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商品情報
内容
処方箋への検査値印字などに伴い,薬剤師も検査値を踏まえたより詳細な病態の把握,副作用の管理などが可能となり,処方監査や服薬指導へそのデータの活用が求められます.そこで,本書は検査値の基本的な知識と薬学的視点からみた検査値の見かたについて深く解説し,症例により実践的な知識を習得できる一冊としました.
序文
序
処方箋は治療に必要な薬の種類や用法・用量などが記載された書類である.患者の病名や症状などの記載はなく,患者にインタビューして薬剤師が病名を推論する場面も少なくない.近年,外来患者が持参する処方箋に検査値が印字され,薬局に提供する取り組みが浸透している.そのため,患者の主訴などの主観的情報や,検査値などの客観的情報が情報源となり,指導・管理を実践するケースがある.適正な調剤・服薬指導の実現には,できるだけ多くの患者情報を医療機関と共有していくことが必要であるが,現時点での医療情報の提供は,検体検査(血液や尿を用いた検査)の開示であり,その検査値の解釈は個々の薬剤師の力量に委ねられている.
一方,臨床検査の測定技術は高度に完成された技術水準にある.血中の代謝産物,細胞からの逸脱成分,クレアチニンなどの老廃物,電解質など多くの検査値が精密かつ正確に定性・定量することが可能である.検査値は患者の病態を客観的に評価するための指標となっている.薬剤師が臨床検査値を読解,活用した処方監査と適正な服薬指導の実践により,副作用,過量投与,禁忌症例の回避につながることが期待される.すなわち,患者からインタビューした情報やお薬手帳から収集した薬剤服用歴などに加え,検査値を把握し活用することで,主治医への疑義照会や服薬情報提供書の質的向上,そして医療機関との連携強化により,医薬品の適正使用に寄与することが望まれる.
オンライン資格確認等システム(マイナ保険証)の利用を通じて患者の診療情報,薬剤情報等を取得・確認することにより,質の高い医療の提供に努めることが,保険医療機関・薬局に求められている.
マイナ保険証を利用する効果として,正確な薬剤情報に基づき重複投薬や相互作用等の確認が可能となり,検査値の情報を活用した処方内容の確認や,より適切な服薬指導が実践できる.マイナ保険証のさらなる普及によって,検査値活用の重要性は高まっていく.薬剤師は検査値を有効に活用し,薬学的な視点で処方内容をチェックし,安心・安全な薬物療法に寄与するよう求められる.
薬剤師が検査値を評価して患者の病状を経過観察する際,一言注意を申し上げたい.検査値には生理的変動(性差,加齢,食事の前後,生活習慣,閉経前後など)によるものがあり,また,健常者を対象とした共用基準範囲と,学会等が定めた臨床判断値がある.患者の検査値が異常を示す際,その評価にあたって留意することを忘れないでほしい.また,疾病の診断には検体検査のほか,X線画像,超音波検査,呼吸機能・心電図などの生理学的検査および細胞診・病理組織診などの検査値情報を総合的に加味して判定されることが多く,最終的には医師によって診断が下される.したがって検査値(検査データ)を100%うのみにしてはいけない場合があり,また,検査値のみで診断が下されることは少ない.検査値の活用においては患者及び主治医と良好なコミュニケーションのもとで行われるよう留意していただきたい.
本書が薬剤師の検査値利活用の後押しとなり,一歩進んだ服薬指導の一助となることを願っている.
本書の制作にあたり,ご尽力いただいた執筆者の先生,ご支援いただいた企業の専門家,ならびに株式会社南山堂の編集部スタッフの皆様に衷心よりお礼申し上げる.
2024年6月
斉藤嘉禎 大森智史
目次
検査値を活用するために必要な基礎知識
検査値の特性を知る
①基準範囲
②共用基準範囲とその必要性
③臨床判断値
検査値の読み方と注意点
臨床検査に使われる血液検体
いろいろな検査値の単位
①血漿蛋白・糖・脂質・老廃物などに用いられる単位
②血算・血液一般検査に用いられる単位
③酵素検査に用いられる単位
④電解質検査に用いられる単位
Chapter 1 検査値から患者の状態を把握する
・Chapter1を読む前に
検査項目を理解するために
①基礎知識
②基本的な検査(生化学検査/血算・血液一般検査)
押さえておきたい基本的な検査
①生理的変動
②検体採取
③CTCAEの取り扱いについて
④Child-Pugh分類の考え方
Advanced Lecture
Point
・Test 1 肝・胆道機能検査
肝疾患の検査を理解するための基礎知識
①肝臓のはたらきと検査
②肝機能障害とは
③肝疾患の検体検査
④薬剤性肝障害
薬剤性肝障害/DDW-J2004薬剤性肝障害ワークショップによる分類
押さえておきたい基本的な検査
①肝疾患の存在を調べる検査
AST,ALT値およびAST/ALT比によるスクリーニング検査/胆汁うっ滞のスクリーニング検査①:ALP,γ-GT/胆汁うっ滞のスクリーニング検査②:ビリルビン(胆汁色素)
②肝障害の進行度・重症度をみる検査
プロトロンビン時間(PT)/Child-Pugh分類と肝硬変の重症度
③検査値を解釈するうえでの注意点
生理的変動要因/測定上の問題点
Advanced Lecture プロトロンビン時間 国際標準比
Advanced Lecture ウイルス性肝炎の抗原抗体検査マーカー
Point
・Test 2 脂質異常症検査
脂質異常症検査を理解するための基礎知識
①脂質の代謝経路
②脂質異常症検査とは
脂質異常症/脂質異常症検査の基準値の考え方
③脂質異常症の分類
臨床検査領域における分類(WHO分類)/臨床における分類
押さえておきたい基本的な検査
①動脈硬化性疾患予防のためのスクリーニング検査
LDLコレステロール(LDL-C)/HDLコレステロール(HDL-C)/中性脂肪(TG)/Non-HDLコレステロール(non-HDL-C)
②検査値を解釈するうえでの注意点
生理的変動要因/測定上の注意点
Advanced Lecture 高レムナント血症
Point
・Test 3 糖代謝検査
糖代謝異常と糖尿病
①糖代謝異常
②糖尿病の成因と病型診断
③糖代謝異常と臨床検査
検体検査/生理学的検査
④糖尿病と合併症
押さえておきたい基本的な検査
①糖尿病の診断に用いる検査
血糖値/HbA1c
②糖尿病と診断するための検査の進め方
血糖値・75g OGTT2時間値・HbA1cによる区分/糖尿病と診断されるまで
③病型の診断に用いられる検査
インスリン分泌能の評価/インスリン抵抗性の評価/1型糖尿病と自己抗体
④糖尿病・糖尿病合併症のフォローアップに用いられる検査
HbA1cによる血糖コントロール目標/グリコアルブミン(GA)/1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)/高齢者の血糖コントロール/糖尿病患者に必要な他の検査
⑤検査値を解釈するうえでの注意点
生理的変動要因/血糖値の種類/赤血球寿命によるHbA1cの変動
Advanced Lecture 唾液を検体とする臨床検査
Point
Column 薬局で知ってほしい歯科のこと①:糖尿病と歯周病の関係
・Test 4 腎・尿路系の検査
腎・尿路系の検査を理解するための基礎知識
①腎臓の構造
②腎臓のはたらき
③腎機能検査
腎機能とは/糸球体濾過量(GFR)/尿細管機能検査
④腎・尿路系の臨床検査
蛋白尿の検出/慢性腎臓病と検査/急性腎障害と検査
押さえておきたい基本的な検査
①腎機能のスクリーニングに用いられる検査
血清クレアチニン(Scr)/血清シスタチンC(Cys-C)/尿素窒素(UN)/尿酸(UA)
②尿細管機能のスクリーニングに用いられる検査
N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)
③検査値を解釈するうえでの注意点
血清クレアチニン(Scr)/血清シスタチンC(Cys-C)/尿素窒素(UN)/尿酸(UA)/N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)
Advanced Lecture 微量アルブミン尿による糖尿病性腎症の早期発見
Advanced Lecture 前立腺の疾患と検査
Point
・Test 5 筋疾患検査
筋疾患を理解するための基礎知識
①ミオパチーの原因別分類
②ミオパチーの臨床検査
遺伝性ミオパチー/後天性ミオパチー
押さえておきたい基本的な検査
①筋炎特異的自己抗体の検査
抗Jo-1抗体・抗ARS抗体/甲状腺刺激抗体(TRAb)
②検査値が異常値を示す筋疾患
血清クレアチンキナーゼ(CK)/血清ミオグロビン(Mb)/血清カリウム(K)
③検査値を解釈するうえでの注意点
抗Jo-1抗体・抗ARS抗体/血清クレアチンキナーゼ(CK)/血清ミオグロビン(Mb)/血清カリウム(K)
Advanced Lecture 急性冠症候群の検体検査
Point
・Test 6 血算・血液一般検査
血算・血液一般検査を理解するための基礎知識
①血算・血液一般検査
②貧血の検体検査
③赤血球指数による貧血の鑑別
④貧血の鑑別・貯蔵鉄の把握に必要な検査
⑤主な貧血と検査
鉄欠乏性貧血/妊婦の貧血/子どもの貧血/高齢者の貧血
⑥感染症と白血球数の増減
白血球数の増減/リンパ球の増減
⑦免疫系で活躍する細胞群
最初の防御バリア/自然免疫系/獲得免疫系/自然免疫系と獲得免疫系の連携/白血球の分類と免疫系の仕組み
⑧血小板の増減
血小板数減少が血小板消費の亢進による場合/血小板数減少が血小板の破壊と寿命の低下による場合/血小板数減少が薬物の服用による場合
押さえておきたい基本的な検査
①赤血球系の検査
赤血球数(RBC),ヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht)
②白血球系の検査
白血球数(WBC),白血球分類
③血小板の検査
血小板数(PLT)
④検査値を解釈するうえでの注意点
赤血球数(RBC),ヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht)/白血球数(WBC)/血小板数(PLT)
Advanced Lecture 止血と血栓
Point
・Test 7 電解質検査
電解質の検査を理解するための基礎知識
①電解質とは
②体液量の調整
体液区分/細胞外液量の測定/細胞外液量増加/細胞外液量減少
③浸透圧と張度
④細胞膜上の機能性蛋白質
⑤活動電位
⑥主な電解質異常
高ナトリウム(Na)血症/低ナトリウム(Na)血症/高カリウム(K)血症/低カリウム(K)血症/高カルシウム(Ca)血症/低カルシウム(Ca)血症/高リン(P)血症/低リン(P)血症
押さえておきたい基本的な検査
①よくみられる電解質異常
血清ナトリウム(Na)/血清カリウム(K)/血清カルシウム(Ca)/血清リン(P)
②検査値を解釈するうえでの注意点
Advanced Lecture 慢性腎臓病と骨・ミネラル代謝異常
Point
Column 薬局で知ってほしい歯科のこと②:薬剤関連顎骨壊死
Column 薬局で知ってほしい歯科のこと③:薬剤関連顎骨壊死への注意
・Test 8 高齢者・フレイルの検査
高齢者・フレイルの検査を理解するための基礎知識
①高齢者・フレイルとは
高齢者の増加とフレイル
②栄養アセスメントと検査
栄養アセスメントとは/主観的包括的評価(SGA)/客観的評価(ODA)
③サルコペニア・フレイルと臨床検査
静的栄養指標に役立つ検査/動的栄養指標に役立つ検査
押さえておきたい基本的な検査
①静的栄養指標による低栄養状態の検査
総蛋白(TP),アルブミン(ALB)/総リンパ球数(TLC)/コリンエステラーゼ(ChE)/総コレステロール(TC)
②動的栄養指標による低栄養状態の検査
レチノール結合蛋白(RBP)/トランスサイレチン(TTR, プレアルブミン)/トランスフェリン(Tf)
③検査値を解釈するうえでの注意点
血清総蛋白(TP),血清アルブミン(ALB)/総リンパ球数(TLC)/レチノール結合蛋白(RBP)/トランスサイレチン(TTR)/トランスフェリン(Tf)
Advanced Lecture フレイル・サルコペニアにおける栄養状態の評価
Point
Column 薬局で知ってほしい歯科のこと④:歯ブラシの選び方
Column 薬局で知ってほしい歯科のこと⑤:オーラルフレイル
Chapter 2 一般用検査薬を活用し,能動的な健康サポートを実践する
・Chapter2を読む前に
一般用検査薬とは
①一般用検査薬の種類と分類
②一般用検査薬への転用促進
③一般用検査薬の診断能
④一般用検査薬が満たす要件
検体について/検査項目/検査法/OTC検査薬の性能/添付文書に記載する基本的項目
尿検体を用いる検査に必要な基礎知識
①尿中に含まれる成分
②尿検体の種類
採尿方法による名称の違い/採尿時間による名称の違い
③尿検体を扱う際の注意点
④尿試験紙による検査法
・Test 1 蛋白・糖に関連する検査
押さえておきたい基本的な検査
①尿蛋白・尿糖の検出に用いられる検査
尿蛋白定性検査/尿糖定性検査
尿試験紙の測定原理と正しい使い方
①測定原理
尿蛋白定性検査/尿糖定性検査
②偽陽性と偽陰性
Advanced Lecture 尿潜血検査
・Test 2 妊娠に関連する検査
性周周期と妊娠の成立を理解するための基礎知識
①性周期に関わるホルモン
②エストロゲンのフィードバック機構
ネガティブフィードバックによる卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)分泌の調節/ポジティブフィードバックによる黄体形成ホルモン(LH)サージ/月経周期とホルモン分泌/妊娠の成立/妊娠成立時にみられるホルモン濃度の変動
押さえておきたい基本的な検査
①排卵日の予測,妊娠の確認に用いられる検査
排卵日予測検査薬/妊娠検査薬
Advanced Lecture 新型コロナウイルス抗原定性検査キット
Chapter 3 Case Study 現場で薬立つ!検査値の読み方・使い方
Chapter3を読む前に
Case 1 糖尿病患者のHbA1cは低い方がよいですか?
Case 2 抗菌薬の投与量は本当にこの量でよいですか?
Case 3 降圧薬服用中,その高カリウム血症の原因は?
Case 4 直接経口抗凝固薬(DOAC)使用時に注意するポイントは?
Case 5 脂質異常症の治療中,クレアチンキナーゼ(CK)上昇の理由は?
Case 6 心不全だけど水分摂取?
Case 7 胃がんの外来化学療法,化学療法で気を付けるポイントは?
Case 8 胃がん末期,薬学的管理は痛みだけでよいですか?
Case 9 認知症治療でみるべき検査値は?
Case 10 骨粗鬆症の治療中,最近食欲がないとの訴えあり.原因は?
Case 11 ステロイドの長期投与は何に注意すべきですか?
Case 12 低用量アスピリンも実は危険?
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書籍情報
- ISBN:9784525777715
- ページ数:259頁
- 書籍発行日:2024年10月
- 電子版発売日:2024年10月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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