus packing後に中頭蓋窩へのドレナージが遺残したために側頭葉皮質下出血を生じた1例

・症例3 深部静脈ドレナージを伴う前頭蓋底部dAVFに対する経静脈的コイル塞栓術後に頭蓋内出血を生じた1例

4 CCF不完全塞栓による合併症

①頚動脈・海綿静脈洞瘻

・症例 Overpackingによる脳神経麻痺

②海綿静脈洞部dAVFの詰め残し

・症例 海綿静脈洞部dAVFの詰め残しで脳幹症状が出現した1例

【2章 脳動静脈奇形】

〈A 脳動静脈奇形とは〉

1 AVM血管内治療の歴史

2 AVM治療に必要な基礎知識

①ARUBA研究, TOBAS研究からみた自然経過と治療適応

②AVM発生のメカニズムと成因

③AVMの血管構築:sulcal AVM,gyral AVM

④AVMの治療に必要な画像診断

⑤AVM治療に必要なデバイス

⑥AVM治療に必要な塞栓物質(Onyx)

⑦塞栓物質をどう使い分けるか? Onyx,NBCA

・症例1 The temporal lobe AVM

・症例2 Cerebellar AVM

⑧AVMの治療戦略

・症例1 左側頭葉の大型AVM

・症例2 左小脳の巨大AVM

〈B 脳動静脈奇形の治療総論〉

1 AVMの塞栓術:TAE

①Simple push

・症例1 頭痛にて発症した未破裂小脳AVM

・症例2 脳内出血にて発症した右側頭葉後部AVM

②Pressure cooker technique

③Pressure cooker:Balloon catheter

・症例 左側頭葉のAVMにおける術前塞栓術

④High flow shuntの塞栓術

・症例1 緊急帝王切開術後の新生児のガレン大動脈瘤

・症例2 乳児のpial AVF

⑤Perforatorの塞栓術

・症例1 SAHを伴った脳幹AVM(橋外側型)

・症例2 脳出血で発症した基底核部AVM

⑥Targeted embolizationの可能性

・症例 脳室内出血で発症した左脈絡叢AVM

⑦Onyx TAE 最新の手技

2 AVMに対するTVE

・症例1 右ambient cisternを中心としたくも膜下出血

・症例2 Thalamostriate veinに流出する小さなAVM

3 AVMの根治的塞栓術:Chapotの流儀

・症例 右側頭葉深部AVM

4 AVMの摘出術

①総論

・症例 右前頭葉AVM(Spetzler-Martin分類grade 4)

②Onyx塞栓術後の摘出術

・症例1 50mmの右前頭部AVM(Spetzler-Martin分類grade 3)の摘出術

・症例2 60mmの左側頭葉AVM(Spetzler-Martin分類grade 4)の摘出術

・症例3 44mmの小脳AVM(Spetzler-Martin分類grade 4)の摘出術

5 塞栓術後のAVMに対する定位放射線治療

・症例1 頭痛をきっかけに診断され塞栓術後のガンマナイフにより完全閉塞が得られた1例

・症例2 比較的大きなAVMに対して3回の塞栓術後にガンマナイフ治療を行い,完全閉塞が得られた1例

6 AVM塞栓術の合併症とその対策

・症例1 右頭頂部未破裂AVM

・症例2 脳室内出血で発症した脳梁部AVM

・症例3 てんかん発作を伴うAVMの根治術

・症例4 中脳圧迫による進行性麻痺を来した右後頭葉AVM

7 Cerebral proliferative angiopathy

8 頭頚部AVM(Scalp AVM)

①診断のポイント

②塞栓術の実際:NBCA

・症例1 前頭部AVM

・症例2 出血発症,耳介部AVM

③頭頚部AVMに対するOnyxを用いたTVE

・症例 眼瞼血管奇形の再発

・おわりに

・索引

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 最新バージョンのOSをご利用ください

    外部メモリ:1.4GB以上(インストール時:2.9GB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:5.6GB以上

  • android icon

    AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください

    外部メモリ:1.4GB以上(インストール時:2.9GB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:5.6GB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784840485265
  • ページ数:288頁
  • 書籍発行日:2024年10月
  • 電子版発売日:2024年10月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍が必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。

※ファイル容量が大きいため、ご利用環境によっては、データのダウンロードに時間を要します場合がございます。ご了承ください。