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  • 正しい結果を得るためのイメージング&画像解析実践テキスト

正しい結果を得るためのイメージング&画像解析実践テキスト

  • ページ数 : 267頁
  • 書籍発行日 : 2024年5月
  • 電子版発売日 : 2024年10月5日
6,600
(税込)
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商品情報

内容

イメージングとその画像の定量解析,自信をもってできていますか?
顕微鏡画像は撮像後の定量解析まで求められる時代.「イメージング」と「画像解析」を一貫して学ぶからこそ大事な点が見えてくる.最小限の光学・顕微鏡の知識と応用の利く戦略で,あなたの目的にあった解析法を導きだそう!

序文

はじめに

近年,光学顕微鏡技術の発展はめざましい.その発展は古典的な広視野蛍光顕微鏡からはじまり,共焦点顕微鏡や二光子・多光子励起顕微鏡,ライトシート顕微鏡など光学断層像を観察できるもの,さらに超解像顕微鏡,発光イメージングなど多岐にわたる.これらの顕微鏡技術の発展によって,得られる画像データが質・量とも急激に向上・増加した結果,膨大な画像データからいかに生物学的な知識を抽出するかというデータサイエンスへの広がりを見せている.さらには,深層学習AI による画像処理・解析の発展も相まって,関連分野を巻き込んだ領域の膨張は留まるところを知らない.一昔前は,顕微鏡で取得した画像について,「典型例」と称して論文に掲載することが一般的であった.あるいは,野生型と遺伝子変異型では「組織の様子が異なる」といった定性的,悪く言えば著者の感覚に依存した漠然とした評価をもとに実験結果が記述されることも少なくなかった.しかし最近では,「典型例」ではなく「数値としてどれくらいの相違があるかを示すべし」という定量的な計測を求められることが普通になりつつある.さらに,「組織の様子がどう異なるのか」を,見た目ではなく,数値としてあらわせる評価指標を考案する必要性も増している.

一口に「定量・数値的な評価」と言っても,それは画像処理・解析だけで完結する問題ではない.例えば細胞などの物体の輝度の計測に関しては,顕微鏡法や検出器(カメラなど)によっては輝度の定量性が担保されていないものもあり,輝度を評価するうえで誤った結論に至る危険性がある.一般に普及している一眼レフ等のカメラには画像処理アルゴリズムが内蔵されており,暗いところでも鮮明な非常に美しい画像を出力してくれるが,見た目のよさとは裏腹に輝度の定量性は失われている.つまり,画像の美しさ・芸術性とサイエンティフィックな定量性・信頼性とはしばしば相反している.また他にも,超解像顕微鏡法のなかには画像処理を介在したものがあるが,画像処理によって輝度の定量性が失われていないのかという疑問もある.こうした状況にあって,いったいどの顕微鏡法やどの検出器を使うのが自分の研究目的に合致しているのか,どこに落とし穴があるのかを一人の研究者がすべて把握するのが困難な状況になりつつあると言えるだろう.

われわれはイメージング・画像解析支援活動を行っているが,しばしば「この蛍光顕微鏡画像から発現量の定量解析をしてほしい」との依頼がある.撮影条件等を聞くと,前述のような定量性が担保されない検出器を使っているなど適切な方法で撮影されておらず,そういった場合は「これらの画像から定量解析はできない」と答えざるを得ない.つまり,「画像を解析する場合には,解析目的とその方法を想定した適切な画像を取得する必要がある」のである.このように,今の時代はもはや「画像取得(顕微鏡法)」と「画像解析」は不可分と言えよう.しかし顕微鏡法の解説書や画像解析の解説書はすでに多く出版されている一方で,両者を有機的につなげて解説したものは編者が知る限りない.

本書では,このような考え方に則り,最低限の光学機器の特徴や原理と,画像解析の基本原理を概説している.具体的には,第Ⅰ部で顕微鏡を代表とする光学機器を扱ううえで最低限必要な光学の基本原理や,検出器のしくみと注意点を概説するとともに,各種の顕微鏡法の特徴を解説している.第Ⅱ部では生物画像解析の基本となるデジタル画像,画像処理の考え方から,輝度の定量や形態の評価法など代表的な画像解析法を解説している.第Ⅰ部と第Ⅱ部を互いに連携させることで,最終ゴールに至るまでにどの顕微鏡法を選択し,どういった画像処理・解析を実施すればよいかを可視化することをめざした.個別の事柄についてより深い理解が必要となる場合には,手がかりとなるキーワードを提示しているので,それぞれの分野の専門的な部分は各専門書を調べていただきたい.

正しい画像取得(顕微鏡法),あるいは画像解析ができているか自信がない研究者や,顕微鏡には詳しいけど画像解析はちょっと,という研究者,あるいはその逆,はたまた,研究をはじめたばかりでどちらも,といった大学院生まで,イメージング&画像解析で悩めるさまざまな研究者の指針になるものと思っている.本書をあなたの研究の目的に沿った画像取得と画像解析の遂行にお役立ていただければ幸いである.

謝辞

本書をまとめるにあたってご協力くださった以下の方々に感謝いたします.本書「第I 部 画像取得」の内容は,基礎から学ぶ顕微鏡光学系実習(OPT)をもとに執筆しました.本コースの世話人・講師として,亀井,および,甲本真也,谷口篤史,坂本 丞,堤 元佐,大友康平,野中茂紀,顕微鏡組み立てチューターとして,斎田美佐子,高木知世, 浅尾桃子, 渡我部ゆき, 依藤絵里, 小林健太郎, 奥川友紀, 佐藤文則,Carolina Fiallos Oliveros 各氏をはじめ複数大学の施設職員の方々や顕微鏡関連企業の方々にもご支援をいただきました.また,上野直人,根本知己,三上秀治 各氏から講義やアドバイスをいただきました.さらに,コース運営等にかかわっていただいた方々に,改めて深く感謝申し上げます.

本書「第Ⅱ部 画像解析」の内容は,生物画像データ解析トレーニングコース(BIATC)をもとに執筆しました.本コースは世話人・講師として,加藤,小山,亀井,および,野中茂紀,村田 隆 各氏,チューターとして坂本 丞,谷口篤史,西出浩世,餘家 博 各氏,および内田誠一研究室の大学院生諸氏が参画しました.歴代の世話人・講師として木森義隆氏は多大な貢献をしてくださいました.外部講師として朽名夏麿,塚田祐基,安永卓生 各氏が本コースの発展にご協力くださいました.また,上野直人,藤森俊彦,高田慎治 各氏からアドバイスをいただきました.運営に際しては加藤 愛,中村貴宣 各氏に多大なご協力をいただきました.その他にもチューター,運営にかかわった方々が多くおります.ここで全員をあげることはできませんが,改めて深く感謝申し上げます.


2024年4月

小山宏史,加藤 輝,亀井保博

目次

第Ⅰ部 画像取得

第1章 画像取得のイントロ

1 なぜ顕微鏡で撮影するだけなのに光学理論まで知らなくてはならないのか?【亀井保博】

2 顕微鏡法の選び方と試料調製【亀井保博】

3 顕微鏡観察を計画する・コンサルを受けるときの心構え【甲本真也,亀井保博】

第2章 光の性質と光学顕微鏡

1 顕微鏡学を理解するための光の性質の基本 〜波の性質を知る【亀井保博】

2 顕微鏡の光学理論の基礎 〜レンズを通る光のふるまいと開口数・倍率・分解能【谷口篤史】

3 明視野顕微鏡法の種類 〜明視野観察法・偏斜照明法・暗視野観察法・位相差観察法・微分干渉観察法【谷口篤史】

4 顕微鏡周辺技術と原理 〜光源と光検出器,デジタル画像【坂本 丞】

第3章 多彩な蛍光顕微鏡

1 蛍光物質と蛍光顕微鏡【坂本 丞】

2 共焦点蛍光顕微鏡【大友康平】

3 二光子・多光子励起顕微鏡【大友康平】

4 超解像顕微鏡 〜STED法,SMLM法,SIM法【堤 元佐】

5 ライトシート顕微鏡【野中茂紀】

第Ⅱ部 画像解析

第4章 画像解析の目的と注意点

1 画像解析で何を知りたいか【加藤 輝,小山宏史】

2 画像処理の前に知っておきたい基礎知識【加藤 輝,小山宏史】

3 画像処理の前に知っておきたい注意点【加藤 輝,小山宏史】

4 特殊なケース【加藤 輝,小山宏史】

第5章 画像解析の前処理

1 画像処理の典型的な手順の概要と例外【加藤 輝,小山宏史】

2 簡単なケース【加藤 輝,小山宏史】

3 画像処理の典型的な手順1 〜物体認識までの工程【加藤 輝,小山宏史】

4 画像処理の典型的な手順2 〜物体認識の精度向上のための工程【加藤 輝,小山宏史】

第6章 画像解析;定量化

1 定量化の概説【加藤 輝,小山宏史】

2 定量化の手法と手順【加藤 輝,小山宏史】

第7章 深層学習の利用

1 深層学習を利用すべきか【渡辺英治,小山宏史】

2 深層学習の概念を理解する【小山宏史】

3 深層学習の基礎【渡辺英治,小山宏史】

4 AI画像解析はじめの一歩【渡辺英治】

Appendix

1 無限遠補正光学系【亀井保博】

2 F値【谷口篤史】

3 散乱【谷口篤史】

4 レーザー【大友康平】

5 二光子励起過程における蛍光強度と励起光強度【大友康平】

6 チャープ補償【大友康平】

7 空間フィルタ(カーネル)【加藤 輝,小山宏史】

8 モルフォロジフィルタ【加藤 輝,小山宏史】

9 多数の画像を処理するためのマクロ【加藤 輝,小山宏史】

10 ROI ManagerでROIを1つずつ指定するためのマクロ【加藤 輝,小山宏史】


索引

COLUMN

1 組織透明化技術【洲﨑悦生】

2 検出器由来のノイズ【坂本 丞】

3 顕微鏡自作のススメ【勝木健雄】

4 蛍光タンパク質に基づく生理機能指示薬【杉浦一徳,永井健治】

5 生物発光を用いたイメージング【服部 満,永井健治】

6 蛍光の寿命を使ったイメージング【児玉 豊】

7 二光子励起ホログラフィック顕微鏡【的場 修,Manoj Kumar,米田 成,森田光洋,玉田洋介,粟辻安浩】

8 超解像「顕微鏡」がなくてもできる超解像観察 〜SRRF法:時間・空間相関解析による超解像顕微鏡法【堤 元佐】

9 超解像観察のための試料調製法【堤 元佐】

10 蛍光顕微鏡で分子の動態を観る【堤 元佐】

11 光で遺伝子発現を「操作」する顕微鏡技術【坂本 丞】

12 画像間の輝度補正手法【和田裕一】

13 未来のAI【渡辺英治】

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書籍情報

  • ISBN:9784758122719
  • ページ数:267頁
  • 書籍発行日:2024年5月
  • 電子版発売日:2024年10月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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