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救急対応のエビデンス・エクスペリエンスをぎゅうっとまとめました

  • ページ数 : 356頁
  • 書籍発行日 : 2024年10月
  • 電子版発売日 : 2024年10月2日
4,950
(税込)
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商品情報

内容

総合診療編に続く“エビぎゅう”シリーズ第2弾は救急編!(1)救急外来、(2)地方の二次病院、(3)クリニック・診療所、という異なる3場面を想定し、それぞれの現場で抱きがちな臨床疑問を取り上げる。
ひと目ではわかりづらいwalk-in患者の危険な兆候を見逃さないために必要なtipsから、どこまで検査・加療すべきか、コンサルトのタイミングをどう判断するか、などをエビデンスをもとにコンパクトに解説。またエビデンスだけでは悩むような場面についても、エクスペリエンスを基に解説する。
各場面において限られたリソースを最大限に活用して適切な対応を施すために押さえておきたい内容をまとめ、臨床力を底上げできる1冊。

序文

序文

“成功するには,見えない部分を見抜く力が必要だ”

『宇宙兄弟』第42巻,第391話「帰還前日」

皆さんは,どのような場で診療を行っているでしょうか。大学病院,市中病院,クリニック,あるいは在宅医療の現場でしょうか。多くの初期研修医が勤務する病院の救急外来では,採血の結果は30分も経たないうちに揃い,CT やMRI もほぼいつでも撮影可能です。エコーが複数台備えられていることも珍しくありません。また,判断に悩むときには,専門科にすぐ相談できる環境が整っていることが多いでしょう。撮影したCT やMRI も,迅速に放射線科医が読影してくれるという,非常に便利な時代になりました。

しかし,地域の病院ではどうでしょうか。すべてが同じようにスムーズに進むわけではありません。専門医が不在のこともあれば,検査ができない時間帯もあるでしょう。クリニックでは,通常X 線は撮影できますが,CT やMRI はできません。血液ガスの測定や採血の結果が即座にわかることもまれです。血液培養も採取できません。目指すところが同じであっても,現場によって対応は大きく異なるのです。

「○○先生,昔は本当に厳しかったんだよ」,「△△先生も,ずいぶん丸くなったよね」,こんな会話を耳にしたことがあるかもしれません。時が経つにつれ,恐さが薄らいだようにみえるかもしれませんが,実際にはその人が経験を積み,過去の自分を振り返りながら変わっていったのでしょう。私自身,かつては苛立つことも多かったのですが,今では「こんなこともあるかもしれない,あんなこともあるだろう」と複数の可能性を想像することで,ちょっとやそっとのことでは心が乱れることがなくなりました。“ 想像力” は,きわめて大切な要素です。怒りの原因の多くは,自分が抱いている「こうあるべきだ」という考えに由来するといわれますが,それはまさにその通りでしょう。ガイドラインに「この状況ではこうすべき」と記されていたとしても,それがどの現場でも適用できるわけではないのです。

救急外来や救急対応に携わるのは,比較的若手の医師であることが多いでしょう。私自身もその一人でしたが,さまざまな診療現場を経験することで,同じ症候や疾患でも対応が異なることを学び,成長してきました。本書は,そうした経験を疑似体験できる一冊です。実際にはまだ体験していなくても,読者が「なるほど,この状況ならこういう対応が求められるのか」と想像力を働かせることで,知識とともに対応の幅が広がり,よりよい関係性や対応が築けるでしょう。

冒頭の言葉は,私が愛してやまない漫画『宇宙兄弟』から引用した,南波六太の父,南波長介の台詞です。彼は息子たちに,「成功には失敗がつきもの」であり,見かけ上は大丈夫そうに見えても,本当に大丈夫かどうかを見抜くためには,想像力が必要であることを伝えています。本書を通して,皆さんがさまざまな想像を膨らませ,それを日々の診療に役立てていただけることを心から願っています。


2024年9月

国保旭中央病院 救急救命科医長/臨床研修センター副センター長
坂本 壮

目次

1 救急外来

#救急

CQ01 低体温症は復温されるまで動かすな,は本当か? どこまで外部加温のみで対応できるのか? (三反田拓志)

CQ02 急性アルコール中毒,どこまで検査する? (本間洋輔,石垣佳織)

#循環器

CQ03 心電図異常のない心原性失神,何をする? (佐橋秀一)

CQ04 CPA 患者が搬送,家族はDNAR を希望している。CPR は行わなくてよいか?(宮下紗知,鱶口清満)

CQ05 心電図で虚血性心疾患かたこつぼ症候群かを見極めることは可能か? (水野 篤)

CQ06 胸背痛患者,心電図で非特異的な虚血性変化を認める。心臓カテーテル治療前に造影CT は必要か? (川田健太郎)

CQ07 腹部大動脈破裂に対して開胸大動脈クランプ(RTACC)が有効となる状況とは?(田中淳仁)

CQ08 ECPR のカニュレーションを透視なしで安全に行うには? (舩冨裕之)

CQ09 肺血栓塞栓症は急変をどこまでケアすべきか? (井上 聖,飯尾純一郎)

#呼吸器

CQ10 喀血に対する治療戦略は? (白根翔悟)

#消化器

CQ11 上部消化管出血を疑っている際に,コンサルト前に造影CT は必要か?(前田啓佑,坂本 壮)

CQ12 結石性胆管炎,バイタルサインは安定している。緊急でERCP は必要か?(八百佑樹,鱶口清満)

CQ13 下部消化管出血で緊急入院・内視鏡検査が必要となる状況は? (瀬川 翔)

#脳神経

CQ14 頭部CT で軽度の外傷性くも膜下出血を認めるとき,コンサルト・入院は必要か?(藤森大輔,坂本 壮)

CQ15 くも膜下出血を疑うが発症から時間が経っている。適切な対応は? (鈴木智晴)

 Column くも膜下出血は画像検査のみで外傷性か動脈瘤性かを判断可能か? (北井勇也)

CQ16 一過性全健忘(TGA),緊急MRI は必要か? (小瀬村鴻平,北井勇也)

CQ17 持続性のめまいに対する頭部画像検査のタイミングは? (宮下紗知,鱶口清満)

#感染症

CQ18 高齢者の発熱,意識障害。髄液検査まで行う状況は? (萩田健三郎,北井勇也)

CQ19 破傷風トキソイドの適応となる汚染はどの程度か? (中村 元)

CQ20 壊死性筋膜炎,どのように判断して対応するか? (大髙俊一)

#整形外科

CQ21 X線ではっきりしない骨折疑い患者。次に行うべき検査はCT,それともMRI?(大澤亮匡,鱶口清満)

CQ22 整形外科に緊急コンサルトが必要な開放骨折は? (大澤亮匡,鱶口清満)

CQ23 大腿骨骨幹部骨折。直達牽引,介達牽引,シーネはどのように使い分けるか?(仲津留恵日)

#産婦人科

CQ24 流産を疑った際に産婦人科コンサルトは即必要か?( 谷口敦基,渋谷茉里,鱶口清満)

#精神科

CQ25 救急外来受診患者の焦燥・興奮にどう対応するのか? (久村正樹)

2 地方の2次病院

#救急

CQ26 アナフィラキシー患者の入院適応は? (深瀬 龍)

CQ27 救急外来で必要な高齢者総合機能評価は? (齋藤惣太)

CQ28 救急外来や一般の外来で遭遇する頻度の高い薬剤有害事象は? (吉田英人)

CQ29 CO 中毒患者。HBO が必要な患者は? (北井勇也)

#循環器

CQ30 Stanford B 型大動脈解離。心臓血管外科医不在時に紹介すべき患者は?(佐橋秀一)

CQ31 急性冠症候群を疑う患者では,酸素飽和度を高く維持したほうがよいか?( 鈴木智晴)

#呼吸器

CQ32 バイタルが安定した発症数日後の気胸,すぐに紹介するべきか?( 三澤 麦 リチャード)

#消化器

CQ33 急性虫垂炎,手術のタイミングは? (櫻井俊彰)

CQ34 S 状結腸捻転の診断で,緊急に外科的介入が必要な状況は? (瀬川 翔)

CQ35 憩室炎の在宅療法の適応は? (宮川 峻)

CQ36 膵炎に対する輸液はどの程度行うべきか? (玉野史也,長崎一哉)

CQ37 急性腹症患者。明らかなフリーエアは認めない。緊急手術のために転院を要する患者は? (小澤尚弥)

#脳神経

CQ38 慢性硬膜下血腫の紹介のタイミングは? (藤森大輔,坂本 壮)

CQ39 初発の痙攣で搬送された患者は,帰宅後に全例専門科を受診すべきか?( 舩越 拓)

#感染症

CQ40 抗菌薬が必要な関節炎は? (佐藤史和,鱶口清満)

CQ41 壊死性筋膜炎疑い,外科的介入が必要な患者は? 転院の適応は? (宮川 峻)

#血液内科

CQ42 血液内科へ即コンサルトが必要な患者は? (萩原將太郎)

 Column 細菌性肺炎で入院した患者。白血球30,000/ μL,後骨髄球,骨髄球の検出あり。

血液内科へ急遽相談が必要か?(類白血病反応/ 白血病) (萩原將太郎)

#整形外科

CQ43 小児の上腕骨顆上骨折,適切なマネジメントは? (藤井達也)

CQ44 整形外科医不在。骨折を伴う脱臼は整復してよいか? (東 秀律)

#形成外科

CQ45 眼窩壁骨折の形成外科コンサルトのタイミングは? (長池秀治,北井勇也)

CQ46 動物咬傷,専門科へのコンサルトのタイミングは? (中村聡志,坂本 壮)

CQ47 縫合後再受診のタイミングは? (八百佑樹,鱶口清満)

#産婦人科

CQ48 産婦人科がいない状況で骨盤内炎症性疾患(PID)にどう対応するか? (舩越 拓)

CQ49 性暴力患者の診察で知っておくべきことは? (谷口敦基,松本愛世,鱶口清満)

CQ50 アフターピルの使い方とタイミングは? (池田裕美枝)

#精神科

CQ51 薬物過量内服患者,帰宅可能の条件は? (福山唯太)

CQ52 精神疾患患者から頻回の相談事例に対してどう対処するか? (田村弘樹)

CQ53 入院患者のせん妄への治療選択はどうするか? (井上真一郎)

CQ54 精神科医の「身体疾患を否定してください」はどこまで求めているか? (手塚幸雄)

CQ55 暴れている患者の鎮静,その前にすべきことは? (玉村賢吾,鱶口清満)

CQ56 過換気症候群と診断するときに,気をつけたい鑑別疾患や病態は? (吉田英人)

CQ57 問診で希死念慮を聴取した患者を紹介する実際のタイミングは? (今村弥生)

 Column 自殺企図「もうしないって約束してください」って実際どこまで役に立つの?(日野耕介)

#耳鼻咽喉科

CQ58 シチュエーション別に考える非耳鼻科医ができる扁桃周囲膿瘍のマネジメントとは?(舩越 拓)

CQ59 Bell 麻痺の治療とその際の注意点は? (北井勇也)

CQ60 画像検査が必要な咽頭異物は? (大澤亮匡,鱶口清満)

 Column 鼻中隔血腫は緊急か? (飯沼智久)

#眼科

CQ61 急性閉塞隅角緑内障発作はいつ眼科医にコンサルトすべきか?( 谷口敦基,鱶口清満)

CQ62 前房出血はいつ眼科医にコンサルトすべきか? (谷口敦基,鱶口清満)

CQ63 Lateral canthotomy(外眼角切開術)は日本で救急対応に必要な手技なのか?(山内素直)

CQ64 鉄粉の角膜異物は翌日眼科でよいのか? (立道佳祐,竹内慎哉)

#皮膚科

CQ65 顔面帯状疱疹の適切なマネジメントは? (小林正紘,鱶口清満)

#泌尿器

CQ66 閉塞性腎盂腎炎に伴う敗血症患者。すぐに尿管ステントや腎瘻などの介入が可能な病院へ搬送するか? (又吉貴也,佐藤直行)

#口腔外科

CQ67 歯牙損傷時の口腔外科にコンサルトするタイミングは? (深瀬 龍)

3 クリニック/診療所

#救急

CQ68 高齢者が両肩など近位筋の痛みを主訴に来院。PMR を疑うとき,紹介するべきか?(佐藤直行)

#循環器

CQ69 下腿浮腫を主訴に来院。DVT を疑っている。紹介するタイミングは? (佐橋秀一)

CQ70 非心原性胸痛はどのように判断するか? (小坂文昭)

 Column ACS 疑いは救急搬送?自家用車で行ってもらってもよい?( 加藤秀隆,清水宏康)

#脳神経

CQ71 突然発症の頭痛。紹介のタイミングは? (坂本 壮)

CQ72 診療所で群発頭痛を疑った場合の紹介のタイミングは? (茂木恒俊)

#整形外科

CQ73 足関節捻挫の患者。どのような所見があるときにX線を撮影すべき? (小林駿介)

CQ74 膝外傷の患者。どのような所見があるときにX線を撮影すべき? (小林駿介)

CQ75 高齢者の骨折。大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折時にみられる身体所見は?(鶴山 優)

CQ76 高齢者の偽痛風を疑った際の適切なマネジメントは? (岩波慶一)

#形成外科

CQ77 釣り針刺傷の対処法は? (鶴山 優)

CQ78 手掌側の切創。縫合して経過観察でもよいか? (小嶋秀治)

#産婦人科

CQ79 女性の下腹部痛,確認することは? 紹介すべきタイミングは? (西村真紀)

CQ80 妊産婦の咽頭痛。劇症型溶連菌感染症はいつ疑うか? (柴田綾子)

#小児

CQ81 小児の腹痛。紹介すべきタイミングは? (小松充孝)

CQ82 小児の誤飲。紹介すべきタイミングは? (今本俊郎)

CQ83 小児の頭部外傷。紹介すべきタイミングは? (園田健一郎)

CQ84 小児虐待を疑う病歴や身体所見は? (齋藤惣太)

 Column 高齢者虐待 (中村聡志,坂本 壮)

CQ85 肘内障の整復方法は? (小林駿介)

#精神科

CQ86 せん妄の可能性を上げる身体所見は? (鶴山 優)

CQ87 うつ病はいつ疑い,どこまで非専門医が介入するべきか? (古川渉太,田澤雄基)

#耳鼻咽喉科

CQ88 対症療法で軽快しない,溶連菌迅速検査陰性の咽頭炎への対応は? (屋島福太郎)

CQ89 咽頭所見に比べて症状の強い咽頭痛のマネジメントと紹介のタイミングは?(境野高資)

CQ90 良性発作性頭位めまい症(BPPV)に有効な治療薬は存在するのか? (肥塚 泉)

#泌尿器

CQ91 精巣捻転,コンサルトのタイミングは? (照井エレナ)

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書籍情報

  • ISBN:9784758323017
  • ページ数:356頁
  • 書籍発行日:2024年10月
  • 電子版発売日:2024年10月2日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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