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実験医学増刊 Vol.42 No.17 マイクロバイオームと医療応用 全身の微生物叢が生理機能と病態をいかに制御するか?

  • ページ数 : 222頁
  • 書籍発行日 : 2024年10月
  • 電子版発売日 : 2024年10月12日
6,160
(税込)
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商品情報

内容

細菌・真菌・ウイルスが織りなす「隠れた臓器」を制御せよ!
全身を覆う常在微生物は,宿主の代謝,神経内分泌,免疫機能をも制御します.本書は,細菌・真菌・ウイルスの,ヒトの健康・疾患における役割から,便微生物移植を筆頭とした治療法開発の最前線までを紹介します!

序文

序文

ヒポクラテスの誓いで有名な古代ギリシャの医師ヒポクラテス(BC460 ~ 370 頃)は,「すべての病は腸から(All diseases begin in the gut)」という言葉を残している.さすがにすべての病気というのは大袈裟であるものの,多くの全身性疾患に腸内微生物叢(マイクロバイオーム)の異常やそれに伴うリーキーガットがかかわっている点では正鵠を射ている.腸管のなかでも大腸は微生物発酵器官としての側面を有し,マイクロバイオームと共進化してきた.その帰結として,ビフィズス属細菌やセグメント細菌のように腸内にしか棲息できない細菌種も生じている.また腸管以外にも外部環境に接した臓器には,その数は大腸には劣るものの,特徴的な微生物コミュニティが形成されている.2000 年代に勃興したシークエンサーの技術革新やバイオインフォマティクスの発展は,マイクロバイオームの実態を明らかにしてきた.さらに各種疾病に罹患した患者におけるマイクロバイオームの変化を調べることで病態形成との相関関係が見出され,患者のヒト糞便を移植した病態モデル動物を用いて因果関係が示されてきた.いまでは,異常をきたしたマイクロバイオームを「リセット」したり,腸内環境を「デザイン」することで疾患治癒や身体能力の向上をめざすさまざまな取り組みがなされている.

哺乳類の胎児は基本的には無菌状態で維持されており,産道を通過する際にはじめて母体のマイクロバイオームに曝露される.その一部は腸管や体表面に定着し,初期マイクロバイオームが形成される.腸管の初期マイクロバイオームは母乳に豊富に含まれるオリゴ糖によって維持され,乳酸菌やビフィズス属細菌が主体であるが,離乳期を境としてその構成菌は大きく変化し徐々に成熟して成人型マイクロバイオームが形成される.発達期という限られたtime window において腸内細菌が定着することは,免疫系や神経系の発達においてきわめて重要である.

ヒューゴー賞受賞作家であるケン・リュウは,マイクロバイオームによる恋愛感情の制御をモチーフとした短編小説『心智五行』を著している.この物語は,マイクロバイオームの完全除去が健全とされる近未来社会を舞台にしている.主人公の女性は,発展から取り残された辺境の惑星コロニーに不時着し,そこで失われたマイクロバイオームを取り戻すことで,忘れていた瑞々しい恋愛感情に目覚めていくという展開が描かれている.これはもちろんサイエンス・フィクション(SF)であるが,腸内細菌の有無がマウスの情動に影響を与えるという科学的事実に触発されたものである.

本増刊号では臓器ごとのマイクロバイオームの特徴や疾患との関連について各分野のフロントランナーに解説していただくとともに,特別企画として,驚くほど巧妙にマイクロバイオームとの共進化を遂げてきた昆虫の世界についてもご紹介いただく.本号に収載された珠玉の記

アーティクル事を読み,分野を超えて発展する研究の現在地を知るとともに,少・ し不・思議(SF)なマイクロバイオームの効能にしばし思いを馳せていただけたら幸甚である.


2024年9月

長谷耕二

目次

第1章 全身に分布するマイクロバイオーム

Ⅰ.各臓器のマイクロバイオーム

 1.ヒト健常者の腸内マイクロバイオーム【眞田喬行,國澤 純】

 2.口腔マイクロバイオームの特徴と全身疾患への影響【齋藤さかえ,清水律子】

 3.皮膚マイクロバイオームと炎症性皮膚疾患【米倉 慧,中島沙恵子】

 4.生殖器・泌尿器のマイクロバイオーム【石山顕信,鈴木美穂,赤松秀輔,近藤 豊】

 5.呼吸器疾患とマイクロバイオーム【友田恒一】

Ⅱ.細菌以外のマイクロバイオーム

 6.真菌叢の動態と作用【森 大地,後藤義幸】

 7.ヒト腸内ウイルス叢の多様性と健康【池田一史,友藤嘉彦,岡田随象】

第2章 マイクロバイオームと生理・病理との関連

Ⅰ.マイクロバイオームによる生理機能調節

 1.運動とマイクロバイオーム【森田寛人,福田真嗣】

 2.マイクロバイオームによる代謝・内分泌制御【山野真由,池田貴子,西田朱里,木村郁夫】

 3.腸内細菌と宿主との相互作用様式を紐解くリピドミクス解析【小笠晃汰,有田 誠】

 4.腸内細菌による免疫システムの発達【髙橋大輔,長谷耕二】

 5.マイクロバイオームを介した腸脳相関【寺谷俊昭,宮本健太郎,金井隆典】

 6.老化に対する腸内マイクロバイオーム由来代謝物の作用【松本光晴】

 7.T細胞を誘導する腸内細菌種【田之上 大,新 幸二】

Ⅱ.マイクロバイオームと感染制御

 8.腸内細菌叢に依存した腸管ウイルスの感染様式【金井祐太】

 9.腸内細菌とインフルエンザ【小林桃愛,一戸猛志】

 10.新型コロナウイルス感染症におけるユニークな腸内細菌・代謝物質変動と過剰免疫応答【永田尚義】

 11.HIV感染症の腸内細菌叢の特徴と代謝への影響【石坂 彩,水谷壮利】

Ⅲ.ディスバイオーシスと疾患

 12.腸内細菌と大腸がん研究の最前線【鈴木大輔,山田拓司】

 13.がんに覆われた細菌叢―腫瘍内細菌叢研究のこれから【込山星河,長谷耕二】

 14.関節リウマチと腸内細菌叢研究の最新動向【前田悠一】

 15.炎症性腸疾患とマイクロバイオーム【村上真理,竹田 潔】

 16.インスリン抵抗性とマイクロバイオーム【大野博司】

 17.皮膚微生物叢とバリア,炎症制御【松岡悠美】

 18.パーキンソン病の腸管マイクロバイオーム【大野欽司】

 19.多発性硬化症と密接に関連する腸内細菌叢の多面的役割【竹脇大貴,山村 隆】

 20.腸内細菌による自己抗原ミミック【宮内栄治】

第3章 マイクロバイオーム研究の応用

 1.腸内マイクロバイオームを標的とした創薬研究の現状【金 倫基】

 2.腸内細菌移植療法の現状と展望【石川 大】

 3.がん免疫療法とマイクロバイオーム【角田卓也】

 4.ファージ療法【藤本康介,植松 智】

 5.新規ヒト腸内細菌叢制御法としてのIgA抗体医薬の開発【高橋慧崇,森田直樹,新藏礼子】

特別寄稿 マイクロバイオームが駆動する生物多様性

 1.昆虫の生存に必須な腸内微生物共生【深津武馬】

 2.共生細菌による宿主の性・生殖操作の分子機構【勝間 進】


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書籍情報

  • ISBN:9784758104227
  • ページ数:222頁
  • 書籍発行日:2024年10月
  • 電子版発売日:2024年10月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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